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『オクトラ0』はただの移植作ではない? ストーリーの根幹を改編するという新たな挑戦【ストーリーインタビュー前編:オクトパストラベラー0】

文:タダツグ

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 スクウェア・エニックスの人気シリーズ最新作『オクトパストラベラー0』の発売日である12月4日が間近に迫ってきました。今回は、プロデューサーの鈴木裕人氏とシナリオライターの普津澤画乃新氏にインタビューを実施。スマートフォン用ゲーム『オクトパストラベラー 大陸の覇者』をベースにしつつ、コンシューマタイトルとして新たに作り直された本作の開発秘話や、シナリオ面での新たな挑戦について語っていただきます。

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 前編となる今回は、開発がスタートした経緯やシナリオの変更部分についておうかがいしました。まだ発売前ということで核心に迫るネタバレはありませんが、ベースとなった『オクトパストラベラー 大陸の覇者』のストーリーに関して、いくつか踏み込んだ記述がございます。最大限の考慮はしておりますが、少しのネタバレでも気になるという方はご注意ください。

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▲プロデューサーの鈴木裕人氏(写真右)とシナリオライターの普津澤画乃新氏(写真左)。

いよいよ発売日が迫ってきた『オクトパストラベラー0』、その開発経緯とは?


――いよいよ『オクトパストラベラー0(以下、オクトラ0)』の発売日が迫ってきました。まずはお2人の現在のお気持ちをお聞かせください。

鈴木裕人氏(以下、鈴木)
ようやく本作を皆さんにお披露目できる……そんな気持ちが大きいです。本作のベースとなった『オクトパストラベラー 大陸の覇者(以下、大陸の覇者)』から考えると、約8年……満を持してのリリースには格別の想いがありますね。

普津澤画乃新氏(以下、普津澤)
『大陸の覇者』は僕がスマートフォンゲーム制作に携わった初のタイトルということもあり、思い入れが強いです。そんな作品が時を経て、コンシューマーゲームとして生まれ変わるというのは、シナリオライターとして子どもが生まれ変わるような奇妙な感動があります。

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──今日はそんなお2人に、おもに物語や世界観についてお聞きしていければと思います。まずは本作のメインストーリーですが、これは『大陸の覇者』を踏襲しているという認識でよろしいですか?

普津澤
大筋はそうなります。ただ、僕としても新たに描きたかったものがありまして……。ありがたいことに、この機会に再挑戦させていただきました。大陸の覇者の執筆中は自らを闇に追い込みながらひたすら走っていました。そこから時間を置いてもう一度物語と向き合い、本作のために新たに描いた物語が『大陸の覇者』のプレイヤーさんにどのように受け止められるのか、ドキドキしています。

――開発期間はどれくらいだったのでしょう?

鈴木
実は……新作をゼロから作るのとあまり大差ないぐらいの時間がかかっています。『大陸の覇者』というベースがあるからこそ難しい、という部分もたくさんありまして……。一度修正してみたものの、触った感触がピンとこなくてまた元の形に戻す……そんな試行錯誤を繰り返して、結果的に時間がかかりました。本当はもうちょっと早くリリースするつもりだったのですが(笑)。とはいえ、時間をかけた分だけ、しっかりとしたクオリティに仕上げられたと思っています。

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――本作の開発経緯をお聞きしてもよろしいですか?

鈴木
そもそも本作のベースとなっている『大陸の覇者』は、『オクトパストラベラー』のコンシューマらしいRPG体験をスマートフォンでも届けたいと思って生まれたタイトルです。しかし、サービスが続いていくなかで、やはりというか、コンシューマでも本作を遊びたいという声を多くいただくようになりまして。アンケートを取らせてもらった結果、8割以上のプレイヤーからコンシューマ化を希望されていて、そういった背景も合ってプロジェクトをスタートさせることができました。

──つまり『大陸の覇者』のプレイヤーさんたちの熱量が大きな原動力になっていると?

鈴木
おっしゃるとおりです。声をお寄せいただいた皆さんには本当に感謝しかありません。ただ、200人以上のキャラクターが登場しているタイトルをそのままコンシューマ化するのは難しいですし、そもそもベタ移植を望まれているかというと、それは少し違うであろうということで……。今回、新たに『オクトラ0』としてリブートさせる形になりました。新規プレイヤーはもちろん、『大陸の覇者』の既存プレイヤーにも新鮮な気持ちでプレイしていただけるよう、様々なコンテンツや物語を盛り込んで、ゲーム自体も再構築しています。

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一度作り上げた物語を再構築──普津澤氏の思いが新たな可能性へとつながった


――自分はリリース当初からの『大陸の覇者』プレイヤーということもあり、とくにシナリオ面が気になっていて。こちらはどのような変更点が盛り込まれているのでしょうか?

