『頭文字D』のしげの秀一氏が描く新たな“公道最速伝説”漫画『MFゴースト』。最新20巻が発売されましたので、読み終えてみての感想記事をお届けします。
※この記事には『MFゴースト』のネタバレが多数含まれています。未読の方はご注意ください。
※この記事には『MFゴースト』のネタバレが多数含まれています。未読の方はご注意ください。
『MFゴースト』最新20巻は登場人物たちの想いが弾ける最終戦“熱海ゴースト”のレースが開幕!
世界中で爆発的な人気を誇る公道レース“MFG”での戦いを軸に、青年たちの葛藤と成長が描かれてきた本作。第19巻からは最終第5戦“熱海ゴースト”編がスタートしましたが、最新20巻では予選のタイムトライアルが終わり、いよいよレース本戦に突入です。激アツ!
この“熱海ゴースト”を最後にMFGを去ることを決め、絶対に勝利するという覚悟でハチロクを駆るカナタ。そんな彼の決断を受け入れ、大きな未練を抱えながらも最後までカナタを応援することに決めたレン。レースと2人の恋模様、どちらもめちゃくちゃハイスピードでクライマックス感が出てきました。イチファンとしては“本当にここで終わっちゃうのかあ!?”という寂しさもありつつ、このままのハイボルテージで突き進んでほしい気持ちもあって、なんか色々複雑です(笑)。
そんな“熱海ゴースト編”。レースはもちろん、タイムトライアルからして見どころ満載でした。ポールポジションがまさかの人物で衝撃を受けた部分もありますが、やっぱり注目は絶対王者・ベッケンバウアーの心境の変化でしょう。そのテクニックは“芸術品”とまで称される天才が、ここに来て大きく心を乱している今の状況はどう考えても異常ですからね。
思い出しておきたいのは、精密機械のようだったベッケンバウアーを狂わせたのは他ならぬカナタであるということ。第4戦“シーサイドダブルレーン”でベッケンバウアーは、自分をギリギリまで追い込んできたカナタに対して「自分以外のドライバーに初めて恐怖を感じた」と評していましたけど、この時点ですでに歯車は狂っていたと言えそうです。
タイムトライアル中も、カナタのことをバリバリ意識していたベッケンバウアー。まるでサイボーグのように他者を寄せ付けないオーラをまとっていた彼が、まさかここまで感情に翻弄されることになるとは驚きです。「どうすればあの男(カナタ)に勝てる!?」というこのマインド、もはや王者というよりはチャレンジャーって感じで、ちょっと見え方が変わってきちゃいましたよ。
僕からすれば、どちらかというといけ好かない天才って感じだったベッケンバウアーが、最終戦にきてめちゃくちゃ人間くささを出してきたことに、グッと親近感がわきました(笑)。
とはいえ、どうしたってカナタに肩入れしてしまう部分もあるわけで。ベッケンバウアーの失速はカタナにとって安心材料。……のハズなのに、全然そんな感じがしなくてヤバいです。むしろこの心境の変化を肥やしに更なる覚醒を果たす……そんな強敵フラグの気配がむんむんで恐ろしいまである。こう感じたの、僕だけじゃないですよね? 最終戦での覚醒って、どちらかというと主人公側に用意されるべきフラグだと思うんですけど!? ここらへんの演出、さすがしげの秀一先生だと舌を巻くばかりです。
激動の予選を終えての本戦レース。20巻は序盤の序盤ということで、上位陣以外の人物たちにスポットが当てられたところも、しげの先生ならではの演出の妙。個人的にはヤジキタ兄妹の絆にキュンと来ました。ここに来て成長著しい妹の北原望。そんな彼女の後塵を拝す形となった兄の八潮翔に対し、「一人じゃダメなの!! こっちに来てお兄ちゃん!!」とゲキを飛ばす望に、胸がキュンキュンしました。
普段は“アニキ”って呼んでるクセに、ここに来ての“お兄ちゃん”は反則だろー。これで燃えなきゃ話にならないぜお兄ちゃん……と、翔のことも応援してしまいます。
京子との関係値の変化で男っぷりを上げたカミカゼヤンキー・相葉瞬の激走や、周りが感情的になってボルテージを高めていくなか一人だけ無我の境地かのように冷静沈着なカナタなど、ドライバーたちの群像劇は始まったばかり。この“熱海ゴースト”は6周もあるということで、いくつものドラマが生まれる期待に今から震えています。次巻も楽しみッ!
『頭文字D』ファンとして見逃せない! 担当ライター注目ポイント(ネタバレ多め)
ここからは、僕が読んでいて最もグッと来たポイントをいくつか簡潔に書かせてもらおうかと思います。ネタバレ成分がさらに多めになりますのでご注意くださいませ。
この『MFゴースト』は『頭文字D』と地続きな物語ではありますが、今回はそんな往年のファンを唸らせる演出がいくつか用意されていましたね。
1つは解説役。これまでも須藤京一や小柏カイなど、MFGの解説役は『頭文字D』のキャラが務めてきましたが。この“熱海ゴースト”では満を持して高橋啓介が解説役として登場し、彼のことが大好きな僕としてはテンション上がりまくりでした。
さすがは伝説のドライバーだけあり、解説の内容ひとつひとつが面白いんですよね。ロジックはもちろん、ドライバーの感情にもちゃんと敏感なあたり、いかにも啓介って感じですごく好感触でした。歳を重ねても気さくでヤンチャなところがすごく好き。啓介が解説してくれるだけで、いつもの1.2倍くらいレースシーンが楽しめている気がします。ファンとは現金なものですね(苦笑)。
また、あの藤原拓海の妻として、元プロゴルファーである上原美佳が登場したのもイチファンとしてグッときました(もちろん“藤原美佳”になっていましたね)。その役どころも最高で、まさかの“カナタの恋愛相談役”とは……。
考えてもみれば、日本女性に対する知識が浅いカナタからすると、尊敬する師匠のパートナーである美佳はこれ以上ないほど頼れる相談役といえるかも。こんなプライベートな相談を持ち掛けるほど、カナタが拓海や美佳に心を許していることもわかって、僕としてはかなり萌えました。美佳のアドバイスがカナタとレンの関係にどのような楔を打ち込むのか気になるところ。
両親が写真を撮った想い出の場所を訪れ、レンと一緒にまったく同じシチュエーション&同じポーズの写真を撮ったりしたカナタ。これには「はよくっつけ!」と言いたくもなりましたが(汗)。とはいえ、カナタが英国に戻ったら2人は離れ離れになるわけですし……行き付く先はまだまだ読めませんね。まさに青春グラフィティ。レースのみならず、2人の恋愛模様も応援してしまいます。幸せになってほしいなぁ……。
ということで、今回ご紹介した『MFゴースト』第20巻は現在好評発売中です。僕なんかが言うまでもなく読みどころ満載となっているので、まだお手に取っていないという方は絶対にお見逃しなく!