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新作『たねつみの歌』制作時に掲げた3つのテーマとは? アニプレックスのノベルゲームブランドANIPLEX.EXEの制作論【島田Pインタビュー】

文:カワチ

公開日時:

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 アニプレックスによるノベルゲームのブランド“ANIPLEX.EXE(アニプレックスエグゼ)”についてプロデューサーの島田紘希さんにインタビューを実施する特別企画。

 前編ではこれまでのANIPLEX.EXEの歩みを振り返ってもらいましたが、後編では新作『たねつみの歌』の魅力についてお聞きしました。

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Kazukiさんの『国』シリーズ作品に感銘を受けて、『たねつみの歌』のオファーを決意


――新作『たねつみの歌』についてお聞かせください。作者のKazukiさんはフリーゲーム界隈で名の知れた方ですが、島田さんが商業シーンだけでなく、フリーゲームのシーンまでチェックしていることに驚きました。どのようにKazukiさんに頼むことになったのでしょうか。

 ノベルゲームは18禁、非18禁問わずにおもしろそうだと思ったものはだいたいチェックしているので、Kazukiさんの『国』シリーズもプレイしていました。

 具体的には、もともと発売当初に『雪子の国』をプレイしていて、『ATRI』と『徒花異譚』の開発が終わったタイミングで、シリーズの他作品を一気にプレイしたのですが、近年で滅多にない感動をして、その熱量のままKazukiさんに連絡したような形ですね。

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――私もKazukiさんは世界観を作り上げるのが本当に上手な素晴らしいクリエイターだと思います。起用されたときはうれしかったのですが、今回、フリーゲーム界隈で活動しているKazukiさんに声をかけることができたのは、ANIPLEX.EXE自体が4作目で幅を広げられるようになったからですか?

 4作目だからというのはあまり関係なくて、どちらかというと『ヒラヒラヒヒル』と同じくANIPLEX.EXEでゲームを出す意味を考えた結果のひとつですね。ただ、根幹にあるのは、おもしろいものを作っている人がいるなら、その人に声をかけて一緒におもしろいものを作ってみたいという自分の欲求です。

――本作は『ATRI』で演出を担当したYowさんがディレクターとして参加していますが、この座組はどのように決まったのでしょうか?

 KazukiさんのシナリオにYowさんの演出が加わったらどうなるのか、自分のなかでワクワク感があったのが理由です。Kazukiさんの作品はどちらかというと静的な演出の印象ですが、Yowさんは動的な演出も得意とされているので、シーンに応じてうまく掛け合わさったときに、新しいものができるんじゃないかと考えました。

 また、今回は必要な素材数が多くなりそうな作品でしたし、全体の制作進行においてよりプロフェッショナルの知見と経験を借りたいというところもあって、Yowさんにディレクションをお願いすることになりました。

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――キャラクターデザインにPopman3580さんとマニアニさん、音楽に原田萌喜さんを起用した理由もお聞かせください。

 『たねつみの歌』にはみすずをはじめとする主要の登場人物と、彼女たちが旅する神々の国に登場するいろいろな種族のキャラクターがいて、そのデザインは分けようと考えていました。

 メインキャラクターは親しみやすい人物にしたくて、ポップで透明感のあるタッチが魅力のPopman3580さんにお願いしました。マニアニさんに関してはSNSで公開しているイラストが魅力的だったので、この方であれば、Kazukiさんがイメージする神々をうまくアウトプットしてもらえるんじゃないかと考えました。

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 音楽に関しては、本作がいろいろな国を旅する話なので、国ごとにデザインだけでなく音楽にも違いを付けたいと思っていました。そんな中で原田萌喜さんをご紹介いただき、クリエイティブの引き出しが非常に多彩な方だったので、ぜひお願いしたいとなりました。

『たねつみの歌』を制作する際に決めた3つのコンセプトとは?


――本作はこれまでのANIPLEX.EXEの作品に比べると複雑な設定のストーリーになっていると思うのですが、どのような作品になりますか?

 16歳の少女・みすずと、過去からやってきた16歳の母親・陽子、未来で出会った16歳の娘・ツムギの3人が冒険するというのが大まかなストーリーですが、最初に固めたコンセプトは3つあります。

 ひとつめはノベルゲームに触れたことのない人でも楽しいと思えるような作品にしたいということで、もうひとつはロープライスと呼ばれる価格でフルプライスと同等以上の満足感を感じてもらいたいということ、そして最後のひとつは、ノベルゲームを愛しているコアな方々にもちゃんと満足してもらえるような作品にしたいということでした。

 Kazukiさんたちと、その3つのコンセプトを軸に女の子たちの旅をどう描いていくのか組み立てていきました。

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――ジャンルとしては家族モノになるのでしょうか?

 主人公とヒロインの恋愛要素のようなものはありません。全体としては、家族というものについてどう向き合っていくのかということを描いているので、広い意味でのジャンルとしてはやっぱり家族モノになるのかなと思います。

 そのうえで、春夏秋冬の国をめぐる冒険自体もダイナミックなものとして楽しんでいただけるものになっているはずです。細かいところでは、1980年頃に生まれた女の子と2000年頃生まれの女の子、2030年頃生まれの女の子、世代の違う3人の間で起こるジェネレーションギャップもおもしろいと思います。

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――Kazukiさんの『国』シリーズは、舞台となる世界の自治体や政治まで精密に作ってあるところが魅力ですが、『たねつみの歌』も独自の世界が作られていますか?

 はい。神々の国の設定はもちろん、自分が驚いたのは2050年の設定です。まず1996年頃から陽子がみすずのいる2023年の現在にやってきて、そのふたりが出会ったうえで、今度は2050年の未来にいるツムギを迎えに行くことになりますが、2050年の世界をしっかり考えているんです。

 2050年は冒険の前に通り過ぎる地点で、描かれる量もあまり多くはないのだから、そこまで深く考えなくてもいいのではと僕なんかは思うのですが(笑)。そういった妥協なく、Kazukiさんは2050年の未来を想像して描いていて、だからこそ、その時代で育ったツムギの人物像に説得力が生まれているように思いました。

――『たねつみの歌』を楽しみにしている人にひとことお願いします。

 期待に負けないような作品にしたいと思っています。リリースされたあとおもしろいと感じていただけたのであれば、ぜひ知り合いや友人、ご家族に勧めてくださるとうれしいです。いろいろな人にプレイしてもらいたい作品に仕上がっています。

今後のANIPLEX.EXEの展望は?


――最後にANIPLEX.EXEの展望をお聞かせください。『ヒラヒラヒヒル』までは従来のPCゲームファンに刺さる内容だったものの、第4弾でKazukiさんを起用されたことで、次は誰も想像できなくなっていると思いますが……?

 ANIPLEX.EXEはノベルゲームというジャンルであればなんでもありというスタンスなので、誰のどんな作品が出てくるのか予想できないというのも、おもしろみと思っていただけると嬉しいです。

 今後どなたと作品制作をご一緒するとしても、このブランドで出す以上は、プレイした方がノベルゲームのおもしろさを感じていただけるような作品にしていきたいです。いろいろと挑戦してみたいことはありますが、まずは『たねつみの歌』が最優先なので、この作品を楽しみにお待ちいただければなと思います。

――楽しみにしています。本日はありがとうございました。

カワチRPGとビジュアルノベルが好きなゲーマーで、誰にも気付かれないようなマニアックな小ネタを記事に織り込むのが好き。深みのあるゲームが好きかと思えば、本当は肌色が多ければなんでもいいビンビン♂ライター。

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