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津山三十人殺しを再解釈した昭和の農村×タイムリープ『虧月の夜』誕生秘話。“神聖娼婦”としての茜、主人公がしゃべれない理由、続編構想など(プレゼントあり)

文:電撃オンライン

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 好評発売中のNintendo Switch用アドベンチャーゲーム『虧月の夜(きげつのよる)』の開発者インタビューをお届けします。


 本作は、『ギャラクシーエンジェル』シリーズや『.hack』など多くのアニメ作品のプロデューサーを務めた森本浩二氏が原案を務めるタイムリープサバイバルホラーADV。

 現代の高校生が大量殺人事件の“当事者”として、鬱屈とした空気感に閉ざされた昭和初期の農村に転生。事件に巻き込まれ死亡することでタイムリープし、さまざまな時間軸を繰り返しながら物語の真相に迫っていくミステリー要素の強い内容となっています。

 本記事では、事前にユーザーの皆さんから募集したアンケートをもとに、原案の森本浩二氏と、プロデューサーを務める高橋大介氏へのインタビューを実施。ファン必見の回答内容をお届けします。

 なお、インタビューを記念して、キャラクター人気投票で1位となった遠井 虧について、キャラクターデザインを担当したかんじゅさんの描き下ろしイラストを使用した色紙をご提供いただきました。こちらを電撃オンライン読者1名にプレゼントしますので、詳しくは記事内でご確認ください。


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※この記事には『虧月の夜』の重要なネタバレが含まれています。クリア後に読むことをおすすめします。

昭和の農村×タイムリープ──実在の事件を再解釈した『虧月の夜』誕生の経緯

――本作の開発企画が立ち上がった経緯を教えてください。なぜ“昭和初期の農村”と“タイムリープ”という組み合わせを選ばれたのでしょうか。
※どうしてこういう話にしようと思ったのか。(LLLさん)/転移先が比較的現代よりの日本というのが珍しかったけど、なぜ?(柳川さん)
森本
企画の骨子は、原案者視点で話をさせていただくと、①ホラー作品、②テーマとして“津山三十人殺し”、③殺される恐怖をプレイヤーが追体験、④プレイ後に余韻が残る、の4点になります。

 テーマ的な背景は、企画を立ち上げた2023年頃の個人的な感覚“2020年以降の日本の状況は、第2次世界大戦前の状況に酷似している。今は戦前なんだという警鐘を鳴らしたい”が個人的思いです。

 『国際化の進展による経済発展⇒震災+経済危機⇒経済の低迷⇒ブロック経済化⇒世界大戦』という、世界史的流れがプロセスとして酷似していることへの危機感の表明になります。

 現代人に第2次世界大戦前の日本をホラーとして追体験してもらい、何か感じてもらえればありがたいを体現するために、この枠組みでの提示になりました。質問者様への答えになっているでしょうか?

高橋
森本さんとは以前よりなんらかのコンテンツを立ち上げよう、という話をしておりまして、様々な媒体の可能性を模索していました。その中で今二人がやりたいと思うコンテンツを絞り込んで行ったところ“比較的ショートストーリーのホラー作品がいいのでは”というアイディアが出ました。

 とはいえ、完全オリジナルのホラー作品は非常にハードルが高いことから、“ビジュアルノベル形式のゲーム”という企画として正式に立ち上がった経緯があります。

 昭和初期の農村を舞台にしたのは森本さんが“津山三十人殺しをテーマにしたい”とおっしゃったところから逆算した形になります。


 その恐怖を追体験させるには“転生”“タイムリープ”がいいだろうという手法が決まっていき、さらにそこから深堀りして企画が固まっていきました。

 ただ、実在する事件をそのままモデルにするのは様々な問題を孕む可能性があることから、あくまでも骨子のテーマを三十人殺しとしながら、完全オリジナルなキャラクター要素を加えていきました。

――タイトル『虧月の夜』に込められた意味や、タイトル決定に至るまでの裏話があればお聞かせください。
※「虧月(きげつ)」ってどんな意味ですか?(前月さん)/ゲーム名はどんな理由で、どこで決めたのでしょうか?(もののふさん)など
高橋
脚本家の春日先生のアイディアです。津山三十人殺しの犯人“都井睦雄”をそのまま描くのではなく、彼がなぜこのような凶行に駆り立てたのかを2つの側面から見ていくロジックを考えました。

