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“本能寺の変”を描いたおすすめ作品5選。野望説や黒幕説、現在のフィクション作品のトレンドは?

文:Ak

公開日時:

 本日6月2日は“本能寺の変”が起きた日。そこでこの記事では、“本能寺の変”を取り扱った作品のなかで、とくに印象的なものを紹介します。

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 各作品の“本能寺の変”に関する描写のネタバレを含みますのでご了承ください。なお、おすすめ作品として紹介しているものは完結済みの作品となっています。

衝撃の“本能寺の変”を扱った作品5選。黒幕や動機のバリエーションはどうなっている?


 “本能寺の変”といえば、明智光秀が織田信長に謀反を起こし、それまでの織田家による天下統一の流れを無に帰した日本史上屈指の大事件。

 明智光秀が事件を起こしたハッキリした理由は解明されておらず、日本史上最大のミステリーとして長年議論の対象になってきました。当然、フィクション作品においてもさまざまな描かれ方をしています。

 この記事ではそんな“本能寺の変”を描いた数多くの漫画、ゲーム、小説のなかから、5作品をピックアップして紹介していきます。

センゴク

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■話の筋自体は王道ながらも光秀のキャラクター像の異質さが印象に残る作品

 豊臣秀吉に古くから使える子飼いの武将、仙石秀久を主役とした長編漫画シリーズ。時代を経るごとに『センゴク』→『センゴク 天正記』→『センゴク 一統記』→『センゴク権兵衛』へとタイトルが変わりますが、“本能寺の変”について描かれるのは『センゴク 一統記』2巻から。3巻では、明智光秀が“本能寺の変”を起こすに至った理由について、丸ごと1巻使ってていねいに描写されています。

 “本能寺の変”の描写は極めて王道で、黒幕もいない光秀自身の行動であるという描かれ方。ほかの作品と異なるのは、光秀のキャラクターです。

 従来の苦労人のイメージが強い光秀像とは異なり、本作の光秀は怪しい魅力にあふれた超カッコいい武将であり、ビジュアル的には戦の際に血化粧を施す姿が印象的。そんな光秀が本作で“本能寺の変”を起こした理由はなかなか複雑で、初見では筆者も光秀の動機をよく理解できませんでした。

 あくまで筆者の理解の範囲で説明すると、織田信長という存在に対する理想と自身の天下への展望の間で揺れ動いた結果、一番それを納得できる形にできるのが“謀反”だったのではないかと思われます。描写が非常にていねいで、陰謀論寄りでない納得感の高いものになっているので、史実に近い王道作品を求める方にオススメです。

へうげもの

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■変わり種の秀吉陰謀論を採用! 直接の実行役も衝撃的

 千利休の弟子である茶人大名、古田織部を主人公にした歴史漫画。“本能寺の変”は、2巻の終盤から描かれます。

 分類としては今や比較的オーソドックスとなった秀吉陰謀論に属する作品で、明智光秀をけしかけてから手のひらを反してそれを討伐する秀吉の策士っぶりがていねいに描写されます。

 “本能寺の変”を直接的に起こしたのは光秀ですが、信長殺害の実行役はまさかの人物。本作にはそんな歴史を知っているほど意外性を感じられる描写が多数あるので、歴史好きなら必見です。

 そして秀吉を焚きつけたのが千利休というのも、本作独自の味付け。天下に“わびさび”を広めるという野望を持って、秀吉をも利用しようとする利休は恐ろしい怪人であり悪人でもありますが、そのパワフルさには魅力を感じます。“本能寺の変”とはずれますが、利休の切腹を描いた9巻のあるシーンが超感動的なので、まだ未読の人はぜひそこまでは読んでみてください!

何度、時をくりかえしても本能寺が燃えるんじゃが!?

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■まさかの信長本人がタイムリープ! 繰り返すたびに謀反の犯人が違うのがすごい

 未来人と出会ったり女体化したり、数多くのぶっ飛んだ設定のフィクション作品を生み出した織田信長。もはや目新しい設定は出し尽くしていただろうと思われていましたが、まさかの信長が信長本人を救うためのタイムリープ作品が登場しました。

 本作では、物語の冒頭から“本能寺の変”が描かれます。そこで不思議空間にワープして、謎の存在からタイムリープ能力を授けられるのが1話。そして推定謀反人である光秀をぶった切ると……再びタイムリープして別の人物に“本能寺の変”を起こされます。

 作品のタイトル通り、タイムリープするたびに別の謀反人に“本能寺の変”を起こされるのが本作の基本的な流れ。その流れを断ち切るべく、信長が試行錯誤していく様をながめる歴史コメディ漫画です。

 本筋の謀反人は光秀ですが、あらゆる家臣が一歩間違えば謀反を起こす可能性があるのがすごい。しかも本作の信長は控えめに言ってもカス野郎で、平気で家臣に自分の親を人質に差し出させます。あらゆる作品のなかでもトップクラスに酷い目に合う信長ですが、ほぼ本人のせいなので悲壮感がなく、気楽に楽しめる作品となっています。

 歴史のIFをこれでもかと描いているので、“本能寺の変”の可能性について考えさせられる作品でもありますね。最初は下種な信長も、じょじょに愛されキャラへと変わっていくので、そちらも見どころです。

アサシンクリードシャドウズ

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■史実と虚構を織り交ぜた『アサクリ』らしい描写に注目

 伊賀の里の幹部の娘である奈緒江と、異国の侍である弥助を主人公とした『アサクリ』最新作。

 本作は伊賀の里が織田家によって壊滅させられる“天正伊賀の乱”からスタート。そこで信長に恨みを持った奈緒江は、復讐を果たすべくアサシンとして行動していきます。

 “本能寺の変”は、物語が佳境に入るあたりで重要イベントとして発生。実行役は光秀ですが、なんと奈緒江もそれに加勢します。織田家で御伽衆として信長のボディガードをしている弥助とも、そこで衝撃的な出会いを果たすことに!

