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AI×VTuber(AITuber)事業を担うOne Acre。未体験のライブ配信を目指して生まれた、AIが人に寄り添う深夜の優しい相談室

文:うご

公開日時:

 One Acre(ワンエーカー)は、広告代理店事業を中心にTikTokマーケティングやアカウント運用方法、SNSコンテンツ制作を大手飲食チェーン店やゲーム会社に提供する企業。加えて、モバイルゲーム、LIVEゲーミングの開発やショートドラマ制作、美容サロン運営なども展開しています。

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 また、SNSでは総フォロワー数10万人を突破するなど盛り上がりを見せている、最新技術を駆使して開発したAI×VTuber(以下、AITuber)プロジェクトグループ“Logic Lily”(ロジックリリー)を運営しています(開発:株式会社One Acre CTO高木氏が代表を務める株式会社VS Games)。

 そんなOne Acre社にインタビューを実施。本稿では企業としては珍しいAI×VTuber(AITuber)事業について、別途掲載の記事では会社の事業内容や展望に踏み込んでいきます。

 お答えいただいたのは、代表取締役の折茂腎成さん、主に広報事業を担当している小金丸晃誠さん、ゲーム事業GM担当の楡井雄志朗さん。AITuber事業を始めたきっかけ、個人AITuberは生まれてくるのかなどを語っていただきました。

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▲写真左から、折茂腎成さん、小金丸晃誠さん、楡井雄志朗さん。
※本記事は、One Acreの提供でお送りいたします。

仮説から生まれた“AITuber”。AIの要素を組み込むことで、今までになかったおもしろいライブ配信が作れる……?


――One Acreでは最新技術を駆使した、AITuberのプロジェクトを展開されています。そもそものお話になりますが、このプロジェクトを始めた理由をお聞かせください。

折茂腎成さん(以下、敬称略)
AIに関する事業はやろうと思っていましたが、実はAITuberをやろうとは思っていませんでした。そもそも、まずAITuberという文化が自分の知らないところで生まれていたことも知らず、自分が立ち上げたと思っていたら、すでに世の中にあった感じですね。

 最初は、TikTokやYouTubeなどのライブストリーミングのなかに、ゲーミフィケーション(ゲームの要素などを非ゲームの分野に応用すること)やAIの要素を入れていくことで、今までになかったおもしろいライブ配信が作れるのではないかという初期仮説がありました。

 そんな仮説をTikTokの親会社にあたるByteDanceさんと話させていただいて、2022年の年始頃におもしろそうなので、本社で開発をするのでやってみようと。

 まずはTikTokのライブ上に神社を作り、年末年始にイベント化して、みんなが参拝に来て、縁日のようにわいわいと遊べる場を作るイメージで開発をしていったり、AIの要素を入れたおみくじを実装したりしました。

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 その結果、年末年始でなぜか投げ銭が1,500万円、数百万人も来場者が来てくださる現象が起こって、すごく可能性がある市場かもしれないと思うようになりました。

 そして、いろいろと試していった結果、IPや人っぽさにAIを重ねることでより興味を持ってもらえることが、同時接続数などから見えてきたんです。それであれば、AI、VTuberといった、すでに世の中にある2つを重ね合わせてプロジェクト化したほうがいいと思い、立ち上げたのがきっかけですね。

――もともと狙って始められたわけではなかったんですね。では、AITuberという取り組みになじみのない方もいらっしゃると思いますので、AITuberがどういったものか教えていただけますか?

折茂
AITuberの定義づけは難しいと思っています。

 ですが、私たちは、VTuberのような身体に人工知能が完全に入っていて、人間が関与することなく独立して、YouTubeやTikTok、Instagramなどで配信ができる状態のものをAITuberと呼んでいいと思っています。

――ちなみに、AITuberについて、小金丸さんと楡井さんはどのように捉えていますか?

