※『Death end re;Quest Code Z』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。
コンパイルハートより9月19日発売の、Nintendo Switch/PS4/PS5用ソフト『Death end re;Quest Code Z(デス エンド リクエスト コードゼット)』。
本作を先行プレイしての感想をお届けします。
死を魅力と捉えたローグライクRPG【デス エンド リクエスト コードゼット】
本作は『デス エンド リクエスト(デスリク)』シリーズの新作。
『デスリク』はこれまで初代『デスリク』、『デスリク2』とリリースされてきており、本作が3作目。これまでのシリーズは3DのRPGでしたが、本作はダンジョンを探索する3DのローグライクRPGです。
ゲームの流れは、アドベンチャーパートとローグライクのダンジョン探索パートが交互に訪れる形。アドベンチャーパートでしっかり物語を描き、その節目でダンジョンへと向かいます。
アドベンチャーパートでは行先などいくつか選択を求められるポイントがありますが、メインストーリーが進むものとサブクエストが発生するものが明確になっている遊びやすい作り。
ただ、『デスリク』ですから思わぬところに仕掛けがある可能性もあるでしょう。
ダンジョンはローグライクでは定番のルールを採用。ダンジョン内のフィールドはマス目に区切られており、主人公の火渡さや香が一度移動や攻撃などを行うと敵も移動や攻撃を行うというターン制で進行します。
ダンジョン内でさや香のHPがなくなれば当然探索は失敗になりますが、もうひとつ理性値というターン数の経過やトラップの効果によって減少する数値が存在。同ジャンルのゲームを遊んでいる人に向けた話をすると“主に食べ物で回復できる、お腹の減り具合”に近い数値です。
理性値はダンジョン内にとどまれる目安であり、ゼロになるとさや香が自傷し始めるため力尽きるまで一直線。
また、一定以上理性値が減少するとダンジョン内で見える範囲が狭まるため、本来なら見えていたはずの敵が見えなかったために不意を突かれるシーンも増え緊張感が高まります。
さて、ここまで力尽きると書いてきましたが『デスリクZ』では、力尽きることがデスエンド、つまり明確な死として描かれています。
デスエンドを迎えると、どのようにして死亡したかがていねいにボイス付きで描写され、さらにスチルも挿入。なかには特定のシチュエーションで死亡することでのみ回収できるスチルもあります。
さらに、デスエンドを迎えると手に入る“デスエンドスキルポイント”を消費して“デスエンドスキルツリー”でさや香の能力の強化が可能。
“デスエンドスキルツリー”は難易度を問わず恒久的な強化を行える唯一の手段。通常のローグライクでは、キャラクターが力尽きることが純粋な失敗になりますが、失敗がスチルの回収とキャラクターの強化につながるある意味で非常にいやらしいシステムになっています。
ダンジョンクリアの難度は低め。ただし、死への渇望から逃れることはできない【デス エンド リクエスト コードゼット】
本作の難易度はNORMAL、ELITE、EXPERTの3種類。難易度によって、下記の通り死亡時に失うものが異なります。
・NORMAL:死亡時にとくになにも失わない
・ELITE:死亡時に所持アイテムとEni(お金)を失う
・EXPERT:死亡時に所持アイテムとEniを失い、LVと所持武器の育成データをリセット。さらにダンジョン脱出時にもLVをリセット
この難易度設定を見ると、似たようなジャンルのタイトルを遊んだ人の多くは難度の低いタイトルだという印象を受けるでしょう。多くのローグライクゲームは難易度EXPERTのようなシステムが基準になっており、NORMALのようなシステムのタイトルはしばしば見られるものの、メジャーではありません。
一部の人にだけ通じる話をすると“不思議の”の難度も選べますが、基準は“不思議な”です。
つまり、本作のベースの設計は何度も挑戦して運と実力で一度の勝利を手にするものではなく、繰り返し遊んでダンジョンを踏破するもの。苦戦するポイントがあっても失敗しながらアイテムを集めて、装備を強化していけばいつかはクリアできます。エンディングやスタッフロールを見ることだけをゲームの目的だと考えるなら、
ただ、ここで考えてほしいのはゲームの目的はなにかということ。ローグライクとして見ればダンジョンをなるべくスムーズに攻略してエンディングを目指すのが目的で、プレイヤーに最も近い立ち位置の火渡さや香の考えも同様です。
ですが、さや香はプレイヤーではありません。本作にはプレイヤーの分身に相当するキャラクターはおらず、プレイヤーは一部のキャラクターからのみ認識される存在。ほかの作品であれば観測者、メタ的存在、上位存在、そういった言葉で呼ばれるような立ち位置です。
また、上記の通りダンジョン内で死ぬことでスチルが手に入り、デスエンドスキルによる強化も行えるため、プレイヤー視点では死ぬこともマイナスばかりではありません。
ダンジョンに入ってすぐ出会える敵と戦って死ぬことは簡単ですが、ボス戦で死ぬには当然ダンジョンの最奥まで到達することが必須。
