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『ガンダム ジークアクス』8話感想:随分お丸くなられて……と思いきや、やっぱりキシリア様はキシリア様だった。ニャアンに衝撃の展開が降りかかる一方で…?(ネタバレあり)

文:電撃オンライン

公開日時:

 放送中のTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム ジークアクス)』第8話“月に墜(堕)ちる”の感想記事をお届けします。

[IMAGE]【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ガンダム ジークアクス』8話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。
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 第8話は、2話の続きとなる一年戦争パート……かと思いきや、いろいろなサプライズが満載の回でした。

 まずAパートは、予告編の内容通り、2話ではシャリアのモノローグで語られただけだった連邦のソロモン落としと、シャアがゼクノヴァを引き起こすまでに何があったのかが改めて描かれました。

 冒頭からいきなり登場したのは、ソロモン防衛戦でドズルが搭乗していた大型モビルアーマー“ビグ・ザム”。

 『機動戦士ガンダム』におけるドズルの有名なセリフとして、「ビグ・ザムが量産の暁には、連邦などあっという間に叩いて見せるわ!」というものがあり、実際ビグ・ザムが大量にいたら戦況は変わっていたかもしれないと思えるほど、連邦の艦隊の相手に鬼神のごとき強さを見せていました。


 『ジークアクス』世界では、ソロモン陥落まではほぼ『機動戦士ガンダム』と同じ流れに沿いつつも、ジオンがかなり余力を残していたという違いがあったようで、量産体制が整ったビグ・ザムの大量投入により、連邦の宇宙における要所であったルナツーが陥落。

 ジオンから取り返したソロモンはまだ健在ではあったものの、シャア率いるニュータイプ部隊との交戦で戦力が激減しており、ルナツーが落ちて増援を送るのも難しくなったので、どのみち陥落は時間の問題になっていたんでしょう。

 とはいえ、『機動戦士ガンダム』では、堅物ではあるものの良識を持ち合わせた軍人でもあったワッケインが、ソロモン落としという人類史に残る暴挙にあたる作戦の指揮をとっているのはかなり驚きでした。

 個人的には、あくまでワッケインは現場指揮官で、連邦の上層部が決定した作戦に従っている……と解釈して納得してはいるんですけど、『ジークアクス』世界でのレビルはどうなっているのかは気になるところです。

 そんな連邦のソロモン落としを阻止するべく白羽の矢が立ったのが、シャア率いるソドンなわけですが、ここでシャアがやってくれました。

 シャアといえば、ザビ家への復讐が全ての行動の根底にあるキャラクターです。

 ただ『ジークアクス』ではガルマも戦死しておらず、きな臭い動きも見せていないので、根本の部分からして別人なのかと思いかけていたところに「あ、やっぱりいつものシャアだった」と分かって、逆に安心しましたね。

 連邦の作戦を利用してジオンにダメージを与えようと考えたまでは良かったものの、ソロモンの要塞内で、シャアにとっては「まさか……」と思える人物が駆る軽キャノンと遭遇します。


 セイラが乗る軽キャノン、色合いがおなじみのトリコロールカラーで、ドズルのビグ・ザムを撃破したと語られていたことからも、『機動戦士ガンダム』で主人公・アムロとガンダムが果たしていた役割の一部を担っていそうなんですよね。

 もっとも、黒い三連星やガルマは生きているのでまったく同じ経緯をなぞったわけではないと思いますが、セイラがどういった戦いを経験したのかはかなり気になります。

 セイラはニュータイプとしての素質を持ちながらも、早めにパイロットを辞めてしまったので、実際のところはどこまでの才能があったか不透明なところがありましたが、実は少しの掛け違いがあれば連邦屈指のエースパイロットになっていたというのには納得感がありました。

 しかし、結局シャアにとってまったく意図しない形でゼクノヴァが起きたことで、シャアと赤いガンダムは消失し、ソロモン落としも未然に防がれました。

 やはり気になるのは、シャリアが聞いたシャアの最後の言葉と、ゼクノヴァが起きるのと共に、グラナダから消失したとされる“シャロンの薔薇”と呼ばれる何らかの存在。

 この“シャロンの薔薇”と呼ばれる何かが、『ジークアクス』において非常に重要な役割を担っている可能性は高いんじゃないかと思います。

格納庫のジフレドの構図から感じる『エヴァ』のセルフオマージュ味【ガンダム ジークアクス感想】

 そして後半からは、7話でキシリア派に保護された後のニャアンのエピソードが描かれました。

 予告を見た時は、正直一年戦争パートだけで終わってしまうのかと思っていたので、気になっていたところの続きを見ることができたのは嬉しかったです。

 まず衝撃だったのが、ニャアンにアップルパイを振る舞うキシリアの姿(作るだけではなく、ニャアンを座らせたまま配膳までやっています)。

 キシリアといえば、『機動戦士ガンダム』ではギレンを殺害、『THE ORIGIN』ではキャスバルの暗殺を図るなど、かなり苛烈なキャラクターのイメージが強かったので、こういう日常的なシーンが描かれたのは新鮮でした。


 ニャアンに「恨みは晴らしてしまえば終わり」と話していたのも印象的で、『機動戦士ガンダム』では、キシリアはその恨みが原因で命を落としていることを考えると、なかなか皮肉が効いています。

