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『アサクリ シャドウズ』発売直前レビュー。奈緒江と弥助のお互いを補う関係が魅力的。戦国オープンワールドとしての物量は?【アサシンクリード】

文:Ak

公開日時:

 3月20日発売予定のPS5/Xbox Series X|S/PC用ソフト『アサシン クリード シャドウズ』の先行レビューをお届けします。

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 物語の核心的なネタバレはないですが、序盤の展開に関して言及している部分もあるのでご了承ください。なお、レビューに使用しているのはPS5版です。

ストーリー&時代背景:“本能寺の変”前後の時代で『アサクリ』らしい謎めいたストーリーが描かれる【アサクリシャドウズレビュー】

 『アサクリ シャドウズ』の舞台となるのは、戦国時代の日本。主に“天正伊賀の乱”や“本能寺の変”前後の年代で、歴史の裏側で暗躍したものたちの姿が描かれます。年代で言うと、1579年あたりですね。

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 メインで描かれるのはあくまで歴史の影に生きるものたちの物語ですが、ストーリーの大きな節目では、歴史上の有名な事件にも深く関わってきます。

 当然“本能寺の変”も、ストーリー上の重要なターニングポイント。“本能寺の変”の黒幕は誰か、という日本史上もっともポピュラーなミステリーも物語に大きく関係していきます。

 その真相の詳細は……当然ネタバレなので言及しませんが、史実上の背景と『アサクリ』らしさを織り交ぜたバランスのいい、納得感のある展開に思えました。ある意味使い古された謎だけに、うまく既存の作品と差別化できているのが好印象です。

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 特定の人物を暗殺することでメインストーリーが進んでいくのは、従来の『アサクリ』シリーズと同様。クエストを進めて標的の情報を集め、最終的に標的と対峙するのが基本的な流れです。

 大きな縦筋はあるものの、標的ごとにストーリーが独立しており、オムニバス形式の短編のように楽しめるので飽きがこないですね。メインミッションを進めるごとに少しづつ謎が明らかになっていく展開は先が気になります。

 ちなみに筆者の場合、メインストーリーが一段落する(スタッフロールが流れる)までにおよそ37時間ほどかかりました。とはいえメイン以外に膨大なミッションが残っており、まだ発見すらしていない地域も多数ある状態なので、プレイヤーによってメインストーリーのクリア時間は大きく異なってくるでしょう。

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 過去の『アサクリ』シリーズと設定上のつながりはあるものの、基本的なストーリーは独立しているので『シャドウズ』から始めても大丈夫です。

 ただし作中で扱われる史実上の事件や大名家同士の関係性はそこそこ複雑なので、事前に織田家周辺の歴史を知っておいたほうが物語を楽しめるかと思います。とくに織田家がどんな大名家と戦って、どんな結果になったかを知っておくと物語への理解度が深まるでしょう。

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 基本的には史実に沿った物語が展開していきますが、ロケーションや登場人物には“史実とのズレ”も見受けられます。筆者が確認できた大きなものは下記の通りですが、歴史にさらにくわしい人であればもっと細かいズレも発見できるかも?

 そのほか、野菜や果物の縮尺など小物類でもいくつか違和感がある描写もありました。

史実とズレたロケーションや設定

  • 大阪城が“本能寺の変”の前から建築が進んでいる
  • “本能寺の変”の直後に消失したはずの安土城が“山崎の戦い”まで健在
  • 同時代にはすでに死んでいるはずの宇喜多直家が存命

 なおこの辺りのズレは、作中のデータベースでは史実通りの記述になっている場合もあるので、承知の上であえてやっているものもあるかもしれませんが、そこまでは今回のプレイでは判断できず。筆者は物語への没入感を大きく損なうレベルではないと感じましたが、細部までこだわってほしい派のプレイヤーは、少々違和感を覚えるかもしれませんね。

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 とはいえこの“ズレ”のおかげで、消失しているはずの安土城の天主内部を探索できたことは、歴史ファン的にはうれしいポイント。史実上では消失してしまったので見ることのできない、狩野永徳の襖絵などが飾られた豪華絢爛すぎる天主をフィクション上とはいえ探索できたのは、ゲームならではの体験だと言っていいでしょう。

 もちろん、実際の安土城は現存しないうえに資料が不十分なので詳細は不明ではありますが、歴史に綴られた信長の趣味嗜好からイメージできる“それっぽさ”をしっかり感じることができました。

現実パートはどうなっている?

