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『ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』の音楽を手掛けた佐藤天平氏インタビュー。演奏は女性オンリーの楽団G・Dream21レディースオーケストラが担当

文:電撃オンライン

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 日本一ソフトウェアの30周年を記念した、「日本一ソフトウェア30周年記念コンサート」が2024年6月23日に銀座ブロッサム 中央会館(東京)で開催されました。

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 このコンサートのアンコールで、発表されたばかりの最新作『ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』のゲーム内の楽曲がサプライズ演奏されました。

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 『ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』で作曲を担当されている佐藤天平さんと、ゲーム内でも使用されるオーケストラサウンドの演奏を担当したG・Dream21レディースオーケストラの音楽監督・指揮者である坂本和彦さん、ヴァイオリン(コンサートミストレス)奏者の寺島貴恵さん、オーボエ奏者の﨑本絵里菜さんへのインタビューで、楽曲の魅力に迫っていきます(なお、本インタビューはコンサート前におこなったものです)。

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『ファントム・ブレイブ』で始まり、『ファントム・ブレイブ』新作で終わるセットリストが熱かったコンサート【ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄:音楽インタビュー】


――「日本一ソフトウェア30周年記念コンサート」は『ファントム・ブレイブ』(2004年)の「Angel Breath」から始まり、新作『ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』の楽曲で終わるという熱いセットリストになっていました。

佐藤天平さん(以下、佐藤。敬称略):気がついてもらえて嬉しいです。

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▲6月23日に行われたコンサートより。左から司会の寺井らんさん、ゲストの佐藤天平さん、司会の櫻井智さん。
――この構成は、どのようなタイミングで思いついたのでしょうか?佐藤:実は、最初は『ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』の曲を演奏する予定はなかったんです。担当ディレクターと話すなかで演奏出来たら面白いという話になり、コンサート担当スタッフの皆さんに相談したら、あれよ、あれよと演奏が決まりました。

 新作の曲を入れる前の段階から、曲のセレクトや順番でとても悩んだんです。しかし、ちょうど『ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』が発表された直後ということで、やはり1曲目は『ファントム・ブレイブ』のオープニングで始まり、ラストは『ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』の特に盛り上がる曲にすれば、物語性も生まれるということで決めました。

――ファンの方も、喜ぶ方が多いと思います。佐藤:ヴァイオリンコンチェルト的な、派手な曲が出来ました。コンサートでも演奏してくれる寺島貴恵さんが、大活躍してくれます。

――G・Dream21の皆さんは、『ファントム・ブレイブ』に関する2つの曲を演奏してみていかがでしたか?寺島貴恵さん(以下、寺島。敬称略):両方とも、すごくカッコいい曲です。「Angel Breath」はかわいらしさもあって、いろいろな表情が出てくる曲で、弾いていて楽しかったです。

﨑本絵里菜さん(以下、﨑本。敬称略):とても、ピュアな曲ですよね。

佐藤:嬉しいです。ピュアなヒロインが活躍する作品なんですよ。

﨑本:もう1曲はゴリゴリしていて、演奏していて燃えてきます。平常心では、演奏出来ない曲ですね。聴いていらっしゃる方も、「何かが起こりそう」というのを感じてもらえると思います。

――今回のコンサートが、新曲の初披露の場となりました。そのご感想はいかがですか?﨑本:責任重大だなと(笑)。

寺島:発表前の曲をコンサートで演奏するというのは、あまりない経験です。

坂本和彦さん(以下、坂本。敬称略):この曲を聴いて、「買うのやめよう」ってならないようにしないといけないからね(笑)。

﨑本:なんで、脅すんですか(笑)。

寺島:先生の指揮にもかかっていますよ(笑)。

――皆さんの話を聴いていて、いい雰囲気のなかで練習、演奏をされているのが伝わってきます。佐藤:練習を見ていても、羨ましかったです。皆さんは、どれくらい一緒に演奏されているんですか?

