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性癖をくすぐる『新月同行』の背景美術。開発停止は悲しいが、中国アニメや香港映画が好きなら、この沼にハマる【メモリの無駄づかい】

文:詩舞澤沙衣

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 三つ子の魂百までと言われますが、幼少期に限らず、ゲームで遊んだ思い出は脳に深く刻まれるもの。

 何年、何十年たっても、「なんでオレ、こんなこと覚えてるんだろ…」と愕然とするような記憶が残りがちでして。

 そんな脳のメモリ(記憶・容量)を無駄づかいしている例を語ります! 今回は、少し新しい作品ですが、2025年8月7日にリリースされた『新月同行』について語ります。

中国アニメ好きから『新月同行』への道のり

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 通っていた中学・高校のすぐ近くに、横浜・中華街があった。
 休みになると、中華街の中にあるカラオケ店で一日歌うような休日を過ごしていたのもあって、中国には漠然と親しみを覚えていた。

 大人になって、たまたまキャラクターの見た目が好みだったために、アニメ映画『羅小黒戦記』を映画館で観た。当時はまだ吹き替え版がなく、字幕版で観てドはまりした。(のちに、『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」として吹き替え版が上映された。)
 その後、『羅小黒戦記』にはwebアニメ版があり、中国の動画配信サイト“bilibili”で配信されていることを知った。日本語字幕がついていない状態で、必死に観るくらいには夢中になった。(現在では、日本国内から“bilibili”で視聴することはできない。吹き替え版は、各種動画配信サイトで、TVアニメ版として配信されている。)

 ほかにも、『時光代理人 -LINK CLICK-』や『万聖街』など、中国アニメで好きなものが増えていった。どのアニメも、現代の中国(またはそれに近い世界観)を 舞台にしている。キャラクターのビジュアル、世界観、ストーリー、どれも好きな作品だ。

 また、今年は『ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件』と『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』という2作の香港映画を観た。特に後者は、人気作となって多くの映画館で上映され、小説の翻訳まで出版されるほどだ。どちらの映画も、中国の反社会的組織がいかに“香港”という世界で生きていたか、を描いている。とにかく闘う男たちがカッコいい映画である。

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 今回語っていく『新月同行』は、公式サイトでは“オカルト探索”を売りにしているソーシャルゲーム。「まあキャラクターデザインは好きだからはじめてみるか……」くらいの気持ちだった。だから、まさか私が好きなコンテンツの良いところ総どりみたいなゲームとは、よもや思わなかったのである……。

看板や食器など、生活感あふれる街並みを探索

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 主人公のビジュアルが異形であることにもおどろかされる(画像1枚めの中央のキャラクターだ)し、キャラクターにメガネが多い気がするのも私に都合がいい。しかし、一番心惹かれたのは、背景美術の良さだ。

 まるで実際にある地方の一風景のような街並みが、生き生きと描かれているのだ。主人公たちが探索すると、オカルトな存在(たとえば、龍、無限に部屋が増えるアパートなど)が姿をあらわす。そして、様々な陣営の人間たちの思惑が交錯していく。

 ゲーム操作としては、横スクロールで移動が基本。ゲーム操作下手な私からすると、背景美術をじっくり堪能できるところもいい。日本で見られる景色と似ているけれど、どこか違うところが、異国の地に足を踏み入れた心地にさせてくれる。中国のアニメでハマった『羅小黒戦記』も『時光代理人』も『万聖街』も、ふつうの人たちが歩く街並みが生き生きと描かれていたところに惹かれていたので、『新月同行』に惹かれるのは、必然だったのかもしれない。

多種多様な組織、人間模様も魅力


 『新月同行』にはさまざまな組織が登場する。主人公たちは、“超実体”(簡単に言えば、オカルトっぽくて、特別な力を持つもの)を収集・管理する組織“超管局”に属していたが、とある事件をきっかけに追われる身となってしまう。そして、そして、変わった宗教団体“燭火教”や、セレブたちが集う“光耀会”など、特色ある陣営の画策に、主人公たちは翻弄されることになる。

 けれど、どうして“オカルト探索”をしなくてはいけないか、といえば、「さまざまな組織に悪用される危険があるから」というのが大きい。主人公が所属する組織内の派閥闘争、そして、主人公が身を置くことになった土地・“南廷”内の反グレ組織内でも闘争が……。しかも、その反グレ組織が、いわゆる“武侠小説”の文脈にあるキャラクターたちなのだ。

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 なかでも、『新月同行』の主な舞台・南廷を牛耳る反グレ組織“全聯堂”は、“超実体”を利用しようと躍起になっている。“全聯堂”は、義理や人情を重んじる“武侠小説”っぽい組織だが、組織のトップ(泉)と下っ端とで格差が大きくなる一方だった。やがて、主人公たちは、やがて“全聯堂”の内部抗争に巻き込まれていく。

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 正直、「つい最近、香港映画で観た!」ときゃっきゃしたくなるような世界が、“全聯堂”には広がっている。様々なつよつよイケオジ(もちろん声優さんも大御所ばかり)に、主人公たちは翻弄される。ただ、つよつよイケオジは強すぎるので、主人公の操作できるキャラクターではないのが、残念なところである……。(画像のイケオジは、“泉蓮グループ”総裁である、キセイ。)

 “全聯堂”内で資金集めを担当している“泉蓮グループ”は、映画『ゴールドフィンガー』で描かれていたような、いかにもな成金趣味のビルを構えている。一方、実地であくせくする側は、さびれたビルの一角で生活している。『新月同行』の背景美術が、ここでも良さとして遺憾なく発揮されている、というわけだ。

 ストーリーが進むにつれ、キャラクターや組織のそれぞれの掘り下げがなされていくので、「もっともっと深く知っていきたい!」と思わせる。
公式Xのアカウントでも、キャラクターの設定資料(服装の設定の変遷が詳細に分かるのが良い!)などが多く公開されており、世界観をもっと深く知る手がかりとなる。

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