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庵野監督作品には“日本神話の元ネタ”があった!? 『エヴァンゲリオン』『シン ・ゴジラ』考察に役立つ日本神話の激ヤバエピソード

文:電撃オンライン

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 アニメや漫画の話題作について雑談をしている時に、もっと気の利いた感想やうんちくを言えたら良いのに! と思うことはありませんか?

 例えば、ファンタジー作品の元ネタになった神話や宗教のエピソードを引き合いにだすことができたら……理解が深まり、話も弾むはず!

 そこで今回は、
人気YouTubeチャンネル“しんりゅう / ファンタジー&神話研究所”の初著書『神話と宗教の解体神書 ファンタジーの元ネタ超解説』(KADOKAWA)より、庵野秀明監督作品と日本神話の関係にまつわる箇所を抜粋して紹介していきます。
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※本稿は、しんりゅう著、沖田瑞穂監修『神話と宗教の解体神書 ファンタジーの元ネタ超解説』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
※あくまで考察であり、公式解答ではありませんので、ご了承ください。

『新世紀エヴァンゲリオン』と日本神話

 2021年についに完結を迎えた『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ。

 作中の名シーンにも数えられるのが、日本の電力を総動員して使徒(で人類に敵対する存在)を陽電子砲で撃ち抜く“ヤシマ作戦”です。

 このヤシマ作戦というネーミングは、日本神話で日本列島を指す“大八島国”と、那須与一(なすのよいち・源頼朝に仕えていた平安時代末期の武将)が扇の的を射抜いたとされる“屋島の戦い”のダブルミーニングだと言われています。
カッコ良すぎる!

 ではそんな“大八島国”がどのようにして生まれたか、元ネタの日本神話を見ていきましょう。

兄妹の“共同制作により”幕を開ける日本神話

 天地が創造されるよりも前、世界は混沌としていたそうです。

 『日本書紀』には“鶏卵のよう”と記されています。
超ドロドロ。

 そんな状態の世界に突然天地が生まれ、原初の神々“別天津神(ことあまつかみ)”が誕生します。

 すると、その後も神々がどんどん生まれていき、やがて男神イザナキ(伊邪那岐)と女神イザナミ(伊邪那美)の兄妹が生まれます。2人は日本列島を作った超重要な神なんです。

 イザナキとイザナミは神々の命に従って、大地を固めることになりました。

 じつはこのころの地上世界はまだ、“海を漂うクラゲのような状態”でした。そこで2人は“天沼矛”を使って地上世界をかき混ぜ、“淤能碁呂島”を造ります。

 そして2人は島に住み、なんと兄妹で結婚。日本初の夫婦となり、子どもを作ることになりました。

 そんな2人の間には、最初に“ヒルコ(蛭子)”という神が生まれましたが、身体が不自由だったが故に、海に流されてしまいます。
悲しい……。

 その後、2人は神々の助言をもとに再挑戦。すると今度は、日本列島である“大八島国”が生まれます。

 国土を生む母イザナミ、スゴすぎます。これが日本誕生の物語“国生み”です。

国生み後の神生みもネタの宝庫

 続いて2人は様々な事物を司る神々を生む“神生み”を行います。

 風の神、山の神、家宅の神などを次々と生んでいくんですが……ここで大事件が発生。

 火の神ヒノカグツチ(火之迦具土神)を生んだ際に、イザナミは陰部に大火傷を負ってしまったんです。

 痛みに悶えるイザナミの排泄物からも数多の神々が誕生します。
さすが神々の母。

 しかし、やがてイザナミは命を落としてしまいます。

 イザナキは妻の枕元で嘆き悲しみます。そして愛する人を失った怒りから、ヒノカグツチを斬り殺しました。このとき流れた涙や血からも、神々が生まれていったそうです。

 なんだか、いかにも創作に使えそう(?)なエピソード。

 日本最初の夫婦であるイザナキとイザナミは天沼矛でドロドロの海(大地)をかき混ぜて島を作り、最初の住まいを設けました。

『シン・ゴジラ』では“ヤシオリ作戦”

 大ヒットを記録した映画『シン・ゴジラ』。謎の巨大生物が東京湾から上陸し、街が破壊されていく中、政府は未曽有の危機の対処に追われ始める……という物語。

 作中で、ゴジラを凍結させるために血液凝固剤を大量に打つ“ヤシオリ作戦”が行われました。

 作中でも説明があるように、これはゴジラの凍結をヤマタノオロチの泥酔になぞらえて、八塩折之酒から取られた名前です。

 また、凝固剤を注入する車両部隊の名前は“アメノハバキリ”。日本の最強怪物の討伐に、日本神話の名称を持ってくるセンスがめちゃくちゃカッコいいです!

 現代における神話の再演とも言えるかも? 