﨑本:私は10年行かないくらいですね。

寺島:でも印象が強くて、ずっといる気がします。私はG・Dream21結成時なので、12、3年ですね。

坂本:その当時は、12人ほどの小編成で演奏をしていました。全体的に、10年前後在籍するメンバーが多いです。

 私たちは定期演奏をするオーケストラではなく、オペラやバレエなど劇場で演奏することが多いです。例え演者さんに何かあっても場を繋げる、「この人たちなら何とか出来る」と信頼できる職人的な演奏者がそろっています。臨機応変に演奏してくれて、私は本当に助かっています。

﨑本:それに、いろいろなジャンルで演奏活動をしているメンバーが多いです。今回もゲーム音楽というジャンルではありますがクラシカルだったり、ジャズの要素があったり、いろいろな要素があるので、自分たちの強みを生かして演奏出来ると思っています。

――最初は12人の少人数編成から始まったとのことですが、どのような経緯で楽団は始まったのでしょう。坂本:岐阜のサラマンカホールで、日本人だけでニューイヤーコンサートが出来る楽団を作れないかと代表の井戸輝雄氏と話したことがきっかけでした。

 女性だけのオーケストラですが、現在、女性奏者は増えていて、演奏の性差はほぼなくなっているといえます。先ほど職人というお話もしましたが、実力のある、信頼できるソリストがそろっています。

――女性のみだからこそだと感じる部分は、あるのでしょうか?寺島:特にないですね。ただ、楽団の楽しそうな雰囲気にひかれて参加しました。

﨑本:私も性別には、特にこだわりはなかったです。先に参加している先輩に声をかけてもらって参加したのですが、音楽にまじめに取り組め、さらに楽しさがあるというところにやりがいを感じています。

寺島:女性だけだと意識するのは、楽屋が1つで済むことくらいです(笑)。

﨑本:あと、コンサートでカラードレスを着たときに華やかになる点ですね。

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▲6月23日に行われたコンサートより。

――なるほど、女性だけというのは楽団の個性の1つに過ぎず、指揮者の坂本さんを含めて、いい空気感を作っていることこそが魅力なんですね。そんなG・Dream21の皆さんについて、佐藤さんのご感想はいかがですか?

佐藤:今日、一緒にインタビューを受けて、それぞれのより深いキャラクターを知ることが出来ました。全員がそろったときも雰囲気の良さを感じましたが、個々でもパワフルで魅力的な方だと改めて感じています。

 もっといろいろな機会で、一緒に音楽を作っていけたら嬉しいなと思います。また、よろしくお願いします。

楽曲はすべて完全新曲!【ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄:音楽インタビュー】


――『ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』は約20年ぶりのシリーズ完全新作となります。制作が決まって、楽曲制作のオファーが来たときのお気持ちを教えてください。

佐藤:発売当時から『ファントム・ブレイブ』の音楽が、僕はとても好きだったんです。『マール王国』や『ディスガイア』とは異なる第3の音楽という感じで、ファンの皆さんからもご好評をいただきました。

 ですので、本作の制作が決まって本当に嬉しかったです。全力を挙げて、すべて完全新曲で作曲しました。美しい南の島や自然を意識した曲を作ったので、早く届けたいですね。

――続編『ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』の楽曲の特徴を教えてください

佐藤:ヴァイオリンやアコースティックギターなど、アコースティックの繊細なサウンドで、美しいメロディーになっています。今回のアンコールで演奏した曲は、全然違うんですけど(笑)。

 また当時のゲームのファンの方、音楽のファンの方が、「あの曲のオマージュだな」と気づいてもらえるようなものを2、3曲を入れています。


――現在アッシュとマローネのほか、海賊のような女の子がいるメインビジュアルが公開されています。海賊を意識した曲もあるのでしょうか?

佐藤:海賊の専用曲もあります。ほかにもバトル曲や、海の墓場的な曲を用意しています。地上のエピソードもありますが、ポイント、ポイントで海が関わってきます。

――コンサートだけでなく、ゲーム中に使用する楽曲もG・Dream21の皆さんが演奏されているとうかがいました。すでに収録は終わられているとのことですが、印象に残っていることはありますか?

﨑本:佐藤さんの熱い想いが詰まっているんだということが、とても伝わってくる収録でした。録音も管楽器のみ、弦楽器のみなど、セクションごとに、とてもていねいに音を作っていきました。とても、充実したレコーディングでした。

佐藤:じっくりと細やかに進行する長時間の録音となりましたが、皆さん最後まで着いてきてくださって…とても良い演奏が録れましたので、」完成品を楽しみにしていただきたいです。

――オーケストラの演奏は、ゲームのループ(繰り返し)とは違う形で演奏されたのでしょうか?