 そして『アサクリ』シリーズと言えば、現実パートの存在も重要。シリーズ全体を通してのつながりに関わってくるので、シリーズファンには気になるポイントです。

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 詳細は伏せますが、現実パートの描写は冒頭から存在。過去シリーズと比べても謎が多く、興味を惹かれる作りになっています。

 メインストーリーを進めるだけでは詳細が判明しない、サブストーリー的な位置づけになっているので、メインストーリーをテンポよく進めたいプレイヤーも安心です。

主人公:お互いを補い合う奈緒江と弥助の関係性が魅力的【アサクリシャドウズレビュー】

 『アサクリ シャドウズ』の主人公である奈緒江は、伊賀の大幹部である藤林長門守の娘。

 藤林長門守は実在の人物ではありますが、同時代の服部半蔵や百地三太夫と比べると謎の多い人物ですね。なかなか渋いチョイスです。

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 奈緒江はそんな藤林長門守から幼少期より忍びの英才教育を受けており、歴代主人公のなかでも屈指の運動能力を誇ります。

 一応『アサクリ シャドウズ』は奈緒江と弥助のダブル主人公となっていますが、物語の根幹に関わる因縁は奈緒江のほうが濃く、感覚的には奈緒江がメインの主人公といった印象です。

 ゲームが始まってすぐに操作するのは弥助ですが、その後すぐに奈緒江を操作することに。そこからしばらく(筆者の場合は7時間ほど)はオープンワールドを奈緒江で探索することになるので、そういった意味でも奈緒江のほうがメイン感が強いように感じました。

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 ある事件をきっかけに、否応なく宿命と向き合うことになる奈緒江。ときに迷いながらも、自身の進むべき道に立ち向かっていくことになる姿は応援したくなります。そもそも年齢的に幼いこともあって、性格には苛烈さもあり、危なっかしく感じることも。

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 そんな危うい奈緒江を支えるのが、もう1人の主人公である弥助。思慮深い性格の弥助は、織田信長に仕えたことで生まれた人脈を活用して、さまざまな面で奈緒江をフォローしてくれます。奈緒江と弥助は浅からぬ因縁を持っており、彼らが共闘するようになる理由は『アサクリ シャドウズ』全体のテーマ性とも深く関わってきます。

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 弥助は、ある理由から漂流したあとイエズス会に拾われ、日本にやってきた人物。物語冒頭で信長に素質を見出され、織田家に仕えることになります。

 とはいえこの時点では武士身分ではなく、あくまで物珍しさから拾われた小者みたいな位置づけです。その後、とある出来事をきっかけに、弥助は御伽衆(※)として信長に仕えることになります。

※御伽衆:主君の側に仕える武士。主な役割は雑談相手ですが、作中ではボディガードも兼ねている様子。

 あくまで軍勢を率いる将軍や侍大将ではなく、一兵士としての身分であり、まだまだ武士としては新米という感じですね。

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 『アサクリ シャドウズ』における弥助が、いかにして武士になったかは作中でかなりていねいに描かれています。数カ月で武芸や礼法を学ぶために剣聖である上泉信綱の元でスパルタ詰め込み教育を受けたり、ねね様から無茶ぶりをされたりと、武士になるまでの弥助の苦労っぷりがすごい。

 一所懸命書いた書を上泉信綱に破られて、シュンとしてしまう弥助はけっこう可愛かったです(笑)。

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 日本にルーツを持たず、守るべき家というしがらみがないゆえに、私心のない侍として振舞える弥助。だからこそ猜疑心の塊である大名たちにも信用されるという作中の描写には、なかなか説得力を感じましたね。

