9月17日発売予定のNintendo Switch 2用ソフト『ファイアーエムブレム 万紫千紅』のレビューをお届けします。

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“『風花雪月』の正当進化”では言い表せないほどのパワーアップ【ファイアーエムブレム 万紫千紅レビュー】
ついに発売を迎える『ファイアーエムブレム』(以下、FE)シリーズ最新作『ファイアーエムブレム 万紫千紅』。
最初に本作の情報を見た時、自分は『ファイアーエムブレム 風花雪月(以下、風花雪月』のアッパーバージョンのようなゲームを想像していたのですが、蓋を開けてみるとその想像は遥かに超えていました。
確かに『風花雪月』の“正当進化”には違いないのですが、あまりにその進化の幅が大きすぎて、「これを“正当進化”という言葉で片付けるのは適切ではないのでは?」と思ったくらい、シリーズファンとして受けた衝撃は大きかったです。

なかでも印象的だったのが、本作は、“シミュレーションRPGを遊んでいる”ことを良い意味で忘れさせてくれるという点。
『風花雪月』でも、シミュレーションRPGのパートと並行して、キャラクターたちを育成する士官学校パートが用意されていました。
キャラクターたちを指導して技能レベルを上げたり、学校内を探索してミニゲームをプレイしたり、支援レベルを上げたり……といった、3D学園アドベンチャーゲームのようなパートを融合させた構造になっていて、シミュレーションRPGの新たな境地を確立させた作品でした。
ゲーム開発の現場などでは、こういった2つの要素を“インゲーム”と“アウトゲーム”とそれぞれ区別することが多いのですが、『風花雪月』の場合でも面白さの肝となっているのはインゲーム側(シミュレーションRPGのバトル)で、アウトゲームの学園パートは、あくまでもインゲームを面白くするエッセンス的な位置づけ……という印象でした。
一方の『万紫千紅』では、そのアウトゲーム部分がさらにテコ入れされ、大幅に遊びが増えています。
自分は『FE』に限らず、シミュレーションRPGというジャンル自体が大好きなんですが、昨今流行りジャンルかというと、決してそうではないんですよね。『FE』はシミュレーションRPGのなかで圧倒的な人気があるシリーズですが、それでもジャンル的に食わず嫌いをしているプレイヤーは少なくないと思っています。
本作はそんな「シミュレーションRPGはそこまで……」と思っている方ほど遊んでいただきたいゲームになっており、『FE』というシリーズを、シミュレーションRPGというジャンルを超えた領域に持っていきたいという開発陣の情熱を感じる出来となっていました。

決められた期間内で部隊を強化。できることが多い…!【ファイアーエムブレム 万紫千紅レビュー】
具体的な内容の紹介の前に前提となる流れを紹介すると、プレイヤーの分身となる主人公は魔神の復活により滅びゆく世界で目覚めた、救世主のような位置づけの存在。冒頭でプレイヤーは破滅の未来を体験することになり、その未来を変えるべく、過去に遡って魔神に対抗する仲間を集めるため、4人の主人公たちに視点を移し、過去を変えることになります。
その後にスタートする本編部分の根幹となっているのは、各章のメインクエストが始まるまでの期間、さまざまな行動によって日数を消費していく、カレンダー式のシステムです。今回の拠点にあたる帝都ダグシオンでは、闘技場で訓練をしたり、街にいる腕自慢たちに贈り物を渡したり、一緒に食事をして支援値を高めることで、自分の部隊にスカウトしたりできます。
このあたりは『風花雪月』でも採用されていた要素ですが、本作では拠点内での行動は一部の施設(宿屋など)を除いて基本的に日数を消費しなくなり、代わって拠点の外に出て、ワールドマップを探索する新たな要素が追加されました。

これがSRPGパートに並ぶ本作の肝と言える要素になっていて、ワールドマップ内には各地の街にランダムの探索ポイント、実際にフィールドを歩けるダンジョン(詳しくは後述)など、様々なマスが点在しています。主にメインストーリーが始まるまでの期間は、このワールドマップ上の移動や行動によって消費され、遠くのマスに移動すればするほど、多くの日数を消費します。
ワールドマップの行動によって、新しい装備を入手したり、レベル上げをしたりと、部隊の強化幅が大きく変わるので、設定された期間をどのように割り振るかのスケジューリングが非常に重要です。

一方で、訓練や食事といった施設の利用はダグシオンで週一回しか行うことができず、とくに仲間を増やすためには食事を通じて支援値をこまめに上げた上でスカウトする必要があるため、定期的にダグシオンに戻って来る必要もあります。