鈴木
まず、今回の物語には『大陸の覇者』でいうところのサイドオルステラ編の物語がしっかり楽しめるようになっています。そこに“復興編”として新たな登場人物によるまったく新しい物語が絡んでくるので、従来とは異なる体験ができる形ですね。

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──サイドオルステラ編の物語は、ほぼ『大陸の覇者』を踏襲している形ですか?

普津澤
基本的にはそうなんですが、まったく同じというわけではありません。僕としては心血を注いで描いた物語であり、『大陸の覇者』の制作段階で一度しっかり仕上げたつもりです。ただ、時間を置いて振り返ったときに、今の自分だからこそ描ける物語がある、とも考えて本作に取り組みました。

──かなり心惹かれるお話ですね。今の普津澤さんだからこそ描ける物語がなんらかの形で新たに描写されているのだとしたら、そこには大きく期待してしまいます。

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鈴木
僕個人の話ですが、前提情報がなければ楽しめない作品は苦手でして。『オクトパストラベラー0』は単体で独立した作品となっていますし、知らないからこそ楽しい部分も沢山ありますので、事前に何かを知っておく必要は一切ありません。ご安心ください。ただ、『大陸の覇者』のプレイヤーの方だからこそ気付ける違い、というものは色々とあると思います。

──『大陸の覇者』を体験済みの方も、未プレイという方でも安心ですね。

鈴木
ストーリーやキャラクターの掘り下げに関しては、『大陸の覇者』の良さを残しつつも新規作品として受け入れられるよう、木寺(※木寺康博氏。本作のディレクターを務める)も交えてしっかり議論しています。エンディングはもちろん、物語の始まり方も変わっているので、きっと驚いてもらえると思いますよ。

──『大陸の覇者』の雪山のオープニング……すごく印象深かったので、どう変わっているのか楽しみです。

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鈴木
詳細はまだ言えませんが、あのシーンは物語のなかで大事な意味を持つ部分ですよね。ただ、本作の主人公は自分自身なので、『大陸の覇者』と同じシチュエーションではありません。先ほどもお伝えしましたが、本作の物語は冒頭からして全然違う導入になっていて、そこから復讐の物語と復興の物語、2軸のストーリーが展開していく形となっています。

──察するに、復興の物語というのは滅ぼされたウィッシュベールを主人公たちが再興していくストーリーになるのかな、と。

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鈴木
はい。こちらの関連エピソードは完全新規の内容で、タウンビルドによってどんどん町が広がり、復興していくことになります。『大陸の覇者』に縦軸となる物語がもう1本追加されているような状態といえば、イメージしやすいかもしれませんね。町を滅ぼされた主人公が立ち上がる復興編の物語、そして3人のボスが起点となって描かれる復讐編の物語。これらが進めていくうちに融合したり、また分裂したりしながら、結末へ向けて進んでいく形となっています。

──期待が高まりますね。登場人物たちの行動や関係性によってどんどん物語が発展していくところは『大陸の覇者』と似ているというか、同じ流れを踏襲しているのでしょうか?

普津澤
残すべき部分はしっかり残しつつ、変えるべきところは容赦無く変えたところもあります。新鮮な気持ちでお話に触れられると思うので、どうかお楽しみに。

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プレイヤーが“創り上げる”という新たなコンセプト、その狙い

鈴木
ここまではお話の都合上『大陸の覇者』との共通点や変更点にばかりスポットが当たってしまいましたが。じつは本作には、コンシューマにおける『オクトラ』シリーズとしては目新しい試みも盛り込んでいるんですよ。

──具体的にはどういった試みでしょうか?

鈴木
最も大きなところでいえば、主人公が明確に設定されているところです。今までの『オクトパストラベラー』は個性的な8人の主人公が設定されており、それぞれが己の目的を果たすための旅路が描かれていく形でした。一方で『オクトラ0』の物語は、プレイヤー自身が主人公となります。そのため、キャラクタークリエイトもできますし、名前も好きにつけることもできる。これにより、物語への入り込み方も他作品とは少し違って感じられるのではないかとも思います。

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──なるほど! それを受けてか、キャッチコピーも過去2作とはちょっと変わっていますよね。

鈴木
はい。これまでは「旅立とう、君だけの物語へ―」というキャッチコピーとなっていましたが、本作では「旅立とう、君が創る物語へ――」に変えさせていただきました。タウンビルドひとつとってもそうですが、本作では“ゼロから自分で創りだす”ことに重きを置いています。

──プレイヤーが自分自身を表現できる幅が他のシリーズ作品より多そうだと思いました。

鈴木
今お話に出たタウンビルドにしても、自分のタウンに誰を住まわせるかでセリフや装飾など、ちょっとした変化が起こります。大筋が変わるわけではないのですが、ぜひ色々と試していただきたいです。

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──それは気になりますね! 物語はやはりダークな展開が多いのでしょうか?

