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フロム新作『ダスクブラッド』宮崎英高Dインタビュー。立ち回りや駆け引きで勝利を目指せる“勝ち筋”と独自のゲーム設計とは

文:Ak

公開日時:

 2026年に発売予定のフロム・ソフトウェア新作『The Duskbloods(ダスクブラッド)』のインタビュー記事をお届けします。


 本作でディレクターを務める宮崎英高氏に、開発の経緯からシステム、世界観、そしてキャラクターの造形に至るまで語ってもらいました。

“PvPvE”に込めた意図と、開発の原点


――PvPvEというゲームスタイルを選んだ理由や狙いをお聞かせいただけますか?

宮崎
そうですね、まず第一に、本作の最初の情報発信として「PvPvE」というのは、あまり正確ではなかったかもしれません。私としては、PvPの要素もあれば、PvEの要素もある、ただそれだけの事実として使った言葉なのですが、現状「PvPvE」というと、もっと特定のフォーマット、例えば脱出シューターのようなゲームを想像してしまうのかなと。

 ネットワークテスト版を触って頂ければ、ご理解いただけると思いますが、本作はそれらとはまた違ったゲームですから。

 ともあれ、本作がオンラインゲームであることは間違いありません。何故それを作ったのか、という話であれば、我々の過去作と同様の答えになります。つまり「自分たちが面白そうだ、作りたいと思ったから作った」ですね。

 タイミングが『ELDEN RING NIGHTREIGN』と被っているので、そのことについて色々と聞かれることもあるのですが、両者のタイミングが被ったのは、ただの偶然です(笑)。

 我々の戦略が変化し、これからはオンラインゲームを中心に作っていく、といったことではありません。

 そもそもの話として、本作のはじまりは『ELDEN RING NIGHTREIGN』よりも前ですしね。

 以前クリエイターズインタビューでお答えした通り、たまたま任天堂さんに本作の原案をお話しする機会があり、興味を持って頂いた、というのがはじまりなのですが、その時は、単に自分が面白そうだと思うことを喋っていただけで、会社としての戦略とか、そんなことはまったく考えていなかったと思います。

 ただ、もう少し深堀りすると、私自身が『デモンズソウル』や『ダークソウル』を作る過程で、蓄積されたものはあった気がします。

 『ダークソウル』の誓約が分かりやすいですが、ああしたオンライン要素は私の好みでして、過去色々なアイデアを考えたのですが、シングルメインのゲームが前提だと採用しにくいものも多かったのです。そうしたアイデア、あるいは思考の蓄積を、どこかで活かしたかったのかなと。


――『ナイトレイン』とシステム面で似ている部分もありますが、社内での知見共有などはあったのでしょうか?

宮崎
はい。同じ会社内で作られているゲームですし、オンラインゲームという共通点もありますから、技術や知見、フィードバックなどは、しっかりと共有しています。

――対戦ゲームに苦手意識を持つファンも楽しめる設計になっているのでしょうか?

宮崎
そうですね。純粋なアクションスキルによるPvP以外の幅もあり、また楽しみ方もある、といった設計になっています。私自身、純粋なアクションスキルは決して高くないプレイヤーなのですが、そんな私でも楽しめるようなゲームだと思います(笑)。

 ストーリー進行について言えば、いわゆるエンディングも複数用意しておりますので、そういった意味でシングルプレイ的な楽しみ方もできるのかなと。

――シングルモードのボリューム感と、キャラクターの掘り下げについて教えてください。

宮崎
シングルモードについては、あくまでもミニマムなものです。サーバーメンテナンスなどで、オンラインプレイができない状況でも、何もプレイできないということはないようにしておきたくて。

 具体的には、キャラカスタマイズや、中庭での練習、8人対戦の模擬戦などですね。

 またストーリー進行の中で、キャラクターの掘り下げも行われます。ただそれが、オンラインプレイを前提にしている、というだけです。

 本作の断片的ストーリーテリングは、オンラインプレイ、特にそのドラマ性を意識して設計されており、それを楽しんで欲しいと考えています。

 勿論、ストーリー進行においては、オンラインプレイの勝利は必ずしも前提にされませんので、まずはストーリーを楽しみ、その過程で段々と勝てるようになり、また勝ちたくもなる、といった流れが理想ですね。

――全キャラクターに近接武器と遠距離武器の両方がしっかりと用意されているのが印象的でした。これにはどのような狙いがあるのでしょうか?

