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『真夜中ぱんチ』1話感想。突き抜けたクズっぷりが逆に好感を持てるようになってくる主人公が面白い。合間に仄めかされている過去の話も気になる(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 TVアニメ『真夜中ぱんチ』第1話“炎上娘とお寝坊ヴァンパイア”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『真夜中ぱんチ』第1話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

炎上系なのにメンタルは弱い真咲のアンバランスさ【真夜中ぱんチ】


 P.A.WORKS制作のオリジナルTVアニメ『真夜中ぱんチ』。P.A.WORKSといえばつい先日『菜なれ花なれ』『天穂のサクナヒメ』の第1話が放送されたばかりで、同一クールに3本ものアニメが放送されるという、今期はP.A.WORKSファンにとってはめちゃくちゃ贅沢なクールになっています。

 なお本作の監督を勤めるのは、P.A.WORKSと共に『パリピ孔明』を手掛けた本間修氏。OPのノリノリな雰囲気にどことなく“パリピ”みを感じたりもしました。

 そんな本作の大きなテーマになっているのが動画投稿。主人公の真咲は、動画配信サイト“NewTube”にて3人組NewTuber“はりきりシスターズ”の“まさ吉”として活躍……していたようなのですが、第1話ではそのまさ吉が、“はりきりシスターズ”から脱退するという報告シーンからのスタートとなりました。


 どうやら真咲が生配信中に他のメンバーを殴ってしまい、大炎上したことが直接的な原因となっている様子。なぜ真咲が手を出したのかという詳しい経緯が分からないとはいえ、裏垢での暴言に配信の妨害など反省するそぶりは一切なく、しまいには二人への当てつけのようにソロチャンネルをすぐ立ち上げるなど、ここまでクズっぷりが極まると、逆に清々しくて好感が持てるようになってくるレベル。

 ただ、炎上まがいの手法を取っている割には真咲はメンタルが弱そうなのも面白いところ。

 自演コメントを即座に見抜かれるのは笑いましたが、一人だと動画撮影できないレベルでトラウマを抱えているなら、一旦NewTubeから離れて別のことをした方がいいんじゃ……とも思うんですけど、1話だと真咲が他に仕事をしている描写がないんですよね。NewTuber専業で食べられるレベルにまで行っていたと考えると、確かに簡単に休むわけにはいかないのも分かります。

 登録者100万人の話も出てましたし、真咲の炎上事件はかなり世間にも知れ渡っているみたいなので、“はりきりシスターズ”のチャンネル登録者数は少なく見積もっても数十万は超えてそうな気がします。そこまで真咲一人で企画・動画編集まで担当していたのであれば、性格はともかく配信者としての適正・プロデュース力はかなり優秀ではあるんでしょうね。


 そこまでは現実世界でもありそうな話だったので、急に完全なファンタジー存在であるヴァンパイアたちが登場したのはちょっとビックリ。

 りぶは20年ぶりに目覚めた、という話でしたが、逆にいえば20年前には普通に活動していたということでもあります。真咲の年齢が確定していないので微妙なところなんですが(飲酒しているので20歳は越えているのは間違いないですが)、りぶが真咲を夢で見たのも偶然じゃない気がしますし、二人とも気付いてないだけで、20年前に真咲との間で何かがあったんじゃないか……というのが個人的な予想。

 掃除でカーテンを閉め忘れてりぶを灰にしかけたり、株で失敗して多額の借金を背負っていたり、なかなかポンコツ度が高い苺子が個人的にかわいくてお気に入りです。ただ、借金の取り立てにきたと思われる二人は仕事してただけでしょうし、苺子が倒れた時は普通に心配をしていたり明らかにいい人そうだったので、りぶに気絶させられていたのは気の毒でした。

クズになったのには何か原因がある? 気になる真咲の過去【真夜中ぱんチ】


 一方、新メンバーを募集中の真咲はというと、来るのはひやかしばかりでまったくうまくいかない様子。同調するフリをして暴言を引き出して録音しようとするのはなかなかやり口がエグいです。

 迷惑客として店員に追い出されて文句をいったりと相変わらずのクズっぷりを見せてくれましたが、ちょっと気になったのは「あの家には絶対に帰りたくない」という真咲の台詞。自分の部屋のことを“あの家”とは呼ばない気がしますし、もし実家だとすると何らかの家族とのいざこざがあったのかも。この辺は今後明らかになってくるかもしれません。

 また、二人のことをボロクソに言っていましたけど、最初にバズった時を思い出して同じことをして、あまつさえ当時の幻覚まで見るなど、“はりきりシスターズ”への未練が尋常じゃない。当時の背格好を見るに、今より3人とも大分幼く見えるので、結構古くからの友達だったと3人の関係を想像すると、修復不可能なレベルでの喧嘩別れをしてしまったのはなかなか切ないですね……。


 さらに運悪く(?)、病院に輸血パックを探しにきていたりぶと遭遇してしまう真咲。天井に張り付きながらメンヘラストーカーみたいなことを言ってくるのは絵的にも話してる内容的にも二重の方向で怖すぎる。そもそも廃病院を探索してて、中で人間(りぶの場合人間じゃないですが)と遭遇した時点で、自分ならもうちびって即座に悲鳴上げて逃げ出しそうです。

 屋上で本音を明かすシーンで分かったのは、真咲がずっと引きずっていたのは「誰からも必要とされていない」という感情だったんですね。1話を見ていて真咲は承認欲求が高そうなキャラクターという印象はあったんですけど、少し仄めかされていた実家の話とか、その考えに至るようになったのには何らかの過去の境遇が影響しているのかもと想像が膨らみました。


 そこからのりぶと二人での夜間飛行は、夜景の美しさとそれまでの展開からのカタルシスも相まって感動的な雰囲気で、真咲のメンタルも回復したっぽく見えましたが、100万人登録を達成した時に「食べていい」という約束してしまうあたり、やっぱり精神状態は大分ヤバいままの気がします。

 100万人が配信者にとって夢なのは分かりますが、それを達成したら死んでもいいとまで思っているのは、まだNewTubeにガッツリと依存してますよね。登録者100万人を目指しながら、真咲が抱えている心の問題をどう解決していくかも、今後の見どころになってくるんじゃないかと思いました。


 あとエンディング曲の『編集点』がめちゃくちゃいい曲……! 曲の大半が真咲を演じる長谷川育美さんのポエトリーリーディングという独特の構成、そこから転調するサビの盛り上がりも印象的で、この曲の歌詞を読んで、"配信者と吸血鬼”という異色の要素をマッチさせたのは、“夜中に活動する”という共通点があるからなのかと気付いたりもしました。

 OPを見るに、今回登場した苺子以外にも個性的な仲間が複数登場しそうで、今後の展開も楽しみ。個人的には、真咲の中で未練タラタラだった“はりきりシスターズ”の二人との関係性が修復されるかどうかにも、ちょっと注目したいなと思っています。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。


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