 ヤマタノオロチ討伐はいかにも『シン・ゴジラ』にマッチした元ネタですが、ヤマタノオロチ討伐って実際どんな話? と言われるとよく知らない人も多いかもしれません。

突然の求婚からはじまったオロチ退治

 日本神話の有名エピソードに、天照大神が岩屋戸にこもる話があります。

 この出来事のきっかけを作ったのは、弟スサノオの大暴れ(畑を荒らしたり、姉の神殿にウンチをまき散らしたり、馬の皮を剝いで家屋に投げ入れて女神を殺してしまったり)です。

 その罰としてスサノオは、天界から地上に追放されてしまいました。まあしょうがないです。

 スサノオは現在の島根県にあたる“出雲国”に降り立ちます。

 スサノオが地上を歩いていると、アシナヅチ(足名椎命)とテナヅチ(手名椎命)という老夫婦から、8つの頭と尾を持つ大蛇“ヤマタノオロチ(八岐大蛇)”のことを耳にします。

 老夫婦には8人の娘がいたんですが、すでに7人がヤマタノオロチに食べられていて、残った娘はクシナダヒメ(櫛名田比売)1人だけでした。
恐すぎる!

 話すうちに、スサノオはクシナダヒメを愛しく感じます。そして“オロチは私が討伐するから、娘を妻にくれないか”と老夫婦に願い、自分がアマテラスの弟であることを明かします。

 
突然すぎる求婚。天から来た神の願いを断るはずもなく、老夫婦は快諾し、スサノオは討伐を開始します。

酒に酔わせてヤマタノオロチ討伐

 スサノオは老夫婦に“八塩折之酒”を造らせ、8つの酒桶に入れさせます。

 そして、櫛に変えたクシナダヒメを髪に刺して待っていると、オロチが現れて、8つの頭を8つの酒桶に入れて飲み始めました。まさに大酒飲みの蟒蛇(うわばみ)?

 オロチが泥酔したのを見ると、スサノオは自身の剣“天羽々斬”でオロチを斬り殺します。騙し討ちで見事勝利!

 約束通りスサノオはクシナダヒメを妻にもらいました。

 ちなみにスサノオがオロチの尾を斬ったとき、天羽々斬が何かに当たって刃がこぼれてしまいました。

 取り出してみるとそれは、三種の神器の1つとなる神剣“天叢雲剣”。

 大蛇討伐で手に入れた神剣
……好き!

 その後、スサノオは天叢雲剣を姉アマテラスに献上。こうしてスサノオは“天界で大暴れした神”から“怪物を討った英雄神”へと大成長を遂げたのでした。

 こうしてみると、元になっている神話のエピソード自体が破天荒&超展開でめちゃくちゃ面白いです。元ネタを深掘りすると、作品が二度おいしい! かもしれません。

そもそも『神話と宗教の解体神書 ファンタジーの元ネタ超解説』」の内容は?

 YouTubeチャンネル登録者数18万人の“しんりゅう / ファンタジー&神話研究所”から、書籍が誕生しました。

 かの名作、トールキンの『指輪物語』が実際の神話・伝説・民俗をふまえていることはよく知られています。このようなファンタジーの世界観を持った作品の設定やキャラクターデザインの神話要素について紹介している当チャンネル。

 今回の書籍化にあたり、これまで紹介してきた作品だけでなく新規のものも合わせて約150作品を取り上げ、関連する神話・宗教ごとにまとめ直しました。ド定番のギリシア神話に北欧神話、キリスト教はもちろん、世界各地の神話・宗教を幅広く収録しています。

 大好きなアニメ・漫画やゲームは、神話と宗教の知識があるともっと深掘りして楽しめる!

 深堀りする為の手助けとなるのが、本書『神話と宗教の解体神書 ファンタジーの元ネタ超解説』です。

執筆・監修者プロフィール

著者:しんりゅう
 ファンタジー好きだった父の影響を受けて、ゲーム、漫画、小説など、様々なファンタジー作品に触れて育った一般男性。

 作品内に登場する用語の“元ネタ”を調べるうちに神話・宗教に興味を持ち、専門書を集めて学び始める。

 神話好きが高じて、2022年6月にYouTubeチャンネル“しんりゅう / ファンタジー&神話研究所”を開設。

 “ファンタジー作品の元ネタ紹介”を軸に、神話用語を解説する動画を投稿している。2024年8月現在、チャンネル登録者は18万人。

 
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@shinryu_myth/videos
 
Xアカウント:@shinryu_myth

監修:沖田 瑞穂(おきた みずほ)
 1977年、兵庫県生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科日本語日本文学専攻博士後期課程修了。博士(日本語日本文学)。

 専門はインド神話、比較神話。

 著書に『マハーバーラタの神話学』(弘文堂)、『マハーバーラタ入門―インド神話の世界』(勉誠出版)、『世界の神話』(岩波ジュニア新書)、『怖い女』『怖い家』(以上、原書房)、『災禍の神話学』(河出書房新社)など多数。
 
Xアカウント:@amrtamanthana

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