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『.hack//Z.E.R.O.』の開発状況や『戦場のフーガ』の今後を松山社長に聞く。サイバーコネクトツー30周年記念インタビュー

文:Ak

公開日時:

 『戦場のフーガ』シリーズや『NARUTO ナルティメット』シリーズなど多くのゲーム開発で知られるサイバーコネクトツーは、2026年2月16日で30周年を迎えました。それを記念して、代表取締役社長である松山洋氏にインタビューを実施。

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 ついに発表された待望の最新作『.hack//Z.E.R.O.』の開発状況や、サイバーコネクトツーの今後の展望などについて聞いてきました。

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30年間戦略的に会社の成長と領域展開をやってきた【サイバーコネクトツー30周年インタビュー】


――サイバーコネクトツー設立30周年おめでとうございます。今の率直な感想を教えてください。

松山
ありがとうございます。率直に言うと、「いっぱい仕事したなあ」って思います。先日の業界関係者向けパーティーでもお話しましたが、我々の30年を大きく10年単位で区切ってみると、じつは戦略的に会社の成長と領域展開をやってきたんですね。

 最初の10年は、1996年2月。私自身もまだ25歳の若者、何者でもないただの若者が10人集まってできたのが“サイバーコネクト”でした。この最初の10年の間に、社長が交代してサイバーコネクトから“サイバーコネクトツー”になり、私自身が代表を務めるようになりました。

 もうとにかく足掻いていましたね。足掻いて、足掻いて、足掻き続けて、「俺たちはここにいるよ」というメッセージをものづくりを通じて必死に発信してきました。その10年の中で生まれたのが、『.hack』シリーズであり、『NARUTO ナルティメット』シリーズです。

 次の10年は、広げていく、飛躍のための10年でした。東京スタジオができたり、カプコンさんと『アスラズ ラース』をやったり、『ジョジョの奇妙な冒険』のゲーム開発を担当したりしました。ずっと“『NARUTO ナルティメット』シリーズの会社”、“『.hack』シリーズの会社”だったイメージが、オリジナルプロジェクトや新たなIPのゲーム開発を手掛けることによって、サイバーコネクトツーの領域が広がったのが20年目の頃でしたね。

 そしてこの直近の10年は、20周年を迎えたタイミングで「これからの10年はこうするぞ」と宣言してスタッフとともに進んできたんです。もっと我々ができることを増やす。

 その1つが、デベロップメントだけではなく自社パブリッシングということで、『戦場のフーガ』の立ち上げから企画開発、販売まで持っていけたということ。

 そして、漫画『チェイサーゲーム』の展開からドラマ化、今年の映画化、アニメの制作などを含めて、サイバーコネクトツーが単なるゲームデベロッパーだったところから、いろいろなことが自分たちの意思でやれるようになったのがこの10年です。さらに大阪スタジオも設立しました。

 今現在、サイバーコネクトツーは福岡、東京、大阪の3拠点で300人ちょっとのスタッフがいますが、今年は東京スタジオの増床工事があります。これによって3拠点で、これから入ってくる未来のメンバーも含めて400人体制になり、また新たに領域を展開していく予定です。

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『.hack//Z.E.R.O.』ではシリーズの本質を大事にしつつ“未来”を描く【サイバーコネクトツー30周年インタビュー】


――30周年ということでいくつもの大きな取り組みが発表されましたが、とくに『.hack//Z.E.R.O.』についてお伺いいたします。まずは、自社パブリッシングを選んだ理由や狙いがあれば教えてください。

松山
もう一言で言いますけども、まずはバンダイナムコエンターテインメントさんに圧倒的感謝です。じつはこの『.hack』完全新作プロジェクトは、サイバーコネクトツーの自社開発、そして自分たちで販売まで行うんです。通常だとありえないと思うんですね。

 バンダイナムコさんに「30周年を記念したプロジェクトとしてやらせてください」と相談を始め、話し合いを積み重ねた結果、特別に許諾をいただけました。『.hack』シリーズの最新作にして、新たな制作体制で作られた完全新作をお届けすることになります。バンダイナムコさんのおかげです。

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――『.hack//Z.E.R.O.』については、まだ言えることは少ないかと思いますが、過去作との世界観のつながりなど、シリーズファンに向けたコメントがありましたらお願いできますか?

松山
我々が新しいプロジェクトを始めるときは、どこに軸足を置くか、この作品が選ばれる理由はなんなのか、というところからスタートします。『.hack』の場合は、これまでのシリーズを通しても、やはり「ゲームとリアル」、目の前にいるファンタジーのキャラクターの向こう側にリアルがちゃんと透けて見えるという“境界性”と“二面性”こそが『.hack』の本質なので、そこは一番大事にしつつ作っています。

――タイトルの『Z.E.R.O.』が気になる方も多いと思います。

松山
これも一応言っておきますが、過去に角川書店から出版された小説(※『.hack//ZERO』)とは、残念ながら一致しているわけではありません。タイトルの間にドットが打たれていると思いますが、「本当にゼロから始めます」という我々の宣言だと思っていただければと思います。もちろん、しっかりと別の意味はあります。

――『Z.E.R.O.』とタイトルにある通り、時系列的には過去編なのでしょうか?