 さらにキャラクターとしての魅力を深堀りしていく中で、都井睦雄を“双子”にすることで分解、再解釈、新たな人物像として描くこととしました。


 物語はこの双子を中心に進むのですが、兄弟の片方が“欠けている(虧)感情”が事件の重要な要素であることと、兄弟二人が合わさってようやく月齢が一周する=月齢は繰り返す円環の構造と解釈することで、「“ループ”という時間の円環を繰り返しながら事件を解決していくという本作のコンセプトにも合致するよね」ということでタイトルが決まっていきました。

森本
自分は物語とは、“欠けているものが埋まる”または“歪んでいたものが戻る”プロセスを描くこと、だと理解しているので、『虧月の夜』は凄く素敵なタイトルだと思いました。春日さんには本当に感謝しています。

――プレイしていて、村の“閉鎖的な空気感”や“じわじわと迫る恐怖の演出”が非常に秀逸でした。空間作りや演出において、特に意識したことはありますか。
※村の「閉鎖的な空気感」や「じわじわと迫る恐怖の演出」が秀逸でした。どんな考え方でつくったんですか?(1SAMIさん)
高橋
主にディレクターと音楽、効果音、グラフィックの面で何度もやり取りを重ねました。順番としてはまず“全体にモヤがかかったようなとにかく暗いグラフィックにしよう”というところからイメージボードが作成され、それに合うフォント、UIをチョイスしていき、音楽の要望をエディアさんにお伝えして……という流れでした。

 それらが複合的に噛み合って、閉鎖的な空気感が再現出来たのではと思います。ただ、私もディレクターも年代が比較的近く、もしかしたらサウンドノベルシリーズの影響を色濃く受けていたかもしれません(笑)どこかしら“かまいたちの夜”や“弟切草”の空気感がありそうです。

主人公が“しゃべれない”制約と、遠井兄弟のクソデカ感情


――主人公が“言葉をしゃべれず、手話を使わなければならない”という設定は、非常にユニークで切実です。この仕様から生まれた、物語上の表現のこだわりを教えてください。
※主人公が手話を使うようにしたのはどうして?(楽雅さん)/主人公がしゃべれれば、もっといろいろできた気がする。でも、しゃべれないからこそのもどかしさも多かったけど、そこを狙っていた?(クライさん)など
高橋
当初より森本さんと原案打合せを行っていた際に“タイムリープや転生はあまりにも万能すぎる能力のため、なんらかの制限をかけたい”という話が出ていました。その要望に対して春日先生が出してくださったアイディアですね。

 ご質問にもある通り、喋れればもっと色々なことが出来たはずですが、あえて出来なくしたということになります。

 この制限により“主人公の考えを伝えられる人物に制限がかかる=敵味方がはっきりする”“盈と主人公が入れ替わったことを気づかれにくくなる=親しい人物も盈が入れ替わったことを疑問に思わない”という演出効果が出来たのが面白かったです。

森本
春日さんからこのアイデアを提案いただいた時は、正直驚きましたが、限定条件を設けることで作品の進むべき道が見えてくることは何度も経験してきたので、すごくありがたいご提案でした。

――遠井盈と虧という双子の濃密な関係性は本作の大きな見どころですが、この二人のキャラクターデザインや心情描写で最もこだわった点はどこでしょうか。
※盈と虧の関係性がよかった。デザインや工夫した部分があれば聞きたいです。(欧倫さん)
高橋
タイトルでご説明した通り、二人で一つの存在であることを濃密な関係で表現するよう心がけました。(制作メンバーの中では“兄弟のクソデカ感情”というキーワードが中心にありました(笑))

 物語の根幹になるのでここではコメントを控えますが、最初は虧の感情の重さを描いていますが、物語が進むことで二人がどれだけお互いを想っているのか、当然、こんなことがあったら虧は盈を大切にするだろうという描写を心がけています。そのため……裏切られたときどうなるか……