 “本能寺の変”の裏側には『アサクリ』シリーズ共通の敵であるテンプル騎士団の影もあり、黒幕となる人物が存在。物語の核心に迫るネタバレなのでここでは正体は伏せますが、なかなか納得感のある人物で、日本史に対する理解度の高さを感じました。

 事件の描き方自体は史実に近いながらも、その裏側に渦巻く陰謀がぶっ飛んでいるのは『アサクリ』シリーズらしさがありましたね。玉木宏さんが声を担当する、威厳あふれる信長の姿も魅力的な作品です。

光秀 歴史小説傑作選

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■さまざまな角度から“本能寺の変”を描くアンソロジー

 冲方丁先生や池波正太郎先生など、そうそうたる面々が光秀をテーマに書いた小説を集めたアンソロジー作品。さまざまな角度から光秀、つまりは“本能寺の変”について描写しており、一冊の満足度がすごい!

 とくに朝倉時代の光秀から描写して、謀反の理由を描いた冲方丁先生の『純白き鬼札』は、歴史初心者にもオススメできる作品。信長と光秀のすれ違いや心理描写が非常にていねいで、王道の“本能寺の変”作品としてオススメです。

 ほかの作品も王道から変わり種までさまざまですが、変化球としては山田風太郎先生の『忍者明智十兵衛』がすごい。なにせ、一行目から光秀が忍者扱いになっていて、そのまま物語が進行します。実は“本能寺の変”に関する描写はほとんどないですが、展開がぶっ飛んでいて面白いです。

 光秀以外の身内(母や娘ガラシャ)にスポットを当てたり、光秀生存説をフューチャーしたりとほかの作品も個性的。ちょっと変わった光秀作品を求める人にオススメできるアンソロジー作品です。

【本能寺の変】ほかにはどんな説がある? 現在のトレンドになっている説は?


 そんな感じで、さまざまな作品で描かれてきた“本能寺の変”。その理由は、そもそも謀反が突発的すぎて、光秀の動機が不明すぎるゆえに、フィクションの題材として脚色しがいがあるからでしょうね。

 主な“本能寺の変”の光秀の動機については、野望説、怨恨説、黒幕説があると思われますね。下記でザックリまとめていきます。

野望説


 信長が天下をとる直前になって、自身の野望のために天下をかすめ取ったという説。上記作品では『センゴク』などが当てはまりますね。実際、戦国武将としては最も納得できる理由な気もします。

 ただしこの説では、野望を抱いていたにしてはあまりに行き当たりばったりな光秀の行動に疑問点があるのも事実。そのため“状況的にやれそうだからやった”という動機も、けっこう主流に近くなっていますね。

 そしてこの説だと、光秀自身の格が落ちないのが最大のポイント。フィクション作品的に光秀を魅力あるキャラクターに描写しやすいので、今後もこの説は採用されやすいと思います。

■野望説の主な動機
・天下への野望
・信長への理想

怨恨説


 日ごろの恨みから謀反に至ったという説。まあ日ごろ“キンカン頭”とか禿呼ばわりしてたら、キレて謀反されるのも納得です。

 また、四国(長宗我部家)征伐に関して自身を外して、息子の織田信孝に担当させた恨みという説も有力。これは長宗我部家に光秀の家臣である斉藤利三の妹が嫁いでおり、光秀と縁があるからという理由もありますね。

 怨恨説はどちらかというと歴史研究の分野で根強い説のような印象。というのも、単なる怨恨にすると光秀に小物感が出てしまい、フィクション作品としては魅力的に描きにくくなるためでしょう。ただ、等身大の光秀像を描くには向いているので、採用している作品もそこそこあります。

■怨恨説の主な動機
・日頃の対応(禿呼ばわり)
・四国征伐
・唐入りへの不満

黒幕説


 歴史研究では一笑に付されるようなものですが、フィクション作品では花形ともいえるのが黒幕説。というのも、光秀の謀反が行き当たりばったりすぎて「誰かにそそのかされたけど、梯子を外されたんじゃない?」というのが理由としてありそうです。

 下記のような黒幕候補が上がっていますが、とくに多いのはやはり秀吉ですね。中国大返しの速度が異常なのと、その後に天下を取っているのが理由としては大きそうです。まあただ頑張って急いで帰って来ただけなら、秀吉が気の毒すぎますが(笑)。

 それ以外の黒幕候補も、信長の死によって恩恵を得る人物ですね。それぞれ根拠は薄い気もしますが、フィクション作品では意外性を出せるポイントなので、今後も黒幕説は多く採用されると思います。

■黒幕の候補
・羽柴秀吉
・足利義昭
・徳川家康
・毛利氏
・朝廷

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 そんな感じで、さまざまな“本能寺の変”を扱った作品をまとめてきましたが、改めて見ても歴史作品の題材としてとても魅力的な事件ですね。野望説、怨恨説、黒幕説どれをとっても、否定はしきれないのが題材としての自由度が高いです。

 ちなみに未完結の作品のなかでは『信長の忍び』が最新刊で“本能寺の変”の直前まで突入しています。まだ単行本では光秀の目的が明らかになっていませんが、同作者の別作品では誰かにそそのかされたような描写もあり、もしかしたら黒幕説を採用している可能性も……? 今後の展開に要注目ですね。

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