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NVIDIA最新SoC「RTX Spark」がヤバい! スパコン並みのパワーがノートPCに【マウスコンピューター対談】

文:Ak

公開日時:

 マウスコンピューターが2026年6月23日に開催した、報道関係者向けの新製品発表会。そこで、マウスコンピューター代表取締役社長である軣 秀樹氏と、NVIDIA日本代表である大崎真孝氏の対談が行われました。この記事ではその内容をお届けします。

▲左:軣 秀樹氏(マウスコンピューター代表取締役社長)、右:大崎真孝氏(NVIDIA日本代表)
マウスコンピューターでゲーミングPCを購入する

AIエージェントは人間の手足となる存在【マウスコンピューター×NVIDIA代表対談】


――AI領域における最新技術トレンドおよび市場動向について、どのようにご覧になっていますか。

大崎
ここ半年間の進化は本当に劇的です。一番のトピックは、かねてより研究されていた“AIエージェント(※1)”の技術が、ユーザーが日常的に使える実用的なフェーズに入ってきたという点にあります。

 これまでのAIを振り返ると、まずは物を見てそれが何かを認識する“認知AI”から始まり、次に会話を通じて人に対して意味を与える“生成AI”へと進化してきました。そして今、最新のトレンドとなっている“AIエージェント”は、まさにパーソナルアシスタントとして機能します。様々なAIから、その人に必要な情報を集めてひとつの文脈を作り、高度なアシストを行ってくれる技術です。

(※1)AIエージェント:自分で考えて行動できるAIの総称。目標に合わせて自律的に思考を働かせる。

これまで「AIはいつ人に近づくのか」という議論が数多くなされてきましたが、まさに今、人の手足となって個人のニーズに特化して動いてくれるアシスタントが、すべての人に使える環境が生まれています。

 確かに、ここ半年ほどのAIの浸透スピードには凄まじいものがあります。私は6月初旬に台湾で開催された“COMPUTEX”を訪問したのですが、日本以上に海外でのAIの浸透スピードが早く、「このスピード感ではまだまだ日本は負けているな」と危機感を持って帰国しました。

 大崎さんのお話を伺って深く共感したのですが、私はこれまで「AIは脳である」と考えていました。ただ、脳だけでは行動ができないため、人間の目や手となるものがあって初めて成り立ちます。その“手に代わるもの”こそが、これからのAIエージェントなのだと感じています。

 ハードウェアを売るだけではこれからの時代を生き残れない、という強い危機感があります。だからこそ、私たちはAIエージェントのような領域にも積極的に取り組み、パートナー企業としっかり融合した上で、“AIで何ができるのか”をお客様に伝えていかなければなりません。

 事業方針でも掲げましたが、ユーザーに実際に体験してもらって初めて、AIの本当の価値が分かります。NVIDIAさんの最新技術を追いかけ、活用させていただきながら、ハードウェアだけでなくソフトウェア、アプリケーション、セキュリティソフトを融合して届ける、そんな覚悟を持っています。

“RTX Spark”がノートPCにもたらす変化とは?【マウスコンピューター×NVIDIA代表対談】


――COMPUTEXでは“RTX Spark(※2)”など最新技術が大きな話題を呼びました。この技術的なポイントについて詳しく教えてください。

大崎
“RTX Spark”搭載PCは、見た目こそ一般的なノートPCですが、中身は“パーソナルユースで使えるAI爆速マシーン”となります。

 性能はざっくり言うと1PFLOPS。ちなみに、かつて理化学研究所が運用していたスーパーコンピューター“京(けい)”が10PFLOPSでした。“京”はひとつの部屋を超えるサイズに筐体が並ぶ巨大なシステムでしたが、その10分の1のパワーが、今やノートPCの手元に収まっているというわけです。

 さらに重要なのは消費電力です。いくら高性能でも電力を大量に消費しては自宅で使えません。しかし、このシステムは“京”と比べて10万分の1以下の消費電力に抑えられているため、一般家庭の電力容量でも問題なく走ります。

 これ1台でAI開発、ゲーム、レンダリングのすべてがこなせます。従来はゲーム用、クリエイター用、あるいはスーパーコンピューターと明確に分かれていた境界線が、ゲーマーや開発者の手元で融合し、よりパーソナルにAI開発ができる環境が整いました。

 もちろんクラウドが不要になるわけではなく、クラウドと使い分けながら、個人が手元でAIエージェントのサービスをフルに受けられる時代が来ています。マウスコンピューター様のようなPCメーカーが個人向けのノートPCとしてこれを開発し、リリースしていくという事実に、まさに“エージェンティックAI(自律型AI)”の時代の到来を実感しています。

(※2)RTX Spark:NVIDIAが開発するWindows PC向けSoC(System on a chip)。AIとグラフィック性能に特化しており、ローカルで超大型のAIを動かすことができる。