 キシリアもまたゼクノヴァを起こそうとしていることも判明したものの、キシリアがゼクノヴァを追い求める理由はまだちょっと見えないんですよね。

 ゼクノヴァについては、目に見えて起こっている現象以外に、我々がまだ知らない何らかの秘密が隠されている気がします。

 さらにジークアクスの2号機“ジフレド”も登場したかと思いきや、早くもニャアンがパイロットを務めることに。

 このジフレド、紫のカラーリングとかもそれっぽいんですが、肩のあたりに足場があって、そこから機体を見上げている格納庫の構図には『エヴァ』のセルフオマージュも意識されているのかなと。ニャアンが3人目のパイロットなのも、“サードチルドレン”を連想させます。


 ただこのジフレド、パイロットが次々と死んでいる曰くつきの機体。

 最初は負荷が掛かりすぎてパイロットが耐えられなくなる……という機体側の問題かと思っていたんですが、ギレン派による暗殺とエグザべたちは考えている様子。

 その推測は正しく、そのことをエグザべと話しあっていた同期のミゲルが暗殺の犯人でした。

 ニャアンは、途中でミゲルが犯人であることに気づいていたようですが、おそらくミゲルから自分に対する悪意を感じ取ったんだろうなと。

 ニャアンが人の悪意的なものを感じている場面はこれまでにもありましたし、8話でもアップルパイを振る舞ってくれたキシリアに対し、悪意がないことを感じているシーンが描かれていて、ミゲルとの対比になっています。

 どのタイミングで毒入りケーキに気づいたかのは判断が難しいですが、仮に最初からミゲルの悪意を感じていたと考えると、「私、殺されちゃいますか?」というセリフも、「自分を殺すつもりなのか」とミゲルに問い詰めているようにも捉えられます。


 また今回気になったのは、ミゲルが同僚を殺すという凶行に走った動機である、ジフレドが作られた理由と、パイロットが“ディアブロ”という存在になるという2点。

 “ディアブロ”については少しですが推測はできていて、7話ラストで追い詰められたマチュが暴走しかけるようなシーンがあったのも、その片鱗なのかなと。

 ニャアンが黒い三連星と戦った時にやたらと残虐な戦い方をしていたのも、サイコミュから何らかの影響を受けてああなっていた可能性も出てきました。

 ただ、ミゲルが狙ったのはジークアクスではなくジフレドで、ジフレドは“オメガと並ぶ特殊なサイコミュを搭載している”(つまりは=オメガ・サイコミュではない)と記載されているので、ジークアクス以上にヤバい代物を搭載している可能性がありそうです。

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 そんなミゲルを焚き付けたのは、実はギレン派のスパイだったキシリアの側近・アサーヴだったことも判明。

 最初のニャアンのシーンがあったので、キシリアがかなり良識のある大人に見えてきていたんですが、最後にアサーヴが発した、ジオンにも人類のためにもキシリアの計画を止めないといけないという言葉には信憑性がありました(キシリアもその危険性は認めていましたし)。

 ジフレドとは別に“イオ・マグヌッソ”と呼ばれる何かの建設が進められていることも分かり、サイド6上層部との話し合いの中で出ていた、ソーラ・レイの計画とも何らかの繋がりがある可能性があります。

 ティルザ・レオーニとシロウズという謎の二人の人物も登場しましたが、とくに気になるのがシロウズと呼ばれていた人物ですよね。

 明らかに前髪で正体を隠しているような節があり、作中で名前まで出ているのにエンディングのスタッフロールではキャスト名が伏せられているのもあまりにも意味深です。

 もしかすると、ゼクノヴァでいなくなったと思われていたシャアが、実は生きていたのでは…という可能性まで出てきました。

 そして最後の最後で、マチュがやってくれた感……!

 ジークアクスが地球を目指してソドンから脱出していて、すでに大気圏突入までしているという展開の速さには思わず笑ってしまいました。

 今回描かれたのはニャアン側の視点で、マチュ側の視点は9話で描かれることになると思われますが、4話あたりからずっとマチュとしては煮えきらない展開が続いていたので、ようやくスカッとしそうな展開が見れそうで非常に楽しみです。

 また、8話にはAmazonプライムビデオでの配信版とTV放送版で違いがあった模様。この記事ではそこまでは触れませんが、気になる人は配信でチェックしてみてくださいね!


 ギレンに関係したクローン強化人間というと、ギレン・ザビの遺伝子を使って作られた試験管ベビーという説のあるグレミー・トトや、そのグレミーが生み出したプルシリーズといった『機動戦士ZZガンダム』に登場したキャラクターが思い浮かびます。

 ちょっと前なら「さすがにそんな先の時代のネタは使わないだろう」と考えていたであろうところですが、バスク・オムやサイコ・ガンダムがいろいろ時代をすっ飛ばして登場した以上、ここまで来たら『ZZ』の要素が混ざってきてもおかしくはないよな……と思います。

 とにかく情報量が凄まじいことになっていた8話のBパート。マチュに起こったこと、ジフレドやイオ・マグヌッソに隠された秘密、シロウズと呼ばれた人物の正体と、続きが気になる部分があまりにも多すぎます。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。


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