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『Sea of Stars(シーオブスターズ)』ガールのモデル人物は? DLCはキーナサンの名前が鍵!? ファミ通・電撃ゲームアワードのインディー部門受賞記念インタビュー【電撃インディー#728】

文:電撃オンライン

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 Sabotage Studioが開発するPS5/PS4/Nintendo Switch/Xbox Series X|S/Xbox One/PC(Steam)用RPG『Sea of Stars(シーオブスターズ)』。カナダのSabotage Studioが開発し、日本のレトロなRPGにインスパイアされた本作は大きな人気を呼び、KADOKAWA Game Linkageが主催する“ファミ通・電撃ゲームアワード2023”のインディー部門を受賞しました。

 そんな本作を手掛けたクリエイティブディレクターのThierry Boulanger氏(ティエリー氏)とエグゼクティブプロデューサーのPhilip Barclay氏(フィリップ氏)にインタビューを実施。ターン制コマンドバトルの可能性や開発中のDLC『Throes of the Watchmaker』についてお聞きしました。

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▲左からPhilip Barclay氏、Thierry Boulanger氏。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

新たなターン制コマンドバトルの可能性を提示できた【Sea of Stars(シーオブスターズ)】


――“ファミ通・電撃ゲームアワード2023”のインディー部門の受賞、おめでとうございます。受賞の感想をお聞かせください。

Thierry Boulanger(以下、Thierry):言葉にできない気持ちでいっぱいです。私たちは日本のゲームと共に育ってきたようなものなので、栄誉ある賞をいただけて感無量です。

――『Sea of Stars』は2Dのピクセルアートやターン性コマンドバトルというシステムが大きな魅力です。しかし、一部のゲーム好きからは「古い」というネガティブな声も聞かれますが、そういった意見をどう思われますか?

Thierry
:ゲームの好みは十人十色なので、すべての方に好かれるとは思っていませんし、それはそれでまったく問題ありません。やっぱり好きなゲームをプレイするのがいちばんですからね。

 個人的には、『Sea of Stars』のようなゲームが好きじゃない方がいても気にしていませんし、レトロなRPGをもとに作られているので、そういったゲームが好きな方が楽しんでくれればとてもうれしいと思います。もともとレトロなRPGが好きな方をターゲットにして開発を始めたので、その方たちがピンと感じていらっしゃるのであればそれだけで十分です。

――『Sea of Stars』は遊んでいてすごく楽しいですし、アクション性やバランス演出がすごくて、改めてターン制コマンドバトルのおもしろさを感じられました。今後のターン制コマンドバトルの可能性はどうお考えでしょうか。

Thierry
:可能性はまだまだあると思っています。『Sea of Stars』はターン制コマンドバトルの可能性を見せたくて開発したので、基本的にはシンプルにしつつ、細かいところを試行錯誤してバランス調整をしました。『Sea of Stars』のようなターン制コマンドバトルでも楽しめることがプレイした方に伝わったのではないでしょうか。

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――ユーザーに新たなターン制コマンドバトルの可能性が伝わったと思います。そんな本作にはたくさんのキャラクターが登場しますが、キャラクター名を決める際に意識したことや、名前に込めたテーマなどがあれば教えてください。

Thierry
:個人の好みになるのですが、ゼイルとヴァレアは短い名前で簡単に覚えやすいように意識していて。ゼイルは攻撃方法が素早いキャラなので、名前も早く言いやすい感じに。ヴァレアはバランス型なので少しゆっくりめな感じで言える名前にしました。

 セライは別の世界から旅してきたキャラクターなので、隊商宿を意味する(Caravansary/Caravanserai)という言葉がもとになっていますし。ガールの名前はカットシーン インテグレイターをつとめたカール(Carl Dubreuil)という名前のスタッフからとりました。本人はまったく料理できないんですけどね(笑)。

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――ガールは実在するカールさんから名付けられたのですね(笑)。料理ができないことはお聞きしましたが、外見が似ているなど共通点はあるのでしょうか。

Thierry
:プレイした方ならわかると思いますが、ガールはゼイルとヴァレアをサポートする重要なキャラクター。誰かのことを気遣って、一生懸命になれるという存在はすごくいいですよね。響きが似ているからがメインの理由ですが、カールもそういったところがある人物です。

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DLCの鍵を握るキーナサンの名前【Sea of Stars(シーオブスターズ)】