ワールドマップの中には、短時間で長距離を移動できる、ファストトラベル的な機能をもつ施設である駅も存在しているので、各地の駅を起点とした効率のいい遠征ルートを考える必要があり、これがめちゃくちゃ楽しいです。
『風花雪月』で多くの仲間をスカウトしようとする場合、同じように効率性を考える必要があったのですが、『万紫千紅』ではそれが大幅に洗練されて、ゲームサイクルの中に組み込まれたという印象。戦闘していない時も楽しく、自然と「これをやりたい」という目標が湧いてくるので、本当にやめ時がなくなります。

『FE』らしさはそのままに。テンポ良く進むダンジョン探索と連携攻撃【ファイアーエムブレム 万紫千紅レビュー】
ワールドマップでは、素材収集や経験値稼ぎができるダンジョンが、各地に点在しています。
『FE』シリーズにおけるダンジョンというと、3DSでリメイクもされた『ファイアーエムブレム外伝』を思い浮かべるファンも多いかと思いますが、ダンジョン内も通常と同じシミュレーションRPG形式のバトルが行われていたので、探索に時間が掛かっていました。
本作ではダンジョン内の敵とエンカウントすると、“クイックバトル”と呼ばれるコマンド方式のバトルが発生し、テンポよく探索が進むようになっています。

このコマンド方式のバトルもシンプルながら良くできていて、重装タイプの敵には魔法が効果的だったり、飛行タイプの敵には弓による特効が入ったりといった、相性の有利不利がそのまま元のバトルから受け継がれています。
そのため、敵のタイプを見抜いて、攻撃するキャラクターや武器を切り替えて戦うことが重要。従来のシミュレーションRPG形式から、移動の要素を抜いたようなバトルシステムになっており、コマンドバトルにも関わらず、しっかりと『FE』らしさを感じることができます。

独自の要素として、2人のキャラクターで協力して畳み掛ける連携攻撃も発動可能。非常に強力ですが、自動回復しないLPを消費するので、ダンジョン内のどのタイミングのバトルで使うかは考える必要があります。

ダンジョン内には多数の敵が存在するので、効率よく経験値を稼げるうえに、それぞれのダンジョンごとに貴重な装備やアイテムが入手できることが多いので、探索のメリットが非常に大きいのが嬉しいところ。ダンジョンを見つけたら最優先で入りたくなります。

“ブレイズアーツ”と“加護”による新たな戦術【ファイアーエムブレム 万紫千紅】
もちろん、『FE』シリーズ伝統のシミュレーションRPG部分も、安心の面白さです。
今回は剣・斧・槍の3すくみはなく、弓→飛行のような特定の武器で特定の相手に対して効果がアップする、『風花雪月』に近いシステムになっています。
シリーズによって仕様が変動する武器耐久については、本作では“戦技を発動した時のみ減少する”形式に変更。
作品によっては、武器の耐久の概念がないこともありましたが、個人的に「あまりストレスは感じたくないけど、完全にないのもそれはそれで少し寂しい」というタイプだったので、本作はストレスの薄さと戦略性が両立された仕様として、いい落としどころではないかと感じられました(耐久が0になっても鍛冶屋で修復可能なので安心)。

新要素となるのが、カイ、ディートリヒ、セオドラ、レダたちと主人公が使用できる、“ブレイズアーツ”と呼ばれる特殊なスキル。武器の耐久が減少する戦技とは異なり、HPを消費するタイプの特殊な技で、広範囲を攻撃する、追加の移動力を得る、強力な遠距離攻撃を行う、範囲内の味方を強化するなどさまざまです。

さらに、ブレイズアーツを使い続けるとゲージが増加していき、半分を超えると“オーバーブレイズ”状態に。この時は能力の強化に加えて、ブレイズアーツがさらに強くなりますが、そのままゲージを上げ続けると、バーストしてオーバーブレイズ状態が解除されてしまいます。

バーストするとそのバトル中の最大HPが減少してしまうデメリットもあり、今回も主人公が倒されるとゲームオーバーなので、HPが減るリスクはけっこう大きめ。バーストさえしなければいいので、使用回数を適度にコントロールしながら活かしたいところです。
加えて、本作では神々の力を借りてバトル中にさまざまな恩恵を受けられる“加護”という要素も追加されました。
『風花雪月』や『エンゲージ』にも存在した、バトル中にターンを巻き戻す機能はこの“加護”の1つである“フォトナの加護”の効果になりました。ターン戻しのほかにも、ユニットの回避を大幅に高める、特効効果を受けなくするなどさまざまな便利効果があります。

