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『都市伝説解体センター』の元ネタ都市伝説を解説。ベッドの下の男、ブラッディメアリー、きさらぎ駅…知ればもっと深く物語を楽しめる!

文:滑川けいと

公開日時:

最終更新:

 2025年2月に集英社ゲームズから発売され、電撃インディー大賞2025で1位を獲得するなど高い評価を得ている『都市伝説解体センター』。

 スタイリッシュなドット絵のビジュアルをはじめ、現代らしさのある“SNS調査”や各話で扱われる都市伝説など見どころが本作にはたくさんあります。

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 都市伝説は、生きていれば何かしら耳にするもの。“口裂け女”や“トイレの花子さん”、“ネッシー”なんていうのも有名な都市伝説ですよね。本当にあるかもしれないし、ないかもしれない……といった不透明さが人々の興味をひくのでしょう。

 創作されたものも、説明のつかない事象を誰かが解釈したものも含め、太古より都市伝説は人々の近くにあるものなのだと思います。

 本作が扱っている都市伝説は、ゲーム中でも触れられますが“実際に現実で語られている都市伝説”がベースとなっているのです。プレイ中に「この都市伝説、聞いたことがある!」と思った方もいるのではないでしょうか。

 今回は1話~3話に登場する都市伝説の元ネタを紹介。これを読めば本作をより深く楽しめるので、ぜひ読んでみてください!
※本記事内には物語のネタバレを含む表現がありますので、ご注意ください。

『都市伝説解体センター』で登場した都市伝説の元ネタを紹介

第1話「闇から覗く目」

 第1話では、主人公“福来あざみ”の同級生である美桜の部屋に現れた謎の怪異をめぐっての事件が展開します。ことあるごとに美桜の部屋に現れ、彼女に恐怖を与えてくる怪異。

 これは、都市伝説解体センターに属することになったあざみが担当する最初の事件です。あざみはセンター長“廻屋渉”からの指示のもと、相棒となる“ジャスミン”とともに解決を目指します。ベッドの近くに現れるという情報から、都市伝説“ベッドの下の男”だと仮定して調査は進められていきますが……。

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 第1話で扱われる都市伝説は
“ベッドの下の男”ですが、これはアメリカ発祥のものと言われています。

 マンションでひとり暮らしをしている女性の部屋に、友人が来訪。ただ、ベッドがひとつしかないため女性はベッドで、友人は床に布団を敷いて寝ることにしました。

 女性が就寝しようとしたところ、友人が突然「買い物に行こう」としつこく誘ってきます。イヤイヤながらもあまりに熱心に誘われるため、女性はともに行くことにしました。そして部屋を出ると、血相を変えた友人が女性に「ベッドの下に包丁を握った男がいた」と告げます。

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 似たようなパターンとして、こんなものも。

 Aの部屋でAとBが夜まで一緒に遊んでおり、解散したもののAの部屋で忘れ物をしたことにBが気付きました。Aの部屋に戻ると電気が消えていたため、もうAは寝ているんだと思ったBは暗がりのなか忘れ物を探しだし、自宅に戻ります。翌日Aが殺されていたことを知るのですが、Aの部屋の壁には「明かりをつけなくてよかったな」と書いてあった、というものです。

 このパターンはベッドの下にいたわけではないものの、当事者が気付いていないだけで近くに犯人がいたという点で類似しています。

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▲本作のなかでは怪異が都市伝説とは少し違った行動をする場面も。この引っかかりが事件を解決する糸口となります。
 この都市伝説に共通しているのは、“自宅に何者かが忍び込んでいるのに気付かず生活していた”という点。心霊現象のような非現実的な恐怖ではなく、現実に起こりうる恐怖だからこそイメージしやすく、多くの人の心に刻まれる都市伝説となりました。

第2話「鏡像から迫る死」

 第2話では、「霊がいることを証明してほしい」という依頼のもと、心霊系配信者の“谷原きのこ”が投稿した幽霊が映り込んだという動画の調査をします。

 調査の舞台は事故物件として知られるアパート。このアパートできのこが行った交霊術が成功したのではないかという情報をもとに、あざみは映り込んだ幽霊の正体と事件の真相を追うことになるのです。

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 第2話の題材となる都市伝説は
“ブラッディメアリー”です。海外ではさまざまな交霊術が存在しますが、このブラッディメアリーはよく知られているもののひとつ。

 やり方は簡単で、暗闇のなかひとりで鏡の前に立ち、自分の姿を鏡に映します。そして「メアリー、メアリー、メアリー」と3回唱えると、鏡のなかに血まみれの女性の幽霊が現れるというものです。

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 呼び出しに成功すると顔を引っ掻かれたり、発狂したり、場合によっては命を落とすなど、さまざまなものが伝わっています。願いを叶えてくれるといった利点は一切なく、恐怖のみが発生する交霊術なわけです。

