【電撃清アター】天才? 鬼才? ジョーカー役ホアキン・フェニックスの軌跡に迫る

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 こんにちは! 声優の清水彩香です。

 先日2020年、第92回アカデミー賞授賞式が開催されましたね! 名だたる傑作が揃う中、作品賞は『パラサイト』が受賞し、アジアの作品で初めてオスカーをその手に! 話題尽くしのオスカー授賞式となりました。

 そして主演男優賞は『ジョーカー』で主演ジョーカー役を演じたホアキン・フェニックスが選ばれました! 彼の怪演ともいえるその凄まじさは見た人の目に焼き付き、心を掻っ攫っていきましたよね。こんなにも誰もが圧倒的納得の受賞はなかなかないんじゃないでしょうか。

 というわけで、今回の電撃清アターはホアキン特集をお送りします! ジョーカー以外の彼の魅力を知って欲しい清水がおすすめするホアキン出演作をご紹介! 天才ホアキン・フェニックスの凄さ、たっぷり堪能しちゃってください!

ホアキン・フェニックス出演作と、その魅力

憎らしい悪役がハマってる!
●グラディエーター(2000年/米)

 ローマ帝国の皇帝マルクス・アウレリウスからの信頼も厚い将軍マキシマスは、マルクスから次期皇帝の座を継いでほしいと言われます。しかし野心家で自らがその座に就くことに固執する皇帝の息子コモドゥスはマルクスを殺し、マキシマスの処刑を命じるのでした。逃げ延びたマキシマスでしたが、故郷にたどり着いた彼が見たものはコモドゥスの命により殺された最愛の妻子の惨たらしい亡骸だったのです。奴隷となったマキシマスはコモドゥスへの復讐を誓い、グラディエーター(剣闘士)として名を上げていくのでした。

 『エイリアン』『ブレードランナー』など数々の名作を生み出した巨匠リドリー・スコットがメガホンを取った今作はアカデミー賞作品賞を受賞し、主演ラッセル・クロウ(『レ・ミゼラブル』『アメリカン・ギャングスター』他)もアカデミー賞主演男優賞を受賞しました。

 この作品でホアキンが演じるのはラッセル演じるマキシマスの宿敵・コモドゥス。このコモドゥスがほんっとになんっともまあ憎ったらしてくっていいんです! 父に屈折した感情を持ち、愛に飢えていて、残忍で、情緒不安定なこの役をホアキンが見事に演じ切っています。

 その目線や声や表情、ひとつひとつがなんともいいようのない心地悪さや気持ち悪さを纏っていて、目が離せない。その生々しい人間らしさがゾクッと怖いんですよね。

 コモドゥスが恐ろしいほどのマキシマスのヒーロー性が際立って、この映画にドラマを巻き起こしているんです。マキシマスとコモドゥスの対峙するシーンは必見! ホアキンはこの作品での演技が高く評価され、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされています。

 ホアキンが演じる悪党、ぜひ堪能してみてはいかがでしょうか?

人工知能との切なくて美しい恋の話
●her/世界でひとつの彼女(2013年/米)

 近未来のロサンゼルス。主人公のセオドアは依頼人に代わって想いを手紙に書く代筆ライターをしています。彼は妻キャサリンから別れを告げられるも想いを断ち切れず、友人に心配されながら傷心の日々を送っていました。そんなある日、セオドアは人工知能型OSのサマンサと出会います。実体をもたない彼女はコンピューターや携帯から発せられる声でしかありませんでしたが、システムのはずなのに人間よりも人間らしい魅力的なサマンサにセオドアはどんどん惹かれ、やがて2人は恋に落ちるのでした。

 純粋で繊細なセオドアをホアキンが好演。サマンサがシステムだとわかっていても一生懸命真っ直ぐに彼女を想うセオドアを応援したくなるんです。妻のキャサリンにも未練たらたらで、どうしようもなく空虚な日々を送っていたセオドアが見つけた光……サマンサによってどんどん表情が生き生きしていく様子がなんだか可愛らしく、そしてどこか切ない。

 セオドアが恋をするサマンサの声を担当するのは『アベンジャーズ』シリーズのブラック・ウィドウを演じるスカーレット・ヨハンソン。スカヨハ姉さん声だけしか登場しないんだけど、もうこの声がすごいの! チャーミングで知的で暖かくて、もうこんなの好きになっちゃうに決まってるじゃんって魅力が溢れ出してる! 声の芝居を生業にしているものとしてサマンサの声は本当に理想です。

 恋愛映画としても、SF作品としても楽しめる作品ですよ!

