電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、グラビティゲームアライズが近日配信予定のNintendo Switch/PC(Steam)用ソフト『THE GOOD OLD DAYS(グッドオールドデイズ)』の体験版レビューをお届けします。
本作は少年たちの冒険を描く横スクロールアクションゲーム。少年であれば誰もが一度思い描いたであろう仲間との冒険を描いており、プレイヤー自身にもその懐かしさを感じさせてくれる、大人にこそプレイして欲しいタイトルです。
ゲームシステムに関しても、仲間を救出するごとに行ける場所が増えたり、目的となる借金返済のための道のりの自由度が高かったり、その過程に応じたエンディングがあったり、遊び応えのある内容になっています。
なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!
名作をリスペクトした少年たちの冒険談
冒険を夢見る少年・ショーンは、押しかけてきた借金取りから父親が作った借金の返済を要求されます。しかも支払い期限は本日中。支払いのため、人質にされてしまった仲間たち“ヌーギーズ”を助けるため、ショーンは地下に眠る先祖が残した財産を探す冒険に出発するのでした。
本作の物語は1980年代のジュブナイルに影響を受けており、本作では“借金取りに返済を迫られる”“少年が隠し財産を探す”“仲間との冒険”など、劇中の要素を取り入れてオマージュしています。
本作で描かれるのは少年たちが一度は夢見る冒険劇。プレイヤー自身も、ショーンたちと自身の少年少女時代と重ねることによる懐かしさを感じられます。
ショーンが返さなければならない借金の総額は30,000ドル。ショーンはこの大金を1日で集めなければいけません。絶望的な状況でありながら、ショーンは冒険に出たかったという夢を予想外の形で叶えるのでした。
冒険物語には欠かせない悪役も登場。洞窟に眠る財宝の話を盗み聞きした悪党一家がショーンの前に立ち塞がります。
この悪党のメンバー構成も既視感がある構成で、一家を仕切る気の強い母親、考えることが苦手な巨漢の息子、それを馬鹿にする性格の悪そうな息子、機械に乗った謎めいた息子という4人組。悪役なのですが、気が抜けたような会話でどこか憎めなさがある悪役一家は、たびたびショーンの前に現れます。
逆に最初にやってきた借金取りは、ショーンに爆弾を与えてくれたり、冒険のアドバイスをくれたり、ゲームを進めるにつれて本当の意味での悪人ではない雰囲気が増してきます。一見怖いけど実は親切なおじさんといった感じで、これも少年から見た“大人”をうまく表現した冒険物語にうまくフィットするキャラクター性になっています。
爆弾と仲間の力で道を切り開く
ショーンの冒険で頼りになるのは、険しい道を進む自身の脚と、借金取りに渡された何度も使える爆弾と、各地に散らばった仲間たちです。
爆弾は扉を開けてアイテムを入手したり、崩れかけの道を通れるようにしたりと、洞窟内で活躍します。
人質として各地に閉じ込められた仲間を救出すれば、キャラクター切り替えが可能に。ショーンのように爆弾は使用できませんが、各々の特徴を活かしてショーンだけでは進めない場所に道を作ってくれます。
冒険の場所は洞窟だけではなく、家から離れた森や、洞窟のさらに地下に広がる空間のように、ゲームを進めるたびにどんどん広がっていくので、探索する楽しみが尽きることはありませんでした。
電話ボックスを利用したファストトラベルも用意されていますが、プレイ中の9割は徒歩移動。一度遠くまで冒険すると、元の場所に戻るのには時間がかかるので、先に進む際にはすこし覚悟を決めなければいけません。
ゲームシステムとしては移動が大変な面もありますが、プレイ中にはストレスよりも高揚感の方が強く、そこまで気にはなりませんでした。その高揚感の正体は恐らく、幼い頃に誰しも感じたことがあるはずの“普段遊ぶ場所から離れた場所に行く”ときのあの感覚です。