 異質な存在であるがゆえに、武士らしい武士であろうとする弥助の姿はどこか健気で、奈緒江と同様に応援したくなります。奈緒江との対等な関係性はとても居心地がいいもので、バディものとしても魅力を感じた部分です。

キャラクター:登場人物のチョイスが渋い! 歴史の敗者への愛を感じるシナリオが興味深い【アサクリシャドウズレビュー】

 そのほかのキャラクターで印象深いのは、やはり織田信長。出番自体はそこまで多くないものの、常に話題に出てくるので存在感はかなりのものです。

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 正直、発売前のPVなどでは信長のビジュアルに不満があったものの、実際にプレイしてみると中身がしっかり信長で好印象!

 苛烈ながらも、多くの物事を公平かつ冷徹に見ている名君としての姿がていねいに描かれています。信長役である玉木宏さんの威厳を感じる演技もあって、最終的にはかなり好きになりました。

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 作中に登場するのは、主に織田家に関係する人物。豊臣秀吉や徳川家康といった超有名人物はもちろん、千利休や今井宗久といった武人以外の人物も登場します。

 ちなみに序盤には利休による“茶の湯”チュートリアルも。ていねいに作法を教えてもらってから“茶の湯”に挑むことになりますが、作法が難しく筆者は選択肢をミスりました(笑)。各人物ごとのエピソードの掘り下げがかなり細かいので、あるていど戦国史についての知識があるとより楽しめると思います。

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 本願寺教如が感情的ながらも情に深い人物として描かれていたり、足利義昭が威厳ある人物に描かれていたりと、“名前は出てくるけれど、深く掘り下げられない”といった印象の人物もていねいに描写しているのが興味深いです。

 ストーリーの流れからして、織田家に敗れたいわゆる“歴史の敗者”が多く登場しますが、それらの人物に対する愛を感じられるシナリオになっています。

 登場人物同士の腹を探り合うような会話も、いかにも日本的で時代劇っぽくてストーリーに没入できるポイントでしたね。

アクション:奈緒江と弥助を使い分けて変化に富むアクションが楽しめる【アサクリシャドウズレビュー】

 『アサクリ シャドウズ』のバトルシステムは、基本的には『オデッセイ』や『ヴァルハラ』などの過去シリーズ作品の流れを継承したもの。

 アクションではありますがRPG的な要素も強く、レベルを上げたり装備を集めたりして戦力を充実させることで、さらなる強敵に挑めるようになります。

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 本作ならではの特徴としては、奈緒江と弥助の使い分けによって異なるバトルスタイルが楽しめること。

 奈緒江は忍者らしい軽快なアクション、弥助は侍らしい豪快なアクションで敵に挑めます。得手不得手がハッキリしているので、2人を使い分ける戦略性が楽しいです。

 奈緒江と弥助の切り替えは、安全な状況であればいつでも可能。ミッションによっては道中で2人を切り替えることも可能です。

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 奈緒江は探索&移動能力に優れ、鉤縄を使って高所へもラクラク登れます。歴代『アサクリ』シリーズ主人公のなかでも運動能力は高いほうで、探索の自由度はかなり高いです。隠密能力にも優れ、一撃で敵を暗殺しやすいのでミッションによってはかなりスムーズに進められますね。

 ただし見つかった状態での戦闘能力はそこまで高くなく、打たれ弱いので集団戦は禁物。囲まれたら、可能な限り早くその場から離れて未発見状態にするのが無難です。

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 弥助は、戦闘に特化したキャラクター。真正面から敵と戦っても切り抜けられることが多いです。使える武器も強力で、とくに金棒はダイナミックなアクションで敵を蹴散らせるので爽快感がバツグン! そのほか、遠距離武器は鉄砲も強力で、とくに武装した相手には強いです。

 ただし弥助は探索能力が低く、ちょっとした高所に登るのも一苦労。とくにイーグルダイブ(高所から隠れ場所への落下)すると悲鳴を上げて隠れ場所から転がり落ちるので、可哀そうになってきます。

