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大魔法使いの弟子になり、一緒に物語を作る。ファン参加型の工画堂スタジオ朗読劇『物語の魔法屋 -月明かりの迷い子たち-』昼公演レポート【ネタバレあり】

文:電撃オンライン

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 工画堂スタジオ×インクストゥエンターが手掛ける参加型朗読劇プロジェクト「物語の魔法屋」の公演『物語の魔法屋 -月明かりの迷い子たち-』が、2025年5月18日に東京の科学技術館サイエンスホールにて開催されました。

 本プロジェクトは、公式Xの事前アンケートを利用して、朗読劇の世界観や登場人物の設定などを決めていくファン参加型企画です。物語の結末を左右する大きな選択は、イベント来場者に配布されるアンケートで決定!

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▲会場のロビーには、ファンから贈られたフラワースタンドが飾られていました。作品の世界観や役に合わせたデザインになっていて、とても素敵です。

 初回となる本公演では、和風の異世界を舞台に、守りたいものができることに怯える人・柊役の浦 和希さん、守られ続けてきた人・藍役の永野由祐さん、守り方がわからなかった人・浅葱役の廣瀬大介さんが、切なくも美しい物語を紡ぎました。今回は、昼の部の様子をレポートしていきます。

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▲画像左から浦 和希さん、永野由祐さん、廣瀬大介さん

師匠と共に調合してきた物語の行方は……【物語の魔法屋 -月明かりの迷い子たち-】


 タイトルにもある「物語の魔法屋」とは、とある森の奥に門を構える不思議なお店。このお店(プロジェクト)を知ったあなた(ファン)は、店主である大魔法使いに弟子として迎え入れられ、師匠(声優:上村祐翔)とともに物語を閉じ込めた不思議な魔法薬を調合することに……。

 師匠の問いかけ(公式Xでの事前アンケート)に答えることで、物語が紡がれていきます。師匠と初めて調合した不思議な魔法薬がついに完今回の物語が朗読劇として上映されました。

 開演前のアナウンスは師匠が担当し、世界観や各キャラクターの名前など、これまでの調合(アンケート結果)について振り返っていきます。

 最初から調合に参加した弟子の皆さんは思い出を振り返ることができ、初めて弟子になった方もどんな調合薬(物語)なのかわかる、ステキな師匠との交流のひと時となりました。

 そして、いよいよ物語が幕を開けます。キャスト3人はお揃いのローブ姿ですが、それぞれ役に合わせて着こなしが違っていました。また廣瀬さんは、浅葱に合わせて銀髪スタイルです。

 なおアンサンブルキャストは事前に音声収録されていて、舞台に立つのは、メインキャスト3人だけ。声優陣は約2時間という大ボリュームの朗読劇で、笑いあり、シリアスあり、情感豊かなお芝居を見せてくれました。

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 舞台は、和風の異世界・天原ノ大國(あまはらのおおくに)。この世界は死の霧や謎多き魔物・ケガレによって脅かされており、結界を生む世界樹・神宿リノ御神木(かみやどりのごしんぼく)のもとでしか人々は暮らすことができません。

 しかし、結界でしっかり守られた上層に住めるのは支配階級の貴族と、法術という能力を持つ者だけ。普通の人々は、結界の薄い下層で、奴隷のような暮らしをしています。

 浦さん演じる柊は、そんな下層で暮らす大太刀使いです。御神木の結界が弱い下層では、定期的に穴が開き、そこからケガレが入り込みます。

 柊は侍頭としてその対処を行っていますが、年々増え続ける穴の多さ、そして無謀な御神木の植樹計画・分御霊ノ法(わけみたまのほう)によって、下層民がケガレに殺されていく状況に、強い怒りと憎しみを抱いていて……。

 下層民は生きるために上層民に従うしかない現状で、親や仲間など、大切な者を守れなかった苦悩を語る柊の姿に、胸が苦しくなります。

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 柊は、ひょんなことから上層から降ってきた皇族(おうぞく)・藍を助けます。このシーンは「柊と藍の出逢い方について。曲がり角でぶつかる? 藍が上から降ってくる?」という調合にそったもの。世界観や登場人物たちの設定だけでなく、物語そのものが調合結果に合わせて紡がれていくのが、この朗読劇の魅力の1つです。

 ほかにも「柊と浅葱が昔よく行っていた"思い出の地"は?」や「柊と藍の逃避行の道中に起きた楽しいことは?」など、物語の印象的なシーンに調合結果が反映されていました。最初から調合に参加した弟子の皆さんは、より深く物語の世界に入り込むことが出来たのではないでしょうか。

 藍を助けたことで、柊は藍の護衛をしている幼馴染・浅葱と再会。浅葱は能力者として、上層に迎え入れられたという過去があります。

 下層民の暮らしを知って心を痛め、その現状を知るために、お忍びで下層にやってきた藍。さんざん上層民に苦しめられていきた柊は怒りをぶつけますが、藍の下層民を心配する想いは本物です。

 辛辣な態度をとる柊に対して藍は一歩も引かず、なんと彼を護衛として雇用。柊は、それを引き受けることにするのです。

 上層民らしく世間知らずで、子どもらしい無邪気さのある藍を、永野さんが生き生きと演じます。

 皇族である藍にも、その生まれ故の苦悩があり、彼のモノローグを通して上層の貴族が抱える歪みが見えてきます。そんな状況のなかでも、藍は物語で見た新たな御神木を探す“黎明ノ朱雀旅団”に憧れ、心が汚れることなく真っ直ぐに成長していきます。

