いよいよ10月24日の発売まで3週間を切り、TGS2024では新規PVも公開された『三國志8 REMAKE』。そのTGS会場で、石川久嗣開発プロデューサーと世取山昌平ディレクターに、ゲーム内容に対してかなり突っ込んだお話しを聞くことができたので、その内容をお届けしよう!
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いい顔といい声大事! 『三國志』を盛り上げる武将像
――今回実際にプレイして、まず最初に驚いたのが武将の新グラフィックの数でした。もちろん劉備曹操といった主要どころは毎回差し替えられているんですが、李異や雷銅クラスまでは珍しいですよね。
石川:そうですね、そこは全武将プレイですからなるべく変えたかった部分です。ただ変わったものも新規グラフィックというよりは『100万人の三國志』などからの流用も多いと思います。その『100万人の三國志』にも同じ武将にいろんなパターンがあって、その中で一番良いと思えるものを選びました。
――『三國志』シリーズもナンバリング以外の作品増えましたよね。全作品のグラフィックを把握しているわけではないので、じつは他からの流用でも「新しくなった!」という印象を受けます。
世取山:それは狙った部分でもありますね。とにかく『14』と同じ顔になるのは可能な限り避けたくて、別パターンのある武将はなるべく差し替えました。
――武将と言えば声優もかなり豪華に使われていますよね。プレイしていると固有ボイスを頻繁に聞くことが多く、こちらも印象に残りました。
世取山:総勢で40人くらいの声優さんを使っています。『8 REMAKE』の公式ページでは主要武将の声を聴けるようになっているので是非聴いてみてください。
――子安武人さんの孔明めちゃいいですよね……。キャスティングに対するこだわりを感じるんですがそこはやはり力を入れた部分なんですか?
石川:そこは世取山がこだわった部分ですね(笑)。
世取山:私は『13』でもキャスティングも担当していたのですが、今回は好評だった『13』のキャスティングをベースにしつつ 声優さんに声を掛けさせていただきました。武将の性格に合った声優さんを実力重視で選んたのが良かったのかなと思います。
――歴史SLGは声優さんで推していくジャンルではないですから、実力のみで選べたわけですね。
世取山:「キャスティングは実力で」を方針にしていましたし、『三國志』ユーザーが求めているのはそちらだろうと思います。しっかりと歴史の厚みのようなものを出せる、声優の皆さんに集まっていただけたと思いますし、また私の想像を上回る力演をいただけたことで、骨太な世界観をしっかり表現できました。
ちまちま交流、ポチポチ習得、だがそれがいい!
――ゲームプレイで個人的に一番良かったと思えたのが、心得を使ったポイント制の習得方法と、一度親密度が最大になった相手でも何度でも心得をもらえることでした。
石川:そうですね、そこは意識して作った部分です。開発中に仲のよい武将が主人公のところに遊びに来てくれるというのを入れたのですが、メリットがないとわずらわしく感じてしまいますよね。
世取山:例えば張飛であれば「兄者酒飲もうぜ」と来訪してほしいですし、それをプレイヤーにもうれしく思っていただきたかった。そこで実利と演出を両立するためにも、心得の習得はループできるようにしました。
テンポ良しの戦闘システムは騎馬無双……とはいかない!
――交流面以外にも、元の作品と比較して積極的にストレス要素を排除している印象を受けました。そのあたりでのこだわりの部分は?