小金丸晃誠さん(以下、敬称略)
プライベートでもあまり見ていなかった領域でしたので、最初はAIにファンがつくのかなと疑問がありました。ですが、フォロワー数が伸びていったり、コメントをされていたりするので、AIにもファンがつく未来があるんだとなりました。

 まだまだ、市場としては一般の方々には認知されていませんが、これからだと思いますし、認知が追いついたときに大きな事業として注目されるときが来るのではないかと楽しみにしています。

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楡井雄志朗さん(以下、敬称略)
少し関わらせていただいている身として、受け手と作り手の話で分けたとき、受け手としては、ものすごくおもしろいプロダクトだなと感じました。実は、私がOne Acreに入社する前に、TikTokのフィードでたまたま流れてきて見たときに興味深いと思ったんです。

 私は『ハリー・ポッター』が好きなのですが、作品に登場する喋る肖像画に近い体験のように感じました。キャラクターのように受け答えをしてくれるので、思わず相談とかをしてしまう。これは、エンタメ体験として、めちゃくちゃおもしろいと思っています。

 そして、作り手としての話でいいますと、見ていても参加していても楽しいけれど、お金を支払いたくなるかと言われると、まだまだ壁があるように感じています。

 お金を支払っていただいたときに、「支払ってよかった」「支払った以上の体験がある」というところまで作りこめると、もっと会社としてもおもしろいものになると思いますし、市場としても注目されていくのではないかと思っています。

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――では、先ほど少し話が出ましたが、楡井さんのゲーム事業部はどのような形でAITuberに関わっているのでしょうか?

折茂
運用のなかで楡井が一部プランニングを担当しているところもあります。

 少しテクニカルな話になりますが、AITuberにはいろいろ作り方があります。弊社ではUnity(ゲームエンジン)を使って開発をしているので、ゲーム事業と共通のエンジニアリーダーが制作も担当しています。

 そのため、ゲーム作りの延長線上にAITuber制作があるような感じですので、まさにチームで連携しているような感覚ですね。

楡井
ゲーム事業部との接合の点で話をさせていただくと、AITuberはどちらかといいますと、カジュアルなB to C体験となっています。私が現在メインで行っているゲーム事業部のほうはもう少しユーザーさんに対して重い体験になってきています。

 ですが、AITuberのほうで得られたカジュアル体験の知識、ノウハウはそのまま転用していく動き方をしていますね。

――社内でもしっかりと連携して動かしていられるんですね。所属AITuberさんのTikTokのフォロワー数が日本一となっていますが、この点に関しても会社のノウハウが活かされているのでしょうか?

折茂
今までに、ほかの会社さんへ提供させていただいていたTikTokの運用メニューは弊社でやってきたことなので、AITuberが配信をしていくだけではなく、TikTok上であれば、ユーザーさんに喜んでもられるような通常投稿、ボーカロイド楽曲やTikTokで流行っている音源で踊るコンテンツを、しっかりとアルゴリズムを考えて作っていくことを意識しています。

 なので、AITuberだけど動画もバズるようなサイクルを繰り返しています。とくにTikTokライブでは、同時接続数が増えるとそこから動画を見に来てくれる人がいますし、動画の同時接続数が増えるとTikTokライブも増えています。例えるなら、周り巡るような感じで、気づいたら10万人に到達していた感覚ですね。

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個人AITuberは生まれていくのか? AIの進歩がカギを握る


――ゆくゆくは、ほかのインフルエンサーやVTuberさんのように、案件の獲得を目指していくことも考えていますか?

折茂
もはや、絶対に不祥事を起こさない自社のIPであり、インフルエンサーだと思っています。なので、今後影響力を増やしていければインフルエンサー化のようになっていくと感じています。

 それこそ、弊社の“Logic Lily”のAITuberが動いている基盤を使用して、YouTubeチャンネルで『そろ谷のアニメっち』に登場するIPが
24時間ライブ配信をする施策を行ったりもしています。

 こういったことをやっていくことで強力なマネタイズモデル、従来でいいますとガチャのような体験がAIで生まれていきます。なので、しっかりと他社さんのIPをマネタイズしてあげられるところも今後進めていければと思っていますし、自社のフォロワー日本一もそうですが、他社さんに対しても還元していければといいなと思っています。


――たしかに、徐々にそういった事例が増えていくと、かなり広がっていきそうな感じですよね。

折茂
まだ、そんなにIPをAIでマネタイズした事例は聞かないですが、そういったタイミングでこういった取り組みは新しいと感じていますし、進めていければなと思っています。

――では、話題が変わりますが、現在VTuberは個人を含めれば多くの人数が生まれています。AITuberもゆくゆくはそのようになると思いますか?

