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『ヴァルキリーチューン:機械仕掛けのアイ』発売記念インタビュー。グッスマ・石原章弘さんとフロントウイング・石森昭博さんに、本作の物語に“二面性”を持たせた狙いを聞く

文:電撃オンライン

公開日時:

 グッドスマイルカンパニーは、ビジュアルノベルゲーム『ヴァルキリーチューン:機械仕掛けのアイ』を7月23日に発売しました。

 本記事では、本作の制作を手掛けた石原章弘プロデューサー(グッドスマイルカンパニー)、石森昭博ゲームディレクター(フロントウイング)にインタビューを実施。リリース後だからこそ訊ける制作の核心と、今後の展望に踏み込みます。

『ヴァルキリーチューン:機械仕掛けのアイ』の制作秘話や今後の展望について、石原さんと石森さんにインタビュー

『ヴァルキリーチューン:機械仕掛けのアイ』ゲーム発売を迎え、キーマン2人が思うこと

――2026年7月23日、ついにゲームの製品版がリリースされました。プレイ時間が約10時間という、“1クールのアニメを見終えたような”密度の物語を世に送り出された今、率直な手ごたえと見てほしいポイントを教えてください。

石原
見ていただきたい、というか体験していただきたいポイントは“物語前半の長い日常体験”でしょうか。本作の物語は“前半”と“後半”で雰囲気がやや異なります。後半に行けば行くほど物語はやや殺伐としていくのですが、前半の日常を失いたくない、取り戻したいという気持ちをプレイヤーに持ち続けていただければ、物語を我が事のように感じていただけると思います。

 本作は『ヴァルキリーチューン』というプロジェクトの一環ではありますが、事前にキャラクターの予備知識などは何も必要ありません。ぜひ、ノベルゲームが好きな方にも体験していただきたいですね。

▲キービジュアルは画面の左右で雰囲気が異なる背景が描かれています。このビジュアルには本編クリア後にわかる“秘密”が隠されているそうです。彼女たちの前に広がる街の様子の違いなど、気になるところも多いですが……。
石森
もちろん、そこそこ長いお話の中で、前半と後半の状況の変化という見どころもあるのですが、それに連動した、ヒロインたちの立ち位置と、それぞれの行動、心境の変化、というところも見ていただければと思います。特にリサとエリカへの印象は、メインのヒロインとして、あわせ鏡のようにプレイヤーに受け取っていただけると思います。どちらをより気に入ってもらえるか、皆さんの好みに合わせて体感していただければと思います。

グッドスマイルカンパニーとフロントウイングの強みとは? キーワードは“テキストを体験に変える力”と“世界観の拡張・深化”

――改めて、石原さんから見たフロントウイングの強み、石森さんから見たグッドスマイルカンパニーの強みはどこでしょうか? また、本作の制作において、両社の強みを存分に生かすべく調整した部分、あるいは意見をぶつけ合って作り上げた要素はどこでしょうか?

石原
僕から見たフロントウイングさんの強みは、“テキストを体験に変える力”だと思っています。シナリオの字面だけでは終わらない、間やテンポ、音の当て方で感情の刺さり方を一段階上げてくれる。その安心感はすごく大きかったです。

 グッドスマイルカンパニーの強みは、“キャラクターをゲームの中だけで完結させない”ことですね。ゲームで好きになった子を、プラモデルを購入してさらに好きになれること、逆に、プラモデルを購入したお客様はよりキャラクターへの理解度を深めることができること。その往復を前提に考えられるのは僕らの強みだと思います。

 
石森
私から見たグッドスマイルカンパニーさんの強みは、石原さんも言われていましたが、プラモデルを組みながら遊べることによって、ゲームでも見えない部分を、プレイヤーさん自身で広げていただけることですね。

 そしてグッドスマイルカンパニーさんのメディアミックスへの展開力もあり、コミカライズやキャラクターソングやプラモの追加拡張などにより、作品の世界を広げ続けられることが強みだと思っていますので、フロントウイング側はできるだけそのお手伝いができればと協力させていただきました。

▲プラモデルシリーズはゲームに先行して販売中です。2026年秋にはエリカ(画像右)が発売開始。今後も続々と展開予定とのこと。

『ヴァルキリーチューン』の物語とテーマについて。特徴的な構成で展開した理由とは?

