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なぜ『クロスチャンネル』はここまで評価されたのか。2003年の美少女ゲーム業界を、当時をイきヌいたゲーマー目線で振り返る

文:カワチ

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 学園青春アドベンチャー『CROSS†CHANNEL(クロスチャンネル)』のNintendo Switch版『CROSS†CHANNEL ~For all people~』が12月4日に発売されることを記念した特別企画をお届けします。

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※本記事はジー・モードの提供でお送りします。

『クロスチャンネル』が登場したのは美少女ゲームがもっともアツい時代だった2000年代


 どもです! ライターのカワチです。ちなみに、この「どもです」は美希っぽい挨拶として使っているのですが、気付いていてもらえるのでしょうか……。10年前から不安だったので、ついに元ネタを自分から話してしまいました。(どうでもいい)

 さて、前回は“神ゲー『クロスチャンネル』を知らない人、いますか?”という懐かしの記事をお届けしましたが、今回は『クロスチャンネル』発売当時の美少女ゲーム業界と『クロスチャンネル』について思い出話を語っていこうと思います。

 筆者は電撃オンラインの兄弟(?)とも言える電撃姫のライターとして記事を書かせていただいていたものの、本当にぺーぺーだったので、内容などを深く知っていたわけではありません。あまりそういった内情は分からないので期待した方がいたらごめんなさい。ボクはエロいゲームが好きなだけのおじさんです。

 そんな筆者が『クロスチャンネル』を知った理由は2014年6月24日の
座談会記事にもあるとおり、当時のレビュアーである表六玉さんのレビューです。

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 座談会では冗談めかしてしゃべっていますが、美少女ゲーム誌のレビュー枠に抜擢されるという段階でじつはとても注目されていた作品だということがわかります。

 というのも、女の子のビジュアルを掲載することがメインだった美少女ゲーム誌において、長文レビューを載せるスペースは基本的に少ないため、必然的に月の話題作や編集・ライターのイチオシ作品が選出されることになります。そのため、レビュータイトルに選ばれるという段階で雑誌としてもかなり力を入れているタイトルになります。

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 『クロスチャンネル』のすごさを語るときに奈須きのこさんが“竹箒日記”で「家宝にします。絶対に超えられない壁として君臨する作品に、出会ってしまった不運と幸運をかみ締めて」と書いたことが取り上げられがちですが、熱心なファンはすでに本作に目を付けており、「奈須きのこさんも『クロスチャンネル』の魅力をわかってくれた!」とうれしくなっていたわけですね。

 当時の編集さんなどに話を聞いたところ、当時は田中ロミオさんと同一人物であることは明かしていなかったものの、人気シナリオライターである山田一さんの新作だったこと、松竜さんのイラストがキャッチーだったことなどから発売前も注目されていたとのこと。

 また、ユーザーから具体的に注目を集めたのがTECH GIANやP-mateといった雑誌に付いてきた体験版。序盤を収録したものなので、本作のおもしろさの核となる物語やキャラクターに隠されたギミックはほとんど明かされませんが、テンポのいいギャグや魅力的なキャラクターは話題となりました。

 体験版はキャラクターの美希が「うぐぅ」と言ったり、本編以上にやりたい放題のパロディがありました。この時期の体験版は製品版の序盤そのままというだけでなく体験版だけの特別な展開も用意しているものが多くて楽しかったです。個人的にはガチンコ・ファイトクラブの本気パロディをやった『マブラヴ』の体験版が忘れられません(笑)。

 なお、前述した奈須きのこさんですが、“竹箒日記”以外にも同人誌『ビジュアルノベルの星霜圏』のインタビューなどでも『クロスチャンネル』に言及しています。「善ではない人間が、それでもいい人間になりたいと願うところが美しい」、「物語の形式はネガティヴでありながら、最終的にはポジティヴな空気に落とし込むというバランスが素晴らしい」と語られています。

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▲『ビジュアルノベルの星霜圏』。(筆者の私物)
 また、2003年当時は美少女ゲーム時代も黄金期でありました。美少女ゲームの歴史は“エロゲー文化研究概論”という本が詳しいのでぜひ購入して読んでみてほしいのですが、2000年はニトロプラスが『Phantom -PHANTOM OF INFERNO-』でデビューした年。

 9月にはKeyブランド2作目である『AIR』が発売されましたし、12月のコミックマーケットでは『月姫』完全版が頒布。翌年の2001年にはアージュから『君が望む永遠』が発売されたり、続く2002年にはコミックマーケットでの『ひぐらしのなく頃に』鬼隠し編の頒布やオーガストのブランドデビューもありました。

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▲『ひぐらしのなく頃に』鬼隠し編。(筆者の私物)
 また、1990年後半から2000年代はパソコン通信に変わってインターネットが情報インフラの主役になろうとしていた時代で、作品のレビューや議論がより広く活発におこなわれるようになりました。なお、2001年11月には思想家・東浩紀さんの『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』が発売。議論を活発化させました。

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▲『動物化するポストモダン』は話題となり、5年半後には続編である『ゲーム的リアリズムの誕生~動物化するポストモダン2』も発売。(筆者の私物)
 また、田中ロミオさんは山田一名義でD.O.ブランドにて妹+難病モノの『加奈~いもうと~』(1996)、宇宙への憧れを抱いた青春モノの『星空☆ぷらねっと』(2000)を手がけたあと、2001年11月2日に世間からつまはじきにされた者たちが疑似家族を作る『家族計画』を発表。これらは社会派の内容と泣ける演出が評価されました。

