本連載では、インドゲーム市場のリアルに迫る。
第1回となる今回は現在のトレンドをお伝えし、次回以降でインドにおける家庭用ゲーム流通の歴史に触れながら、いかにしてこの巨大市場が形成されてきたのかを紐解いていきたい。
第1回となる今回は現在のトレンドをお伝えし、次回以降でインドにおける家庭用ゲーム流通の歴史に触れながら、いかにしてこの巨大市場が形成されてきたのかを紐解いていきたい。

加速するエンタメ市場とメディアミックス
今やインドの人口は約14億7,000万人(2026年3月時点)と世界一。
地方によって言語も違えば、エンタメの発展の仕方が異なっているため、インド国内であっても一概に共通しているとは言えない部分があるとしても、映画やドラマ、アニメ、漫画が独自の発展をしており、5月9日、10日に行われた“ムンバイ・コミコン2026”では、8月28日公開予定の新作映画『Vvan – Force of the Forest』の主演のシッダールト・マルホートラ(Sidharth Malhotra)とタマンナー・バティア(Tamannaah Bhatia)が登壇し、コミックと連動する企画がサプライズ発表されたことも記憶に新しいように、メディアミックスも加速傾向にある。
『Baahubali: The Game』や『Sarkar Infinite』などのように、映画がゲーム化される事例は、すでにいくつかあるものの、今後は、さらに多くなっていくだろう。
ちなみに筆者は、別企画の取材予定が変更になったことで年末に予定をずらしたせいで、今回のコミコンに行くことができなかったこともあり、開催2日前に発表されたサプライズ登壇を知って悲しくなってしまった……というのは、余談だが、そんなインドのエンタメ市場で忘れてはならないのが、本題となるゲームで、今後のメディアミックスの発展でも注目すべきコンテンツだ。
ムンバイ・コミコンだけに限らず、デリーやハイデラバード、コルカタのコミコンでも新作ゲームは注目の的だ。
国民的ゲーム『Ludo King』と独自のゲーム事情
さて、インドのゲームというと、パズルゲーム『Ludo King』は有名だ。Netflixの映画『LUDO ~4つの物語~』(2020)のモチーフにもなった伝統的ボードゲームをデジタル化した本作は、老若男女に愛され、映画俳優やタレントのユーザーも多く抱えている国民的ゲームといえる。
『Ludo King』を開発したゲームションは、映画のスポンサーとしてもよく目にする企業で、“Ludo King Game Show”という、『Ludo King』をプレイしながら映画トークをする番組を定期的に配信している。
『ルード』または『ルドー』というと、イギリスのボードゲームではあるが、その元になったのは、インドで6世紀から遊ばれていたといわれる『パチーシ』がベースとなっている。それを一周回って、インドが再びゲーム化したのが『Ludo King』というわけだ。
ほかにもブロック崩しやトランプゲームといったシンプルなものや『グランド・セフト・オート』のシステムを堂々とパクったPC・モバイルゲーム、あるいは『電車でGO!』のようにさまざまな鉄道が運転できたり、ヒマラヤ山脈のラダック地方やヒマーチャル・プラデーシュ州といった、毎年死亡者が出ることでもおなじみの山脈地帯ならではの、崖スレスレ&ガタガタ道をバスやトラックで走行できる交通系シムなどは人気がある。
『Battlegrounds Mobile India (BGMI、旧称PUBG Mobile India)』なんかは、中毒者続出で、生活への影響を心配したグジャラート州政府が法的に規制して、逮捕者を多く出したということもあった。
洋ゲーに詳しい人であれば、2009年に発売された、ヒンドゥー神話に登場する猿の神ハヌマーンを主人公にしたため、ヒンドゥー教を軽視していると非難を浴びて、逆に話題になってしまった、オーノラ・テクノロジーズが開発したPlayStation2ソフト『Hanuman: Boy Warrior』を知っている人もいるかもしれない。
ところが気にしていないと、なかなかインドのゲーム情報というのは、耳にも目にも入ってこないという現状があって、その国によるかもしれないが、インドは長年ゲームというイメージから疎外され、完全に死んだ市場とされてきた。
スマホゲームの世界制覇とe-Sportsの台頭
しかし、そうこうしているうちに、2025年の時点でゲーム人口が中国の約6.5億人に次いで約5.5億人(統計の仕方で若干変動している)で世界第2位と、すっかりゲーム大国へと変貌を遂げており、モバイルゲームのダウンロード数に関しては世界1位になっているし、e-Sportsに関しては、企業が貧困層の子どもたちに向けて、無料のブートキャンプを行ったり、インド産業連盟(Confederation of Indian Industry(CII))やインド政府電子情報技術省(Ministry of Electronics)などが積極的に関わってイベントを開催するなど、国を挙げての事業としても注目が集まっている。
それどころか近年では、『Clutch』や『Gamerlog』などのように、e-Sportsを題材とした映画やドラマまで制作されるようにまでなっている。極端な話かもしれないが、e-Sports選手は貧困から抜け出す手段のひとつとしても考えられるようになっているのだ。
急速なデジタル化と極端な田舎までつながるほどのネット環境の確立、データ通信料の低料金化、定額化によって、IT大国となっているのだから、PCやモバイルゲームに関しては、超絶進化してきているという想像ができるかもしれない。
しかし、家庭用ゲームは、スーパーマリオは、ドラクエは、など、そもそもゲーム自体が流通しているのか、などなど、いくつもの疑問が浮かび上がってくるし、そもそも情報がどこにあるのかがわからない。
次回は、そんな疑問を解き明かすべく、インドにおける家庭用ゲーム流通の歴史について掘り下げていく。