――みなさんにとって、ゲームを一言で表すとなんでしょうか? 以前に日本のクリエイターに聞いた際は、“ルール・制約”(自由に好き勝手遊ぶのではなく、作者がつくったルールに沿って楽しむもの)、“interactivity(双方向性)”(プレイヤーが起こしたアクションに対して、なんらか反応が返ってくるもの)といった答えがありました。

Philip Barclay(以下、Philip):“イノセンス(Innocence)”と“ワンダー(wonder)”です。

 『Sea of Stars』をプレイしていると、5歳くらいのときにスーパーファミコンでRPGを遊んでいたときを思い出します。当時のゲームは今のゲームに比べてシンプル。だけどシンプルだからこそ、5歳の自分にはすごく響くものがありました。そういったノスタルジックな気分にさせてくれます。

 当時の純粋だった気持ちを思い出させてくれるし、自分が中に入ってキャラクターといっしょに遊んでいるように感じられるので、この言葉を選びました。

Thierry
:私は“サマーバケーション(summer vacation)”ですね。

 プレイしていると子どものころの夏休みを思いだします。誰もが自分の中にインナーチャイルド(“自分の内面に子どもがいる”と見立てる考えかた)を持っていると考えていて、それは忘れてはいけないことだと思います。

 あのときの懐かしさを思い出してもらいたいという気持ちで開発しましたので、誰かの心の琴線に触れていたらうれしいです。

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――日本だと夏休み以外に春休みや冬休みもありますが、その中でもなぜ夏休みなのでしょうか。

Thierry
:私たちが住んでいるカナダは冬になるとマイナス40度になるくらい寒い場所です。どのくらい寒いかというと、指が凍って取れてしまうくらい寒いです。

 カナダは四季がしっかりとあるのですが、夏はすごく短いんですよ。それを知っているから、夏はみんながすごく温かい気持ちになって楽しく遊んでいました。学校も休みですしね。

 そのころの自由な感じやのびのびとした感じをすごく覚えているので“サマーバケーション(summer vacation)”にしました。

――なるほど。いくつも休みがある中で夏休みにしたのはそういった理由からなんですね。話は変わりますが、制作が発表されているDLCの『Throes of the Watchmaker』について教えてください。

Thierry
:まず海賊団のメンバーであるキーナサンの本当の名前がキーナサンじゃなかったと判明することから事件が始まります。キーナサンは自分の名前に誇りを持っていて、「キーナサンの名がすたるッ!」という言葉を決め台詞にしているくらいなのでとてもショックを受けてしまいます。

 そして、チークスから時計職人のところで小さな時計に名前を刻んでもらうと正式にキーナサンという名前を名乗れるようになると教えてもらい、そのために行動するというストーリーになっています。

――とてもワクワクする展開で驚きました! キーナサンは好きなキャラクターなので楽しみです。ちなみに『スーパーマリオRPG』『ガイア幻想紀』『クロノ・トリガー』といった日本のゲームに影響を受けたスタッフもいるとのことですが、好きな日本の漫画やアニメはありますか?

Thierry
:『ドラゴンボール』が大好きでした。

Philip
:私は『NARUTO - ナルト - 疾風伝』が好きでしたね。

Thierry
:私たちが子どものころは日本のアニメや漫画は少なかったのですが、その中でも『ドラゴンボール』は大人気でした。『北斗の拳』も人気がありましたね。女の子向けの作品だと『美少女戦士セーラームーン』や『カードキャプターさくら』を好きな人が多かったです。

――ゲーム以外にも子どものころから日本の作品に触れていたのですね。日本のゲームクリエイターで、会ってみたい人はいますか?

Thierry
:『Sea of Stars』の一部楽曲を担当していただいた光田康典さんにもう一度会いたいです。光田さんと同じ作品に携われたのは、私だけではなく開発チームの全員に意味があったことで、とても感謝しています。『クロノ・トリガー』のシナリオを手掛けた加藤正人さんにも会ってみたいですね。

Philip
:私はずっと憧れている任天堂の宮本茂さんに会ってみたいです。

――最後に、日本のゲームファンに向けて、Sabotage Studioからのメッセージをお願いします。

Thierry
:すごく胸がいっぱいということをお伝えしたいです。というのも、自分たちが子どものころに触れて憧れていたようなゲームを作るのは、チャレンジングであり決して簡単なことではありませんでした。

 同時に複雑な気持ちもあって。私たちがレトロなRPGを心からリスペクトしていることが伝わってほしいという一心で開発してきました。

 『Sea of Stars』を好きになってくれた方もいれば、そうではない方もいると思いますが、日本の方々が温かく受け入れてくださっていることにとても感謝しています。

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