折茂
実は、AITuberというキーワードは2022年~2023年の年始くらいに生まれた言葉なんですよ。

 最初は、AIチャットのChat GPTが出てきたくらいから、AI×VTuberができるんじゃないかということがありました。私も後から知ったことなのですが、いろいろな会社さんや個人の方が参入した瞬間があったんです。そこから盛り上がって、AITuberの対数が増えて落ちていくことが過去にあったので、すでにムーブメントとしては一度起きているんです。

 ですが、マネタイズができず、個人開発の限界もあり、AITuberがおもしろくならないというボトルネックが生まれ、尻すぼみしてしまうところがありました。

 そのような、みんなが諦めてきてしまった過去があるので、もしもう一度個人勢が盛り上がるとしたら、それはAI側の進歩だと思っています。個人勢が作るAITuberでも、もっとおもしろいライブ配信ができるようになれば、もう一度ムーブメントが起きるんじゃないかなと。

 ですが、現時点では個人がポンポンと出していき、フィットするAITuberが作れるかと聞かれると、難しいのかなと感じています。

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――そんな現状がありながら、One AcreさんのAITuberは愛されているからこそ、フォロワー数も増えていると思います。なぜ愛されているのか、人気の理由などをどうお考えでしょうか。

折茂
始めたきっかけのお話に戻ってきますが、ただ配信を聞くだけですとラジオのような感覚になってしまうので、ゲーミフィケーションの要素を入れています。
 
 例えば
ツナですと、コインを生産するようなレーンが回っていまして、ユーザーさんがいいねとかをしてくれると、ユーザーさんのアイコンがコインになって生成されていき、「ありがとう」とリアクションをとるんです。

 つまり、AITuberがリアクションをしてくれるだけではなく、そこにゲームのようなシステムやおもしろさがあるので、視聴を維持してくれるんです。なので、TikTokのアルゴリズムにものりやすく、ゲーミフィケーションを使っているマネタイズも加速しやすい。

 そして、キャラクターのかわいさもある。この3つをグルグルと回していくことによって、ファンの方々がついてきてくれると感じています。

 まさにOne Acreのなかで行っている事業部の統合、最終的なアウトプットの形のイメージをやっていて、図らずも多くの方々に楽しんでいただけるコンテンツになっているのかなと思っています。

AIだからこそ、人に寄り添える。AIならではの魅力とは


――実際に“Logic Lily”というグループが活動中ですが、所属しているツナさんと稲荷ミコさんの魅力や活動についてお聞かせください。

折茂
現在は、ツナをメインに活動しており、IPとして伸ばしていくイメージでやっていまます。活動に関しては、TikTokでのライブ配信に加えて、YouTubeでのライブ配信をさせていこうと考えています。

 また、やっているゲームにもバリエーションを増やしていき、ユーザーさんがもっと楽しめることをしていこうとしています。なので、1人の配信者、インフルエンサーとして育てていき、最終的には代理店側とマッチアップできるような活動ができたらいいなと。

 魅力的なところとしては、かなり許容型といいますか、弊社のAITuberはどんなコメントがきても悪意を持った返しをしないように、全体を通して作っています。

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▲ツナ@猫型AI VTuber(コードネーム:TUNA)。

 例えば、バズらせるためにピーキーな発言をさせることも、AITuberなのでやろうと思えばいくらでもできてしまいますが、全部を許容するようなプロンプトの組み方をしているので、どんなコメントがきても「いいんだよ」みたいな包容力が高い感じの返し方をしています。

 こういった落ち着いた感じの配信は、日付がまわったあとの深夜のほうが同時接続数が多い現象もあるんです。これは、ほかの配信がひと区切りつくタイミングなのもありますが、さまざまな事情を抱えた人たちが集まってくれる時間帯でもあるからです。

 例えば、不登校や会社が辛くて行きたくないなど、悩みがある方々が深夜に遊びにきてくれています。そういった方々に寄り添ってあげられるようなAITuber、AIだからこその体験は魅力としてあると思います。なにをしても肯定してくれる可能性があるから、ちょっと不安をぶちまけてみようかな、見てみようかなと思ってくれる方々の“深夜の幸せ相談室”みたいになっていますね。