――本作の核には“人を想うとはどういうことか”、“人間とアンドロイドの関係”というテーマがあると思います。可愛らしい日常から価値観が反転していく“二面性”の構成について、ネタバレにならない範囲で、プレイヤーの心をどう揺さぶろうと設計されたのか、その狙いをお聞かせください。

石原
二面構成については、やや最初の回答と被るのですが、これまで個人的にプレイしてきて現在でも良い意味で心にトゲが刺さっているノベルゲームは、大体平和な時間の描写が長く、ある日いきなり事件が起こり展開が大きく動く、二面構成のタイトルが多かったんです。推理小説だと綾辻行人さんの“最後の1行”を読んだときのショックはまだ覚えています。

 ショックのレベルが大きいほど、心はその時の体験をなかなか忘れることができません。本作はプラモデルシリーズも展開しているので、長い期間、プラモデルを手元に置いてくださるお客様もいらっしゃると思います。だからこそ、ゲームも長い間ユーザーの心の片隅に残っていてほしいなあと思い、二面構成については最初からやろうと思っていました。

 テーマについては、彼女たちをアンドロイドにしようと思いついた時、高校生の頃からの個人的なSFバイブルであるコミック『マップス』(※)をリスペクトする形で“アンドロイドだからこその哀しみ”を盛り込みたいなと思い現在のような形になりました。どのような話になっているのかは、ぜひ、ゲーム本編で確認してみてください。

『マップス』:長谷川裕一さんによる本格SFスペースオペラ漫画(OVA・小説でも展開)。壮大な世界観と長谷川さんならではの熱いストーリーテリングで根強いファンを持つSF漫画の金字塔的作品。

――タイトルに込められた“アイ(愛・哀・逢・I)”は、物語を完走して初めて気づく多層的な意味を帯びているように感じます。結末を“ハッピーエンド”と位置づけられたことも含めて、今改めて“アイ”の意味について教えてください。

石原
物語的には“愛”の言葉の比重は大きいんですけど、それだけだとこの作品の手触りを表現しきれない。そこには“哀”もあるし、“逢”もあるし、“I”――つまり自分とは何か、あなたとは誰か、という問いも入っています。

 誰かを大切に思う気持ちがそのまま救いになる場面もあれば、逆にその想いがあるからこそ苦しくなる場面もある。だから“アイ”をひとつに固定しないほうが本作らしいと思い、“アイ”の部分にどんな漢字、またはアルファベットが相応しいのかはユーザーに委ねることにしました。

 ただ、それでも僕がハッピーエンドだと考えているのは、すべてが無傷で終わるからではなくて、哀しみや矛盾を通ったうえで、それでも明日を選べる結末だからです。


――マルチエンディング形式を採用せず、“主人公の選択の積み重ねが世界の見え方を変えていく”という構造を選ばれました。あえて一本の物語として描いたことの意図と手応えはいかがでしょうか?

石原
マルチエンディングにも魅力はあるんですが、今回僕がやりたかったのは選択肢によって結末が分岐することではなく、選択の積み重ねで世界の見え方そのものが変わっていくことでした。

 もともとサウンドノベルのゲームが大好きで選択肢を総当たりすることが好きだったんですけど“心にトゲのように残る”物語を作るには、ちょっと不向きかなと思いました。また他人と感想をシェアすることが普通の時代だからこそ、皆が同じ体験を共有することは重要です。

 僕は昔からアニメとゲームの決定的な違いは“自分が体験した出来事”だと思えるかどうかだと考えています。なので“異なる世界や時間を体験する機会を提供する”という意図は実現できたかなと思っています。


――本作はフルボイスですが、収録に関して特に苦労したところはありますでしょうか?

石原
苦労はずばり、とにかくセリフが多くて時間がかかることでした(笑)。まず、アニメとゲームの収録の決定的な違いはセリフ尺が声優さんにお任せになるか、そうでないかです。

 アニメのアフレコは通常、映像にセリフ尺を知らせるキャラ名の板、いわゆるボールド(※タイムコード表示など)の時間内にセリフを話し終える必要があります。しかしゲームは厳密にプレイ時間を決めずに作るモノがほとんどなので、例えば「おはよう!」というセリフでも演じる人によってセリフ尺が異なります。つまり収録時には正解があやふやで、こだわろうと思えばどこまでもこだわれる。

 僕はキャラクターを芝居や声から作り込んでいきたいタイプということもあり、収録の最初は特に時間をかけていたので、根気強く何度も芝居をしていただいたキャストの皆さんには本当に感謝しかないです。

石原さんの原案を体験へと昇華する際に注意したこととは?