 田中ロミオさんはプレイバイメール(PBM)というユーザーが郵便や電子メールを介してゲームマスターとやり取りしてシナリオを進行していくものを運営する会社に勤めていた経験があり、そこでシナリオやキャラクター制作の腕を磨いたそうです。

 デビュー前からライアーソフト作品に関する座談会に加わったりもしていたので、何者なのかという憶測を呼んでいましたが、PBM会社時代の同僚である神堂劾さんが山田一さんがD.O.を辞めてフリーになったため、名義をPBM時代の田中ロミオに戻したことを日記で明かしました。のちに記述は削除されましたが、田中ロミオさんが山田一さんであることはファンの間でも公然の秘密になりました。

 山田一さん時代の作品もあり、最初から注目されていた田中ロミオさんですが、『クロスチャンネル』をきっかけに“田中ロミオ”としてのファンも増やしていきます。

 その後も『最果てのイマ』や『ユメミルクスリ』といった心の問題を描く作品で人気を博します。また、ライトノベルの『人類は衰退しました』や『AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~』などを手がけ、アニメ化によって大きく知名度を上げていくことになります。

ループものの傑作として評価を得た『クロスチャンネル』


 ここまでは『クロスチャンネル』が評価されるまでの流れについて語りましたが、ここからは少し作品自体の評価について語ろうと思います。ただし、物語のネタバレを含んでいるので、まだプレイしていない人はご注意ください。

 本作のキャラクターたちは心に闇を抱えており、施設に隔離されています。この段階で精神的な檻と社会的な檻に閉じ込められているのですが、さらに同じ1週間を何度も繰り返すという時空間の檻にも閉じ込められています。

 いわゆるループものですが、当時は『シュタインズ・ゲート』や『魔法少女まどか☆マギカ』よりもはるか前の作品であったためループという題材そのものがかなり珍しかったです。

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 もちろん、ループものというジャンル自体はSF小説にはたくさんありましたし、映画でも『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』などが有名です。とはいえ、イチ早くゲームにループという仕掛けを取り入れた『クロスチャンネル』は新鮮でした。

 弊誌のインタビューで田中ロミオさんは
「どのヒロインも世の中に対して納得できないものを抱えていて、そのうえでひとりよがりの結論を出してしまっている……というのは共通する項目だったはずです。主人公はそこにつけ込んで籠絡していき……みたいな話ですよね。ループするごとに世界が変質していく、というコンセプトなんですが、その中核を担うのが各ヒロインのイデオロギーであるという感じです」と語っています。

 実際に本作は美少女ゲーム×ループものという構造の組み合わせ方がとても上手です。キャラクターそれぞれの問題をしっかり解決しつつ、クライマックスへと物語を盛り上げていきます。

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 “籠絡”という表現は田中ロミオさんらしいなと思いつつ(笑)、本作に登場するキャラクターたちの闇は誰しも共感できるものばかり。その闇とどう立ち向かうのか、もしくは折り合いをつけていくのか、といった部分は感情移入しながらプレイできると思います。

 また、謎の明かし方もうまく、飽きさせないように工夫されています。キャラクターや世界の謎が明らかになっていくごとにこの世界にハマっていきます。

 とくに主人公の黒須太一の描写には驚くはず。あまり書きすぎるとネタバレになってしまいますが、どのように物語を終わらせるのか想像できず、最後まで読みたくなる推進力となります。

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 オリジナル版が発売されたのは20年以上前ですが、不変的なテーマの作品なので今、遊んでもまったく色褪せない魅力を持つ作品です。ぜひみなさんNintendo Switch版でプレイしてみてください!

『CROSS†CHANNEL ~For all people~』商品概要

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タイトル:CROSS†CHANNEL ~For all people~
プラットホーム:Nintendo Switch
発売日:2025年12月4日(木)予定
ジャンル:学園青春アドベンチャー
価格:限定版 14,980円(税別)、通常版 7,480円(税別)
プレイ人数:1人
対応言語:日本語
レーティング:CERO D(17歳以上対象)
パブリッシャー:ジー・モード
開発:レジスタ
シナリオ:田中ロミオ
原画:松竜

限定版

特典①:B6アクリルパネル
特典②:B2タペストリー
特典③:アクリルキーホルダー 5種(山辺美希/佐倉霧/宮澄見里/桐原冬子/支倉曜子)
特典④:ブックレット(初期プロット+原画集)
PS3/PSvita版『CROSS†CHANNEL ~For all people~』
  • 限定版特典 特製CROSS†CHANNELブックレット
  • 予約特典 原画集
にて掲載されている内容を再編集し構成しております。

通常版

 2020年8月20日に配信されたNintendo Switchダウンロード版と同内容のものを、パッケージ版として発売します。
※収録内容はダウンロード版と同一のものになります。

店舗別予約特典

 対象店舗で予約すると、店鋪オリジナルの特典(有償/無償)がもらえます。詳しくは公式サイトを参照のこと。
※特典は数に限りがあり、なくなり次第受付終了となります。予めご了承ください。 ※特典につきましては各店舗様にお問い合せください。
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