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虚淵玄×齊藤祐一郎インタビュー。『ラスティ・ラビット』声優キャスティングの狙いは? ストーリーはシリアス、それとも?

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 NetEase Gamesとニトロプラスが共同制作、虚淵玄さんが企画原案を務めるPS5/ PC(Steam)用完全新作タイトル『Rusty Rabbit(ラスティ・ラビット)』(9月24日発売)。

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 人間がいなくなった世界で、ウサギの主人公・スタンプが愛機のポンコツに乗り込み、遺跡を探索する2.5Dサイドスクロールアクションゲームです。

 そんな本作のメディア向け発表会と、そこで行われた虚淵玄さんとプロデューサーの齊藤祐一郎さんへのインタビューを掲載します。

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▲左から主人公のスタンプ、虚淵玄さん、齊藤祐一郎さん。


スタンプ役は黒田崇矢さん。新たなウサギたち・BB団の姿も【Rusty Rabbit(ラスティ・ラビット)】


 発表会ではリリース日が9月24日と発表されたほか、スタンプ役を黒田崇矢さんが務めることが発表。さらに、スタンプとともにエントツ山と呼ばれる遺跡に挑む新たなウサギたちの集団・BB(ブラックベリー)団が公開されました。

 公開されたBB団のメンバーは、それぞれの思惑を胸に秘めた個性的な6人のウサギたち。ファイルーズあいさん、速水奨さん、鬼頭明里さん、森久保祥太郎さん、くじらさん、小林ゆうさんが演じます。

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 これらのキャスティングは齊藤さんが担当。『ダンガンロンパ』や『コンセプション』でも声優キャスティングの妙を見せてきた齊藤さんですが、『ラスティ・ラビット』については虚淵さんが考案された世界観をしっかりと再現する上で、個性豊かなキャラクターとのギャップやサプライズ感のある方々にお願いしたとのこと。

 さらに発表会中には、スタンプ役の黒田さんからのビデオコメントも。自身が演じるスタンプについて、「ちょっと憎たらしい顔しているんですがかわいいです。見た目より優しいところが私に似てるかもしれないですね」と見た目や内面に言及。

 「誰でも楽しめるゲームだと思いますので。ストーリーとともにゲーム性も皆さんに楽しんでいただけるとうれしいです」とゲームのポイントについても語っていました。

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 ゲーム内容については、さまざまな装備を駆使して巨大な遺跡を掘り進みながら、敵やギミックに対応するのがベースのアクションと紹介。キャラクターの成長にともなって解放されるスピード感のあるアクションが非常に爽快感のあるゲームになっているとのこと。

 さらに、遺跡内にある“ガラクタ”から武器や武器に装着するパーツを作成するクラフト要素も用意。キャラクターレベルの上昇で入手できるスキルポイントを使用すれば、自由にスキルを習得できるなど育成要素の自由度もアピールしていました。
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 最後にプレイする方がすべてのキャラクターを愛してくれることに期待し、「どんどん広がって次の作品、次の作品になるのを期待しております。私の新たな代表作になりますように祈っております。皆さん、応援よろしくお願いします」とコメントして締めくくりました。

 6月5日からはPS5向けの予約受け付けが開始されることも発表。発売日の3日前からのアーリーアクセス権が予約特典になります。

『ラスティ・ラビット』は虚淵玄さんが個人で作ったゲームから発展。発想のもとになったのは?【Rusty Rabbit(ラスティ・ラビット)】


 虚淵さんと齊藤さんへのインタビューでは、『Rusty Rabbit』開発のきっかけやキャスティングの狙いなどをお聞きしました。

――『Rusty Rabbit(ラスティ・ラビット)』というタイトルにはどのような意味が込められているのでしょうか。

虚淵:いろいろ候補が出たのですけども、その中で一番シンプルだったのが『Rusty Rabbit』。直訳すると“さびついたウサギ”で、あまりひねったものにしなくてもいいかという話をしました。

齊藤:そうですね。

虚淵:主人公の名前がラスティ・スタンプというのが決まっていたので、それもありましたね。

――人間がいなくなってウサギが支配している未来の地球という本作の世界観は、どこから発想したのでしょうか。

虚淵:もともとはけっこう昔に造形師のマイティさんという方がウサギの人形とスチームパンク風のロボットを組み合わせた作品を発表していらっしゃって。それがものすごく気に入って、その世界観で同人的にUnityを使用してゲームを作り始めたのが最初です。

