ネタバレ前提で語る舞台『FFBE幻影戦争』レビュー。ゲームとは異なる見せ方での伏線回収が見事。役者陣の熱演(特に殺陣)もすさまじく、戦争、そしてリオニス家の愛をしっかりと表現

カワチ
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 『ファイナルファンタジー』シリーズの初の舞台化で、スマートフォン向けタクティカルRPG『WAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争』をもとにした舞台『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS 幻影戦争 THE STAGE』が3月3日まで公演中です。

 ここでは2月22日に行われたゲネプロの模様をレポートしていきます。

 ちなみに筆者は以前、本作の名言集を30回ほど連載していました。舞台に登場した名場面とかぶる部分もありますので、ぜひこちらもお楽しみください!

※この記事にはゲームおよび舞台『FFBE幻影戦争』の重要なネタバレが含まれているので、ご注意ください。

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再構築されたストーリーにより、理解しやすい作りに【舞台幻影戦争レビュー】

 『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS(FFBE)』の数百年前の時代が舞台で、『FFBE』の歴史において“幻影戦争”と呼ばれることになる戦乱の物語を描く『WAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争(FFBE幻影戦争)』。今回の舞台は現在も続くメインストーリーのなかから“第1部レオンズバレー戦役 -CROSS BLADE-”を題材にしています。

 国と国の戦争を描いたゲームの『FFBE幻影戦争』は、立場や身分の違うキャラクターが数多く登場し、さまざまな視点で物語が紡がれていくことになりますが、舞台版は約3時間の内容に収めるため、モントやシュテルにとってのキーパーソンとなるキャラクター以外はオミットされています。

 リオニスはリリシュとラマダ、オー以外の配下は登場せず、ホルン陣営もシュゼルトのみ。また、ウェズエット陣営は丸々とカットされています。しかし、その大胆な構成が見事に成功。リオニス家の愛にテーマを絞ったことでストーリーはとても分かりやすく、キャラクターにも感情移入しやすい作りになっていました。

 ゲームのほうは連載形式でストーリーが進行したため、キャラクターの思惑や真意が後から明かされることが多く、それはそれでサプライズの楽しみではありましたが、今回の舞台は序盤でしっかり伏線を張り、後半でその伏線を回収する構成。

 とくにリオニスの王であるエルデに関しては顕著で、ゲーム版は“なによりも血筋を大事にしている冷血な人物”といった印象だが、舞台版は“事情があって息子たちに非情に接しなければいけない父親”であることが早々に分かる。

 母親のヘレナもエルデの影のように付き従うな女性というイメージから、心の奥では息子たちを愛していることが舞台からダイレクトに伝わってくるような演出。

 ゲーム版でもひとりで心情を吐露する場面では息子たちを思いやるシーンがありましたが、舞台版はヘレナを演じる鈴木紗理奈さんの感情に訴える芝居の効果もあり、感動させられます。鈴木さんはゲネプロ前の取材で自身も母親なのでヘレナの気持ちが分かると話していましたが、舞台を観ていて、その気持ちがヒシヒシと伝わってきました。

 ストーリーは争いを好まないモントがほかの国と共存すべきと考えているなか、父・エルデの指示によって戦線へと繰り出されるというもの。一方、モントの双子の弟であるシュテルは剣の腕は確かなものの、エルデの命令によって戦場に出れないため、不信感を募らせているというもの。

 また、前述の通り、舞台用にストーリーの構成がゲーム版と変わっており、舞台版の最初のシーンはモントとシュテルが生まれるシーンで、絶大な力を持つギルガメッシュがふたりに「リオニスの跡取りはひとり」と迫るもの。ヘレナが泣き崩れるなか、エルデは「猶予が欲しい」とふたりの息子が成人するまで待ってほしいと懇願。

 その提案を飲んだギルガメッシュが去ったあと、エルデはふたりの息子をなんとしても守ることを決意します。このプロローグでふたりの親の想いを知ることができるので、入りやすいストーリーになっています。ゲームでは、このあたりの情報が明かされるのはもっと後であり、エルデたちの真意はあえて隠されていますからね。

 舞台版は心優しいモントの優しさや、父に認められないシュテルの悔しさに加え、我が子を思うエルデとヘレナにも感情移入しながら鑑賞できます。

 モントとエルデが道中で出会うヒロインのマシュリーはNMB48の川上千尋さんが演じており、舞台版もとっても可愛いです。インタビューで「殺陣が好き」と川上さんは発言していましたが、次々と華麗なアクションを決め、姫でありながら戦闘の実力者であるマシュリーというキャラクターを見事に演じ切っていました。