――『グリザイア』『ATRI』『GINKA』 などで知られるフロントウイングの演出力が、本作にどう息づいているのかをうかがいたいです。石原さんの原案・シナリオを、ディレクションとして“体験”へ翻訳するうえで、もっとも意識されたことはなんでしたか。

石森
『グリザイア』シリーズなどでもそうなのですが、その作品がどんなに硬派な作品だとしても、美少女が出る以上、美少女ゲームであることを忘れずに、プレイされる方が受け止めやすいようにすることを心がけています。

 ただ『ヴァルキリーチューン』では、序盤、美少女に囲まれて、美少女ゲーム的な展開から開始しますが、その裏側には石原さんの構築された確かなSF的な世界観がありましたので、その世界観もできる限り忠実に表現できるように努めさせていただきました。

 石原さんと初めてお会いしたときに、好きな漫画が『マップス』であることに意気投合したので、そのあたりの世界観の共有は容易ではありました。


――石原さんは“会話の間、沈黙の空気、音楽がふっと感情を押してくる瞬間”を大切にされていたと聞いています。これらをテキスト表示・ 立ち絵・サウンドの同期といった演出面で、具体的にどう形にされたのでしょうか? 特にこだわった一幕があれば教えてください。

石森
シナリオの感情表現のピークを、イラストと音楽やサウンドによって最高に盛り上がるように努めましたが、やはり一番気にしたところはタイミングになります。セリフの開始時か開始前に、BGMを流し始めるか、その前に環境音のSEを入れて少し間を図るか、それぞれの感情が高まるタイミングに合わせて、都度調整した形です。

――序盤の穏やかな日常から後半のサスペンスへと移行する本作ですが、大きなトーンの振れ幅を演出としてどのように成立させたのでしょうか。プレイヤーに“微かな違和感”を少しずつ気づかせていく仕込みについて、ディレクターの視点からお聞かせください。

石森
サスペンス要素は、石原さんがシナリオの随所に入れ込んでくださっていたのですが、その違和感をそのまま同様な演出で構成してしまうと、コテコテでわかりやすくなり過ぎてしまうので、あえてBGMなどを明るく軽快にしてズラすなどをする事により、文章やセリフとの差異をプレイヤーに感じてもらえたらと組み上げました。

 プレイヤーの皆さんは、きちんとシナリオを読んでいて、そのあたりは察しが良く自然と気づいてくれているので、我々はプレイヤーの皆さんの感性を信じて、そっと自然になるよう馴染ませただけの形です。


――体験版は多言語対応と“演出強化版”へのアップデートを経て、製品版へと仕上げられました。リリースに向けて、演出面で特に磨き込んだ部分はどこだったのでしょうか。

石森
全体的にきめ細かく細部を詰めていったというところではありますが、特に効果やエフェクト素材を足したというところでしょうか。体験版では入っていなかった効果音などを追加して、臨場感を一段と増したというのが、大きくアップデートした部分かと思います。


――石原さんから生み出され、石森さんのディレクションや声優陣の演技が乗ったことで、「想定以上に魅力的になった」あるいは「こんな一面があったのかと驚いた」キャラクターはいますか? 制作過程で特に印象が変わったキャラクターについて教えてください。

石原
素晴らしい演出と熱演により全キャラクター、魂が宿ったなぁとは思うのですが、僕はエリカの印象が変化していきました。自分の中ではエリカは当初、“クールキャラ”の方向で考えていたのですが、大和田仁美さんの芝居を聞いているうちに、情熱的な面を強くしていきたくなり、シナリオ後半では最初に考えていた役割からかなり変えてしまいました。

石森
そうですね。エリカは一番難しいキャラだったかと思います。シナリオを読んだ段階ではもっと冷たい印象になるのかもと思ってたんですが、大和田さんの演技もあってホントに可愛いキャラになったと思っています。エリカは立ち絵の表情を発注する時に、役者さんによっては表情の幅が変わるかもなとは予感していたので、可愛い表情も用意しておいて本当に良かったです。

 そしてリサも、シナリオを読んだ段階では、性格的に取っ付きづらいかもなという印象もはじめはあったのですが、礒部さんの演技もあって、メインヒロインとして本当に可愛いキャラになったなぁという印象でした。

音楽だからこそ、担うことができたもの


――堀江晶太さんの楽曲、とりわけ劇中歌『未来への残骸』やテーマ曲は、物語のキーとして強く響きました。“単なるBGMではなく、感情を代弁する存在”として、楽曲を物語・演出にどう組み込まれたのか、具体的な場面とともに教えてください。

石原
僕はもともとSFが好きなんですが、SF作品って描かれている世界観、文化、言葉が余りにも自分の知っているものと異なれば物語世界に入りにくくなります。

 だから本作では、割と最初から劇中歌を“過去と未来の世界を繋ぐ”キーアイテムとして扱おうと思っていました。例えば、日本だと未だに百人一首が詠まれている。共感出来る言葉、音楽というものは“時代”を超えるものだと思っているので、挿入歌の『未来への残骸』はその象徴として作りました。