 そして、下層から来た浅葱を救ったことで、藍は自分を取り巻く環境の嘘に気がつき、自分を縛る鳥かごの宮廷から飛び出すことを選んだのです。

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 そんな真っ直ぐな藍は、浅葱にとって希望となっています。月灯りに、希望を抱く浅葱。彼は上層に行けば、死の霧で覆われた世界であっても、もっと月がはっきりと見えるのではないかと思っていました。しかし月は見えず、さらに過酷な下層の暮らしよりも先に、上層は狂って終焉を迎えていたという事実を浅葱は知ってしまいます。

 そんななか、気高い心を忘れないまま成長した藍は、浅葱の希望=月となったのです。

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 下層の市場で食事をしたり、柊と浅葱が2人で月が見える湖でかくれんぼをした昔話をしたり、穏やかな時間を過ごす一行。

 昔話をする場面では、浦さんと廣瀬さんが今よりも若い柊と浅葱を、あどけなさが伝わってくるお芝居で自然に演じ、声優さんは本当にすごいなと感動してしまいます。

 仲が深まったと思ったのもつかの間、藍が憧れである“黎明ノ朱雀旅団”の話をしたことで、また柊を怒らせてしまいます。

 藍を、“黎明ノ朱雀旅団”の元へ連れていく柊。旅団は実在しますが、過酷な役目のため心身ともに病み、動けなくなった者を御神木の元に残して、捨てていくというのです。それでも旅団だったものは、植樹に使う御神木の枝を、手放すことはないのだと言います。

 さらに新たな御神木を見つけるという希望をエサに、下層民の若者を連れていき、そして犠牲にすることも柊にとっては許せないことでした。

 自分の知らない現実を目にして、涙を流す藍。藍は元旅団のメンバーにお願いして、御神木の枝を譲ってもらいます。本来なら絶対に御神木の枝を手放さない旅団のものたちも、藍の想いに感じる部分があったようです。

 藍が御神木の枝を、結界の外に突き刺すと、これまでにないほど成長して……。藍は癒しや成長を促す、成長の秘術を持っていたのです。

 藍の試みは死の霧で阻まれてしまいましたが、霧が薄い場所であれば、御神木の植樹が出来るのではないかと考えた柊たち。それを知っているのは危険を冒して世界中を旅する“黎明ノ朱雀旅団”、そこに藍を合流させることが出来れば……という大きな希望が見えてきます。

 そのことに喜ぶ柊に、浅葱が告げたのは、貴族は植樹計画・分御霊ノ法を忘れているという残酷過ぎる事実でした。上層の貴族たちは、自分たちが生きることのみに執着し、藍たち皇族の法術も延命のために利用しているというのです。

 皇族として下層民を守れなかったことに責任を感じている藍は、御神木を植樹して新たな國を作り、そこに民を受け入れると誓います。柊と浅葱は、上層の追手に捕まる前に、藍を“黎明ノ朱雀旅団”の元まで送り届けることに!

 しかし、御神木を離れるごとに、浅葱に変化が起こっていきます。浅葱は上層の貴族によって洗脳と、ケガレと融合する人体実験がされていたのです。そのときの苦痛、助けてくれた藍への感謝と忠誠、守りたい幼馴染への想い、実験による歪みが、浅葱のモノローグで語られていきます。

 浅葱の大切な者たちへの純粋な思いと、人体実験による呪いのような狂気、廣瀬さんのギャップがあるお芝居は見ていてゾクッとしました。

 浅葱にかけられた洗脳は、藍が助けた際に治療したはずでしたが、完全に消しきれてはいかなかった様子。柊たちの思い出の場所である湖で、浅葱は柊を刺し、藍を上層へと戻そうとします。しかし、浅葱の理性は完全になくなってはおらず……。

 怪我をした柊と、治療して動けない藍、必死で洗脳に抗う浅葱。そんな3人のもとに、大量のケガレが押し寄せます。

 そのあとに訪れるのが、会場のアンケートで決まった最後の調合結果です。

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昼公演で助けたのは藍!【物語の魔法屋 -月明かりの迷い子たち-】


 会場で行われた最後のアンケートは、藍と浅葱、柊がどちらを助けるかという究極の選択でした。昼公演では、藍を助ける物語が展開しました。

 浅葱の守ってほしいものを誰よりも理解しているからこそ、藍を助けた柊。浅葱も最後の力を振り絞り、柊と藍の逃げる道を法術で作り出します。柊と浅葱の心が通じ合っていることがよくわかり、切なくはありますが、彼ららしい生き様を見届けることが出来ました。

 会場ではグッズとして、台本も販売されており、見られなかったシナリオも読むことが出来るのも、弟子には嬉しいところです

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 イベント終了後には、アンサンブルとして出演した持田貴大さんが進行役のアフタートークも!

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▲アンサンブル&司会を担当した持田貴大さん

 浦さんは「上村祐翔です」と元気に挨拶し、会場の弟子たちを笑わせます。なお本イベントにあたって、上村さんから浦さんにメッセージが届いたそうです。さすが、師匠ですね。

 本編が終わって、今の感想を聞かれた3人。浦さんは「3人で作り上げることが新しく、面白かったです」、永野さん「1人ずつ見せ場があって、特に僕と廣瀬さんは(モノローグの量が多く)一生喋るのかと感じました」、廣瀬さん「3人で演じるには、とても多いテキスト量。お芝居たくさんやらせてもらって、楽しかったです」と話します。

 「自分が演じたキャラクターの好きなところ」についての質問では、廣瀬さんは意外にツッコミなところ、永野さんは(市での食事シーンで)まずいと言わないところと答えます。浦さんが選んだのは、柊が「女、女」という印象的なシーン。ちなみにアドリブではなく、ちゃんと台本通りだったそうです(笑)。

 最後に浦さんから、調合(アンケート)に参加し、来場してくれた弟子の皆さんへの感謝が語られ、朗読劇は幕を閉じました。

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