さらに、ダンジョンによってはボスを倒して仲間を救出し、その帰路で仲間を失うことで発生するデスエンドもあり。ミスやじり貧によるどうしようもない死に加えて、スチルが回収できそうなシチュエーションで死を選ぶかの選択も突き付けられます。
さや香の死にざまは本作のコレクション要素でもあるので、多くの人はプレイ中に新たなシチュエーションに出くわしたときに“死んでみたいけれどもどうしよう”という葛藤を避けられないことでしょう。
実はNORMALはさすがに手ぬるいだろうと感じてELITEでプレイしたのですが、死ねそうなシーンでアイテムを失ってでも死ぬか今回はクリアを目指すかと正直迷います。ELITEでも迷うのですから、死ぬたびにゼロからスタートになるEXPERTでプレイしたならより迷うはずです。
もっとも、難易度自体はいつでも変えることができるので“あえて死ぬときだけ難易度を下げる”といったこともできますが、最高難度で始める人にとってはなるべく避けたい選択でしょう。
一応最低難易度がNormal、すなわち普通であると示されている以上、死にながら育成を進めて、死ぬことでとくになにも失わないのが本作の設計だとは思いますが、あえて難易度をあげることで死に対する新しい葛藤が生まれるのはおもしろいポイントだと感じました。
また、デスエンドでさや香を恒久的に強化できる点は、プレイヤーに“言い訳”を与えてくれます。
ヒロインが凄惨な目に合うというシチュエーションは一般的には忌避されがちなもの。力尽きること自体は探索の失敗であることと相まって避けたくなる気持ちは少なからず生まれます。
本作のデスエンドの描写は血が流れる程度にはとどまらず、身体のどの部位が貫かれたかや、どのようにして切り裂かれたかなど事細かに描写されており、この記事を読んでいる人はそういった要素に一定の期待をしていることでしょう。
ですが、ご安心ください。さや香の死によってデスエンドスキルでの強化が行えるので、わざとさや香を死なせたとしてもそれは次のクリアにつながる過程です。
育成のため、育成のためと自分に言い聞かせながらさや香を死なせ、いつの間にか手段と目的が入れ替わっている……。そんなゆがんだ遊び方も『デスリクZ』ならアリでしょう。
なお、ストーリー上はクリア済みのダンジョンは消滅する、もしくは訪れる必要がない場所になりますが、ストーリーと関係なく挑戦することが可能。どの敵でデスエンドを迎えたかも確認できるので“死に直し”にいくこともできます。
シリーズ未プレイで物語を100%理解するのは難しいが、内容は楽しめる【デス エンド リクエスト コードゼット】
さて、本作のような原点となる作品があっての続きものやスピンオフでしばしば取り上げられるのが“過去作を知らずに遊んで楽しめるか”。
レビューを書く以上なるべく多くの人が手に取ってくれれば、とは思うのですがそれでも過去作を知らずに『デスリクZ』を100%楽しむのは難しいと言わざるを得ません。
というのも、『デスリクZ』冒頭を含めた『デスリク』シリーズの物語は、第四の壁を破り、並行世界もループもありのメタフィクション。この時点で『デスリクZ』の前にシリーズ作に触れておいた方がよいというのは伝わるでしょう。
昔話で例えれば『デスリクZ』は、「むかしむかし、竜宮城で浦島太郎という青年が乙姫という女性と仲良く暮らしていました」から始まる作品。『浦島太郎』を知らない人なら昔話でよくある“そういう前提”として受け止めるでしょうが、『浦島太郎』を知っている人には不自然な舞台背景に映るでしょう。そんな物語になんの前触れもなく“箱”が登場したら、やはり『浦島太郎』を知っているか否かで受け止め方は異なります。
逆に言えば、『デスリクZ』はシリーズファンにしっかり向き合って作られている作品。
水梨新はいるのかいないのか……と考えられるのも、東山まいの『デスリクZ』での紹介文にある“行方不明の親友『ロット』のことは忘れられそうにないとか……”の一節を見て「なるほど、ロットは行方不明なのか」と訳知り顔をできるのもシリーズ作をプレイした人の特権です。
ただ、プレイヤーに一番近い立ち位置であるさや香が『デスリクZ』の世界をまったく理解していないため、さや香が教わる形である程度は世界観などが語られます。そのため、過去作からの因縁などが今一つ理解できないとしても『デスリクZ』の物語は十分に楽しめるでしょう。
また、『デスリクZ』は明らかにリョで始まってナで終わる嗜好を意識して作られています。
例えば芋虫型の敵に倒された場合、敵がさや香のヘソから腹を貫いたあとにまた別の穴に入ったと描写。地の文ではありますが、この描写だけ作中のストーリーテラー的存在がフルボイスで読み上げてくれ、しかも別の穴とは“どこ”なのかをプレイヤーが想像しやすいよう差し向けてきます。
一般的には悪趣味と言われがちですが、需要があるこの手のジャンルPSやSwitchで楽しめるのは貴重です。
流血や人体の切断描写を売りのひとつとしている作品を万人に進めるわけにはいかず、上記のようにシリーズ作を知らずに『デスリクZ』に触れればどこかで置いてきぼり感を覚えることもあり。
ただ、凄惨な描写と『デスリク』の続き、そのどちらであっても期待している人には間違いなくこたえてくれます!