宮崎
基本的には、まずアクションの土台があり、それに合わせて武器種なども調整されています。

 本作では、プレイヤーキャラクターは血族であり、超人的な能力を持ち、かなり高くジャンプでき、空中を駆けるような動きも可能です。一言で言うと、今作のアクションはダイナミックなもので、そのベースで戦うためには、近接武器だけでなく、標準で遠距離武器も必要だろうと考えました。

――街の中にはさまざまな場所があり、ワープなどを活用して自由に探索できる印象を受けました。製品版のマップもネットワークテスト版と同等のサイズ感になるのでしょうか?

宮崎
基本的には同じですね。ゲームバランスを考えると、適切なマップの大きさというのは大体決まっており、どのマップのその範囲内に収まるように調整されています。

――高低差のある立体的なフィールドデザインについて、開発時のエピソードがあればお聞かせください。

宮崎
本作のプレイヤーキャラクターは機動力が高く、特にジャンプや空中制御に優れていますので、それに合わせて、飛び回るのが楽しい立体マップを意識してデザインしています。元々、私自身縦に積むマップが好きなので、それは楽しい作業でした。

 また、本作のマップでは、過去作ほど強い導線を引いていません。これは、本作のゲーム性を、繰り返しプレイと自由な立ち回りを意識した結果ですね。


――世界観としてゴシック調の近代的なロケーションをメインに採用した理由は?

宮崎
今作のプレイヤーキャラクターである血族のモチーフは、いわゆる吸血鬼です。なので、吸血鬼もの、として最もストレートな世界観として、最初のマップとしては「ゴシック・ヴィクトリアン」を選択しています。

 ただ、今作の世界観はそれだけではありません。

 ネットワークテスト版では、マップはひとつだけですが、製品版では他にもマップが2つ用意され、それぞれ「ゴシック・ヴィクトリアン」とは、また違った世界観を持っています。

 本作では、血族たちは、色々な時代、場所の「黄昏」に呼ばれ、血授をめぐり戦います。戦いの舞台の共通点は、それが「黄昏」、つまり「人類の滅び、衰退、落日の時」であることです。

 そういった意味で、結構広がりのある世界観かと思います。

上級者だけで終わらせない“勝ち筋”と“美徳”システム


――必ずしも“アクションが得意な人だけが勝てるわけではない”という設計について、具体的にどのような手法で取り組まれているのでしょうか?

宮崎
そうですね。大きく3つの点があると思います。

 1つ目は「美徳」のシステムです。美徳とは、いわゆる勝利点なのですが、最終戦を除いて、戦いの勝敗はこれの多寡により決まります。PvPなりPvEなりは、この美徳を得るための一手段でしかありません。

 こうすることで、純粋なアクションスキルだけでなく、立ち回りや戦略で勝利を目指すことが可能になっています。美徳システムにより、純粋なアクションスキルの比重を下げているのです。

 2つ目は、ロールプレイ的な楽しみです。本作は、純粋に勝ちを目指すのも、勿論楽しいゲームだと思いますが、それとは別に、キャラクターを演じたり、戦いの最中に突発的に起こるドラマを楽しんだり、といった側面も重視しています。

 イベントや烙印、特に後者にその色が濃いでしょうか。期せずして割り当てられる「受動烙印」には、時にドラマがあるもの思いますし、たまたま、特定の組み合わせで烙印が成立した場合などに、専用のセリフが再生され、新しい物語の断片が手に入る、といった要素もあります。

 3つ目は、ネットワークテスト版では体験して頂けないのですが、ストーリーの進行とキャラクタービルドです。本作の拠点である「夜の館」には2階があり、そこには何人かのNPCがいて、彼らと話すことでストーリーが進行します。また、オンラインプレイを通じてアイテムを入手し、それを使って血族キャラクターをカスタマイズできますし、アイテムテキストなどによる断片的なストーリーテリングも行われます。

 こうした要素は、必ずしもオンラインプレイにおける勝利を前提とするものではありませんので、まずは勝利に拘らず、ストーリー進行とキャラクタービルドを楽しむ、といったことが可能です。

――その“美徳”システムについて、盤面を見ながら最も効率の良い勝利点を稼いでいく感覚は、どこかボードゲームに通じるものを感じました。やはりアナログゲームからの影響もあるのでしょうか?