ダメ男が生まれ変わる過程が胸に刺さる
●ドント・ウォーリー(2018年/米)

 酒浸りの生活を送るキャラハンは自動車事故に遭い、胸から下が麻痺し、車椅子での生活を余儀なくされます。これまで以上に酒に溺れ、周囲の人達と衝突し、自暴自棄になっていくキャラハン。しかしあることをきっかけに自分の生活を見直すことを決意した彼は持ち前のユーモアを生かして風刺漫画を執筆するのでした。

 風刺漫画家ジョン・キャラハンの自伝を基にしたこの作品、2014年にこの世を去ったロビン・ウィリアムズが自身が主演で映画化を構想していました。彼が亡き後、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の監督ガス・ヴァン・サントがその遺志を継いで作り上げたこの伝記映画で、ホアキンは主役キャラハンを演じています。

 この作品、過去と現在が織り混ざって物語が進んでいきます。自動車事故に遭う前のキャラハンはもうダメダメでどうしようもない人間そのもの。お酒を飲むことで見たくない現実から目をそらし続けるキャラハン。そんな時事故に遭い、身体が不自由に…。そこからはますますお酒に頼り、自暴自棄になっていくのですが、そんなキャラハンをホアキンが熱演しているんです!

 自堕落なダメな男が自立し、しっかり前を向こうとするその過程で変わる表情やその雰囲気は胸に迫るものがあります。他者との関わりの中で自分を知り、許し、進んでいく姿に勇気をもらえます。

 目を逸らさずしっかりと前を向いて初めて見える景色がある……そんなことを教えてくれる作品です。

今回の清アター推し○○

【ホアキン・フェニックス】

 1974年にプエルトリコでホアキンは生まれました。兄は若くして亡くなった『スタンド・バイ・ミー』のリバー・フェニックスで、彼の影響でホアキンは俳優の道を歩んでいくことになります。

 兄リバーの死を目の当たりにし、その衝撃から一時映画業界から距離を置いていたホアキンでしたが、1995年『誘う女』で映画界に本格復帰。それからは話題作に出演を続け、個性派俳優としての地位を確立していきます。

 2008年には突然俳優を引退し、歌手に転向すると発表! 実は元々変わり者として有名だったホアキン、さらに世間の注目を集めることになります。しかしこれ、すべて2010年のモキュメンタリー(=ドキュメンタリー風表現手法)映画『容疑者、ホアキン・フェニックス』の設定だったことが判明。ファンはびっくりでしたよ…その後はまた俳優に復帰しています。

 ホアキンの凄いところは作品ごとにまるで別人になってしまうところ。こう文章で書くと俳優なら当たり前では? と思われるかもしれませんが、彼の出演作を見ればわかるはず。顔立ちからなにからなにまで違っていて、演じる役が憑依しているかのようなその姿は痺れるものがあります! 名優であり、天才ホアキンの魅力はまだまだ底知れません!

 今回の電撃清アターはここまで! 次回の電撃清アターは3月10日(火)公開予定です。お楽しみに~!

これまでの【電撃清アター】は!?(バックナンバー)

【16】犬鳴村
【15】バッドボーイズ フォー・ライフ
【14】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
【13】ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル
【12】飯テロ必至! グルメ映画特集
【11】ゾンビランド:ダブルタップ
【10】バーフバリ
【9】IT/イット“それ”が見えたら、終わり。
【8】最高の人生の見つけ方
【7】最凶のヴィラン“ジョーカー”を演じた俳優たち
【6】死霊館
【5】癒やされる! 動物映画特集
【4】ハングオーバー
【3】夏といえば! サメ映画特集
【2】天使にラブ・ソングを
【1】アイアンマン

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 清水彩香
 AIR AGENCY所属の女性声優。
 好きなものは猫。趣味は映画鑑賞、麻雀。
 代表作は『スカーレッドライダーゼクス』麻黄アキラ、『ハイスクール・フリート』若狭麗緒、『Tokyo 7th シスターズ』臼田スミレなど。

【告知】
 新作オリジナルアニメ『まえせつ!』に、藁猪野あらし役で出演!

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