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8月17日は『Zガンダム』でエゥーゴのブレックスが暗殺された日。もし生きていたら宇宙世紀の歴史が変わっていた? 『ギレンの野望』での思い出も懐かしい(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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  U.C.0087年8月17日は、エゥーゴの指導者であるブレックス・フォーラが暗殺された日です。ブレックスは主役級のキャラクターというわけではないんですが、実は宇宙世紀の歴史上重要な役割を果たした存在でもあります。

※この記事には『機動戦士Zガンダム』のネタバレが含まれています。

ブレックスが生きていたら第二次ネオ・ジオン抗争は起きなかった?【機動戦士Zガンダム】


 ブレックス・フォーラは、TVアニメ『機動戦士Zガンダム』に登場するキャラクター。主人公であるカミーユ・ビダンが所属する反地球連邦組織“エゥーゴ”の指導者であり、クワトロ・バジーナの正体がシャア・アズナブルであることを知る人物の一人でもあります。

 地球連邦軍の准将かつ、地球連邦議会の議員でありながら、反地球連邦組織のリーダーも務めているという、なかなかとんでもない複雑な肩書きの持ち主。アースノイドとスペースノイドの融和を目指す高い志、リーダーとしてのカリスマ性をあわせ持つ、連邦軍人としては珍しいタイプの人物でもあります。

 ブレックスは指導者としてエゥーゴを率いて、カミーユら所属するアーガマをサポートしながら、スペースノイドの弾圧を進めるティターンズとの戦いを進めていきます。しかし物語の中盤、クワトロと共に出席する予定だった地球連邦議会の前日、ティターンズの刺客によって暗殺され帰らぬ人に。地球連邦の政治家たちを宇宙に移住させるための緊急動議の準備を進めていた最中でした。

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 このブレックスの暗殺後、クワトロはブレックスの最後の言葉に従い、その跡を継いでエゥーゴのリーダーとなります。

 しかし最終的にはエゥーゴを去り、後に再びシャア・アズナブルを名乗ってネオ・ジオンを旗揚げし、地球を寒冷化させるためのアクシズ落としを実装することになります。

 シャアがアクシズ落としに至ったのには、いろんな感情があると思いますが、『逆襲のシャア』内でアムロに指摘されていた通り「人類に絶望していた」という点が大きな要因になったとされています。

 グリプス戦役では、最終的に共に戦ったエゥーゴの仲間たちはほとんどが戦死、自分が素質を見込んだカミーユは精神が崩壊、かつて率いたエゥーゴは連邦の中に吸収され事実上の消滅と「あの戦いはなんだったのか」と思える結末を迎えています。アクシズ落としという劇薬を用いるしか、人類を変える方法はないと考えるのも、分からなくはありません。

 少なくとも『Zガンダム』時代のシャアは、ブレックスと共に正攻法で地球連邦政府の内部からの改革を目指しており、まだ人類に対して希望を抱いていたはず。基本的にシャアって、他人に心を開くことがほとんどないのですが、ブレックスの死の際には大きなショックを受けており、演技ではなく本当に信頼を寄せていたことが分かります。ブレックスの死は、シャアが人類に絶望する大きなきっかけの一つになってる可能性が高く、もしブレックスが生きていたら。シャアはネオ・ジオンを立ち上げていなかったかもしれません。

 そもそもブレックスが生きていたら、シャアがダカールで演説をすることがない=シャアが表舞台に立つことがないわけですから、仮に後にシャアがエゥーゴを去ったとしても、その後のネオ・ジオンの旗揚げ自体がかなり難しくなりそうです。

 この上で「もし第二次ネオ・ジオン抗争がなかったら?」と考えると、『ガンダムUC』や『閃光のハサウェイ』の物語はまったく違うものになっていた(ユニコーンは作られてないし、ハサウェイもテロに参加はしていないでしょう)し、その後の宇宙世紀の歴史がまったく別物になっていた可能性があります。

 それだけシャア・アズナブルという存在が大きいことの証明でもありますが、そのシャアにとくに大きな影響を与えたのがブレックスなわけですから、実は宇宙世紀の歴史上めっちゃくちゃ重要な人物でもあるんですよね。

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『ギレンの野望』シリーズのエゥーゴ編ではブレックスが主人公に【機動戦士Zガンダム】


 ただ、ブレックスはその存在の重要さに反して、スポットが当たることはあまり多くないキャラでもあるのですが、個人的に思い出深いのが、PSPで発売されたゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望 アクシズの脅威』。

 それまでの『ギレンの野望』シリーズは、基本的に地球連邦軍とジオン公国の戦いである一年戦争がメインとなっていたのですが、『アクシズの脅威』では本格的に『Zガンダム』~『逆襲のシャア』の時代までシナリオが用意され、エゥーゴ編ではプレイヤーの分身となる総大将ポジションをブレックスが務めています。

 ほとんどのルートでは、最終的にシャアがネオ・ジオンの総帥となって蜂起し、最後の敵として立ちはだかるのですが、エゥーゴ編では条件を満たすことでクワトロが離脱せず、最後までブレックスと共に戦い平和を勝ち取るエンディングが用意されています。これはまさに「ブレックスが生きていたらシャアは反乱を起こさなかったのでは?」というIFを形にしたもので、シャアにとってもこれ以上ないほどのハッピーエンドです。

 原作を再現した展開も用意されており、グリプス戦役中盤に起こる連邦議会に出席するかどうかの選択肢が発生し、出席する方を選ぶと、原作と同様にティターンズの刺客に暗殺されてしまいます。ブレックスはプレイヤーの分身でもあるので、これが起きると即座にゲームオーバー(特別敗北扱い)になるという、『ガンダム』の事前知識なしにプレイしていたら、かなり初見殺しになりそうなイベントも用意されていました。

 こういった、メインキャラクターではないものの、独特の存在感を持っているキャラクターの存在も『ガンダム』シリーズの魅力の一つ。個人的には『ギレンの野望』シリーズの新作も、そろそろ遊びたいところですね……。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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