2026年1月18日、東京国際フォーラム ホールAにて“CHRONO TRIGGER Orchestra Concert 時を超える旋律”が開催されました。
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『クロノ・トリガー』が発売された1995年から早30年。本作は『ファイナルファンタジー』の坂口博信氏、『ドラゴンクエスト』の堀井雄二氏、そして『ドラゴンボール』の鳥山明氏が一堂に会したドリームプロジェクトで、当時の注目度はすさまじいものでした。いまなお褪せぬ名作でもあり、リリース以降、さまざまなハードに移植されています。
そして何より、光田康典氏をはじめとしたコンポーザーの手腕が、遺憾なく活かされた楽曲群も大きな魅力です。
本公演は、そんなBGMを映像付きのフルオーケストラで体験できる、ファン垂涎のイベント。プログラムはストーリーの時系列を追うような並びで、「あの冒険を追体験できる!」と即座にわかるよう組まれていました。
5000人を収容できるホールには、11時の開場前からファンが大挙。グッズ販売には長蛇の列ができ、10分ほどすると「いまから並ぶと、12時の開演に間に合わないかもしれません!」と声かけされるほど。まったく衰えることのない人気を再確認できました。
なお本作の直撃世代は現在30代後半〜50歳くらいと思われますが、親子での来場客も見受けられ、お子さまが「魔王の曲が好きー!」と親御さんにお話している姿も。うんうん、ものすごくわかる。めっちゃカッコいいよね最高だよね……。名曲は時代を超えて愛されるんだな、ともしみじみ思いました。
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索引
閉じる現代:柱時計の音から、フルオーケストラによる圧巻のメインテーマへ
「カチ、カチ、カチ……」
静まり返ったホールに響き渡ったのは、本作のオープニング『予感』を象徴する柱時計の振り子。
楽団をバックに、スクリーンには実機映像が流れ、否応にも当時の記憶が呼び覚まされます。
ああ、30年の時を超えて、あの冒険を追体験できるんだ……そんな感情が一気にわき上がってきました。
続けてメインテーマ曲の『クロノ・トリガー』が会場一杯に鳴り響きます。原曲をより壮大にアレンジしたスケールに圧倒されつつ、この時点で目頭が熱くなってきました。早すぎる。まだ1曲目なのですが……!
そんなオープニングから一転、ガルディア王国歴1000年、千年祭の朝に場面が転換。鳥の声、花火、波音のSEをクラリネットと打楽器で再現しつつ、『朝の日ざし』が演奏。
クロノが母親に起こされるとピッコロとホルンを主軸にした、『やすらぎの日々』が流れます。平和な風景、ガルディア王国の日常。これから始まる過酷な運命を知る由もない、穏やかな時間がそこにはありました。
打楽器が軽快なリズムを刻み始めると、会場は一気に『ガルディア王国千年祭』の祝祭ムードへ。リーネの鐘の前でマールと出会い、広場を駆け回り、ゴンザレスと戦ったころの記憶が甦ります。
しかし、『不思議な出来事』で空気が一変し不穏な空気に。ゲートの出現と同時に、日常が非日常に侵食される不安感が見事に表現されていました。
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中世:思わずコントローラーを置いて聴き入った『風の憧憬』
ゲートを抜け、辿り着いたのは400年前の中世。弦楽器が織りなすピチカートで『樹海の神秘』と『風の憧憬』が奏でられます。とくに『風の憧憬』は本作のなかでも屈指の名曲。これを生演奏で聴けるのは、幸せ以外のなにものでもありません。
なお実際のプレイでは、ゲートから山中に放り出されますが、この時点では木々や川のせせらぎのSEのみで、BGMはありません。
フィールドに出たと同時に『風の憧憬』が流れるのですが、当時プレイしていた際、あまりに良曲すぎてコントローラーから手を離し、呆然と聴き入ってしまったことが思い出されました。
そんな余韻を切り裂くように、バトルBGM『戦い』が始まります。ブラスの鋭いメインメロディの裏で、木管と弦楽器が絶え間なく動くスリリングなアレンジです。
そして勇壮な『ガルディア城~勇気と誇り~』から、シームレスに『カエルのテーマ』が演奏。
『カエルのテーマ』、いやもう……率直に言って大好きすぎるんですよね……!