 また、マシュリーに限らず本舞台のアクションシーンはどれも迫力が満点。もともとが高低差のあるタクティカルRPGだったゲーム版を舞台のセットで上手に表現していますし、アンサンブルのみなさんが高い運動神経を生かして飛び跳ねるので迫力があります。

 また、『FFBE幻影戦争』、引いては『ファイナルファンタジー』シリーズの見どころともいえる“魔法”や“召喚獣”も舞台のギミックを使って表現されています。

 サブキャラクターの数は原作から絞られていますが、逆に言うと登場するキャラクターたちにはしっかり見せ場が用意されていて、それぞれが舞台の上で輝きを放っています。

 桜庭大翔さんが演じるシュゼルトは、愛する妻を殺された悲痛な叫びや、ともに苦難を乗り越えてモントを“友”と認めるシーンは泣けますし、石坂勇さんが演じる、シュテルの剣の師匠であるオーの鬼気迫る戦いは息を飲みます。これらはゲームでも名シーンでしたが、舞台版は生身の人間が全身で演技をするので、より、その悔しさや決意といった溢れる気持ちがダイレクトに伝わってきます。

 プロレスラーを引退して新しい一歩を踏み出した赤井沙希さんの演じる凛々しいリリシュや、女性アイドルグループ・たこやきレインボーの元メンバーである清井咲希さんが演じるミステリアスな雰囲気のラマダなど、原作のイメージを大事にしつつも、各役者の味も追加されたキャラクターも魅力的です。

 また、本公演で筆者がいちばん惹かれる演技をしたのがフェネスの狂王・ムラガを演じるレイザーラモンHGさん。自分が若いときにテレビで観ていたレイザーラモンHGさんの印象が強く残っている自分は、「ムラガ役というギャグ要素のない配役で大丈夫なのだろうか」と思っていましたが、お笑いの舞台や営業を数多くこなし、プロレスラーとしても活躍していたレイザーラモンHGさんの声量と迫力はすさまじく、圧倒的な武力で敵を蹂躙するムラガの恐ろしさを見事に表現していました。

 力が暴走して抑えられなくなるシーンでは味方の部下を軽々と持ち上げますが、舞台上のギミックなどを使うことなく、本人の力だけでやってのけるのがすごかったです。

 敵役では浦野秀太さんが演じるクリスタル教のサーダリー・クルステアも必見。丁寧で慈悲深い雰囲気でありながら、底が見えない怖さを持ったサーダリーの怪しさを見事に演じています。

 ストーリーに関しては、エルデに捨て駒にされたと誤解し、彼を殺す決意をしたシュテルが黄金の甲冑に身を包んで登場するシーンや、モントがイフリートを召喚して城門を破るシーンなど、「舞台化するなら、このシーンは絶対にやって欲しい」と思っていた展開は組み込まれてました。

 また、区切りのいいところでストーリーはしっかり終わるものの、これから第2部のストーリーがはじまることを予感させるような演出も。今回の舞台がとてもクオリティ高く、満足できるものだったのでぜひシリーズ化して欲しいところ。この舞台から『FFBE幻影戦争』の世界にハマっていくのもアリだと思うので、ぜひ足を運んでみて欲しいです!

『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS 幻影戦争 THE STAGE』概要

【脚本・演出】松多壱岱(ILCA)
【出演】
吉田仁人(M!LK)
武藤 潤(原因は自分にある。)
川上千尋(NMB48)

赤井沙希
清井咲希
浦野秀太(OWV)
桜庭大翔

石坂 勇

レイザーラモンHG 
姜 暢雄

鈴木紗理奈
前川泰之

奥平祐介 加納義広 工藤翔馬 熊倉 功 澤田圭佑 下尾浩章 中野貴文 横田 遼 ※五十音順

【会場】ヒューリックホール東京
【公演日程】2024年2月23日(金・祝)~3月3日(日)全14回公演
【先行発売】2023年10月18日(水)12:00- / 【一般発売日】2023年12月17日(日)10:00-
【主催】FFBE幻影戦争 THE STAGE実行委員会
【企画・製作】エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ/ILCA
【企画協力】スクウェア・エニックス
【お問合せ】公演事務局(平日10:00~17:00)

幻影戦争名言集

© SQUARE ENIX
©「FFBE幻影戦争THE STAGE」実⾏委員会

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