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小人となって死を潜り抜ける会話型アドベンチャー『SAEKO: Giantess Dating Sim』。家主の巨大少女の機嫌を損ねると…?【電撃インディー#670】

文:セスタス原川

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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。

 今回はHYPER REALが2024年にPC(Steam)にて配信予定で、Steam Nextフェスでデモ版も配信中のアドベンチャーゲーム『SAEKO: Giantess Dating Sim』をレビューします。

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 なお、電撃オンラインでは尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!



小人たちの命を脅かす冴子の手【SAEKO: Giantess Dating Sim】


 本作は小人になってしまった主人公が、巨大な女子・冴子の部屋でさまざまな選択を行いながら生き抜いてゆくアドベンチャーゲームです。主人公のリンは大きな机の上で目を覚まします。そこには大きな女子の冴子がおり、自分が小さくなったことに気が付くのでした。

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 小人となった主人公にとっての天敵がこの部屋にはいます。その命を脅かす存在は何かと言えば……家主である冴子本人です。主人公の他にも冴子の元には小人たちがいますが、唐突に冴子は「お腹すいた」と言うと周囲の小人をパクッと食べてしまいます。彼女にとって小人はお菓子程度の感覚の食物でしかないのです。

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 そんな小人たちにも役割があるようで、主人公はただの食物ではなく、彼女の話し相手や他の小人の世話をする係に任命されます。しかし、常に命は冴子に握られた状態で死と隣り合わせ。こうして、彼女の機嫌を損ねないように生活するサバイバルライフが幕を開けるのでした。

 最近の風潮として、純粋に可愛さだけでなくプラスアルファで特徴的なビジュアルや尖った内面など癖のあるキャラクター性を持ったヒロインがトレンドになっている印象を受けます。最近もSNSでは高身長女性の魅力が話題に上がっていましたし、偶然にも企画段階から狙っていたはずの部分も含めてトレンドに沿ったキャラクターという印象です。

 そこでみなさんどうでしょう? 自分の数十倍もの大きさで、何も気にせず小さな人間をパクっと食べてしまう女の子。惚れ惚れしてしまう……には無理がありますね。しかも、ゲーム内の描写では主人公視点で彼女を見上げる構図が多く、こちらが小さいということより、彼女が大きいという印象がより強く感じられます。小人を食べてしまうという面も合わせると、恐ろしいと思わざるを得ません。

正解の会話を続けて彼女のご機嫌取り【SAEKO: Giantess Dating Sim】


 ただ、冴子はサイコパスな面を持っているのは事実ですが、歪みはありつつも自分の中にしっかり己の世界観を持っている芯のある女性でもあるのです。その内面が見えてくるのが、彼女と会話を行うアドベンチャーパート。小人をパクパク食べてしまう倫理観には同意しかねますが、話の中には真を突いたような考え方もあり、どういう経緯で今の彼女が構成されたのかが少しずつ見えてきます。

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 彼女は主人公に対して自分の人生観を語ります。それに対して主人公は要所で「うん」「ごめん」「違う」など返事を選択します。ここで会話を無視したり、彼女の気分を害する返事をしたりしてしまうと、彼女の手が伸びてきて……プチっとゲームオーバー。絵柄が線画で抽象的なデザインなので見た目は優しくなっていますが、かなりグロテスクな表現が用いられています。

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 このゲームで生き残る方法は、冴子のご機嫌を取り続けること。そして、相手が満足する言葉を選ぶこと。自分の感情を抑えてこのゲームを攻略し続けられる人は、世渡りの上手い人と言えるかもしれません。どの環境でも自分の立場を守るためには、素直な気持ちを飲み込む我慢が求められる場合もありますからね。

 主人公の置かれた状況とは、命がかかっているという意味でも、冴子が巨大という意味でも文字通りスケールが違いますが、我々も日常生活で同じような境遇を生きていると言えます。冴子の人生観や主人公の立場など、本作のところどころから現実世界と重なる風刺的な面を感じました。

 また、机の引き出しの中は小人たちの小さな世界となっており、そこで他の小人たちと交流を行います。同じ空間で暮らす彼らのパラメータを管理して、彼らの命を保つことも主人公の仕事の1つです。

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 デモ版でプレイできた序盤では、主人公が冴子の事実を知る以前の小人同士のやり取りを体験できましたが「これからよろしく!」と仲良くなった次の瞬間、冴子が帰宅してヒョイパクっと仲間の1人が消える場面は衝撃的でした。公式サイトなどの情報によると、主人公たちが小人になった原因は冴子にあるようですが、一体真実は如何に……。

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 小人同士の会話は冗談めいた明るい内容もありますが、何故か周囲には恐ろしい雰囲気が漂っている印象。絵柄を線画にしているのはホラー感を倍増させるのに一役買っており、冴子の恐ろしさと、食料として管理される小人たちの世界の意思をうまく強調して描いています。

 他にも、冴子は大きく表情を動かすことは無いのですが、目の開き方がちょっと変わったり、口元が少し動いたり、ちょっとした表情の変化だけで彼女の心情が見えるようになっています。逆に感情を大袈裟に表現しないからこそ、彼女の闇深さがにじみ出ていますね。タイトル画面ではカーソルを冴子の視線が追いかける小ネタもあるので、常に彼女の表情には要注目です。

 果たして、主人公は冴子の支配から逃れることができるのでしょうか。それとも、彼女と共存する何か別の道を見つけ出せるのでしょうか。全てはあなたの選択と行動次第。独特なホラー感と緊張感のある世界観をぜひお楽しみに。



今晩6月13日19時から配信の“電撃ゲームライブ”#131 電撃インディー3周年SPで実機プレイをお届け!


 番組ではSteam Nextフェスで初公開された最新デモより、2つあるゲームパートのうち“夜パート”を実機プレイ。怪しげな魅力を秘めた冴子との世間話の先に待つものは……?




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