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 基本的には、探索&移動能力に優れた奈緒江をメインに使いつつ、敵との戦闘を避けられない状況では弥助といった使い分けになりそうですね。

 向き不向きはあるものの、どちらかでしかできない行動というのは少ないので、好みで使い分けるのももちろん可能。一部ミッションは奈緒江と弥助のどちらかでしか受けられないこともありますが、多くのミッションはどちらでも受けられます。

 NPCの反応も異なってくるので、反応が気になるほうのキャラで挑むのもアリですね。またミッションによっては、2人を交互に操作して挑む場合もあります。

探索要素:広大な戦国オープンワールドを観光気分で探索するのも楽しい【アサクリシャドウズレビュー】

 広大なオープンワールドを探索するのも『アサクリ シャドウズ』の楽しみのひとつ。探索できるロケーションは多彩で、未知の場所を開拓しながら変化に富む探索が楽しめます。

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 舞台となるのは主に近畿&中部地方の周辺地域。全体的な広さは『オリジンズ』と同じくらいで、かなり広大。筆者の場合もメインストーリークリア時点でまだ足を踏み入れていない地域も多数ありました。

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 上記写真の清水寺のように、有名なロケーションにも訪れることができます。「あのお寺ってこんなところにあったのか!」みたいな発見もあって、観光するだけでも楽しいです。さすがに細かく再現されてはいない部分もありますが、印象的な建物などはしっかり再現されている印象です。

 縮尺などはオープンワールドとして調整されたものになっているものの、各地域の位置関係は基本的に史実に沿ったものなので、地理にくわしい人であればまだ行ったことのない地域でもそこに何があるか予測できそうですね。戦国時代の知識があればなおのこと楽しめるかもしれません。

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 ミッションの目的地は断片的な手掛かりのみが表示され、実際にその地域に行くことで発見できます。密偵を使って位置を絞り込むなどの機能はありますが、便利すぎず探索の楽しさを損なわないバランスになっています。

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 フィールド上には多彩なミニゲームもあり、達成していくことでより多彩なスキルを習得可能になります。

 ミニゲームはやや難しいものもありますが、再挑戦が容易で何回か挑めば問題なく達成できるバランス。設定でシンプル操作にしたり、省略することもできるのでミニゲームに苦手意識がある人も安心です。

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 本作には季節の概念もあり、春夏秋冬による外観の変化もあります。システム的にそこまで大きな影響はないですが、冬だけは雪が積もって移動に支障をきたすこともあるので要注意です。

ハウジング:拠点のハウジングは機能だけ利用したいなら超お手軽! こだわりたいならとことんこだわれる【アサクリシャドウズレビュー】

 また主人公たちの拠点となる場所をハウジングする要素も。拠点をハウジングすることで、仲間が助っ人に来てくれるようになるなど恩恵を受けられます。

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 一見複雑そうに見えるハウジング要素ですが、機能を解放&活用したいだけなら、空いた場所に建物を建ててレベルを上げていくだけでOK。建物のレベルによってさまざまな機能が解放されていきます。

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 外観にこだわりたい場合は、道の種類や小物に至るまでかなり細かい調整も可能。拠点に飾れる小物などは探索で入手できるので、どんどんハウジングのバリエーションが増えていくのが楽しいです。

総評:戦国オープンワールドとしての物量&熱量は圧巻!【アサクリシャドウズレビュー】

 戦国時代を舞台にした、貴重なオープンワールドゲームである『アサクリ シャドウズ』。

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 シナリオ的にもシステム的にも、お互いを補い合う奈緒江と弥助のダブル主人公により、厚みのあるバトルやストーリーが楽しめるのが魅力的です。

 戦国ファンや『アサクリ』シリーズファンはもちろん、じっくり遊べるオープンワールドを探している人にオススメできる作品となっています。ぜひ実際に触ってみて、その熱量や物量を体験してみてください!

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