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『機動武闘伝Gガンダム 外伝 天地天愕』1~3話感想。ガンダムファイト決勝大会前のエピソードが描かれる。東方不敗マスター・アジアと、姉弟子・独狐求敗とマスターガンダム対決に心躍った(ネタバレあり)

文:米澤崇史

公開日時:

 『機動武闘伝Gガンダム』公式サイトで連載中の『機動武闘伝Gガンダム 外伝 天地天愕』の1~3話の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『機動武闘伝Gガンダム 外伝 天地天愕』1~3話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

ギアナ高地で倒された東方不敗はコピー体だった


 1994年4月22日から1995年3月31日にかけて放送されていたTVアニメ『機動武闘伝Gガンダム』。今年の4月には放送開始から30周年を迎えたこと記念した展開が発表されました。

 その中の一つが、公式サイトで連載中の今川泰宏総監督書き下ろしのストーリーテキスト『機動武闘伝Gガンダム 外伝 天地天愕』。外伝という扱いではあるんですが、時系列としては『Gガンダム』本編のガンダムファイト決勝戦の開会式前日(第24話 「新たなる輝き!ゴッドガンダム誕生」と第25話 「決勝開幕!ガンダムファイター大集合」の間)からスタートする物語になっていて、メインキャラも本編同様ドモン・カッシュら現シャッフル同盟なので、秘められた本編中の1エピソード的な位置づけの物語になっています。


 1話では、冒頭で東方不敗マスター・アジアに姉弟子がいて先にキング・オブ・ハートの紋章を姉弟子が継承していたことが明らかに。東方不敗よりも年上のようなので、キング・オブ・ハートはかなり前に引退しているんでしょうけど、姉弟子から東方不敗にどのように紋章が引き継がれていたのかも気になるところ。

 また東方不敗といえば、ちょうど24話でのギアナ高地での戦いに敗れたあと、復活してネオ・ホンコンに着くのがあまりにも早すぎる(ビームロープを利用する荒業を使って強引に移動していたゴッドガンダムよりも先に到着している)ことがツッコミどころとしてよく言及されるんですが、今回の作中でギアナ高知の東方不敗はコピー体だったと明言されました。

 東方不敗といえば、『Gガンダム』屈指の強さを誇る最強キャラですが、ギアナ高地の戦いの時はゴッドガンダムに乗り換えたドモンに「お前と遊んでいる暇はない!」とまでいわれて、結構アッサリ倒されていたので、本人じゃなかったというのは個人的には納得いく解釈です。


 シャッフル同盟についての話題では、ガンダムファイトに参加するのはNGなんじゃないかという話が出ていましたが、指摘されている通りガンダムファイトは国家間の代理戦争のようなものなので、ある意味戦争に介入しちゃってはいるんですよね。

 ただ、ドモン以外の4人がシャッフルの紋章を受け継いだのは、ガンダムファイトに参加した後ですし、前のキング・オブ・ハートである東方不敗は紋章を受け継いだ状態で優勝してますし、後出しでとやかく言われるのは理不尽な部分もあります。

復活したかつてシャッフル同盟《ダーク・シャッフル》


 そんなシャッフル同盟の前に、今のメンバーがシャッフル同盟に相応しいか確かめるために現れたのが、DG細胞の力を使って復活した、かつてのシャッフル同盟の面々である《ダーク・シャッフル》たちで、4人の中でとくに興味深いのが、ダーク・ダイヤことJ・D。

 『Gガンダム』の未来世紀って、度重なる戦争と環境破壊によって人類が地球に見切りをつけて多くが宇宙に移住しているという、『ガンダム』シリーズの中でも大分終末寄りの世界観なんですが、第13回ガンダムファイトより前の話ってあまり語られていなかったんですが、ここにきて未来世紀の初期の時代の話が出てきたのは興味深い。

 未来世紀の初期には"カオス戦争”と呼ばれる大規模戦争が起こったという設定は以前から存在していて、コロニー連合軍の介入によって集結するも、今度は地球の主導権を巡ってコロニー間での2次カオス戦争に発展しかけ、それを防ぐためにガンダムファイトが開催される……という流れなので、カオス戦争終結(未来世紀4年)~第1回ガンダムファイト開催(未来世紀8年)の間くらいの時代に活躍したのがJDなのかなと。

 イニシャル的には完全にジャンル・ダルクですけど、我々の知るジャンヌ・ダルクとはおそらく別人と思われます(本名ではなくジャンヌ・ダルクの再来みたいな感じで、周囲からつけられた異名みたいなものなのかも)。

 そしてそのダークシャッフルの中でダントツの存在感を放っているのが、ダーク・ハートこと独狐求敗。東方不敗って本編中だと年齢的にもかなり上の方で、協力者であるウォンも呼び捨てにしていたので、人間相手に敬語で接しているのはかなり新鮮です(一応、デビルガンダムに対して敬語を使うシーンもありましたが)。


 独狐求敗は白いマスターガンダム(ガンダム・マスター独狐)に登場していますが、「ギアナ高地の墓で眠っていた」という発言と、1話でウォンが東方不敗のコピー体が乗っていたマスターガンダムが行方不明と言っていたことを考えると、ギアナ高地に残っていたDG細胞が何らかの形で独狐求敗を蘇らせ、コピーの東方不敗が乗っていたマスターガンダムが進化して、独狐求敗の乗機になっている可能性が高そう。

 ただの東方不敗の機体の色違いではなく、九尾のファンネルという新武装や、流派東方不敗の新技を使ったりもしているので、立体化やゲームへの出演があるとかなり人気が出そう。東方不敗とのファイトのシーンはかなり読み応えもあり、何らかの形での映像化が待ち望まれるところです。

 ゴッドガンダムに乗ったドモンを子どものようにあしらったり、東方不敗をもってして「生涯で唯一勝ちを得なかった」と評すほどの実力の持ち主なので、『ガンダム』世界の最強の女性パイロットの一角に間違いなく食い込んできそうです。

 また2話では、ダークシャッフルの手によって“コーナー落とし”という本編中になかった新しい概念が登場しました。

 他の『ガンダム』シリーズのコロニー落とし的なものだと思うんですが、映像とかをみる限りコーナーポストの大きさはMF3機分くらい(50~60m?)に見えるので、コロニー落としと比べると大分規模が小さくは感じるんですが、10メートルくらいの隕石でも原爆に匹敵する被害がでると聞いたことがあるので、ネオホンコンの都市くらいなら余裕で吹き飛ばす威力はありそうです。

 当初はダークシャッフルを利用できると踏んでいたウォンが、ネオホンコンが壊滅するかもしれないと聞いてビビリ散らかしているのは面白かった。本編でも、東方不敗の真の目的(人類抹殺による地球再生)を知ってドン引きしていたり、野心はもっていて他人を利用しているつもりだけど、実は利用される側なのがちょっとウォンの面白いところ。

 3話の最後では、復活した独狐求敗が蘇った理由が現メンバーがシャッフル同盟に相応しいかを試すためではなく、私怨のためであることも判明。

 東方不敗との過去に何らかの秘密があるのは間違いなさそうなので、本編中ではあまり描かれていなかった、若き日の東方不敗のエピソードなど今後語られるかもしれないと考えると非常に楽しみです。


米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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