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『スパロボJ』の戦艦があまりにも強すぎた思い出。段々とアークエンジェルの人が減っていくのは寂しかった【スーパーロボット大戦J:メモリの無駄づかい】

文:米澤崇史

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 三つ子の魂百までと言われますが、幼少期に限らず、ゲームを遊んだ思い出は脳に深く刻まれるもの。

 何年、何十年たっても、「なんでオレ(私)、こんなこと覚えてるんだろ…」と愕然とするような記憶が残りがちでして。

 そんな脳のメモリ(記憶・容量)を無駄づかいしている例を語ります! 今回は、ゲームボーイアドバンスで発売された『スーパーロボット大戦J』(以下、『スパロボJ』)について語らせていただきます。

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『スーパーロボット大戦J』とは


 本作は、2005年にバンプレスト(現バンダイナムコエンターテインメント)から発売された、歴代のロボットアニメが夢の共演を果たすシミュレーションRPG『スーパーロボット大戦』シリーズの一作。

 据え置き機では『スーパーロボット大戦α』から戦闘デモがフルアニメーション化した『スパロボ』シリーズですが、『J』は携帯機シリーズにおいて、初めて戦闘デモのフルアニメーション化を実現した作品です。ボイスこそついていなかったものの、据え置き『スパロボ』にも見劣りしないカッコよさと、テンポの良さを両立させた戦闘デモを見た時は「携帯機でもここまでできるんだ」と感動したのを覚えています。

 また、こちらも『スパロボ』シリーズ初となるパートナーシステムを採用しており、登場する3人のヒロインの内誰を主人公機のサブパイロットとして出撃させるかでエンディングが変化するという、恋愛シミュレーションゲームのような要素も存在していました。

 このパートナーシステムともども、本作のオリジナルキャラクターたちは2016年発売のPS4・PS3向けソフト『スーパーロボット大戦OG ムーン・デュエラーズ』にも参戦を果たしています。

歴代最強クラスの性能だったナデシコ【スーパーロボット大戦Jの思い出】


 戦闘シーンやパートナーシステムもそうですが、個人的にとくに『スパロボJ』で印象深かったのが、とにかく戦艦が強かったことです。

 最近の『スパロボ』だと『V』のヤマト、『X』のノーチラス号、『T』のアルカディア号、『30』のドライストレーガーなどなど、ゲームバランスをぶっ壊しかねない戦艦がいるのは当たり前という感覚があるかもしれませんが、まだこの頃は戦艦が強い作品ってけっこう限られていたんです(MAP兵器が強かったり、一芸に特化した強さはありましたが)。

 そんな『J』において自軍の母艦となるのは、『機動戦士ガンダムSEED』のアークエンジェルと、『機動戦艦ナデシコ』のナデシコの2隻。

 『J』の戦艦は、とにかく精神コマンド要員が多いのが特徴でして、ナデシコはユリカ、ルリ、メグミ、ミナト、ジュンの5人、アークエンジェルに至ってはマリュー、ナタル、サイ、ミリアリア、トール、カズイの6人分の精神コマンドが使えます。戦艦は運動性が低く、敵の攻撃を避けられなかったり、移動力が低かったりと弱点はあるんですが、豊富な精神コマンドとサイズ補正による高い攻撃力で問題なくカバー可能でした。

 とくに、ほぼバランスブレイカーのような強さを誇っていたのがナデシコ。そもそも歴代『スパロボ』シリーズを通して、戦艦としてのナデシコが弱かったことはほとんどないんですが、その中でも『J』は頭一つ抜けているくらい強かったです。

 とくにTV版のナデシコって、機体性能はどの作品もいいことが多いんですけど、メインパイロットのユリカが戦闘系の精神コマンドをあまり覚えないのもあって、終盤になるとちょっと攻撃力や命中率に物足りなさを感じることがあるんですね。

 その点、『J』は人数が多いだけではなく、精神コマンドのラインナップがほぼ理想的でした。ルリが“覚醒”と“必中”、メグミが“熱血”と“激励”、ミナトが“加速”と“鉄壁”と“再動”、ジュンが“突撃”と“気合”と、使用頻度の高いコマンドが見事に各々にバラけているので、継戦能力も高いです。ユリカは相変わらずサポート特化ですが、貴重な“脱力”を覚えて、使い勝手のいい“祝福”“応援”に精神ポイントをすべて使えるのも強い点。

 あらゆるダメージを軽減するディストーションフィールド、毎ターンのEN回復もあって燃費の悪さもそこまで気になりませんし、ストーリーが進んでYユニットが装備されると、高射程かつ高威力、範囲も着弾指定型で味方を巻き込みにくいと良いことづくめのマップ兵器である相転移砲が使えるように。

 しかも相転移砲は、マップ兵器版とは別に対ボス用の通常武器版も用意されているので、ボスキラー的な役割まで果たすことができて、一切隙がないんですね。

 個人的に「『スパロボ』シリーズの歴代最強戦艦は何か?」という議論の時、『W』のヴァルザカードと『V』のヤマトに並んで、『J』のナデシコも候補に入ってくるんじゃないかと思っているほどです。

 一方のアークエンジェルは、パイロットの数はその上をいく6人乗り。こちらもナタルが“熱血”と“気合”、サイが“必中”と“熱血”、カズィが“鉄壁”と“気合”、トールが“加速”と“突撃”と、サブパイロット組だけで戦闘系の精神が完結しており、ミリアリアは“応援”、“祝福”、“激励”、“補給”とサポートの鬼というラインナップの充実っぷり。さすがにナデシコほどではなかったものの、こちらもかなり強い戦艦だったのは間違いないです。

 ただ、『ガンダムSEED』の原作を知っている方はご存知の通り、ストーリーが進むと、このサブパイロット陣の多くがなんらかの形でいなくなってしまうんですよね。『J』でもその結末は変わらず、最終的にはマリュー・サイ・ミリアリアの3人しか残らないという、かなり寂しい状態に。

 まだ戦闘系の精神コマンドはマリューとサイでカバーできる範囲なんですが、アークエンジェル自体が移動後武器に乏しいのもあって、トールがいなくなって“加速”と“突撃”が使えなくなったのはなかなか痛かったです。隠し条件でのトールやナタルの生存が難しいにしても、代わりにノイマンやチャンドラがサブパイロットに追加されて補ってくれていれば……と思わざるを得ません(とくにノイマンなら“加速”や“突撃”を習得していたでしょうし)。

 とはいえ、やはりサイズ比による攻撃力の高さは変わりませんし、命中率が低い相手はあまり狙ってこないという、『J』独自の敵AIの思考ルーチンの影響で、回避の低い戦艦は何かと敵に狙われやすく、ユリカだけではなく、マリューも反撃でどんどん撃墜数を稼いでいた印象があります。

 比較対象のナデシコがちょっと飛び抜けすぎているのと、パイロットがどんどんいなくなる=終盤に進むにつれ弱体化していくという、歴代の『スパロボ』シリーズでもほとんど例がないユニットというインパクトが強すぎるので、決して弱くはないはずなのに、プレイヤーの印象では損をしているユニットだと思いますね。

 ちょうどこの『J』以降くらいから、『スパロボ』で戦艦が強いのは当たり前になってきたという印象もあって、『スパロボ』シリーズにおける戦艦の位置づけについて、転機となった作品なのかもしれないと改めて思いました。





米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。


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