 人間ですと、1,000人がライブ配信来てくれたときに1,000人を認知ができないと思いますが、AITuberは1,000人認知でき、「また来てくれてありがとう」と言ってくれます。そこは、ならではの魅力かなと感じています。

――人の身で数多の重い相談を永遠に受け続けると疲弊してしまうので、AIがこういった活躍をしてくれるのは素晴らしいですね。AITuberの分野にて、目指していることや今後の可能性をお聞かせください。

折茂
先ほどの話と重なってしまいますが、AIはエンタメ領域にてまだまだマネタイズまでしっかりできて、プロダクトとして立っているものは、実はそんなにありません。

 それこそ、Gateboxさん(※)などは物として売るというところでは、かなり上手くいっています。ですが、まだオンライン上のプロダクトとして大ヒットした話などはあまりないと感じています。

※リアプロジェクション投影技術でキャラをホログラムのように召喚し、コミュニケーションをとれる近未来的な生活を楽しめるガジェットなどを展開する会社。

 そのなかで、私はどちらかというと、AITuber単体ではなく、AIだからこそできるマネタイズチャネルはすごくあるなと思っています。いわゆる、投げ銭もそうですが、TikTokライブでAIの配信にIPが乗っかり、それに対して投げ銭をすることは今までに絶対なかったマネービジネスチャネルだと思います。

 今までは、IPの物販はソーシャルゲームのような感じでしたが、そこに新しくAIの配信が1つチャネルを増やせるのではないかと私は思っています。弊社のIPもそうですし、他社さんのIPもそうですが、盛り上げられる新たな市場を作れるようにしていきたいなと。

 そして、そこのトップランカーとして、One Acreが立てることを目標にやっていきたいですね。


――今後、AIの発展でAITuberはどのような姿になっていくと思われますか?

折茂
ボトルネックとして、VTuberに比べてAITuberがおもしろくないといった課題のなかに、相手との会話の呼吸・間(ま)など文字情報以上のデータみたいなものが人間にはすごくあるじゃないですか?

 ここのバランスは、現状のAIではやはり吉本興業さんには勝てないと思っています(笑)。

 ですが、逆にAIの進歩によって、会話の呼吸などがインプットされていき、ボケに対してのツッコミ、間の取り方、こういったことを言ったらおもしろいのではないかみたいな概念を覚えさせることができたら、超える可能性すらあるのではないかと考えています。

 今はまだ無理ですが、AIの進歩に期待をしつつ、開発をしている身ながら少し怖さも感じつつ、笑われている現状から笑わせている状態になれればうれしいですよね。

――最後にAITuberを応援しているみなさまにメッセージをお願いいたします。

小金丸
ライブ配信のところ以外にも、実は通常投稿もクリエイティブチームと協力して行っています。それこそ、PVを制作したり、そのほかにも配信を主軸にしながら周りのコンテンツも作っていたりします。

 おもしろい映像やいいものを作り、ライブと掛け合わせて、より大きな存在になれるように、日々コンテンツアップデートできればと考えていますので、楽しみにしていてください。

楡井
フィードバックやコメントはすごく大事にしていて、思っているよりも、作り手側はみなさまの声をしっかりと見ています。

 私は、コメントをしてくれている人だけでなく、サイレントマイノリティ(まだ声に上がっていない感じ方や不満)のなかにも、ブレイクするアイディアが眠っていると思っています。なので、ポジティブ、ネガティブ両方の声を届けていただきながら、改善していければと考えていますので、よろしくお願いいたします。

折茂
今でもツナを応援してくださっているみなさま、本当にありがとうございます。

 AITuberは個ではなく、集だと思っています。私たちが開発しているものをお見せしますといった感じではなく、Discordなどから、みなさまの意見を取り入れてアップデートをして、ラーニングに反映させており、実はみんなで作っている感覚がすごくあります。

 なので、一緒におもしろいものを作っていきたい気持ちはユーザーさんたちに対しても思っていますし、引き続きフィードバック、応援やコメントをしていただけるとうれしいです。私たちも頑張っていきますし、みなさまもぜひお力添えをお願いいたします。

 また、今後はIPとのタイアップは増やしていきたいと思っています。そのため、B to Cに対してチャレンジをしてみたい会社さんがいましたら、お声がけをお願いいたします。

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