森本
脚本の春日さんには、ホラー性に加えて、ビジネス上で映えるキャラクターを要望しました。そのオーダーに凄く素敵なカウンターアンサーをいただいて、当時は製作陣みんな驚くと同時に、強烈な手応えを感じたことを今でも昨日のように思い出せます。

――主人公が転移する前の遠井盈はどんな人物だったのでしょうか。裏設定や、ゲームでは描き切れなかったエピソードなどがあれば、教えてください。/遠井 虧は、盈のことをどのくらい信じていて、想っていたのでしょうか?
※本来の盈がどんな感じなのか日記だけではなく知りたいです。(ようさん)※カケルの真意を知りたい。どこまでミツルのことを気にかけていたのかとか。(ロゼッタ岩さん)
高橋
作中の日記から読み取れる部分もありますが、主人公転移前の盈は虧に引けを取らないくらい兄弟愛が強く、かつ依存的な感情を持っている人物です。茜とは境遇が同じことから会話するものの、やはり基本的には“自分には虧しかいない”という感情が支配している人物です。

 しかし一方で環境のせいで学習の機会を失ったものの、基本的なスペックは高く、もし双子がよい環境で成長していたらとんでもない事業家になっていたのではと思います。

 虧の盈に対する想いは、先程の回答でも触れておりますが“自分のすべてをかけてでも守りたい存在”です。その反面で“誰かのものになってほしくない”という歪んだ感情も心の内に秘めています。

 いずれにしても主人公(プレイヤー)が想像する以上に虧は盈を想い、その行動原理はすべて盈のためにあると考えて良いと思います。

“神聖娼婦”としての茜と、胡散臭さを極めた天獄の造形


――蔓草茜というキャラクターは、村の重苦しい空気の中でプレイヤーにとって非常に印象的な存在でした。彼女を描く上で大切にした軸は何でしたか。
※茜ちゃんの裏設定とか知りたい! デザイン時の話も。(茜色さん)/とても辛い物語でしたが、蔓草茜に癒される部分もありました。(辛いエピソードもありましたが…)どのような部分を指揮してキャラクター設定を考えたのでしょうか?(緑塔湖さん)
森本
ヒロイン枠の要請は記憶違いでなければ、確か高橋プロデューサーからだったと思います。自分はそれに対して“神聖娼婦”というコンセプトを出しました。

 昔から持っていたアイデアなのですが、本作にはピッタリなのでは、ということで提案しました。そのオーダーに120点以上のキャラクターを築いていただいて制作スタッフには心から感謝しています。

高橋
はい、茜のオーダーは私からとなります(笑)。彼女は村の暗部を一身に受け、それが自身の使命であることを受け入れているまさに“神聖娼婦”という立ち位置です。


 ただ、盈だけは自分と同じ恵まれない境遇であり、唯一心を許せる対等な存在と認知しており、だからこそ盈の前だけでは年相応の可愛らしさが出てくるようになっています。彼女のテーマBGMはかなりこだわってオーダーさせていただきました。


 神秘的で癒されつつも物悲しい空気感がまさに彼女そのものかと思います。ちなみに茜の着物の模様は“椿”なのですが、花言葉は“控えめな素晴らしさ”と“罪を犯す女”です。

――キャラクター設定を考える際に参考にした実在の人物などはいますか? 特に蔓草天獄について知りたいです。
※蔓草天獄のキャラクターを作る際に参考にした実在の人物はいますか?(零ミリさん)
高橋
実は盈、虧、茜、天獄以外はすべて実在の人物を参考にしつつ、時代背景やキャラクターの立ち位置を考慮してデザインされました。

 天獄は実在の人物はおらず、キャラクターデザイン原案の遊田先生に“とにかく全力で胡散臭い悪役”というオーダーで何回かやり取りさせていただいて完成しました。


 スーツに宗教的なアクセサリーを纏うという部分以外、ほぼ初期デザインから変更がない完全架空のキャラクターとなりました。なぜかスタッフ全員の天獄のイメージが一致していた不思議な感覚でしたね…… 。