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 交霊方法の3回「メアリー」と唱えるというもの以外にも“3回まわる”、“ロウソクを灯す”など、地域や語り手によって細部が異なります。これは口承で伝わる都市伝説ならではの特徴ですね。

 鏡を使った交霊術としては、とある時間に合わせ鏡のあいだに立つ、鏡の前で特定のお辞儀をするといったものもあります。モノを映し出す鏡という身近なものを使う、方法が容易ということからも“ひょんなことから交霊の条件を満たしてしまうかもしれない”怖さがあるのかもしれません。

第3話「辺獄への階段」

 第3話は、完全招待制の謎めいたオカルトミステリーツアーが舞台です。

 上野公園周辺で開催されるこのツアーでは過去に参加者の行方不明事件も発生しているという噂があり、あざみはジャスミンとともにツアーに潜入。参加者たちと交流しながら“主催者の正体を探る”ための調査を進めていきます。

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 1、2話と異なり、3話はミステリーツアーだけに
“きさらぎ駅”“異界エレベーター”など複数の都市伝説が用いられています。全体のテーマとしては“異界”ですね。

 都市伝説では、異界には日常から突然入り込んでしまうケースがよくあります。「電車に乗っていると知らない駅についた」、「ふと気付くと知らない土地にいた」など、突然異界に行くといった都市伝説はありますが、多くの人が知ることになったのはきさらぎ駅の登場からではないでしょうか。

 これは2004年にインターネット掲示板“2ちゃんねる”から生まれた、比較的新しい都市伝説となっています。ことのはじまりは、2ちゃんねるのオカルト板に“はすみ”と名乗る女性が行った投稿でした。彼女は電車に乗ったものの、いつもとは違いなかなか駅に停車しません。そしてついに降り立ったのが、聞いたことのない無人駅“きさらぎ駅”だったのです。

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▲あざみたちが迷い込んだ謎の駅。看板にはこころなしか“きさらぎ”と書いてあるような……。
 前述したベッドの下の男やブラッディメアリーなどは「こんなことが起こったらしい」といういわゆる“事後的”な話で終わるのですが、このきさらぎ駅はほかにはない特徴があります。それは、“リアルタイム”で展開されたものだということ。

 2ちゃんねるの掲示板に投稿され、多くの人が同時進行ではすみという人の行く末を見守りました。はすみさんは駅周辺の様子や次々に起こる奇怪な出来事を数時間にわたって実況し、解決はしないまま消息を絶ったのです。

 「さすがに釣り(作り話)だろう」、「いや、あの緊迫感は本当かもしれない」……さまざまな憶測が飛び交ったこのリアルタイム性が、きさらぎ駅を特別な都市伝説にしたと言えます。

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▲知らない駅は使われなくなった昔の駅なのか、それとも……。
 突然行くものだけでなく、“都内にあるとある駅で特定の行動をする”、“寝る前に紙にある言葉を書いて枕の下に入れる”など、異界に行くための方法が語り継がれています。そのなかのひとつが異界エレベーター。

 10階以上の建物のエレベーターにひとりで乗って行います。特定の手順を踏み、エレベーターが10階以上にいくと成功。異界に行くことができるというものです。

 これには3階建ての建物のパターンもありますが、いずれもどこかでひとりエレベーターに乗ってくるものの話しかけてはならない、手順が複雑であるという共通点があります。さらに行程で乗ってくる人物以外の人が乗ってくると無効になるといったルールも。

 本作で地下に向かう場面で登場するエレベーターでは、ガイドが「ほいほい」と手順を踏んでボタンを押す描写があります。このあたりで異界エレベーターをモチーフにしているのかなと感じました。

 ブラッディメアリーをはじめとする交霊術は、方法の手軽さから“体験してしまうかもしれない”恐怖で人々を魅了しますが、異界エレベーターは手順の複雑さから“本当に異界に行けるかもしれない”という期待や好奇心がかき立てられ興味をひくのかなと。都市伝説はいろいろな角度から我々を魅了してくれますね。

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▲作中でも異界エレベーターについては触れられています。
 ちなみに、ミステリーツアーで訪れた場所のひとつ不忍池では、スワンボートにカップルで乗ると弁天様の怒りをかってしまい別れてしまう、といった都市伝説があります。

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数多の都市伝説と濃密なストーリーが楽しめる『都市伝説解体センター』


 本作の素晴らしい点はこれらの都市伝説を単にモチーフにするだけでなくSNSに潜んだ闇と絡め、オリジナルの良質な物語としていることです。

 元ネタを深く知った上でプレイすると、制作陣の都市伝説へのリスペクトとストーリー展開の見せ方に改めて感心させられますね。第4話以降にも魅力的な都市伝説が登場するので、ぜひプレイして楽しんでみてください。

 ちなみに作中で登場する、ジマーたちが敬愛するサイト“SAMEJIMA”は、都市伝説
“鮫島事件”がモチーフとなっています。鮫島事件の話をすると……おっと、誰かきたようです。それでは、また!


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