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小説『魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~』天都ダム先生インタビュー。ヒロインの“魔物使い”という設定が生まれたきっかけとは?【DREノベルス】

文:電撃オンライン

公開日時:

 ライトノベルレーベル・DREノベルスより、12月10日に発売された『魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~』。その魅力を作者・天都ダム先生へのメールインタビューを通してお届けします。

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『魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~』ってどんな作品?


 本作は、第2回ドリコムメディア大賞の《大賞》受賞作。選考委員が満場一致で大賞に選出したという、超期待作となっています。

 かつて魔王が生み出した魔物たちを説き伏せ、従えたといわれる魔女・リングリーン。その末裔であるリーンも、同じく魔物を従わせる能力を持っていました。

 そんな彼女に命を助けられた、魔女狩りの異名を持つ冒険者ハクラは、護衛として一緒に旅をすることに。

 特別な力を持つリーンのところへ舞い込んでくるのは、どれも厄介な魔物が関わる事件ばかり。ところが、実はそうした事件を詳しく調べてみると、魔物だけではなく人間にも原因があって……?

 自信家でわがままで、だけどどこか放っておけない小悪魔な魔女・リーンとともに歩む、面倒で素敵な旅路が描かれます。

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 本作のPVやボイスドラマでは、リーン役を声優の石見舞菜香さん、ハクラ役を小林千晃さん、アオ役を大塚明夫さんが演じています。

 本作の雰囲気が味わえる素敵なボイスドラマになっていますので、こちらもぜひチェックしてみてください!

●PV:リーン編

●PV:ハクラ編

●ボイスドラマ:『魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~』

 そんな本作を書くにあたって、天都ダム先生がポイントにしている部分や、先生ご自身のこともうかがってみました。気になる方は、ぜひメールインタビューをご覧ください。

『魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~』は可愛いヒロインとひねくれた主人公のテンポのいい掛け合いを楽しんでもらいたい作品


――本作の執筆のきっかけを教えてください。

 もともと同人活動で定期的に小説を頒布していたのですが、前シリーズの作品が一区切りつき、次は何をしようか、と考えていました。

 自分が今まで作ってきた作品の中で“魔物使い”という職業はかなり大きな位置を占めており、これを主役にした物語を書いてみたい! と思って設定をこねくり回し、紆余曲折あって『魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~(以下、『魔物使いの娘』)』が生まれました。

――わがままで傍若無人な態度なのに、どこか可愛くて憎めない天邪鬼ヒロイン・リーン。「私の仕事は人と魔物のバランスを取ることです」と彼女は言いますが、“魔物使い”や“原初の魔女の末裔”の設定はどのように生まれたのですか?

 リーンは世界で唯一、あらゆる魔物を統べることができる“魔物使いの娘”です。

 「人間って、本当にわかんない」と冒頭から言い放つとおり、“この世界”における一般常識とは違う価値観を持ち、それ故に世間と相いれず、わがままで横暴で身勝手。

 だけどそんなマイナス点をふっとばすぐらい可愛くて、どこか憎めない……そんなキャラクターになっています。

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 “人間と魔物が争うファンタジーの世界で、唯一魔物を味方にできる存在”をヒロインにしよう、と思い立ち、まず「この世界における魔物とは?」「その魔物を仲間にできるとしたら、どんな生い立ちであれば成立するか?」と設定を順番に考えて、色々肉付けをしていったら“世界一すごい魔女の子孫”がしっくり来るな、ということで、今の形になりました。

――冒険者(人)ゆえにハクラは合理主義。でもリーンの無茶ぶりに付き合っている(付き合わされている)様子はとても“人”らしい印象でした。

 ハクラはこの世界における、ごくごく普通の価値観を有する冒険者です。

 なのでリーンのやることなすことすべてが非合理的に見えてしまい、いちいち怪訝そうな顔をします。

 “魔女”という存在をすごく憎んでいるため、可愛いヒロインに対して懐疑的な視線を送る、主人公にあるまじき男でもあります。

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 ですが実際のところ、ハクラは「冒険者は合理的であるべきだ」という常識に従って、「だから合理的であるように努めよう」とがんばってる若造なので、斜に構えて冷めてる感じに振る舞いますが、要所要所でぽろっと人のいいところが出てしまいます。

 そもそも最初の時点で、仲間を逃がすために囮になるようなやつなので、合理主義者には程遠いのですが……。

 リーンに振り回されながら、色々と変わっていくところも見どころだと思っています。

――可愛らしいスライム・アオが激渋おじボイスで話す、というギャップを愛おしく感じながら、お目付け役のアオとリーンの出会い、そして仲良くなるまでの過程が気になるところです。リーンの相棒にスライムを付けたのはどうしてですか?