普津澤
シリーズのなかでもこの『オクトラ0』が屈指というか、とことん重いストーリーが待っています。僕は初代『オクトパストラベラー』に登場する8人の主人公のうち、トレサ、アーフェン、プリムロゼの3人のストーリーを書きました。せっかく複数の主人公が選べるわけだから、キャラごとに違う味付けを楽しめるようにしたかったんです。そこで僕が意識的に、トレサをかなりライトに、プリムロゼをだいぶダークに寄せてテイストを書き分けたんですよ。

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──それぞれの物語に対するプレイヤーさんの反応はどうだったのでしょう?

普津澤
プレイヤーさんたちにはそのギャップも含めて楽しんでいただけたようですが、なかでもプリムロゼのダークで重たいストーリーが海外を含めてとくに喜んでいただけたようでした。

鈴木
僕もプリムロゼの物語はかなりお気に入りですね。

普津澤
それもあって、鈴木さんたちと『大陸の覇者』を作り上げていくにあたり「お話はとことんダークにしましょう」って方向に定まったんです。この『オクトラ0』にもそこは受け継がれています。本作が『オクトラ』シリーズ初プレイという方もいらっしゃるかと思いますが、お話のダークさにおいては「これが一番やばいよ!」とお伝えしておきたいです。

鈴木
復讐編は『大陸の覇者』の物語がベースということもあり、たしかに重たいのですが。そのぶん復興編はポジティブなストーリーになっていると思いますよ。故郷が滅ぼされるという導入はたしかに重めなのですが、それをどんどん復興させていくという前向きな物語が展開しますからね。

――ちなみに『大陸の覇者』には物語の核となるキャラクターが何人か存在しました。今回も彼らは登場し、そのうえで主人公のパーティに加わるメンバーもいるのでしょうか?

鈴木
そこはぜひ楽しみにしていてほしいですね。ただ、たとえば『大陸の覇者』で好評だったバトル演出などは、本作でもしっかり踏襲しているのでご安心ください。なかにはあっと驚くタイミングで……というキャラクターもいたりします。総じて演出は強めており、思い入れが強くなる形で調整していますのでご期待いただければと!

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――俄然、期待が高まりますよ。既出の情報で仲間キャラクターは総勢30人以上ということはお聞きしていますし、誰が仲間になるのかすごく楽しみです。

鈴木
『大陸の覇者』 のキャラクターはもちろん、初代『オクトパストラベラー』のキャラクターたちもたくさん登場します。これまで公開したPVの中でも、ニンテンドーダイレクトで公開されたPVにだけ含まれる内容があるので、そちらをご覧いただければ。もちろん『オクトラ0』から登場する新規キャラクターも多いので、ぜひ自分のお気に入りメンバーを集めてほしいです。本作では8人バトルが楽しめますし、“セレクトアビリティ”のシステムで好きなキャラクターに好きな技を装備させることも可能です。カスタマイズ性に富んだゲーム性なので、自分だけのパーティで旅をすることができますよ。

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――ちなみにストーリーが分岐するといった要素はあるのでしょうか?

鈴木
物語は同時展開しているものの、展開自体が分岐するようなことはあまりありません。ただ、先ほどのお話にもつながりますが、旅路に加わる仲間たちの選択にはちゃんとプレイヤーの意思が反映できるようになっています。例えばトレサなどは、初代『オクトパストラベラー』では“まだ旅に出たことがない“という設定のキャラクターでした。その設定を重視したいプレイヤーであれば、あえて彼女を旅に連れ出さない選択も選べるようになっています。

──なるほど! そもそも初代『オクトパストラベラー』や『オクトラII』自体も、誰かを仲間にするのか。それともしないで一人旅を貫くのかなど、選択はプレイヤーに委ねられていましたもんね。

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普津澤
はい。旅の過程や結末はプレイヤー自身に決めてもらいたいですし、初代『オクトパストラベラー』の時から、我々が「これが正史です」と断ずるものはないと考えています。自分じしんで物語を好きに紡いでほしいというか、選んでいただきたくて。

──もちろん8人すべてを仲間にして最後までクリアする人が多いと思いますけど、基本的にはそれも“自分が選んだ道”というスタンスですもんね。

普津澤
そのとおりです。初代『オクトパストラベラー』との整合性を取っていただくのも素敵ですし、あえて違う選択肢をとっていただいてもいいと思います。旅路は一つだけではない……みたいな。

鈴木
ここについては浅野(※浅野智也氏。『オクトパストラベラー』シリーズの総合プロデューサーであり、浅野チームをまとめる責任者でもある)としっかり話をしたのですが。『オクトパストラベラー』という作品は、TRPG(テーブルトークRPG)のように“プレイヤー自身がゲームを作っていく”という考え方が根底にあるんです。普津澤さんの言うとおり、プレイヤーの数だけ旅の物語が存在しています。それが“君だけの物語”であり、本作でいう“君が創る物語”でもあるのかな、と考えています。

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(後編へ続く)

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