野球という競技が普及し、それがプロスポーツになると、バットやグローブ、スパイクといった野球用具が進化していきました。同じように、eスポーツの発展がヘッドセット、キーボード、マウスなどの周辺機器の進化を強く後押ししている側面が見受けられます。
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ヘッドセットを一つ取っても、eスポーツスペックの製品はワイヤレス接続時の転送速度のみならず、全体の設計が人間工学に基づいています。音量調整のダイヤルも、その設計や設置箇所に創意工夫が見られます。
今回はRazerの『BlackShark V3 Pro』というヘッドセットを取り寄せてみました。この製品にも、より快適なゲーミングを実現させる様々な創意工夫が込められているようです。
「垂直方向の音場を拡張」というメーカーの主張
現代のヘッドセットの接続方法は多種多様です。長年のオーディオマニアにとっては3.5mmジャックが最もポピュラーかもしれませんが、一方で20代より下の人はUSB接続、そしてワイヤレス接続を普段から活用しているのではないでしょうか。
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『BlackShark V3 Pro』は、合計4種類の接続方法を用意しています。その内訳は2.4GHzワイヤレス、Bluetooth、USB-A、有線3.5mm。あらゆるニーズに応じられる仕様になっているようです。
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ワイヤレス接続時のバッテリー持続時間は、2.4GHz接続の場合は最大70時間。このあたりは及第点、前述の多彩な接続方法の存在も考慮すれば、いささかオーバースペックと解釈してもいいかもしれません。
なお、この製品はRazerにとっては初の第2世代HyperSpeed Wirelessテクノロジーを搭載し、その遅延は僅か10ミリ秒。その上で、4基のマイクを活用したハイブリッドANC機能をBlackSharkシリーズで初めて搭載しています。
ドライバー径は50mm。PR TIMESで配信されたプレスリリースによると、
超薄型のバイオセルロース振動板を用いた第2世代TriForce 50mmドライバーが、より自然でクリアな音質と優れた周波数分離を実現。新設計のドライバープラグにより高調波歪みを50%低減し、さらに磁力も75%強化され、敵の動きを音で正確に捉えられる立体的なサウンド体験が可能になりました。
とのこと。「敵の動きを音で正確に捉えられる立体的なサウンド体験が可能になりました」という部分が気になりますが、この他にも以下のような記載があります。
BlackShark V3 Proは、THX Spatial Audioの最新構成(7.1.4ch)を搭載した初の製品です。従来の水平的な定位だけでなく、上方向にも仮想スピーカーを追加することで、垂直方向の音場を拡張。ゲームやメディアコンテンツにおいて、足音や発砲音などの位置情報をより正確に把握でき、没入感と戦略性が飛躍的に向上します。
(同上。太字は筆者)
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この「上方向にも仮想スピーカーを追加することで、垂直方向の音場を拡張」は本当なのか。実際に試してみました。
背後から飛来する爆撃機のエンジン音
今回筆者がプレイしたのは、BlackMill Gamesの戦争FPS『Isonzo』。Steamで配信されています。
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BlackMill Gamesの第一次世界大戦三部作『Verdun』『Tannenberg』『Isonzo』は、それぞれ西部戦線、東部戦線、イタリア戦線を舞台にした作品です。兵士は基本的に銃弾1発で落命してしまい、場合によっては砲弾の破片や毒ガスなどでも呆気なく戦死してしまうという、「戦争の悲惨さ」をとことんまで再現した内容になっています。
銃撃音、砲撃音、仲間の悲鳴。そして『Isonzo』では、険しい山々の上空を飛ぶ爆撃機のエンジン音が辺り一面に響き渡ります。このエンジン音を『BlackShark V3 Pro』で聴いてみると、背後から飛来して前方にいる敵に爆弾を投下するという様子が音だけで分かってしまいます! 「すごい」というより「恐ろしい」という感情が浮かび上がってくるほど。
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これはゲームのSEを褒めるべきか、それとも『BlackShark V3 Pro』を褒めるべきか。ともかく筆者は、『BlackShark V3 Pro』の「上方向からやってくる音を立体的に捉える」という機能の実在を確認することができました。
無骨ながら合理的なデザインの音量調整ダイヤル
第一次世界大戦は、現代人の目から見ればテクノロジー水準が何もかもが中途半端。歩兵銃は基本的に単発式、機関銃は既に存在しますが合理的なのかややこしいだけなのかよく分からない設計です。銃弾を装填する「ガチャリ」という音が妙に生々しく、「ここは戦場だ」と思い知らせる音色でもあります。
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敵陣に向けてみんなで行軍していると、突如として右手方向から銃声が。仲間が一人倒れます。敵の銃弾で骨や内臓を粉砕され、彼は地面に背中を預けながら断末魔の叫び声を上げます。
その周りでは、既に敵との交戦が始まっています。それら一つ一つの音の発信源が、『BlackShark V3 Pro』を使えばまさしく「手に取るように」分かります。
もう一つ、筆者がこの製品に関して大いに評価したいのは音量調整のダイヤル。これは前モデルから引き継がれている設計ですが、左耳部分から大きく突出している円筒形状は一見無骨でありながら、即座の音量調整を可能にするデザインと言えます。
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そんな『BlackShark V3 Pro』の価格は、Razerの公式オンラインショップでは4万,780円。この価格と筆者自身が体験したパフォーマンスを天秤にかけた場合、実は決して高価な価格設定ではないのではと考えることもできます。