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『ゼンレスゾーンゼロ』の企画が立ち上がった経緯とは? リリース間近の本作に仕込まれた魅力をプロデューサーに聞く【インタビュー】

文:電撃オンライン

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 リリースまでいよいよあと1週間を切った3Dロールプレイングアクションゲーム『ゼンレスゾーンゼロ(以下、ゼンゼロ)』。本作は、人気を博している『原神』や『崩壊:スターレイル』を手掛けたHoYoverseから新たに輩出されるビッグタイトルで、事前登録者数は全世界で4000万を突破するほど注目されています。


 さて、遡ること6月の中旬に、遠いシンガポールの地でメディア向けの『ゼンゼロ』体験会が開催。その会場で、本作のプロデューサーである李振宇(リ・ジェンユー)氏へのメディア向けインタビューも実施されました。

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 本記事ではプロデューサーへのインタビューの内容をお届け。過去に行われたクローズドβテスト(以下、CBT)からの調整や、李氏が本作にかける熱意などを語ってもらいました。

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▲『ゼンレスゾーンゼロ』プロデューサー:李振宇(リ・ジェンユー)氏

『ゼンゼロ』の開発者である李氏は根っからのアクションゲーマ―。目指したのは万人が楽しめる最高の“アクションゲーム”

――李さんは『ゼンゼロ』で初めて開発のトップを務められるとお聞きましたが、ゲーム開発におけるプレッシャーはありましたか?
 
 開発初期段階では、面白いゲームを作れるか、そしてプレイヤーに楽しんでもらえるかという点に大きなプレッシャーを感じていました。

 しかし、リリースが迫った現在では、そのプレッシャーの性質が変化しています。それは、料理人が料理をお客様に提供する直前の緊張感に似た心境です。完成した作品が十分な品質であるかという不安と同時に、常により良いものに高められる余地があるのではないかと感じております。

 そして、提供したあとも製品の品質向上は終わりのない追求であると認識しております。そのため、最善を尽くしつつも、謙虚な姿勢と緊張感を持って『ゼンゼロ』をリリースさせていただきます。

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――『ゼンゼロ』は2020年から開発がスタートしたとのことですが、当時はどういった経緯で企画が立ち上がったのでしょうか?

 『ゼンゼロ』の開発は、私の“アクションゲームを作りたい”という純粋な願望から始まりました。会社側に明確な計画がない状態でしたが、幅広い層にアクションゲームを楽しんでもらいたいという強い思いを持っていました。

 当時、同社では『崩壊3rd』がすでにリリースされていましたが、私としてはより多くの人々に楽しんでもらえるアクションゲームの制作を望んでいました。この思いが認められ、『ゼンゼロ』の開発が可能になりました。

 開発当初は大きなプレッシャーを感じながらも、自身の理想とするアクションゲームを作ることに情熱を注ぎました。『ゼンゼロ』は、既存のタイトルの成功を踏まえつつ、より幅広い層に向けた新しいアクションゲーム体験を提供することを目指して開発が進められました。

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――幅広い層に楽しんでもらえるアクションゲームを目指したとのことですが、その過程で強く意識したことがあれば教えてください。

 私自身、アクションゲームが大好きで、さまざまなタイトルを遊んでおります。そのなかで、アクションゲームの問題点とも言える、入門のしにくさや難しさについて考えさせられることがありました。

 多くのアクションゲームは、操作性の難しさや覚えることの多さから入門の障壁が高く、プレイヤーに長時間の学習を要求しがちになってしまう傾向にあります。

 最初に面白いと感じてもらえなければ、その学習する時間すらも発生せずに飽きられてしまうので、『ゼンゼロ』では魅力的な要素を早期に導入する戦略を採用しています。

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――具体的にどのような取り組みをなされたのでしょうか?