宮崎
そうですね。美徳のシステムは、ボードゲームを参考にしている部分があると思います。

 本作には、美徳を得る手段の一つとして「称賛」という要素もあるのですが、開発中には「ロンゲスト・ロード」と呼ばれていましたからね(笑)

 個人的には、この美徳のシステムが、ゲームの幅を大きく広げてくれたと思います。勝利を目指すための選択肢、立ち回りの幅という点でもそうですし、イベントや、血族の特殊能力を考えるという点でもそうだと思います。


――最終的にはどうしても“決闘(直接対決)”が発生する仕組みになっていますよね。

宮崎
はい。最終戦のないパターンも試したのですが、どうしても締りが悪く、現状の形に落ち着きました。

 ただ、ネットワークテスト版では体験して頂けないのですが、最終戦がPvPではなく、ボス敵とのPvEになるパターンも用意しています。キャラクタービルドにより、そうした最終戦を希望する、ということもできるようにしています。

 我々としては「最終戦を戦う最後の3人に残った」ということに、しっかりとした達成感を感じて欲しいです。率直に申し上げれば、そのために、演出面では、ネットワークテスト版にはまだ不足があると感じています。

新規プレイヤーへの配慮と“フロムらしさ”の実現


――Switch2での展開も含め、従来のフロム作品を未プレイの新規層に向けた難易度や導線についてはどのようにお考えですか?

宮崎
お恥ずかしい話ですが、私自身はあまり考えていません(笑)。

 元々から、特定のユーザー層を想定し、そこに向けて作る、ということが得意ではないこともあり、「まずは自分が楽しいと思えるもの、作りたいものを作る」ということを大事にしています。

 ただ、本作はシステムとルールで遊ぶ比重が大きく、また新しい要素も多いので、それらをしっかりとユーザーさんに伝えることは、過去作よりも重視しています。

 そして、その点では、任天堂さんの手厚いサポートにとても感謝しています。我々が勝手に「当たり前だ」と思っている事柄についても、そうではないよ、と指摘して下さったり。このあたりは、元々、我々が不得手であることもあり、とても助けられていますね。

――テスト版のアイコンなどに見られる“車輪”のモチーフには、どういった意味が込められているのでしょうか?

宮崎
車輪は、黄昏の戦いにおける召喚が「時空を超えている」ことを表現するためのモチーフですね。先ほどもお話しした通り、本作の戦いの舞台は、色々な時代、場所の「黄昏」なので。

――製品版における育成やカスタマイズ要素について教えてください。

宮崎
血族キャラのカスタマイズ要素は用意します。

 キャラクターベースは、おそらく10体を大きく超える数を用意できると思います。各キャラクターで武器は固有ですが、血族技や、「権能」と呼ばれる特殊能力などをカスタマイズできます。

 また、仮面や入れ墨など、見た目に特徴をつけることも可能ですし、「烙印」と呼ばれるロール要素や、特定のイベントの発生確率を上げる、といったカスタマイズも可能です。

 本作のキャラクターカスタマイズは、能力や見た目だけでなく、そのキャラクターの運命、宿命といったものまで対象とするイメージなんです。

 そして、それらのカスタマイズ要素が、あるいはその収集が、断片的ストーリーテリングも担っている訳です。

――“烙印”に関しても、製品版で種類が増えるのでしょうか?

宮崎
今は、このシステム自体が新しいこともあり、比較的シンプルなものに留めていますが、製品版では、もう少し複雑なものも用意しております。後々、このシステムに慣れ、複雑なルールもある程度許容されるようになったら、更に色々と遊べそうに思います。結構拡張性のあるシステムなのかなと。


――“吸血鬼(血族)”という古典的なテーマを扱うにあたり、こだわった設定はありますか?

宮崎
そうですね…。

 本作では、プレイヤーキャラクターを吸血鬼ではなく、敢えて血族と呼んでいます。それは、彼らが単なる怪物ではなく、知性と哲学、文化と歴史を持った種族である、といったイメージによるもので、その点は特徴と言えるかもしれません。

 また、これはある意味で私の癖なのですが、拡大解釈主義というか、「我々が血族であると言えば、それは血族なのだ」といった感じで、トラディショナルなイメージは大事にしつつ、キャラクターデザインの幅を広めに取っていることも挙げられると思います。

 ネットワークテスト版では、ゾークが分かりやすいと思いますが(笑)


――キャラクターデザインにおいて、目元を覆っていたりミステリアスな人物が多いのは宮崎さんの好みなのでしょうか?

