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一人称視点ホラーステルスゲーム『Time for Bed 夜ふかしの悪夢』は衝撃的な体験談をきっかけに生まれた、どこか懐かしさを感じられる作品。細かいディテールやVR対応などを語る【電撃インディー#1039】

文:sexy隊長

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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、一人称視点ホラーステルスゲーム『Time for Bed - 夜ふかしの悪夢 -』の開発者インタビューをお届けします。

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 本作は、悪夢の中で寝たふりをしながらお母さんの監視をやり過ごし、手元のレトロゲームをクリアするホラーステルスゲームです。

 本記事では、開発者であるNERDY PENGUINのはやとすきーさんにお話を伺いました。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!


『Time for Bed - 夜ふかしの悪夢 -』注目点や開発で苦労したこと


――『Time for Bed』の注目点を教えてください。

 本作の注目点は、“怖さ”と“懐かしさ”が共存している点です。

 本作は、“夜中に親に隠れてゲームをする”という、多くの人が一度は経験したことのあるシチュエーションから着想を得ています。

 当時のヒヤヒヤした空気や、親の足音が近づいてくるときのドキッとした感覚をホラーに昇華し、ゲーム内でも重要な攻略要素としました。

 その体験がプレイヤーの記憶を呼び起こし、「ただ怖い」だけではなく、どこか懐かしい雰囲気を生み出しています。

 この独特の雰囲気が、本作の魅力だと感じています。

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――開発で苦労していたところを教えてください。

 最も苦労したのは、“お母さんの巡回”と“手元の2Dゲーム”のバランス調整です。

 プレイヤーが監視をかいくぐりながらゲームを進めるという性質上、操作が複雑すぎると理不尽な印象を与えてしまいます。そのため、2Dゲーム部分は“移動”と“ダッシュ(アクション)”のみに絞り、シンプルで直感的な操作性を意識しました。

 しかし、それでは不十分で、巡回の頻度を少し変えるだけで一気に難易度が跳ね上がったり、逆に2Dゲームが簡単すぎると全体のテンポが平坦になってしまったりと、調整には細かいさじ加減が求められました。

 また、ステージが進むごとに新鮮さややりごたえを感じてもらうためには、操作のシンプルさを保ちつつもギミック面での工夫が必要です。

 何度もアイデアを出しては考え直し、テストプレイを重ねてようやく今の形に落ち着きました。

 後半にかけて難易度も上がっていきますので、ぜひ最後まで挑戦していただけるとうれしいです!

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――開発をするうえで、特に気を付けている点などを教えてください。

 子どもの頃に体験した“あるある”のシーンにリアリティを持たせることを大切にしています。たとえば、親の足音が近づいてくるときの音の聞こえ方や、光と影の演出、息をひそめたくなるような間など、プレイヤーが思わず反応してしまうような細かい表現を積み重ねました。

 また、懐かしさを感じてもらえるよう、随所に工夫を凝らしています。

 たとえば、ステージセレクト画面には昔のゲームパッケージを、ゲーム開始時には説明書を模したレトロなデザインを取り入れました。

 こうしたディテールが、プレイヤーの記憶や体験と自然にリンクしてくれることを期待しています。

――ゲームタイトルにこめた想いを教えてください。

 欧米圏では、親が子どもに寝るよう促すときに 「It’s time for bed.」 というフレーズをよく使います。

 この言葉は、子どものころの懐かしい記憶や、夜更かし中のドキドキした瞬間を想起させてくれると思い、タイトルとして採用しました。

 日本語版では『Time for Bed -夜ふかしの悪夢-』という副題を加えています。

 英語タイトルだけでは意味が伝わりづらい部分もあるため、日本語で補足することでプレイヤーがゲームの世界観をより具体的にイメージできるよう意識しました。

――『Time for Bed』を制作する際に影響を受けた作品やクリエイターがあれば教えてください。

 強いて挙げるなら、『Dead by Daylight』です。

 開発に協力してくれている友人とよく一緒にプレイしており、特に空間づくりや緊張感の演出に大きな刺激を受けました。

 たとえば、ランタンの影が人の気配と錯覚するような配置など、「じわじわと怖さを引き立てる雰囲気づくり」は本作を制作するうえでも参考にしました。

 また、後から気づいたことですが、『Dead by Daylight』のサバイバーが怯えながら発電機を直し、殺人鬼に見つからないよう立ち回るというゲームデザインは、本作における「お母さんに見つからないよう注意を払いながら2Dゲームを進める」というゲームプレイと、どこか重なる部分があると感じています。

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作品のコンセプトはまさかの実話!?