 アクションゲームにおいて、まずは普通の“攻撃”があるとして、次に防御や回避といった“守る”という行動があります。ただ、回避や守るという操作は、敵の行動を見つつ適切なタイミングでの操作を要求されるため、攻撃よりも難易度が高いと思われます。これ自体がアクションゲームが苦手な人にとってはハードルが高いんですよね。
 
 ただ、攻撃するだけであれば、敵にある程度は近づいて攻撃に対応するボタンを押すという行動で成立するでしょう。これ自体はそこまで難易度が高くないものなので、まずは攻撃の楽しさを感じてもらえる要素を初期に入れ込もうと考えました。

 QTEによるストップモーションから連携スキルの発動といった一連の流れは、例として挙げられるでしょう。

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▲敵を攻撃し続けてブレイク状態にし、敵に特定の攻撃を行うと“連携スキル”が発動して周囲の時間が停止します。
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▲そして、カウントダウンが終わるまでにキャラを選択することで、そのキャラがフィールドに現れて強力な攻撃を放った後に交代するというスイッチアクションを行います。
――CBTのときに連携スキルの仕様をわかっていなくても、知らず知らずに連携スキルが発動して、スローモーション演出とキャラ同士の連携が織りなすアクションの視覚的爽快感に魅了されました。

 攻撃アクションが“楽しい”とユーザーさんが認識してくれたら、今度はパリィなどのシステムに触れる段階に入るようになっていると思われます。具体的には“回避支援”や“パリィ支援”、“極限回避”などの守る手段で、徐々にユーザーのみなさんが楽しめるように段階を踏んでやれるように設計しています。

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▲“極限回避”は回避アクションの1つで、敵の攻撃がくるタイミングに合わせて回避をすると発動。画面が暗転し、エージェントから青白い光が放たれます。全体がスローモーションになる演出がスタイリッシュで最高!
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▲守りのテクニックである“極限支援(回避支援、パリィ支援)”。敵の頭部あたりが金色に光ったタイミングが攻撃の予兆となり、このタイミングで“キャラ切替”をすると極限支援が発動します。
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▲交代するキャラによって“回避支援”または“パリィ支援”のどちらかが発動し、敵の攻撃を回避or防いで控えの味方と交代します。特に、パリィ支援のアクションのカッコよさは必見です!

 『ゼンゼロ』にこれから触れるユーザーさんが「簡単すぎて面白くない、奥深さが足りない」と思ったりすることがあるかもしれません。しかし、ユーザーさんがこう感じてしまったとしても、私の掲げている理念や考え方は逆です。

 “ゲームシステムを理解し、遊び方について把握できるまでは複雑なものを提供してはならない”と考え、完璧なものを提供するのではなく、最初にアクションの楽しさを知ってもらうことを重視しています。

 そういう理念のなかに“学習のサイクル”を用意していて、まずは攻撃の楽しさを知ってもらったあとに、極限支援といった守りのアクションを覚えていけるようにバランスを調整してきました。アクションゲームの経験のない人であれば、この学習のサイクルに基づいてゲームを進めていただき、『ゼンゼロ』を存分に楽しんでいただければと思います。

Nintendo Switchでの展開やニコの容姿の変化といった、答えにくい質問にもズバリ回答

――メディア向けに配布していただいたギフトBOXのなかに、Nintendo Switch用のカードケースがありました。『ゼンゼロ』は現時点でNintendo Switchでの展開はまだ発表されてはないのですが、次世代機を含む、任天堂やXboxのプラットフォームでの展開予定はありますか?

 私自身が任天堂のファンであり、チーム全体としても『ゼンゼロ』の任天堂プラットフォームでの展開に期待を寄せています。

 しかし、現在の優先事項は、すでに発表されているプラットフォームでのゲーム体験の改善です。ほかのプラットフォームへの展開については、開発の進捗に応じて将来的に検討される可能性があります。

 開発チームの方針として、各プラットフォームで優れたゲーム体験を提供できる場合にのみ、そのバージョンを制作して提供することを重視しています。これは、プレイヤー間の公平性を保つためでもあります。

 より多くのプラットフォームでの展開を実現するために努力を続けていますが、各プラットフォームでのゲーム体験の質を損なわないことを重要視しています。

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――CBTが行われるたびに、ニコ・デマラの容姿に調整がなされていましたが、これにはどのような意図があったのでしょうか?

 ニコは個人的にもかなり好きなキャラクターです。最終的な容姿は正式リリース版に基づくものになりますが、我々チームの進化とともに、デザインの進化を経てニコの姿を調整してきました。プレイヤーごとの好みもあると思いますが、我々が思うふさわしいニコをお届けします。

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CBT時やリリース後に行われたアップデートについての質問。CBT2からCBT3にかけて大幅に変化したホロウ探索の調整方針はズバリ“選ぶ権利”!

――今回プレイしてみて、CBTにはなかった新しい都市が解放されていたり、“六分街”も拡張されているエリアがあったりしました。正式リリース後は、エリア拡張の観点でも期待していいのでしょうか?