加護の発動には“天刻の百沙”というリソースを消費し、強力な加護を使うほど消費量も大きくなります(“天刻の百沙”はストーリー進行で自動で回復)。
このあたりの消費量は難易度によっても変わるようで、今回筆者はハードでのプレイでしたが、“フォトナの加護”の消費は少なめで、積極的に使っても支障ないレベルでした。ただ、それ以外の加護にもリソースを使っていると、ターン戻しのぶんが残っていなかった……ということも起こり得るようになっています。
ターン戻し以外の加護は消費量が多めなので乱用はできませんが、そのままだと確実に倒されてしまうユニットを強引に1ターン生き延びさせたり、今までの『FE』にはなかった戦略性を楽しめるようになっています。
キャラクターの魅力は本作でも健在。一押しは「ですわ」口調の悪役令嬢系ヒロイン【ファイアーエムブレム 万紫千紅レビュー】
『風花雪月』でのクラス選択と同様に、 『万紫千紅』ではプロローグ終了後に4つのクランを率いる主人公のなかから、1つを選択することになり、選択した主人公によって仲間に加わる人物も変化します。
デフォルトメンバー以外のキャラクターを仲間にするにはスカウトを成功させる必要があります。
スカウトには、キャラクターの支援値と名声値(サブクエストやメインストーリーを進めると上昇)が条件となっており、多くのキャラがスカウト可能ですが、クランを率いる主人公たちはスカウトできず、彼らの仲間もスカウト成功の条件が比較的厳しい、もしくはスカウト不可であるため、気になるキャラクターが所属しているクラン(主人公)を選ぶのがオススメです。

なお、一度主人公を選んだあとでも、別の主人公に視点を切り替えて最初からプレイすることが可能。それぞれストーリーのテイストも違うので、最初は一通り序盤をプレイしてみてから本命を決めるのもアリかもれません。

今回個人的にツボに入ったのが、レダ篇に登場する、レダにライバル心をむき出しにしている神官・オリンピア。「ですわ」口調でドリルのような巻き髪の金髪、恵まれた家系でツンデレ風味という、いわゆる“ザ・悪役令嬢”なタイプの面白お嬢様系キャラクターです。

もともと自分がこの手のタイプが好きなのもありますが、レダ篇は幼い頃に家族を奪われたレダが復讐を果たそうとしているという、だいぶヘビーなストーリーが展開されるのですが、コテコテのお嬢様キャラであるオリンピアはいい意味でストーリーから浮いていて、シリアスな展開のなかの癒しの存在としていい味を出していました。

育成や兵種(職業)は『風花雪月』に近い、レベルと技能に応じた試験を受け、合格すると選択可能な兵種が増えていき、いつでも兵種は切り替えられる仕様。
その兵種を使い続ければ、キャラクターにセット可能なマスタースキルが解放されるメリットはありますが、いつでも兵種は戻すことができるので、昔の『FE』シリーズ作品のように、成長限界までクラスチェンジを引っ張ったりする必要は今回もなさそうでした。このあたりは『風花雪月』と同様にユーザーフレンドリーになっています。

『FE』シリーズの新たな転機にもなりえるタイトル【ファイアーエムブレム 万紫千紅レビュー】
と、主に新要素を中心にここまでレビューをお届けしましたが、とにかく言えるのは、本作をプレイしないのはあまりにも勿体なさすぎるということ。
筆者は仕事がたくさん詰まっているにも関わらず、つい『万紫千紅』を起動してしまい、気づいたら数時間経過していて青ざめる……という事態が頻発していました。とくに忙しい方は注意していただきたいほどです。

従来の通りのシミュレーションRPGとしての戦略性に加えて、拠点での遊びからワールドマップ探索、ダンジョンと要素の多さが尋常ではなく、シミュレーションRPGで、ここまでありとあらゆる要素をてんこ盛りにしたタイトルは、過去見たことがないです。
普通はそれだけたくさんの要素を盛り込むと、それぞれの食い合わせが悪かったりして、逆に本来の魅力の足を引っ張ったりすることが多いのですが、本作で追加されたありとあらゆる要素はシミュレーションRPGの魅力を一切損なっていないのが素晴らしいところ。

“決められた期間内に自軍を強くして、難しいステージをクリアする”1本のゲーム体験を確立させることに成功していて、『FE』シリーズにおいて、また大きな転機となる作品が誕生したのではないかと感じました。
『FE』シリーズファンはもちろん、「シミュレーションRPGはそこまで……」という方も騙されたと思って、ぜひ一度プレイしていただきたいです。