カエルは最初、「愉快な見た目と騎士っぽいセリフのギャップがおもしろいキャラ」くらいにしか思っていなかったのですが、バックグラウンドが明かされるにつれ、どんどん魅力が引き出されていく。最終的には本作随一の推しキャラになりました。世界でいちばんカッコいい両生類だと思っています。
スクリーンにはグランドリオンで魔岩窟を両断するシーン、彼が人間の姿だったときの記憶、サイラスとの別れなど、カエルのハイライトが畳み掛けられ、ひたすら胸にくるものがありました。
終盤にかけ、さまざまな楽器がメインテーマを追いかけるよう、重層的にアレンジされていたことも素敵でしたね。
続けて少しコミカルな『王国裁判』から、シリアスな『隠された事実』、『危機一髪』の3曲が演奏。スクリーンには一連の騒動が映し出され、クロノが“ドラゴンせんしゃ”を破壊してひと段落。
……30年前から疑問でしたが、なぜあんな不安定そうな高所で巨大メカを持ち出したのか。改めて思い返してクスリとしました。
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未来:涙腺を刺激する『ロボのテーマ』。機械的なリズムに重なる温かい旋律
そして荒廃したA.D.2300の未来へ。ロック調のベースラインに重層的なアレンジが施された『16号廃虚』に合わせ、眼前の映像には接触するとポーションを盗むネズミや、異形のミュータントたちがお目見え。
この時代、人類はほぼ滅亡しています。今回のセットリストでは演奏されなかったものの、未来の楽曲には『生きる望みをすえた人たち』というド直球すぎるものもありましたね。
そんなディストピアのなかで出会う温もり。『ロボのテーマ』です。原曲の入りであるリズムパートはマーチ風にアレンジされ、多数の楽器が入り乱れる、シンフォニックな仕上がりとなっていました。
個人的に『ロボのテーマ』も大好きなのですが、メインメロディを聴くと、なぜか目頭が熱くなるんですよね。
ロボはひたすらに優しいんですよ……。純粋で健気でフレンドリー。スチームパンク全開な外見からして愛おしい。砂漠を森に変えるために、400年間の労働すら厭わない自己犠牲の固まりでもあります。
なおロボが同型機たちにタコ殴りにされるシーンがあるのですが、あれはゲームをプレイしていて、本当の意味で感情的になった初めての体験でした。「お前らなにやってんだ!!!」とリアルに叫びつつ、MP管理度外視で最大火力を叩き込んだことは鮮明に覚えています。
続けて、もの悲しいメロディが印象的な『世界最期の日』。原曲は30秒ほどの楽曲ですが、オーケストラらしい、膨らませたアレンジを味わえました。
同時に世界が崩壊するシーンが投影され、元凶である『ラヴォスのテーマ』へ続きます。絶望感がすごい……。荘厳な音の圧力がホールを満たし、第一部が終了しました。
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原始〜古代:『魔王決戦』の変拍子は令和に聴いても新しい
第二部は、『時の最果て』から幕開け。ハープ調の音色による浮遊感のあるワルツでひと息ついたのもつかの間、『愉快なスペッキオ』が陽気なリズムで演奏され、スクリーンには「柵に沿って時計まわりに3周して」魔法を覚えるシーンが映し出されます。
『ファンファーレ 3』から送り出されたのは、B.C.6500万年。
『原始の山』は、エネルギッシュなリズムに合わせ、弱音器を付けたトランペットやトロンボーンの乾いた音色が印象的でした。続けての『エイラのテーマ』も、原曲の持つ疾走感を、伸びやかな金管楽器が野性味たっぷりに歌い上げます。
そして、物語は転換点へ。「黒い風が、また泣き始めた……」。不気味な静けさを湛えた『魔王城』、怪しさが入り乱れる『錯乱の旋律』、そして『魔王決戦』へと、原作さながらの流れを満喫できました。
とくに『魔王決戦』は、ゲーム史全体から見ても人気曲。重々しい前奏のなか、原曲で風を表現するSEは、“ウィンドマシーン”という特殊な楽器で表現していました。
アップテンポに移行するメロディックな箇所からは問答無用で痺れっぱなし! 5/8、7/8の変拍子が連続するテクニカルなパッセージでは、空気を揺さぶるティンパニが際立っていました。
余談ですが、魔王が魔法を使うときの所作が素敵すぎて、真似しようと躍起になった人はかなりいるのではないでしょうか。
激闘の果てに訪れたのは、B.C.12000年の古代。『時の回廊』は、ヴィブラフォンの音色による導入がとにかく印象的。
作中の現代より遥かに高度な文明を築いていたにも関わらず、どこか砂上の楼閣のような滅びの儚さも内包している名曲です。