 それをネットイースさんに見せたところを「ブラッシュアップして製品化しませんか?」というお誘いいただきました。いまもマイティさんの作品をリスペクトしていて、スマートフォンのホーム画面に設定しています。

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齊藤:虚淵さんがUnityを使用して作られたものの時点で、プロローグや村を拠点にいろいろなところへ移動するという構想がテキストベースのイベントとして組み込まれていました。

 我々はそれを膨らませて製品版として世の中に届けたいと思い、NetEase Gamesと虚淵さんがタッグを組むという形になったんです。

虚淵:遊び半分で作っていたので、使っていたものはほとんどフリー素材。どこかで見たようなロボットにウサギを乗せていたり(笑)。

齊藤:いろいろな意味でそれは世に出せませんでした(笑)。

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――ストーリーのテイストはどのようなものになっているのでしょうか。虚淵:メインストーリーはほどほどシリアスでしんみりくる人情話を意識しています。ただ、人情話と言ってもウサギなので、つい笑っちゃうような細かいネタをいろいろ仕込んでいます。

齊藤:シリアスだからこそ、逆に笑っちゃうんですよね。

――スタンプというキャラクターが強烈ですが、可能な範囲でコンセプトや印象的なセリフをお聞かせください。虚淵:『ラスティ・ラビット』は、基本的に愚痴っぽい老人の相手をしながらスカベンジング(ゴミあさり)をしているというコンセプトがあります。だから、言葉数が多いんですよね。

 あとは、いったん家族関係が破綻しているという設定もありまして、その辺に関する愚痴とかですね。若い人に対する妬み嫉みとか。独り言の多いおじいちゃんっていうスタンスです。

 だから、ウサギたちの宗教世界で忌避されている「マグレガー」という悪態を容赦なく使うんですけども、本人は本人なりに信心深いという。
※『ラスティ・ラビット』の世界では『ピーターラビット』が宗教的な聖典として敬われており、ピーターのお父さんをパイにしてしまったことでも有名な人間のマグレガーおじさん&おばさんの名前は忌避されている。スタンプはピンチの時や強敵に出会った時などに口にする。

齊藤:ゲームの冒頭に「俺の名はスタンプ。ただのウサギ」という言葉が、スタンプというキャラクターの性格を出していると思います。ニヒルな部分もありつつ、信心深かったり、ガラクタに愛を持っていたりとか。頑固なおじいちゃんということが色濃く出ていると思います。

――スタンプを始め、BB団のキャストが発表されましたが、キャスティングの狙いをお聞かせください。齊藤:虚淵さんが提案された見た目はキュートで中身はハードボイルドという世界観のキャラクターがビジュアルの面でギャップが出ています。そこから、ユーザーの期待に応えつつ、どう裏切っていくかと考えました。

 ウサギらしいようなかわいい声も考えましたが、ウサギのビジュアルよりもキャラクターの中身の強さっていう部分を考えたときに、黒田崇矢さんなら面白味もありつつ、キャラクターの内面を演技していただけるのかなと思い、オファーさせていただきました。

 私がいままでに関わったタイトルでのキャスティングでも、最初に主人公格を決めて、その人とどの声優さんが絡んだときにおもしろいかとか、メタ的な部分というところもちょっと考えつつ。

 「このキャラクターのセリフならこの声優さんがいいんじゃないか」「さらにそれならこの声優さんと絡むとおもしろいんじゃないか」「こういうシチュエーションならこんなふうに演じるんだ」「やっぱりこういうキャラクターならあの声優さんがぴったりだよね」ということを意識して、キャスティングさせていただきました。

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虚淵:けっこう方向性は悩みましたよね。女性声優に荒くれたおっさんの演技をしてもらうという路線やかわいいキャラクターが渋い声で話す路線も考えましたが、今回は発表させていただいたような感じになりました。まあ、いい感じになりました。

――虚淵さんのイメージ通りということですか。虚淵:作品のイメージソースには、クリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』という映画があったんですよ。なので、当初のイメージとしては、クリント・イーストウッドの吹き替えを担当していた山田康雄さんのボイスがありました。