――『Time for Bed』のシステムである“母親に見つからないようにゲームをする”というコンセプトは、どこから着想を得たのでしょうか? もし子どものころの個人的な体験などがあれば教えてください。

 ゲームデザイナーのはやとすきーがカナダに留学していた頃、語学学校で“昔の怖い体験”というテーマについて話す機会があり、チリ出身の女の子が「お母さんに隠れてテレビを見ていたら見つかって壊されてしまった」という話をしてくれました。

 すると、同級生たちから「わかる!」「自分も似たような経験がある」といった声があがり、はやとすきー自身も同じような体験があったことから、「このテーマなら多くの人が共感できるはずだ」と確信しました。

 懐かしい思い出にホラー要素を掛け合わせることで、ユニークな体験を提供できると考え、帰国後、本作の制作を始めました。

――本作では、母親が恐怖の象徴として描かれています。ホラーの対象を幽霊などではなく、母親にするという大胆な発想にした理由を教えてください。

 通常、母親という存在は安心感やぬくもりを連想させますが、本作ではそれが真逆の存在として登場します。

 そのギャップによって生まれる恐怖や違和感が、本作ならではの怖さを一層強く演出していると考えています。

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――ゲーム内で主人公がプレイするレトロなゲームは、何かイメージやモチーフにしたゲームがあるのでしょうか?

 私たちが幼少期にプレイしていたゲームや、広く知られるクラシックなゲームがモチーフになっています。

 具体的には、『聖剣伝説』シリーズや『インベーダーゲーム』『ギャラガ』『ゼルダの伝説』などです。

 これらのゲームの要素を分析し、本作の雰囲気に合うゲーム性を構築しました。

 ステージごとに異なるレトロゲームが登場する構成になっており、各所に懐かしさを感じられる仕掛けを散りばめています。

 プレイ中に「これはあのゲームっぽいな」と思い出していただけると、より一層本作の魅力を感じてもらえると思います。


――寝たふりを長く続けると視界がぼやけるというシステムは、どのような意図で導入されたのでしょうか?

 もともとこのシステムは存在していなかったのですが、テストプレイを重ねる中で「寝たふりにリスクがないと緊張感に欠ける」という課題が見えてきました。

 当初は「寝たふりを一定時間続けるとゲームオーバーになる」といった案もありましたが、それでは難易度が高くなりすぎるため、代わりに「視界が徐々に歪んでいく」という仕組みを採用しました。

 このシステムによって、不安感が視覚的にじわじわと増し、最終的にはお母さんの足音や、かすかに見える赤い光がより重要なヒントになります。

 プレイヤーは視界が歪みきる前に「起き上がるタイミング」を見極める必要があり、結果として新たな緊張感が生みだすことができました。

 単にゲームオーバーにするよりも、プレイヤーの判断を引き出す仕掛けとして、面白さを与える要素が追加できたと感じています。

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――画面の指紋など、細かいところが非常によくできていて、こだわりを感じる作品です。ぜひココを見てほしいというポイントがあれば教えてください。

 本作では、ゲーム機まわりの小物にも強いこだわりを持って制作しています。

 特定の条件を満たすことで入手できる「特別なデコレーション(ステッカーやシール)」を用意しており、獲得したデコレーションは、設定画面で項目を選ぶことでゲーム機に自動的に貼り付けられ、いつもとは違った見た目でプレイを楽しめます。

 そのクオリティには特に力を入れていて、昔のステッカーを参考に、アクリル絵の具で描いたようなタッチのものや、ぷっくりと浮き出た立体的なシールなど、多彩なデザインを揃えました。

 これは、子どもの頃に集めていたステッカーや、友達とのシール交換といった「懐かしい記憶」を呼び起こしてもらえたらという想いから生まれたものです。ぜひ、ゲームを進めながらこれらのステッカーを集めて、あの頃のワクワク感を思い出してもらえたらうれしいです。

VR対応でさらなる恐怖を演出!