 実はCBT2からCBT3の時点で、CBTの時には公開されていないエリアを制作しておりました。正式バージョンがリリースされるとき、新都市やエリア拡張などの更新がお目にかかれることでしょう。

 メインストーリーを進めていけば主人公たちの生活しているエリアも拡大していきますし、遂行する任務によっては新たなフィールドに行くこともありえます。

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――たとえばですが、エージェント(キャラ)ごとの住処や、陣営ごとのアジトなんて場所も用意されているのでしょうか?

 各エージェントの家といったものは、案としてずっと考えてきた内容の一つではあります。現状では、各陣営のエージェントが集まるようなエリアを用意しており、そこに属するエージェントにとっての家でありオフィスでもある象徴のようなものになるでしょう。

 1つの事例を挙げますと、CBT2の時点で“白祇重工”専用となる“工事現場”のフィールドが用意されています。現段階では、このような陣営ごとのエリアを拡張していく方針です。

 工事現場とまったく同じ形ではないのですが、今後ほかの陣営の話が出てくると、その陣営が特徴が現れる場所でのストーリーが出現します。

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――自分はCBT2で初めて『ゼンゼロ』に触れたのですが、過去に行われたCBT1のプレイ動画を視聴したときに、戦闘中の動きの激しさもあり、画面酔いをしてしまったことがあります。ただ、CBT2をプレイしたときも、CBT2の他人のプレイを見たときも画面酔いすることはありませんでした。これは気のせいだったのか、それともカメラワークに対して何かしらの調整を行われていたのでしょうか?

 おっしゃる通り、CBT1から正式版にかけて、カメラワークの調整をし続けています。

 たとえば、敵の種類や大きさによって、カメラを当てる角度を調整しています。また、より戦闘の爽快感を感じられるように、カメラアングルを寄せたり引いたりする演出についてもこだわりました。カメラアングルだけじゃなく、戦闘中の画面全体の視点移動についても、最適化をし続けております。

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――CBT2のときに多量にあったサブ依頼ですが、CBT3ではミニゲームや謎解き要素が中心の“探索依頼”と、戦闘だけを行う“戦闘依頼”の2つに分けられたかと思います。また、ホロウ探索に早送り(倍速)を追加したりと、探索パートに相当な改修をされたように感じました。これはひとえにユーザーさんからの意見を取り入れてアップデートしたものなのかなど、ホロウ探索全体の調整の意図についてお聞かせください。

 CBT2をプレイしたユーザーさんからのフィードバックとして、探索パートに入った時に、プレイヤーはずっとローグライクや謎解きを遊び続けるしかなく、遊び方を選べないことに対しての意見を一番多くもらいました。

 これらの探索要素が好きなユーザーさんも多かったのですが、それと同じぐらいに戦闘だけを中心に遊びたいというユーザーさんもいまして、もちろん両方好きだという意見も多く寄せられました。

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▲本作の探索パートは、ブラウン管テレビを繋ぎ合わせたようなマップを1マスずつ移動していき、マスごとに表示されたイベントをクリアしながら目的を目指す流れです。このギミックを使った謎解きやミニゲームというものもあります。

 CBT2からCBT3の1番大きな改善点であり、私たちが一番にやりたいことは、ユーザーさんに“選ぶ権利”を与えたいことだと考えています。戦闘好きな人は“戦闘依頼”を中心に遊んでいただきたいですし、謎解き要素も楽しみたい方に対しては“探索依頼”という形で、遊べる内容を大きく分けるようにしました。

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▲CBT2時の依頼選択画面
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▲CBT3時の依頼選択画面

 メインストーリーの進行に関しては、どちらの任務を遊んでいても影響を受けないようにデザインしています。具体的に言えば、どちらの任務を遊んでいても、ストーリーやボス戦をクリアできるように難易度の調整をしました。ユーザーさんごとのプレイスタイルに応じた、さまざまな遊び方を提供できるようにすることを大事に思っています。

 CBT2からCBT3の調整は以上のように全体のシステム改善(戦闘と探索の任務を分けるなど)を行いましたが、正式リリースされるバージョンでは、中身のコンテンツの緻密な調整を行う予定です。
  
――ありがとうございました。



 いよいよ7月4日に迫った注目のビッグタイトル『ゼンレスゾーンゼロ』。李氏が追及した“誰しもが楽しめるアクションゲーム”をぜひ1度はプレイして、その面白さと爽快感を体感してみてください!

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