石森
挿入歌の『未来への残骸』は私も大好きで、メロディ自体も好きなのですが、なんといっても歌詞と歌声に情緒を揺さぶられる部分が特に気に入っています。作中のシーン全編でも、この曲をいかにプレイヤーに受け取ってもらえるようにするかに終始したように思います。一方で、体験版のラストなど、物語の折り返しとなる要所のシーンでは、続きをもっと読み進めたくなるような、高揚感を誘う流れにできるように努めました。

『ヴァルキリーチューン』を通して見えてくるグッスマらしさ。そしてプラモデルやIPの未来について

――ゲームでキャラクターを知り、プラモデル(PLAMATEA)で手元に置く——この循環は“グッドスマイルカンパニーらしさ”として語られていました。リリースを経て、ゲームで描いたキャラクター像と立体が、実際にどう響き合っていると感じますか。

石原
プラモデルに投影するキャラクターイメージが、よりふくらんでいくんじゃないかと思っています。なのでプラモデルを購入された方には、ぜひ、ゲームもお買い求めいただけると幸いです。

石森
石原さんの言われた通りの相乗効果で、ゲームをやってからプラモで遊んで想像力を広げ、また遊んだあとにゲームをプレイしてキャラクターたちの声を聞いて確かめて、と延々と繰り返し楽しんでいただけるのではないかなと思います。

――コミカライズをはじめ、メディアミックスも動き出しています。『ヴァルキリーチューン』というIPの今後——続編や新作ゲーム、ライブ、さらなる展開について、現時点で語れる展望や“次の一手”があれば教えてください。

石原
まず、プラモデルシリーズは継続してリリースしていく予定です。そして、プラモデルシリーズは皆様にイラストを公開して受注をさせていただいてから、お客様の手元にお届けするまでに時間がかかります。なので、ヴァルキリーチューンを応援してくださるお客様の為にも、継続的なゲーム展開やコミック展開は考えています。もちろん他にもこの先やりたいことはたくさんあります。ただ、まずは『機械仕掛けのアイ』という1本をしっかり受け取っていただき、その上で“この世界をもっと見たい”という声がどこに向かうのかを大事にしたいですね。

石森
本企画の司令塔は石原さんなので、私の方で言える事は少ないですが、新たな広がりやさらなるバリエーションも見てみたいので、そのきっかけとなる皆さんの声をお待ちしております。


――すでに本作をプレイした方、そしてこれから本作に触れる方へ。石原さん・石森さん、それぞれからメッセージをお願いします。

石森
これからのプレイを検討していただいてる皆様、体験版はいつでもプレイ可能ですので、可愛い彼女たちに囲まれる日常シーンをぜひともご堪能ください。

 そして、今井麻美さんが歌われている『song of birth』による、ひたすらにかっこいいOPムービーと、感動的な『未来への残骸』などの楽曲群、どれか1つにでも触れていただければ、興味をもっていただけると信じています。既プレイの皆様には、プラモデルなどの展開も含め、周囲への輪を広げていっていただければ幸いです。

石原
すでに遊んでくださったユーザーの皆様、本当にありがとうございました。タイトルの“アイ”に、どんな漢字、アルファベットを当てはめるのかは、ユーザーの皆様次第です。これからも『ヴァルキリーチューン』をよろしくお願いします。

 また、これからゲームに触れてくださる方は、あまり身構えずに、彼女たちとの時間をそのまま楽しんでください。可愛さも、笑いも、少し痛いところも含めて。その時間と体験が皆様にとって末長く心に残る時間になれば、スタッフ一同、何よりの幸せです。

『ヴァルキリーチューン:機械仕掛けのアイ』Steamキープレゼントキャンペーンを実施!


賞品
『ヴァルキリーチューン:機械仕掛けのアイ』Steamキー 抽選で1名様
※賞品の登録にはSteamへの登録が必要です。詳細は
こちらをご確認ください。

応募方法
  1. Xの電撃オンライン公式アカウント(@dengekionline)をフォロー
  2. 注意事項を確認し、対象のキャンペーンポストをリポスト
※すでにフォローしている場合はリポストのみでOK※応募は13歳以上に限ります。

応募締切
2026年7月31日(金)23:59

当選発表
当選者へのみ2026年8月5日頃、Xのチャット(DM)にて「@dengekionline」よりお知らせします。
※チャットを受信できない場合、当選権利が失われますので、かならず受信できるよう設定してください。
※チャットの使用に必要な手続きについては、Xの
ヘルプセンターなどをご参照ください。
※ご当選の場合、2026年8月10日までに賞品送付先を専用フォームにてご登録いただく必要があります。かならず期日までにチャットをご確認ください。

注意事項

■応募には、Xへの登録(無料)が必要です。
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