――この最新技術を、マウスコンピューターとしては製品としてどのように市場へ届けていく方針ですか。

正直、COMPUTEXの現地でNVIDIAさんの発表を見た時は非常に驚きました。これほどコンパクトな筐体にこれだけの性能を収めている点には、目を見張るものがあります。

 これまでのAIはクラウドが主流でしたが、特に日本国内の企業様においてはセキュリティの懸念から導入を躊躇されるケースが多くありました。しかし、AIの処理がローカル(手元)に移ることで、そのセキュリティの不安が完全に解消されます。

 そのため、手元で大規模言語モデル(LLM)を動かすローカルAIの仕組みは、日本国内の企業に最も適していると考えています。クラウドと比較して“リアルタイム性(レスポンスの速さ)”にも優れ、通信コストを抑えられ、かつコンパクトです。私たちはBTO(受注生産)メーカーですので、お客様の用途に合わせて最適な構成にカスタマイズして提供できる強みもあります。

 まずは法人のお客様にこのメリットを感じていただき、販売を強化していきますが、同時に“私たち自身の社内”にもいち早く導入する必要があると考えています。

 先ほどのサービス本部や品質管理本部の報告にもあった通り、当社には長年蓄積された膨大なデータがあります。日本国内には、データを持ちながらも上手く活用できていない企業様が多いのが現状です。私たちは自社のローカルAIを用いて、修理データの解析や品質改善・向上に役立てる社内実践を始めます。自社で使って「こういう効果が出ました」という実体験を持って、お客様に価値を説明していきたいのです。

 現在、当社の法人PC市場における国内シェアは一桁の前半にとどまっています。このローカルAIへの取り組みは、シェアを大きく伸ばす最大の好機だと捉えています。国内メーカーの先頭を切って、ローカルAI対応製品の開発と市場投入に突き進んでまいります。

ローカルAIがもたらすメリットとは?【マウスコンピューター×NVIDIA代表対談】


――マウスコンピューターの積極的な姿勢を伺って、大崎さんはどのように感じられましたか。

大崎
NVIDIAの歴史を振り返ると、私たちのテクノロジーには“グラフィックス”“スーパーコンピューター”“AI”という3つの軸があります。これらは一見バラバラに見えますが、今まさに融合し、パーソナルな製品として手元に落ちてきています。

 その前段階として、まさにマウスコンピューター様が『G-Tune』で展開されているようなゲームの世界がありました。昨年1月に私が登壇させていただいた際、AIを使ってグラフィックスをより高精細にする“AIレンダリング”の技術(GeForce RTX 40/50シリーズなど)をお披露目しましたが、すでにAIを用いたグラフィックスの向上はゲーマーやクリエイターの間で当たり前のものになっています。

 現在はさらにその逆、つまり“AIを進化させるためにグラフィックスを用いる”というアプローチが始まっています。グラフィックス技術で高度なバーチャル世界を作り出し、その中でAIに学習を行わせるという手法です。

 そして、科学技術計算に使われていたスーパーコンピューターのパワーが細分化された結果、このローカルAI・AIエージェントの時代には“個人や企業が手元で大規模言語モデルを作って動かせる”ようになります。グラフィックス、スーパーコンピューター、そしてパーソナルPCが融合していく世界こそがNVIDIAの創り出してきたコア技術であり、マウスコンピューター様のようなパートナーがそれをエンドユーザーにソリューションとして届けてくれることを、非常に強く期待しています。

本当に、かつてのスーパーコンピューターが自分たちのすぐ身近にやってくるような印象を強く受けますね。

 AIを活用することで、私たちがまだ予測もできないような新しい世界がこれから見えてくるはずです。非常に興味深い領域ですし、この先一体どんな未来が待っているのか、想像するとワクワクします。私たちはこれからも、AI、AI PC、そしてAIエージェントの領域に、しっかりと腰を据えて取り組んでまいります。


――改めて、今後のローカルAIが持つ可能性やメリットについて、大崎さんからまとめをいただけますでしょうか。

大崎
ローカルAIのメリットは大きく3つに集約されます。1つ目は、先ほど軣社長もおっしゃった“セキュリティ”。2つ目は、通信を挟まないことによる“スピード”。3つ目は“コスト”です。すべてをクラウドに頼ると利用コストが跳ね上がってしまうため、手元で処理できるメリットは今後さらに増していきます。

 そしてもうひとつ、重要なキーワードが“ソブリンAI(Sovereign AI:データの主権)”です。その国やその企業の中で発生したデータを、外部に出すことなく、しっかりと自分たちの資産としてのAIに変えていく、定着させていくという考え方です。

 日本には独自の素晴らしい文化や、それぞれの企業・個人が持つ固有の文化・ノウハウがあります。これらを反映した日本独自のAIエージェントが、国内でさらに数多く生まれてくるべきだと思います。個人、企業、ひいては日本全体を支える基盤として、ローカルAIが持つ可能性や活用の場は、これから無限に広がっていくと考えています。

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