隠された村の裏設定と、気になる「続編」の構想について


――周回やコンプリートを目指す際に楽しんでほしい部分や、普通に遊ぶと気付きにくい隠し要素的なものはありますか?(オルステッドさん)

森本
コンプリート要素という遊びがあると良いよね、という話は製作陣で話をしていました。

 それに対して高野ディレクターからのアイデアでTIPS的な用語解説システムと日記のコンプリート的なアイデアが出て、コンプリートする楽しさを提供できれば良いね、という話をしていました。

高橋
“知識と見識”をすべて読むと、実は蛇塚村が本当に存在しているかのような設定考証ができるようにしました。

 表には出ていませんが、どこの家の誰と誰が結婚し、一緒に住んでいるから殺害されたときにあんな姿勢で一緒にいる……など、とにかく細かく設定を煮詰めています。ぜひプレイが終わったあとは“知識と見識”を深く読んでいただきたいですね。

――幻のイベントやエンディングの構想などはあったのでしょうか? 特に蔓草天獄関連について知りたいです。
※蔓草天獄が制裁を受けるエンディングがないのはなぜだろう。たとえ逃げられたとしても、現代に戻った主人公が歴史資料で彼が報いを受けたことを知る、みたいな補足があればよかったのに。(カイウェイさん)/なぜ天獄は作中で決着をつけさせてもらえなかったのでしょうか? 続編が出そうな終わりでもなかったし、諸悪の根源なのに不完全燃焼な感じでした。(つっちさん)
高橋
まさにご指摘のとおり、天獄が逃げ切ったことをモヤモヤするという感想を多くいただきました。実は別エンディングの構想というよりは“これが天獄との因縁のはじまり”という考え方で作られています。

 今回の物語で描ききれていないところとして、そもそもなぜ転移したのか、禰子と魅巳だけが原因なのか語られていません。天獄と主人公(プレイヤー)にも実は関係があり、転移する原因が隠されています。いずれその部分を描き切れればいいなと思っています。

――続編や、続きを描く物語などの構想はありますか?
※キャラクターたちの話をもっと読みたいのですが、続編の予定はありますか。(みどりさん)
森本
本作の地続きの続編やキャラクタードラマは制作現場にお任せしているので、要望がいただけるのであれば、どんどん作っていただきたいですね。

 続編の企画については、原案者としては、シェアワールド的な世界観を元に、基本的なテーマや舞台・システムのアイデアまで固まっています。世に問うことができればすごくうれしいですね。皆さんの応援次第ですので、ぜひ宜しくお願い致します。

高橋
描けていないバックグラウンドの設定やストーリーがありますし、続編といいますか、同じ世界の別ストーリーのアイディアは森本さんと固めているところです。ぜひ続編を作りたいと思いますのでぜひ応援いただきたいです!

――最後にファンへのメッセージをお願いします。

森本
本作をプレイした後に、「あ~、怖かった。生きてて良かった。明日からはちょっとだけ頑張ろう。」みたいな気持ちになっていただけたら本望です。虧や盈、茜たちのことを覚えておいていただけると、とても嬉しいです。これからも宜しくお願い致します。

高橋
弊社にとって初めてのゲーム原作開発となりました。実は私は『ひぐらしのなく頃に』の大ファンでして、いつか昭和の日本を舞台にしたホラー要素のあるゲームを作ってみたいと思っていた一人です。そんな想いを詰め込んだ作品となっていますので、ぜひ応援よろしくお願いいたします!

イラストレーター“かんじゅ”さんが描く『虧月の夜』遠井 虧の記念イラストをプレゼント


 電撃オンラインでは、“『虧月の夜』描き下ろしイラスト色紙”を抽選で1名様にプレゼントするXキャンペーンを実施します。キャラクターデザインを担当したかんじゅさんの描き下ろしイラストを利用した色紙です!

 以前開催した人気投票で1位を獲得した、遠井 虧(とい かける)の描き下ろしイラストをあしらった色紙をプレゼントします。


賞品
・『虧月の夜』描き下ろしイラスト色紙(1名)

応募方法
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注意事項※あらかじめご了承のうえでご応募ください

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