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『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』3話感想。声が出なくなってしまった卯月の復活劇に目頭が熱くなる。ラストにはついにあの人物が!?(ネタバレあり)

文:米澤崇史

公開日時:

 アニメ『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』3話“アイドルソング”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』3話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。[IMAGE]

お台場で咲太が見ていたのは、もしやユニコーンガンダム…?【青春ブタ野郎】


 思春期症候群の影響で空気が読めるようになった広川卯月に関するエピソードのクライマックスが描かれた第3話。

 まず驚いたのが、麻衣が免許をとり、車で咲太を迎えに来ていたところ。確かに大学生になって、麻衣は経済力もあるので車もいきなり買えてしまうのも納得ですが、こっそり免許をとって麻衣を驚かせようと思っていたからショックを受けた咲太の気持ち、男として非常によく分かります。

 ただ、それも麻衣が咲太と同じことを考えていたからこそで、本当にお似合いすぎるカップルだなと。

 免許をいつとったのかの話になった時、「咲太がかまってくれなかったから」とさらっと言えるのが麻衣らしくて、こういう普段のクールなところとのギャップが本当にかわいいんですよね。TVシリーズ1期での「咲太が思ってるより、私、咲太のこと好きよ」というアツアツな名言を思い出します。


 TVシリーズ1期から登場していたスイートバレットですが、ライブシーンが本格的に描かれたのは今回が初めてじゃないでしょうか。

 ライブシーンは大きな動きがあるわけではないので一見地味にも見えるのですが、よく見るとめちゃくちゃ細かく4人の動作を表現していて、「さすがCloverWorks……」となっていました。とくにちょっとした手足の動きのアニメーションがすごくて、かなりの枚数を使っているんじゃないかと思います。

 咲太と麻衣が関係者用の受付から入っていたり、ライブ会場独特のマイクを通した音の反響の感じとか、細かいところまでリアリティを追求しているのもこだわりを感じます。

 あと、本編の内容とはまったく関係ないのですが、会場のZeppダイバーシティってその名の通りお台場にあるんですが(自分も行ったことがあります)、ユニコーンガンダム立像のすぐ近くなんですよね。

 なので、どこかにユニコーンガンダムが映ってないか期待してよくよく見てみると……会場に着く直前、咲太と麻衣が公園を歩きながら会話しているシーンで、咲太が明らかに前ではなく“何か”に視線を向けています。後ろからのシルエットしか見えないのですが、これがガンダムのアンテナっぽい形状をしていて、おそらくはそういうことだろうなと、ガンダムファンとしてめっちゃテンションが上がりました。

 咲太はお台場に初めて来たらしいので、そりゃあついついガン見しちゃうよな……と納得していました(あの存在感はすごいですから)。

夢を目指す誰もが抱える“諦め”の気持ちとの戦い【青春ブタ野郎】


 その後、麻衣が運転をしながらのどかの話を聞くシーンも印象的でした。

 まず高校生編までの『青ブタ』でも、車内での会話シーンって結構出てきたんですが、当たり前のことながら、その時は麻衣のマネージャーなど誰かしらの大人が運転席に座っていたんですよね。

 今回はその大人がいなくなり、その席に麻衣が座っているというのが、大人になったんだな……ということを改めて実感します。

 のどかの話から、卯月がスイートバレットにとっての精神的支柱だったんだということも分かりました。

 思春期症候群がきっかけではあるものの、ポジティブ思考の卯月にも、やっぱり心のどこかで不安やストレスみたいなものが蓄積されていて、それが表出したのが今回の出来事だったんだろうなと。

 空気を読めるようになったことを卯月自身は悪いことだと思ってなかったようですし、自分が空気を読めないということを、負い目に感じていた面もあったのかもしれません。


 そういう“タメ”の展開からの、卯月の復活シーンはちょっと涙が出そうになりましたね。

 声が出なくなったのは途中から演技で、それを咲太がとっくに見抜いていたのには驚きましたが、周囲が何を考えているか分かるようになったことで、「どうせ武道館になんて行けない」という諦めの気持ちが大きくなってしまった卯月の心境には共感できました。

 でも、その「叶うわけない」という気持ちは誰もが抱えていて、それでも仲間や夢のために皆頑張り続けている。今回で描かれたのは、アイドルに限った話ではなく、一度でも夢を追いかけたことがある人間なら誰もに刺さるテーマなんじゃないかなと。


 その上で卯月を復活させる言葉が「今こそ空気を読めよ」なのも最高に洒落が効いていて、実に咲太らしい励まし方でした。視聴者を含め、ここで卯月の登場を誰もが期待している場面でしたからね。

 戻ってきた卯月に対して、のどかたちスイートバレットの面々が、そうなるのが分かっていたかのように即座にステージに引き上げてライブを続けるのも、互いの信頼関係の深さみたいなのを感じられて尊かった。

 卯月の声が出なくなったライブでも、その場では何事もなかったかのような素振りでパフォーマンスをやりきっていましたし、やっぱり皆プロなんだなと改めて思いました。

 しかし、ラストに卯月があっさり大学を辞める決断をしたのは驚きです。仕事をしながら受験勉強をするのは、かなり大変だったはずですからね……。

 退学を決めた一番の理由は、ソロデビューもしてアイドルとして本気で武道館を目指す以上、大学に割く時間がなくなったことだと思いますが、大学に入ったのには空気の読めない自分を変えるという目的もあり、必ずしもそうしなくてもいいと気づいたからなのかなと。

 最後には周囲からジロジロ見られていたにも関わらず、大声で手を振って咲太に別れの挨拶をしていたあたり、空気の読めない自分という存在を受け入れて、前に進むことを決めたのでしょう。


 そしてラストには、今回のタイトルにもなっているサンタクロースこと霧島透子が登場。空気を読めるように卯月を変えた犯人であることを匂わせるような発言も飛び出しており、非常に次週が気になります。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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