佐藤:ちゃんと完結する形で収録して、編集でループにして実装しています。

――では、コンサートでフルで聴けるのは、とてもレアな体験なのですね。

佐藤:そうです。ゲームで使用するループ版はラストを少しカットしてしまうので、フルで聴けるのはコンサートだけなんですよ。とても、贅沢ですよね。今回の30周年記念コンサートの会場で聴いた方はぜひ心に刻んでいただければ嬉しいですね。

 曲は寺島貴恵さんがヴァイオリンソロの早弾きをして、カッコよく終わります。ただ、ゲーム中では途中ループしてしまうので、そこが流れないんですよ。

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▲6月23日に行われたコンサートより。ヴァイオリンの寺島貴恵さんと、指揮者の坂本和彦さん。

寺島:そうなんですね!

佐藤:見せ場なのでスタンディングで、コンサートでは即興で長めに弾いていただいても大丈夫ですよ。

寺島:自分はにぎやかな性格なので、即興が得意そうと思われがちですが、即興はあまり得意じゃないんです(笑)。

佐藤:ちょっと心配しているのは、初めて披露する曲なので、唖然として終わらないといいなと思っています。盛り上がるといいですね。

――ちなみにアンコールで演奏した曲は、ゲーム中のどんな場所で使われるのでしょうか?

佐藤:それはまだ伏せさせてください。曲を聴いた方には伝わったかと思いますが、非常に盛り上がる曲となっておりますので、ゲーム中でも盛り上がる場面でかかる曲となります。

――最後に、佐藤さんから『ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄』を楽しみにされているファンの方にメッセージをお願いします。


佐藤:G・Dream21さんには、今回アンコールで演奏していただいたもののほかに、もう1つゲーム内で使用する曲を演奏してもらっています。その曲はバラードで、ピュアでキラキラした感動の1曲になりましたので、楽しみにしていてください。



インタビュイーのプロフィール【ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄:音楽インタビュー】

佐藤天平

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 作編曲家・音楽プロデューサ・ボーカリスト。

 渋谷の中心部にあるプライベートスタジオを拠点に、Protools HDX+D-Commandのシステムを中心にVocalブースや最新機材を装備し、サントラを中心にアルバムを50枚以上発表している。

 幼少の頃よりクラシックピアノのレッスンを受け、ロックバンドや世界的な民族音楽グループの芸能山城組等、幅広いジャンルでの音楽活動を経て、各種ジャンルのサウンドトラックの音楽や、女性ボーカルの作曲やプロデュースで活躍。

 また、ボーカリストとしても多くのテーマソングや劇中歌を歌い、その歌声と熱いボーカルスタイルが人気で、LIVEステージでは多くのファンが大合唱して盛り上がる。

​G・Dream21レディースオーケストラ

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●代表:井戸輝雄氏による代表挨拶より

 音楽大学を卒業し、実力を有する女性ソリストを集結したオーケストラG・Dream21、強さ・弱さ・逞しさ・優しさ・・・すべてと共存する女性の集まり。

 クラシックだけに限らず、ポピュラーから日本の民謡まで、ジャンルにとらわれない独自の演奏、自然や心の安らぎをイメージした緑色を基調としたコスチュームに包まれた彼女達が女性ならではの柔らかさと強さで魅せる音楽を響かせます。

 コンサート会場にぜひ一度お出かけを・・・。

 一人ひとりのテクニックの素晴らしさは勿論のこと、その音楽センスに感動とドラマを感じることができると思います。


坂本和彦(音楽監督・指揮者)

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 東京音楽大学指揮科卒業。三石精一氏に師事。

 在学中、学長の推薦により、チューリッヒ音楽院へ留学。F・ライトナー、F・エーゲルマン両氏に師事。

 ライトナー氏の推薦を受け、チューリッヒ歌劇場の指揮研究員を経て副指揮者となる。

 1986年「三人の女達の物語」でデビュー。「袈裟と盛遠」ポーランド公演で合唱指揮、副指揮を務め、以後、藤原歌劇団、日本オペラ協会を中心とし、数々の公演を指揮。

 1994年には、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、ベルリンドイツ交響楽団にて研鑽。

 東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、(旧)新星日本交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、九州交響楽団等のオーケストラをはじめ、アマチュアオーケストラ等にも数多く客演。オペレッタ、ミュージカル、邦人作品等数多くの作品を手掛ける。

