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『ガンダム ジークアクス』9話感想:ついに判明した“シャロンの薔薇”の秘密。『ジークアクス』に未登場のあのキャラのヤバさを改めて認識した回(ネタバレあり)

文:電撃オンライン

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 放送中のTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム ジークアクス)』第9話“シャロンの薔薇”の感想記事をお届けします。

[IMAGE]【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ガンダム ジークアクス』9話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。
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 ニャアン側のエピソードが描かれた一方、マチュが地球を目指してジークアクスとともにソドンから脱出していたという驚きの展開が描かれていた第8話。

 てっきり、シャリア・ブルのキケロガに撃墜され、ソドンの独房に入れられたところからのスタートだと思っていたので、いきなり8話の続きから大気圏に突入していたことに度肝を抜かれつつ、回想のソドンパートで、マチュを尋問するシャリアのシーンが印象的でした。

 マチュが考えていることをすべてニュータイプとして思考を先読みして、尋問するでもなく答えを聞き出しています。相手の心が読める、というのがいかに恐ろしいことなのか改めて分かります。


 ただ、『機動戦士ガンダム』でのシャリアは、ギレンに対して心が読めたにも関わらず、あえてそれをしなかった(もしくは、読んではいたがそれを口にはしなかった)のに対し、『ジークアクス』でのシャリアは自分の目的のために、他人の心を覗き込むことに一切の躊躇がありません。

 シャアがいなくなったことが彼を変えたのか、それとも元々の人格がこうだったのかまではわかりませんが、『機動戦士ガンダム』のシャリアと『ジークアクス』のシャリアは、ほぼ別人と言ってもいいくらいの差を感じました。

 マチュはいろいろシュウジについて聞き出されますが、隠す以前にマチュ自身も知らないことばかりで、いかにシュウジについて何も知らなかったのか、改めて突きつけられる形となっていたのもおもしろかった点。

 無関係だと判断されればそれ以上尋問は受けずに済むと思うので、マチュにとっては都合がいいはずですが、コモリからそれを指摘された時の表情から、その悔しさみたいなのが伝わってきました。

 シュウジが地球に行こうとしたのは、ガンダムが“シャロンの薔薇”を求めているから、で納得いくんですが、それはそれとして、シュウジ自身の考えていることがまだ見えてないところがあるんですよね。

 シイコとの共鳴をしている時、シュウジ自身も何らかの望みを持っていることが仄めかされていましたが、それが地球に行って“シャロンの薔薇”を見つけることと=ではない気がしています。

 あの時語られかけた、ガンダムではなくシュウジ自身の望みが何なのか、というのは今後の鍵にもなりそうな気がします。

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 そして予告でチラッと映っていた少女は、やっぱりというべきか『機動戦士ガンダム』にも登場していたララァ・スンでした。

 ララァが娼館で働いていたという設定は、本編では語られていないんですが、富野監督の小説『密会~アムロとララァ』の中で描かれていたので、娼館らしき場所だと分かった時は「このネタを拾ってきたか~」という納得感がありました。


 そんなララァとの会話の中で出てきた情報の洪水にはもう度肝を抜かされっぱなし。

 『ジークアクス』のララァはシャアと出会っておらず、戦争にも参加していないようですが、“夢”を通して異なる世界のララァたちが体験した世界を覗き見ているようです。

 最初は、『機動戦士ガンダム』でのララァとリンクしていると思っていたんですが、『ジークアクス』のララァが見た世界では、どの世界でもアムロがシャアを殺しているらしく、『機動戦士ガンダム』とはまた別の世界のようなんですよね(『逆襲のシャア』で2人は生死不明となっていますが、アムロが殺したわけではありません)。

 よくシャアの強さを評価する時に「アムロとあれだけ戦って生き残っているのがすごい」と言われたりもしますが、アムロと交戦して生き残っていた『機動戦士ガンダム』本編の世界が非常に稀なパターンだった……という可能性が出てきたのがおもしろいところ。

 逆にいうと、アムロがガンダムに乗ってしまったらほぼ詰み……と考えると、やはりアムロという存在がいかに規格外だったのかが改めて分かります。

 ただ、『ジークアクス』でのララァは、「あの人のためなら死んでもいいと思える」という発言こそあれど、並行世界の自分自身が死ぬ光景は見ていないように感じます。

 つまりは、『ジークアクス』のララァが“夢”で垣間見たのは、シャアとララァが出会った後、ララァが一年戦争を生き残った世界だけで、その中にはシャアが生存した世界は存在しなかった……ということなのかなと。

 シャアが生き残るには、ララァがアムロの攻撃からシャアをかばって死ぬ必要があり、アムロとララァが互いに生き残るパターンはあっても、シャアとララァが両方生き残ることはない……というのは、『逆襲のシャア』のラストで、シャアが「ララァを殺したお前に言えたことか!」とアムロに怒りをぶつけたシーンを思い出すと、あまりにもシャアにとって残酷だと思いました。