重々しい『ジール宮殿』を経て奏でられた、『サラのテーマ』も人気曲。オーボエの切ない主旋律に乗せ、ボンゴをはじめとした打楽器によるエキゾチック感、ハープやチェレスタによる粒が揃った8分音符の組み合わせが、唯一無二の雰囲気を醸していました。
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最終決戦:テンション最高潮の『世界変革の時』、そして『エピローグ~親しき仲間へ~』で感涙
ストーリーはいよいよ最終局面へ。クロノを失い、絶望に沈む仲間たち。『夜の底にて』では、そんな彼らの悲しみをイングリッシュホルンの主旋律が代弁します。しかし後半からは、それでも前を向こうとする、仲間たちの姿勢が感じられるような展開に。
それは次曲の『決意』で形となり、『シルバード~時を渡る翼~』で一気に開花。原曲は天空を駆けるような軽やかなイメージでしたが、オーケストラアレンジでは弦楽器とホルンにより勇壮さが強調され、ドラマティックな仕上がりとなっていました。
そしてラヴォスとの決戦となる『世界変革の時』、『ラストバトル』の連曲。激しいリズムと高鳴るメロディライン。過去、現在、未来すべての時代の想いを背負い、星を喰らう存在へと挑みます。
ラヴォスコア戦となる『ラストバトル』では、咆哮のSEを、金管楽器群による不協和音で表現。スクリーンにはラヴォスコアの猛攻が映し出され、当時の焦燥感がフラッシュバックしました。
それにしても、まさか真ん中の宇宙人のような敵が単なる“センタービット”であり、本体が右側のビットだとは思いもしませんでしたね……。じつに鮮やかな初見殺しでした。
そして、オルゴール調の導入から『エピローグ~親しき仲間へ~』が奏でられます。平和が戻った世界で、スクリーンにはそれぞれの時代へ帰っていく仲間たちの様子が流れます。
そもそもが感動的なシーンではあるのですが、なかでもロボとルッカの別れが強調されていました。
平和になった未来では、自分の存在が消えるかもしれない。それを理解しつつも安心させようとするロボでしたが、これに対してルッカが「悲しいときはすなおに悲しむのよ!!」とロボの胸板を叩く映像に合わせ、金属を叩くような音が同時に鳴らされたんです。
これは……ダメでしたね。誇張なく正直に告白しますが、涙が頬をジワっと……。周囲からも、すすり泣く声が微かに漏れていました。
そしてエンディングテーマの『遥かなる時の彼方へ』。仲間たちの“その後”の姿とともに奏でられる透明感のある旋律で、じっくりと余韻に浸らせてくれましたが……。
もちろん、このすばらしいコンサートがここで終わるはずもなく、鳴り止まない拍手に応えて、ニコラス・バック氏とオーケストラが再び準備を整え、旅のダイジェストとなる『クロノ・トリガーメドレー』を奏でます。
これまで演奏された以下の名曲たちが、走馬灯のように駆け巡るメドレー。「またこの冒険を味わいたい」、そういった欲求に応える、まさに“強くてニューゲーム”を追体験できるようなフィナーレでした。
『クロノ・トリガーメドレー』楽曲
・クロノ・トリガー
・エピローグ〜親しき仲間へ〜
・ファンファーレ1
・カエルのテーマ
・ロボのテーマ
・エイラのテーマ
・サラのテーマ
・クロノ・トリガー
そして最後にスクリーンに映ったのは、ゲーム冒頭、クロノが母に起こされるセリフ……。また冒険が始まりそうな、何とも心憎い演出でした。
オーケストラにアレンジされた、数々の名曲を堪能できたことが至上の体験だったことはもちろんです。
しかし30年経ったいまでも、いやいまだからこそ、改めてプレイしたくなる……そう思わせてくれる、本当にすばらしいコンサートでした。
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“CHRONO TRIGGER Orchestra Concert 時を超える旋律”セットリスト
01.予感 / クロノ・トリガー
02.朝の日ざし / やすらぎの日々
03.ガルディア王国千年祭 / 不思議な出来事
04.樹海の神秘 / 風の憧憬
05.戦い / ファンファーレ 1
06.ガルディア城 ~勇気と誇り~ / カエルのテーマ
07.王国裁判 / 隠された事実 / 危機一髪
08.16 号廃虚 / ロボのテーマ
09.世界最期の日 / ラヴォスのテーマ
10.時の最果て / 愉快なスペッキオ / ファンファーレ 3
11.原始の山 / エイラのテーマ
12.魔王城 / 錯乱の旋律 / 魔王決戦
13.時の回廊 / ジール宮殿
14.サラのテーマ
15.夜の底にて
16.決意 / シルバード ~時を渡る翼~
17.世界変革の時 / ラストバトル
18.エピローグ~親しき仲間へ~
19.遥かなる時の彼方へ
- アンコール -
20. クロノ・トリガー メドレー