 1991年「国民文化祭・千葉」での水野修考作曲「ミナモ」世界初演は絶賛を得、1996年「国民文化祭・とやま」で石井歓作曲「お小夜」を初演、1997年「死神」、2001年「くさびら」「黒塚」を指揮する。2008年吉岡弘行作曲の新作オペラ「ひかりのゆりかご」の初演を岐阜・長良川国際会議場にて音楽監督・指揮を務め、大成功を収める。2008年11月東京芸術劇場においての300人の豊島区民合唱団と日本フィルハーモニー交響楽団のヴェルディ「レクイエム」は最高の賛辞を得る。2009年8月にはオペラ「ひかりのゆりかご」の東京公演を東京芸術劇場中ホールにて再演し大好評を得る。また2009年11月、天皇陛下御即位20年、御成婚50年をお祝いするにあたり作曲された奉祝曲「太陽の国」(EXILE歌唱)の御前演奏の指揮者を務めた。 2011年10月に発足した富山オペラ協会の「フィガロの結婚」を指揮。2012年ローザンヌにてスイスロマンド管弦楽団と共演。また、指揮と司会を兼ねた、子供から大人まで参加し、楽しめるファンタジックコンサートを各地で展開し、好評を得ている。

 日本オペラ振興会歌手育成部講師および指揮者、東京音楽大学・付属高校講師。日本指揮者協会事務局長・幹事。公益法人としま未来文化財団音楽監督。としまユングフェスタオーケストラ音楽監督。一般社団法人「日本文化創成協会」理事。NPO法人「音楽で日本の笑顔を」顧問。

 2015年度東京都功労者表彰(文化功労)を受賞。

寺島貴恵(ヴァイオリン)


 5歳よりピアノを、7歳よりヴァイオリンを始める。

 これまでにヴァイオリンを霜佐紀子、若林暢、澤和樹、浦川宜也、D・ノーランの各氏に師事。

 東京藝術大学卒業。卒業後より様々な分野で活動を開始。

 テレビドラマ「のだめカンタービレ」の撮影に参加。

 2014年頃までロックオーケストラ「夜長オーケストラ」のコンミスを勤める。CDを二枚発売。

 これまでに、ラフォルジュルネ音楽祭、客船「飛鳥II」、福島テレビ主催のいわきアリオス大ホール、銀座王子ホール、文化庁主催霞ヶ関コモンゲートコンサート、高エネルギー加速器機構、富士ハウスゾンネンシャインなどにて公演。

 モーツァルト生誕260年&日伊国交樹立150年記念コンサートにてソリストを務める。

 また東日本大震災チャリティーコンサートを福島県の避難所また仮説所において行う。

 現在クラシックはもとより、スタジオミュージック、ミュージカル、宝塚、ポップス、ロック、シャンソンなど、幅広いジャンルにて活動中。

●これまでに制作参加した主なアーティスト
嵐、安室奈美恵、ACIDMAN、いきものがかり、ATSUSHI、大塚愛、河村隆一、清木場俊介、Kinki-Kids、倉木麻衣、九州男、Crystal Kay、コブクロ、鈴木慶江、東儀秀樹、野口五郎、B'z、flumpool、BREAKERZ、MAN WITH A MISSION、水樹奈々、May-J、森山良子、矢沢永吉、リュ・シウォン 等。

●参加したミュージカル
ロミオとジュリエット、ジキルとハイド、スウィーニートッド等

﨑本絵里菜(オーボエ)


 ジュニアフィルハーモニックオーケストラに所属しロンドン、チェコにて親善公演、ヤングプラハ国際音楽祭に出演。

 東京藝術大学卒業。

 ヤマハ新人演奏会に出演。

 ソリストとして横浜ゾリステンとモーツァルトのオーボエ協奏曲を共演。

 数々のオーケストラ、吹奏楽団の定期公演やツアー公演に参加。

 室内楽やレコーディング等の演奏活動を精力的に行う傍ら、後進の指導にもあたっている。

 The Orchestra JAPAN オーボエ奏者。



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