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アイデンティティを半身不随で失い、自暴自棄になった女性の慟哭【ぎるぐる GiLGuL名言集:水浦 楓】

文:カワチ

公開日時:

 Skeleton Crew Studioが2025年6月19日にSteamで発売し、待望のNintendo Switch版が10月23日に発売されたアドベンチャーゲーム『ぎるぐる GiLGuL』。

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 Production Exabilitiesが開発する本作は、生と死のあいだに存在する世界“間世(はざまよ)”に迷い込んだ主人公の三津真央(みつ まお)が、現世に戻る旅の途中で、間世で死を望む者たちと出会い交流していくアドベンチャーになっています。

 電撃オンラインでは本作に登場するキャラクターたちの名言集をお届け。三津真央と“死”を望んだ彼女たちが生きるとは何かを問いかける“救い”の物語に深く迫っていきます。

 第5回は、病によって才能を奪われた女性の水浦 楓(みずうら かえで)を紹介していきます。

[IMAGE]※本記事はSkeleton Crew Studioの提供でお送りします。※本記事には本編のネタバレになる記述が含まれますので、ご注意ください。

水浦 楓(声優:田中有紀)とはどういう女性なのか?【ぎるぐる GiLGuL】

病に才能を奪われた女、水浦 楓

 生と死の間に存在する宙ぶらりんな世界、間世(はざまよ)のなかで主人公の真央が美玖、友里愛の次に出会うキャラクターが今回、紹介する水浦 楓です。

 楓との出会いのシーンでまともな人物であるという印象を真央たちに抱かせますが、ともに旅を続けるなかで彼女自身を襲った理不尽な不幸と、彼女が犯した罪が明らかになっていきます。

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 ここまで紹介してきた美玖や友里愛はいじめや虐待などがテーマとなっており、筆者はある程度はどういうものか想像することができました。

 しかし、この楓というキャラクターは、絵の才能を持っている天才であるものの、病気によって絵が描けなくなってしまったという人物。そのため彼女の苦悩については、ほかのキャラクターよりも共感するのが難しいと感じました。

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 美玖や友里愛に関しては生きるためにその道を選ぶしかなかった人たちですが、楓に関してはそうではありません。楓にとって絵を描くものがどれくらい大事なものだったのかは、「自分がアイデンティティとしているものを失ってしまったらどうするんだろう?」と想像するしかありません。

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 その後に犯してしまう罪の重さも含めて彼女のことを受け入れることができるか、ユーザーの皆さんの意見もわかれそうです。ぜひゲームをプレイして自分はどう感じたか考えてみてほしいですね。

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 楓について詳しく解説すると、芸術好きな両親の子どもとして生まれ、楓が絵を描くことも応援してくれていました。高校では複数の賞を獲得、国立の芸術大学にも入学。大学を卒業後にも個展を開いたり、展覧会で賞をもらったりしていました。

 一般的に芸術だけで食べていくのは難しいと言われていますが、楓は自分のアトリエを手に入れて夢を仕事にすることができました。それがどれくらい大変で、どれくらいすごいことか。

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 ただ、仕事に無中になってしまうなかで倒れてしまい、病院に搬送されます。命に別状はなかったものの、右半身が不随に。利き手が動かず、思うように絵が描けなくなってしまいます……。

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 リハビリを頑張ったり、利き手ではないほうの手で描いたりするのですが、以前のような繊細な絵の表現ができなくなり、次第にストレスを抱え込むように。

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 その逃げ口として、楓はアルコールに溺れていきました……。そんなある時、お酒を飲んだあと絵が上手く描けたと錯覚したことから、さらにアルコールを摂取するようになっていきます。お酒の飲み過ぎで認知が歪んでいたのか、それとも自分が絵が描けないことを認めたくなかったのか……。このあたりは読んでいて「うわあ……」となってしまった部分でもあります。

 楓自身は類まれな才能がありながらも、慢心するようなことはない女性。おごりなどもなく、自分のことだけではなく後輩に気をかけたりと人間もできています。それだけに彼女が崩壊していく姿は見ていて悲しかったです。

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 そして、彼女は取り返しのつかない交通事故を起こしてしまい……。ゲームをプレイするあなたは楓を許すことができるのか、ぜひゲームをプレイして考えてみてほしいです。

 自分の年齢や生活環境によっても変わってくると思うので、いちど結論が出たあとでも時間を置いてもう1回プレイしてみるのもおすすめです。

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「すべて、無くなってしまえば良いんだ!」(水浦 楓)


 筆者がいちばん心に残っているシーンは、楓がうまく絵が描けずに自暴自棄になっていく場面です。飲酒運転で事故を起こしたあとも彼女は絵を描くことしかできず、それでも自分の思い描くような絵が描けず、さらに苦悩していく彼女は壮絶でした。

 記事のなかで彼女が失ったものが、彼女にとってどれくらいの重さを持つものなのかは想像する他ないと書きましたが、楓を演じている田中有紀さんの迫真の芝居によって彼女が感じている葛藤や苦悩、失ったものがいかに重かったのかがダイレクトに伝わってきます。

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 それでも、これまで当然のようにできていたことができなくなるツラさ、みじめさはなんとなくわかります。それが自分の生きがいだったものであればなおさらです。

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 完成した絵に納得いかず、しかし、そんな失敗した絵を握りつぶすこともできない自分の腕に悪態をつく楓の姿は見ていてツラかったです。

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 『ぎるぐる GiLGuL』は心が引き裂かれそうになるほど重いシーンも多い作品ですが、だからこそ彼女たちの行く末を見守りたくなります。ぜひ実際にプレイして彼女たちの人生を見守ってみてほしいです。

次回は誰よりも“欲”の強い少女、鬼首 姫奈の名言をお届け!


 次回は誰よりも“欲”の強い少女、鬼首 姫奈の名言をお届けします。ここまで紹介したキャラクターたちは不幸な目に遭う人物でしたが、姫奈に関しては少し立ち位置の異なるキャラクターになっています。ぜひ引き続き注目してみてくださいね。

生と死の狭間の世界で苦悩する美少女たちを描く怪作『ぎるぐる GiLGuL』を徹底紹介!

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