 館が全焼する騒ぎになる展開には、同じ9話の中で「綺麗な服を着せてもらって、食事が出るだけでもラッキー」というセリフもあっただけに驚きました。

 ただこのシーン、よく見ると言っているのはヴァーニだけで、館を全焼させたカンチャナの方は、ヴァーニの言っていることに一切同意していないんですね。

 デザインを見ても、ヴァーニの方は瞳にしっかりとハイライトがありますが、カンチャナはハイライトがないという違いもあって、ヴァーニが知らない裏で、カンチャナはかなり過酷な目にあっていた……ということが想像できます。

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 そして劇場先行版を見た時からずっと謎だった“シャロンの薔薇”の正体が、『機動戦士ガンダム』にも登場した、ララァが乗っていたニュータイプ専用モビルアーマーのエルメス、そしてララァ・スン自身だったことが判明しました。

 以前の一年戦争パートの感想では、いきなりジオンが赤いガンダムに搭載可能な無線型のサイコミュを開発できたのは、正史よりもサイコミュ研究が進んでいたからで、その要因になったのが“シャロンの薔薇”ではないか……という予想を立てていました。

 実際、『ジークアクス』世界でジオンが勝利したのは、ガンダムの捕獲に加えて、“シャロンの薔薇”から得た並行世界のジオンの技術も取り込んでいたから……と考えると、いろんな部分に納得がいくんですよね。

 ガンダムを開発した技術は連邦側にもあるわけで、それをリバースエンジニアリングしただけで国力の差が覆せるとは思えなかったのが正直なところで、そこに異なる世界のジオンの技術まで得ていたと仮定すると、より早いスピードで技術発展が遂げられ、結果ビグ・ザムの量産化が実現した理由にもなります。

 ただし、シャリア・ブルは「詳細な解析を試みましたが」「激しい戦火の中で喪失してしまった」と言っていますので、どこまでそのフィードバックがあったのかは定かではありませんが。


 しかし、そんな“シャロンの薔薇”の中で、ララァ本人がコクピット内で眠っている……というのはかなり驚きでした。

 最初は、『機動戦士ガンダム』の世界でシャアをかばった後、いわゆる異世界転移したのかと思ったりもしたんですけど、その場合はエルメスのコクピットがビーム・サーベルで焼かれているはず。

 “シャロンの薔薇”と呼ばれたエルメスの機体にはそんな損傷は見られないので、『機動戦士ガンダム』のララァと同一人物ではなさそうにも思えます。

 仮に、アムロがシャアを殺した直後に、そのショックでゼクノヴァを起こしたララァが『ジークアクス』の世界に転移してきた……と考えると、『ジークアクス』世界のララァの話とも繋がります。

 そう考えると、“ゼクノヴァ”とは平行世界の扉を開く行為なんじゃないか……という仮説が一つ浮かび上がります。

 あと、個人的に今回一番気になったのが、マチュを独房から解放したのは誰なのかということ。

 予告の時点だと、ちらっと映っていたララァか、シャリアが脱走の手引をするかなと予想もしていたんですけど、この世界のララァにそんなことはできなさそうですし、シャリアも黙認こそすれど自分の手で手引をしているというのはなさそうでした。

 となると、残る可能性としてありそうなのは、ジークアクスか、シャロンの薔薇の中で眠っていたララァ、あとは8話ラストに登場したシロウズあたりがありそうな線かなと。もしくは、まだ本編に登場していない誰か。

 ただ、送られたメッセージの中で、最初の言葉だけ「ロックが外れる」という日本語になっているのがかなり引っかかる部分。

 最初とそれ以降で送り主が違っている可能性があり、「ロックが外れる」という言葉は、オメガ・サイコミュが起動する時にハロが言っているセリフなのも意味深で、かなり送り主の正体が気になっています。

 あと興奮したのが、ワンカットだけ登場した“ジオン水泳部”の皆さん……もとい、ジオン軍の水中モビルスーツ部隊。

 『ジークアクス』世界のジオンでは、ガンダム捕獲によるリバースエンジニアリングの影響が出ていたので、ジオンのモビルスーツ開発の歴史がどうなっているのか不透明な部分があったんですが、ちゃんと作られていたんだと安心しました。

 さすがゴッグだ、存在感がすごいぜ……と言いたくなる裏に、こっそりズゴックがいるのもポイント。

 このカットは庵野さんの希望で追加されたものだと後にカラーのXで知り、「もっと活躍して欲しいです」という完全なファン目線でのコメントに爆笑していました。


 ソドンが地球に結構簡単に降下できてたり、大掛かりな引き上げ作業ができているあたり、ある程度は地球にもジオンの勢力圏は存在していそうだなと思っていたら、どうやらそれに近い想定の設定が組まれていたようです。


 どちらかというと、連邦にジオン本国を攻める力がなくなり、その独立を認めざるを得なくなった、痛み分けにも近い形での終戦をイメージしていたんですが、実質本国といえる地球の領土を一部奪われたところまでいったと考えると、連邦にとってはかなり不利な条件での講和となっていたことが改めて分かったような形でした。

 次回は、作中で何度も存在が語られていたギレン・ザビ自身が満を持して登場。ニャアンやエグザべがモビルスーツで出撃しているようなシーンも見受けられ、キシリア派とギレン派の戦争がついに始まるのか、目が離せません。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。


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