松山
時系列的には“先”です。『.hack』は常に、今我々がいるこの世界からそう遠くない未来という立ち位置で設計しています。「こんな素敵な未来が訪れたらおもしろいよね」というところから設計していますので、今我々がいるこの時代よりももう少し先の未来の話だと思っていただければ。

 現代でも『.hack』1作目が展開された2002年の当時思い描いていた未来像の中で、実現していることがいくつもあります。今回も未来の先取りをしていきます。

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――アクションRPGということで、過去作よりもアクション性は高まりそうでしょうか?

松山
アクションの得手不得手によって難易度が変わってしまうようなバランスにはならない予定です。言ってしまうと、誰でもクリアできる、物語を楽しめる作りになるイメージです。あくまで物語とキャラクター、これを楽しんでいただくための装置としてのRPGを設計していますので、そこはぜひご安心いただければと思います。

――『.hack』が展開された2002年と比べて、今はネットゲームの概念もかなり変わった印象を受けます。2026年でどのようなテーマをもって、どのようなターゲット層にアプローチをしていくのでしょうか?

松山
イメージしているのは、旧『ペルソナ』シリーズから『ペルソナ3』になったときに完全に新規ファンを獲得できたように、これまでの『.hack』は『.hack』として、装いも新たに始まる新しい『.hack』だと思っていただきたいです。我々はこれまで長年愛してくれているファンの方々と一緒に楽しむのはもちろんですが、これから「初めまして『.hack』です」という新規のユーザーも一緒に楽しんでいければと思っています。

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――発売日や開発状況について、いかがでしょうか?

松山
開発は順調に進んでいますが、まだパーセンテージで言うと5%くらいでしょうか。けっこうお待ちいただくことになると思います。

『戦場のフーガ』新作も水面下では動いている【サイバーコネクトツー30周年インタビュー】


――自社作品としては『戦場のフーガ』の今後の展開を望む声も多いかと思いますが、いかがでしょうか?

松山
30周年を記念したプロジェクトを発表すると言ったときに、「『アスラズ ラース』の新作ですか?」「『戦場のフーガ』シリーズの新作ですか?」、「『NARUTO ナルティメット』シリーズの新作ですか?」など、いろいろ言われました。

 全部は発表できないのですが、みなさんが期待されているようなもの、その期待に応えるために仕事をしています。『戦場のフーガ』、いわゆる「リトルテイルブロンクス」シリーズの最新作ももちろん水面下でずっと動いていますので、時が来れば発表させていただきます。

――映像事業“CyberConnect2 FILM”の設立意図、および今後のビジョンについて教えてください。

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松山
じつはこの10年でやってきたことの1つに、サイバーコネクトツーという「ゲームを作る異能力集団」を30年かけて育ててきたことがあります。

 たとえば『鬼滅の刃』や『NARUTO』のゲームも、何を作っても大きい方向性や設計といった細かいところはもちろん今現在も私が見ていますし、日々スタッフと一緒に作っています。ただ、中くらいのところ、いわゆる物量を作るところに関しては、現場が非常に頼もしく育っています。大きいところと細かいところ以外は、ほぼ任せるようになってきました。

 とくに奥義やシネマティックなどの映像関係、リアルタイムの部分に関しては、チェックはやるものの、私の想像を超えてくるレベルで一発OKになることが増えました。

 この10年でやったことには漫画もあります。これは私が直接外の漫画家さんや社内の漫画家の原稿チェックをしながら社内の漫画制作チームと作っているんです。ゲーム開発者を動かしてはいません。彼らは変わらずゲームに集中できるような体制を保ちつつ、そこからドラマ化して映画化するというところも、基本的に外部のパートナーさん、制作会社さん、テレビ局、制作委員会と一緒にやっています。

 サイバーコネクトツーのゲームの力でものを作ってお金を稼ぎ、その資金で漫画を作りドラマを作り映画を作って稼ぐ。外部のパートナーさんと組むことによって、漫画に関しては私が原作を書いていますが、映画やドラマに関しては私はプロデューサーとしてクオリティや制作のコントロールをすることで、外部のパートナーさんと一緒にものづくりができています。これが一番スピード感があってパワフルにできる体制なんです。

 今回第1弾として『チェイサーゲームW 水魚の交わり』という映画が5月に公開されますが、これはあくまで第1弾です。来年や再来年に向けて、また別の映像プロジェクトが水面下でいくつも動いていますので、順番に新しい報告ができると思います。

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――サイバーコネクトツーさんは映像の制作力も非常に高いというイメージがあります。例えば今後、外部からの依頼で何かの制作に加わるようなこともありうるのでしょうか。

松山
それは集中と拡散、分散の考え方でいくと、やはりサイバーコネクトツーは自社で作っているものに集中すべきだと思います。今のところ外の会社さんからも「部分的にここだけ手伝ってほしい」というオファーや、映像演出だけ手伝ってほしいといったご相談はいただくのですが、今のところはお断りしています。あくまでうちの中で、純度100%にまずしたいと思っています。

合格率1.9%に挑む若い人たちのための“攻略本”を書いた【サイバーコネクトツー30周年インタビュー】

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――松山洋さんが書いた『ゲーム業界の攻略法』について、どんな方に読んでほしいですか?