――今後、『Time for Bed』に関するアップデートや新たな展開を予定されているのでしょうか?

 今後は、まずVR対応と多言語対応を進めていく予定です。

 『Time for Bed』の「隠れながらゲームをする」というゲーム性は、VRによってさらにリアルで没入感や緊張感のある体験になると考えています。

 また、2024年の「Tokyo Game Show Selected Indie 80」に出展した際には、さまざまな国の方々から共感の声や好意的なフィードバックをいただき、このゲームが持つグローバルな可能性をあらためて実感しました。そのため、多言語対応を進めることで、より多くのプレイヤーに届けていきたいと思っています。

 さらに、発売後の反響次第では、エクストラステージの追加も検討しています。

 『Time for Bed』は、レトロゲーム×ロケーションの組み合わせによって拡張性の高い構成になっているため、ギミック重視の個性的なステージなど、新たな体験を加えることでより一層楽しめる作品になると考えています。

――今後、実現したい野望などありますでしょうか?

 NERDY PENGUINとして、個性的でありながらも大衆に響くバランス感覚を持ったゲームを作り続けていきたいです。

 挑戦的でユニークな発想を追求しながらも、広く受け入れられる作品に仕上げていくことを目指しています。

 また、将来的にはマルチプレイ可能なホラーゲームにも挑戦してみたいです。

 普段から友人たちと一緒にホラーゲームを楽しんでおり、その経験や知見を活かして、開発側として形にしてみたいという気持ちがあります。

 現時点では開発リソースが限られているためすぐには実現できませんが、『Time for Bed』を通して多くの方に作品を届けられたら、新たなプロジェクトへつなげていきたいと考えています。

――ゲームの開発に携わることになったきっかけについて教えてください。

 現在、NERDY PENGUINはHAYATOSKIEとDAMEGANEの2名でゲーム制作に取り組んでいます。

 もともとはHAYATOSKIEが個人でゲーム開発をしていたのですが、リソースや技術の面で課題を感じ、チームでの制作に関心を持つようになりました。チームで取り組むことで、リソースや知見を補完し合えるだけでなく、一緒に考えることで新しいアイデアが生まれるような関係性に期待して、まずは少人数でも成立する作品づくりを目指しました。

 そんなとき、語学学校でのある経験をふと思い出したことが、本作のテーマを形づくるきっかけとなり、チームを結成して最初の作品となる『Time for Bed』の開発を始めました。

――ここ数年でもっとも感銘を受けた、おすすめのインディーゲームについて教えてください。

 最近プレイして感銘を受けたのは『The Headliners』です。

 この作品は、先ほどもお話しした『Dead by Daylight』を遊ぶ友人たちと一緒にプレイしました。

 ゲーム性は『Lethal Company』や『Content Warning』に近い部分がありますが、よりカジュアルで親しみやすく、写真撮影がメインとなる点が魅力です。
 
 難易度も友人たちとワイワイ楽しめるバランスで、敵に襲われたり、逃げたりしながら撮った写真が絵として面白く、各プレイヤーがその成果をゲーム内やSNSで共有できるのも、現代のゲーム文化にうまく馴染むゲームデザインだと感じました。

――最後にユーザーに一言お願いします。

 『Time for Bed』は、懐かしさの中に恐怖が潜むホラーゲームです。あの夜のドキドキした感覚を、ぜひもう一度体験してみてください!

 発売時にはセールを予定していますので、気になる方はぜひウィッシュリストにご登録ください!

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