大人になった今考えれば少し離れただけの近所。しかし当時の子供目線では、数キロ離れた場所に行くだけで、まるで別の世界を訪れたような不安と高揚感がありました。
プレイヤーもショーンに影響されて「先に進むと戻るのが大変になってしまうが、何か面白いことが待っているかもしれない」という、幼い頃の遠出で感じたワクワクと不安に似た感情を抱きながら冒険を進めていくことになるのです。その感情がくすぐられる影響か、気が付くと先へ先へと探索を続けてしまう中毒性を生み出しています。
冒険で訪れる各所には、扉に隠された鍵が用意されており、それを使って探索できる範囲を広げていきます。鍵はリポップする代わりに使い捨てなので、使いどころもある程度考えないとならないところが本作のちょっとした難しさを作っている部分。特に、レアな“金の鍵”は手に入ったらどこで使うのかをよく考えたいところです。
お金をどう集めるかはプレイヤーの性格次第
財宝はさまざまなところに隠されており、生い茂った草木の中、壊せる壁の中など、注意深く探索しなければ見落としてしまうかもしれません。
落ちている金額はわずが数百ドル。運が良いともう少し大きな額を拾えますが、これをコツコツと集めるところが借金返済へのメインルートです。
「お金を拾ってなんてやってられない!」という方のために、お金を増やす方法は他にも用意されています。各地にはNPCキャラクターがおり、さまざまな形でショーンにお金稼ぎのチャンスを与えてくれます。
宝くじを鑑定してくれる人、レアアイテムを買い取ってくれる人、ギャンブル勝負を受けてくれる人なども! 目指すべき目標は30,000ドルを集めることですが、どうやってそれを達成するのかはプレイヤーに委ねられています。
筆者はギャンブルができるNPCを見つけた瞬間に「ここで30,000ドル稼いだらクリアできる!」とダメ人間の典型的な思考でせっかくのお金を溶かしてしまう始末。本作のテーマである少年冒険談に最も似合わない選択をしてしまいました……。
ショーンにはHPの概念があり、これが無くなったり、一発アウトのトゲの山に触れたりしてしまうと、チェックポイントからの再スタートになってしまいます。
再スタートになってもお金を失うことはありませんが、返済までの時間制限が3分縮まってしまいます。これもお金と同じで塵も積もれば山となる理論で、何度も再スタートするとお金を集める時間が無くなってしまいます。
大人にこそ遊んで欲しい懐かしさ満載の一作
冒険を続けていると、背景に隠された通路、画面表示領域を生かした見えにくい道など、横スクロールアクションならではの攻略要素が見えてきます。
プレイ中には何度も「ここより先進めないけど……」となりましたが、進むべき道を見つけた際の気持ち良さは格別。進み方に悩んだストレスを吹き飛ばす気持ち良さがありました。
他にも、ショーンの爆弾を足場にしたり、キャラクターコントロールで困難な段差を登ったり、頭を捻ることで突破できる場所も多数。純粋な横スクロールアクションとしても高い完成度だと感じました。
ショーンの冒険物語を通して、プレイヤーにも幼い頃の記憶を思い出させてくれる本作。物語やゲームの魅せ方もノスタルジックな感情を掻き立てるものがあるうえ、純粋に2Dの横スクロールアクションという作りも、長くゲームで遊んできた大人たちにとっては懐かしさを増幅させる要因になっているかもしれません。
インディゲームでありながらも、やり応えはプレイヤーの予想をいい意味で裏切るビックボリューム。ショーンの返済結果やその過程でエンディングが変わるマルチエンディングを採用しているとのことで、じっくりと遊べる作品と言えるでしょう。
大人になってから毎日同じことの繰り返しで、幼いころのワクワクを忘れてしまったみなさん。『THE GOOD OLD DAYS』であの頃に妄想した冒険の続きを体験してみませんか?
なお、10月15日より開催される“Steam Nextフェス”に『THE GOOD OLD DAYS』も参加しているので、ぜひチェックしてみてくださいね!