――今までのお話を聞いているとスタンプはかなり年齢が高いようですが、人間で言うと何歳くらいなのでしょうか。虚淵:50代半ばくらいの自分の人生に達観しているぐらいの世代を考えています。僕から見ると中年、子どもたちから見るとおじいちゃんに見えちゃうぐらいの年齢ですかね。

――ゲームをプレイしていると、スタンプがよくしゃべりますし、こちらに話しかけてきているような印象を受けました。これは狙いがあるのでしょうか。虚淵:ブラッシュアップする前の段階では、おじいちゃんの仕事に愚痴を聞きながら付き合っていくっていうコンセプトのストーリーラインだったので、プレイしているユーザーに向けて話しかけている部分がありました。

 それこそ、遊んでる最中に余計な与太話が始まったり。ただ、それだと集中できなくなるので、やめましょうってなったんですけど(笑)。

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――その名残が今でも残っているのですね。齊藤:テキスト重視のアドベンチャーゲームがありましたが、虚淵さんの手掛けた作品は、画面の向こう側のユーザーに話しかけているような部分が強いです。『ラスティ・ラビット』のシナリオを読んだときにもその印象がありました。

 『ラスティ・ラビット』のような2.5Dのサイドスクロールは、虚淵さんが手掛けた作品にはあまりなく、そこにアドベンチャーパートを入れるのは、我々にとっても挑戦でした。

 アクションゲームをプレイ中に会話などのアドベンチャーパートがあるとアクション部分を阻害してしまう印象がありましたが、キャラクターとシナリオがどうしても欠かせないパーツだと考え、途中途中でアドベンチャーパートが入る形になっています。

――遺跡を掘り進めていくのにドリル、敵を倒す鉈(ナタ)やショットガンを使用できましたが、ほかにどのようなものがあるのでしょうか。齊藤:基本的に採掘用にドリルとハンマー、攻撃用に鉈とショットガンが使用できます。

 たとえば、鉈だと草は切れますが、岩は壊せません。ですが、グレードアップさせるとどちらも破壊できるなったりします。そういったものもあれば、グレードが低く、戦闘には向かないけど最初から草や岩を斬れる鉈もあります。

 さらに特殊な挙動するようなアイテムも用意しているので楽しんでもらえると思います。

虚淵:グレードアップさせるとバカバカしいようなものになったりもします。

齊藤:グレードアップ時には、ランダムでスキルが付くので、そこも楽しんでもらえれば。

虚淵:もともとスカベンジングに焦点を当てていて、攻撃アクションはなかったんですよ。ひたすら掘ってガラクタを集めるコンセプトを中心に、戦闘アクションも入れる形で舵を切りました。

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――アクションやアドベンチャー以外には、どのような要素があるのでしょうか。

齊藤:頑固なスタンプというキャラクターが遺跡を掘って進んでいくのが『Rusty Rabbit』のスタンスです。「遺跡の中に居るモンスター全員ぶっ倒そうぜ」みたいなこともなく、あくまでシナリオを軸にやっています。

虚淵:パズルを使った謎解きの要素もありますが、それも一部です。ただ、現状ではちょっと謎解き・パズル部分が難しすぎると感じている部分もありまして、まだ調整中です。

――最後に本作に期待するユーザーにメッセージをお願いします。

虚淵:昔からテキストアドベンチャーゲームは作っていましたが、コントローラでガッツリ遊ぶようなアクションゲームというのは憧れでした。作るノウハウがなく、遊び半分にいじる程度だったのですが、そんな憧れていたゲームをNetEase Gamesさんのお力を借りてリリースできるのがうれしいです。ぜひ、虚淵玄の新境地と思って、楽しんでいただきたいです。

齊藤: 『ラスティ・ラビット』は、いわゆる2.5Dのサイドスクロールで、ジャンルや外見的には既視感があるかもしれません。ただ、奇才・虚淵玄さんとNetEase Gamesが手を組んで新たな2.5Dのサイドスクロールタイプになるようなチャレンジを行いました。

 「ほかのゲームとちょっと違うな」というところも多いので、これからの発表でそういった情報を出しつつ、プレイしていただく際にがっつりと楽しんでいただけるように挑戦を続けているので、引き続きご期待ください。