 「やっぱり、魔物使いの最初の仲間はスライムであるべきだろう」という強い思想があったので、アオはプロットの一番最初から存在していました。

 作品の原型プロットでは“リーンとアオの2人旅”だったのですが、こねくり回すうちにハクラが生まれて、トリオになった、という感じです。

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 アオは世にも珍しい“しゃべるスライム”で、リーンの保護者兼お目付け役です。

 もともとリーンの故郷に暮らしていて、リーンが生まれた時から面倒を見ている、半分は父親のような存在です。

――“ヒドラ”、“双頭狼(オルトロス)”、“コボルド”や“リビングデッド”と多種多様な“魔物”が本作に登場しますが、登場させる魔物、そしてそこに紐づくストーリーはどのようにして考えているのでしょうか。

 ゲームや漫画、小説などをひっくり返して魔物をリストアップし、生態を考えてみて「こういう魔物がいたらこういうことが起きるんじゃないだろうか」と掘り下げて考えてみて、面白そうならテーマにしてみよう、という感じです。

 スライムがいわゆる初期メンバーであることを踏まえ、コボルドは大体の作品で“序盤に出てくる弱い魔物”扱いなので、物語の一番最初に持って来るにはちょうどよいのかな、と思って採用しました。

――第1巻の中で特に思い入れのあるシーンやエピソードはありますか?

 やはり、2人の出会いのシーンでしょうか。

 なにせ思考も常識も判断基準も違う2人ですので、「こいつらどうしたら仲良くなるんだ」と頭を抱えながらこねくり回して四苦八苦してようやく一緒に旅をするようになった気がします。

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――本作の魅力やおすすめポイントを教えてください。

 可愛いヒロインとひねくれた主人公のテンポのいい掛け合いと、「この2人がこれからどんなトラブルに巻き込まれるんだろう」というワクワク感、でしょうか。

――本作を書くうえで悩んだところはどこですか?

 リーンとハクラが一緒にいると、無限に楽しいおしゃべりを続けてしまい、話が進まなくなることがあります。

 不思議なことに表面上は言い争ってるほうが会話は弾むのですが、本筋に関わらないので軌道修正することが多いです。真面目にやってほしい。

――“魔物”と“人”がたがう世界、どちらに非があるのか、問題はどこから生じているのか。もの悲しさ、そして不穏な謎を残したまま物語は2巻に続きます。次巻の内容はどんなストーリーになるのか教えてください。

 レストンが滅んだのは偶然なのか? それとも何者かの悪意によるものなのか?

 暗い雰囲気で終わってしまった1巻の“答え合わせ”となるようなストーリーです。

 合理的な冒険者としてではなく、“魔女狩り”の側面を強く見せるハクラと、それに対するリーンの関わり方は、『魔物使いの娘』以外ではできないお話になるかと思います。

 もちろん、新たなキャラクターたちも登場しますので、世界観の広がりを楽しんでもらえれば幸いです。

――どんな人に本作を読んでほしいと思いますか?

 男女のバディが好きな方、ファンタジーの魔物が好きな方、「あぁー! なるほどそういうことか!」と膝を打ちたい方。

 そしてなにより可愛くて滅茶苦茶なヒロインに振り回される、苦労人の主人公が見たい方には、楽しんでいただけると思います。

 嘘を吐きました。

 皆に読んでほしいです。よろしくお願いします。

――小説を書く際に、特にこだわっている点はありますか?

 それがご都合主義のハッピーエンドでも、目を覆うようなバッドエンドでも、読んだ人が“納得”できるだけのものを積み重ねた物語なら、それは作品が出した答えとして受け入れてもらえるのではないかな、と思っています。

 なので、“納得”してもらえる物語作りに勤しんでいます。してもらえてるといいなあ。

――最近熱中しているものはありますか?

 あと2日後に締切が迫った原稿です。

 もう君のことしか考えられないよ……。

――最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。

 編集さんの考えてくれたキャッチコピーが好きなので、引用をもって締めさせていただこうかと思います。

 
“伝説の魔女”と共に歩む、面倒で素敵な旅路へようこそ――

 これを機にぜひ、2人と1匹の面倒だけど楽しい旅路に付き合っていただけましたら幸いです。

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