松山
2月16日に全国の書店と電子書籍で発売になりました。これも1年前から角川さんと相談して、サイバーコネクトツー30周年のこの時期に発売できるよう準備をしてきました。

 ゲーム業界は本に書かれている通りなのですが、この本を執筆するにあたって、いろいろなゲームメーカーさんにアンケートをお願いして、採用情報を教えていただきました。普通は教えてくれない情報です。それを実際に集計したら、合格率は1.9%です。100人がゲーム業界を受けて2人しか合格していないという恐ろしい実態がわかりました。

 だからこそ、こういう本が必要だと思ったんです。“不毛な努力”を若い人たちにさせない、正しい努力をしていただいて報われてほしい、そう思ってこの本を書かせていただきました。

 今、ゲーム業界に興味があって、これからこの業界で一緒に仕事していきたいと思われている方のためのバイブルであり、現在ゲーム業界で仕事をしている仲間たちも、きちんと攻略をしながらものづくりをしていく必要がありますから、その両方のニーズに応えられる本を書かせていただきました。ぜひみなさん、これを読んでゲーム業界を攻略してほしいと思います。

 巻末の付録にQRコードがあって、実際にサイバーコネクトツーに合格した人のポートフォリオが公開されています。過去3年分くらい載せていて、ゲームデザイナー、プログラマー、アーティスト、アニメーター、キャラクターモデラーなど、一通りの職種のポートフォリオや採用担当者の講評コメントを見ることができます。もちろん、ご本人たちに許諾を取ったうえで公開しているものです。

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▲一部読み取れないように画像に加工を施しています。気になる人はぜひ実際に本を購入してご覧ください!

――「サイバーコネクトツー展」、および全国8都市ファンミーティングへの意気込みを教えてください。

松山
30周年を記念していくつものプロジェクトを発表しましたが、5年前の25周年はコロナの真っ只中だったので、さすがに何もできませんでした。だから30周年はちゃんとやろうということで、パーティーもやりましたし、タイトルも発表させていただきました。

 30年やってこられたのはファンのみなさまに支えられてのことなので、その感謝を伝えるのに、東京のどこか1カ所でイベントをやって「各地から来てもらう」というのはおかしいと思うんです。私がお客さんの立場だったら「近場でやってよ!」と思うでしょう。だから47都道府県でサイバーコネクトツー展をやり、全国8都市でファンミーティングを開催します。ファンと一緒に直接楽しみたい思っています。九州、四国、本島、そして北海道、沖縄など、あらゆる地域で開催します。

――サイバーコネクトツーは海外にもファンが多いですよね。

 海外のファンももちろん意識しています。7月にはフランスのジャパンエキスポにも参加します。2026年はジャパンエキスポは25周年、我々は30周年ということで、ジャパンエキスポとのコラボでステージをやる予定です。そのときに“サイバーコネクトツーファンミーティング in パリ”も開催します。

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――海外出身のスタッフはどのくらいいるのですか?

松山
全体の17~18%くらい、17か国ぐらいのスタッフがいます。うちは海外シフトが比較的早かったと思います。約50人いる外国籍スタッフのうち8割ぐらいは日常会話レベル以上の日本語力があり、2割ぐらいは通訳・翻訳などのサポートが必要です。

 でも、入社時点では日本語ができなくてもよいと言っています。いい通訳者を置いているので、最初は英語さえできればいいんです。入社後1年で簡単な日常会話レベルを目標に日本語レッスンのサポートをしています。始めからゲームを作る能力があったうえで日本語もできないといけないとなると、ハードルが高すぎます。そもそもC言語は日本語じゃないですしね。日本が好きでわざわざ来る熱量で、うちに所属してくれているんです。

――採用はどう行うのでしょう?

松山
採用の際は、“変人速攻”と言って作品審査と面接を行います。作品審査が一番厳しく、ここで7割が合格しません。そこを抜けてきた方は、その方の目指す方向性・成長の期待度が弊社とマッチすれば基本的に採用します。まずは、ものづくりの能力が重要です。技術的な素養があり弊社の方向性とマッチする方なら、社会人マナーも含め組織としての考え方は入社後の対話を通じてしっかり育成していきます。他社に採用スピードで勝つために、サイバーコネクトツーはステップが少ないんです。結果、入社したときに私と面談して「これからよろしくな」、「うちに入ってくれて嬉しいよ」という形でやっています。

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――最後にファンへのメッセージをお願いします。

松山
これからも我々は今まで以上にパワフルに、新しい領域を展開していきますので、一緒にまた引き続き楽しんでいければと思います。これからも応援よろしくお願いいたします。毎年何かしら新しいものを発表し、リリースしていく予定です。退屈させない10年、100年、150年頑張ります。私はあと150年くらい生きますから。

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