三つ子の魂百までと言われますが、幼少期に限らず、ゲームを遊んだ思い出は脳に深く刻まれるもの。
何年、何十年たっても、「なんでオレ、こんなこと覚えてるんだろ…」と愕然とするような記憶が残りがちでして。
何年、何十年たっても、「なんでオレ、こんなこと覚えてるんだろ…」と愕然とするような記憶が残りがちでして。
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そんな脳のメモリ(記憶・容量)を無駄づかいしている例を語ります! 今回は1996年(平成8年)7月5日にセガサターンで発売された『ナイツ』こと『NiGHTS into Dreams...』(以下、NiGHTS)を語ります。
1996年に登場してから29年。今なお語り継がれる『NiGHTS』とは?
『NiGHTS』は、夢の中を舞台に少年少女の成長を描いたジュブナイル的なストーリーのゲーム。空を自由に舞う楽しさを追求した爽快なシステムと、『Dreams Dreams』に代表される幻想的なゲーム音楽の魅力が重なり、今もなお根強い人気を誇っています。ちなみにナイツとは主人公の名前ですが、夢や夜(night)といったゲーム内のモチーフとも重なる部分が多いです。
1996年にセガサターンで『NiGHTS』が発売して以降、正式に続編として発表されたのは2007年発売のWiiソフト『NiGHTS ~星降る夜の物語~』のみ(番外編の『クリスマスナイツ』もありますが、こちらはあくまで『NiGHTS』の体験版)。29年という歴史と人気の高さに比べて、意外と寡作なゲームなのです。
それでも名作ゲームの話題になると、いまだに名前が挙がることも多い『NiGHTS』。「ゲームはプレイしたことがないけれど、名前は知っている」という人も多いのではないでしょうか。
“BGMもっと聞きたい問題”。ゲームオーバーと音楽への欲求の間で悶える
『NiGHTS』のゲーム音楽について何よりも素晴らしいと思うのは、1996年時点でシームレスなインタラクティブミュージックを実現していたことです。
戦闘シーンやドラマパートなど、場面が変わるのに合わせて音楽を切り替える演出は既に多くのゲームに取り入れられていましたが、現代の『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』のように進行状況に合わせて音楽が止まることなく滑らかに展開されるゲームは、当時はまだそれほど多くありませんでした。
『NiGHTS』のステージBGMが変化する要因は、ステージ道中に登場するマスコットキャラ"ナイトピアン”の数。各ステージごとに4つほど用意されたステージBGMのアレンジが、道中に誕生させたナイトピアンの数に応じて、シームレスに展開されていくのです。
シームレスな音楽の展開を実現する方法はいくつかありますが、『NiGHTS』においてそれらを実現するために使われていたのは、音楽と音楽をつなぐ“ブリッジ”と呼ばれるパート。一瞬音を消して別アレンジの音楽へ切り替えるのではなく、このブリッジパートを挟むことで音楽が次第に変化していき、『NiGHTS』への没頭感を失わせないという工夫がなされていました。
“夢の楽しさと突拍子のなさ”が表現されたメインパートに比べると、ブリッジパートから感じるのは、次がどうなるかというワクワク感と浮遊感。この音楽の緩急が『NiGHTS』のゲーム体験を一段上に押し上げていたと感じています。
プレイ当時は3歳か4歳で、コントローラーがようやく握れるようになったぐらいの年齢。細かいシステムは何一つ分かりませんでしたが、それでも“音楽が変わっている”ことだけには気付き、『NiGHTS』のBGMには不思議な魅力を感じていたのでした。
と、こんな風にBGMを愛でていると、自然と生まれてくるのが「この曲をずっと聞いていたい」という欲求。BGMを聞きたいあまり、ゲームをつけたまま放置する……よくある話ではないでしょうか?
例に漏れず私も同じことをしたのですが、そこでネックとなるのが“ステージの制限時間”。『NiGHTS』では一定の時間を過ぎると空を飛べる状態が解除されてしまい、地面を歩くことしかできなくなります。夢の中という設定だからか操作も一癖あり、全く思うように進めません。そして追い打ちをかけるように、巨大な目覚まし時計が大音量のアラームを鳴らしながら追いかけてくるのです。これが割とトラウマもの。
BGMを楽しみたい。でも時計との鬼ごっこは怖い。そんな相反する感情の間で揺れ動きながら何度も捕まり、そして何度も遊んだ記憶だけが、今でも鮮明に残っています。思えば、音楽への欲求とトラウマの間で揺れつつも『NiGHTS』を周回したおかげで、ゲーム音楽を“ゲームのBGM”ではなく“音楽”として聴く意識が芽生えたのかもしれません。
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そんな自我を芽生えさせた『NiGHTS』も、2026年には30周年を迎えます。そろそろオケコンとか、新作とか……またいつか夢の続きを見られる日が来ればいいなと思う所存です。