宮崎
まあ、それは特に否定しません(笑)。

 ただ本作は、我々としては比較的、顔が見えるキャラクターが多いと思いますし、キャラクターをデザインし、モデルを制作する過程で、キャラクターの背景や人格などを丁寧に表現しようとしています。過去作で言えば『SEKIRO』とか『Déraciné』とかに近いでしょうか。

 なのですが、まあ隠したくはなってしまいます。おそらく、単に好きなんだと思います、隠されたものが(笑)。『ELDEN RING』などでもそうだったのですが、顔データをしっかり作っているのにフルフェイスみたいな。

――目元を覆った女性キャラクターや、凛とした少年キャラクターに対するこだわりを感じます。

宮崎
そうですね。好きなんだと思います(笑)。ミステリアスな存在や、自分とは縁遠い、憧れるような存在が。

 でも、それが何故かは、あまり掘り下げないようにしています。あんまりよろしくないものが出てきたら、辛いですからね(笑)

 まあ、これはもう受け容れるしかないのかなと。なので、本作でも仰るような少年は登場します。大変申し訳ございません。

プレイヤー層の変化と、今後のアップデート方針は?


――ランクマッチやシーズン制などのコンペティティブ(競争的)な要素も用意されているのでしょうか?

宮崎
はい。運営方法など検討中ではありますが、ランクマッチやランキング、シーズン制などは用意します。戦いに勝利し、ランクを上げる。当然ですが、そうしたことも、本作の楽しみのひとつと考えています。

――マルチプレイ作品では、時間が経つにつれてプレイヤーの攻略が最適化され、初心者が入りづらくなる現象が起きますが、どのような対策を考えていますか?

宮崎
これには、2つの答えがあると思います。

 1つ目は、これまでお話ししてきたように、本作には様々な楽しみ方があること。そのため、初心者が楽しみながら、熟練者になっていくことが可能なこと。

 例えば、これも繰り返しになってしまうのですが、まずはストーリーを楽しみ、その過程で段々と勝てるようになり、また勝ちたくもなる、といった流れですね。

 2つ目は、これはアップデートでの話になりますが、熟練者が、むしろ初心者のメリットになるような要素を考えています。

 例えば、熟練者が特別な血盟相手になってくれたり、特別な強敵になってくれたり、あるいは、レアなイベントをもたらしてくれたり、といったような。熟練者が感謝され、尊敬されるようになれば、と思っています。

 ただ、これはまだ構想の段階です。現状は、まず製品版の完成に全力を注いでおり、アップデートの内容、タイミングなどは、まだ未定の部分も多くなっていますので。


――宮崎さんご自身が、最近プレイされているゲームや刺激を受けた作品はありますか?

宮崎
ゲームに関して言えば、仕事の一環として多くのタイトルをプレイしています。リサーチというか、トレンドを知るというか、そういった目的で。その中でも、趣味として遊んでいるのは、直近では『カルドセプト』ですかね。本当に直近ですが。

 あとは、ご質問の趣旨とはずれるかもしれませんが、最近では麻雀でしょうか。少し前に、久しぶりにリアルでやって負けて悔しかったので、鍛えなおしています(笑)。

――リリース後のバランス調整は、どの程度の頻度で行われる予定ですか?

宮崎
こまめにやっていくつもりです。

 調整であれ拡張であれ、余地の大きいゲームデザインかと思いますし、実際にどういう風にユーザーさんに遊んでもらえ、楽しんでもらえるのか、未知の部分も大きいので。

 そういう意味では、今回のネットワークテスト版の結果も重視しています。テストのフィードバックを受けて、できるだけ調整したいと考えています。

――『エルデンリング』などの過去作と比べて、ディレクション手法で大きく変えた部分はありますか?

宮崎
基本的には変わっていませんが、システムとルールで遊ぶ比重の大きいゲームなので、プレイテストと、それを受けての調整を、過去作よりも重視しているかと思います。

 勿論、過去作でもプレイテスト自体は行っていますが、それを受けて全体ルールなどを調整することが多いというか。私としては新鮮で、本作を作っていて楽しい部分ですね。

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