世取山:私としては募兵要素ですね。『8 REMAKE』では都市の兵士収入という形で自動的に兵が増えていくのですが、『Ⅷ』って絶対に毎ターン募兵コマンドを実行します。しないと損をします。配下武将でプレイしていて、上司が募兵しないと「なんでしない?」となるくらいには必須の行動でした。でもそれはただの作業になっていて、昔のゲームだから許されるという範疇ではなかったのです。そこで今回は募兵ではなく兵収入という形で自動的に増える形にしました。その方が雰囲気的にも良いでしょうし、ここぞというときには治安低下と引き換えに手動で募兵もできるようにしています。ストレスの軽減とゲーム性の向上の両方を目指して改善したこだわりの部分です。
石川:それと大きなところではやっぱり戦闘システム全体ですね。ここはずっと言われていた部分ですのでかなり変えて、まったく別物になっています。
――とにかくスピーディーですよね。開幕2ターン目には接敵するくらいには近い位置での開始にまず驚きました。
世取山:そうですね、まさにそこを目指して作りました。それと戦闘に大きな影響を与えるのが「奇才」です。全部で30の効果を用意しましたが、数が少ないからには尖った内容にしようと効果を大きく設定しています。『Ⅷ』での強さって、部隊の強さや戦法の強さの強弱の差だけでしたよね。そことは違う次元での変化というか、戦況全体に“効く”内容にしています。もちろん「奇才」だけで勝てるわけではなくて、戦法や特技をしっかりと育てて連携を組めるようにして、ちゃんと準備して勝つというのが大前提にあります。
――実際、「奇才」とは関係なく「槍衾」などの上位の戦法に連携乗せると強いですよね。戦場に行く前にまずは上位まで覚えてから……と延々交流を続けてしまいます。
石川:そうなりますよね(笑)。「奇才」は習得できませんが、その分、上位の兵法は誰でも習得できて大きな効果を及ぼすように設定しています。
――上位兵法の強さが印象に残るんですが、初期所有している武将はかなり限られますよね。騎馬系上位兵法「車懸」の数少ない所有者に、華雄や公孫瓚がいるのは意外でした。騎馬系寄りの張遼や趙雲ではなく、彼らなんだという。
石川:そこは私の趣味ですね(笑)。原作の『Ⅷ』を作っていたときと今の『8 REMAKE』を作る私の中での武将への解釈の差といいますか……。公孫瓚を中心に趙雲や田豫と連携を組んで騎馬戦法を使えば、袁紹軍を蹴散らせるように意識して設定しました。董卓軍もそうですが、私が騎馬勢力を好きなんです。早期購入特典に公孫瓚主人公のシナリオも作っていますので、そこでも楽しんでいただけるようにしました。
――ああ、なるほど! 早期購入特典シナリオで公孫瓚が主役に挙がったとき、『14』の「河北の雄・公孫瓚」シナリオの公孫瓚勢力が弱かったので正直不安に感じていました。確かにこの公孫瓚であれば主役を張れますね。
石川:そこはデータ設計者の趣向にも寄るところですが、私は騎馬戦法推しなので……。でも、最初は騎馬戦法の気持ち良さを味わったあと、知力合計の高い勢力にぶつかったときに敵の策略で痛い目を見ることになるはずです。最初は強くて気持ちいいですが、そのままだとどこかで壁にぶつかる、そこまでワンセットだと思っています。
毎プレイ生み出されるプレイヤーだけのドラマ(相生編)
――連携の話が出ましたが、プレイヤーは自由に相生を作り上げることができますが、逆にデフォルトでの相生の少なさに物足りなさを感じました。『14』の親愛に比べると少な目ですよね。
石川:そこは私が初期相生を設定したのですが……チーム内でも意見が割れた箇所でもありました。プレイするごとに相生の相手がガラリと変わるというリプレイ性の部分を重んじるということで、あえて控え目にしました。自分以外の武将に後付けで相生を発生させたいというのもわかる話で、そこは今後の課題ということですね……。
世取山:じつは、プレイヤー以外も勝手に相生を組むという仕様にトライしたこともあったんですよ。でもプレイヤーが把握していない関係が増えすぎちゃって、戦場で謎の連携がどんどん発生する事態になってしまいました。それが面白いかというと面白いわけではなくて。それと、勝手に相生を組ませるとプレイヤーが組みたいと思ったときに枠がないということもありました。わざわざプレイヤー専用に1枠空けておくというのも違和感がありますし。そういう経緯もあって、CPU武将が勝手に相生を組む仕様は無くなりました。今回はあくまで自分のドラマを描いていくというところが主眼なので、プレイヤー自身が相生を増やして物語を紡いでいくということに注力しました。
――自分で繋ぐぶんには、相生はけっこうコントロールできますよね。同じ仕事場にならないように、繋ぎたくない武将のいる場所は避けたりとか。
世取山:そうですね。じつは誰がどこにいるかは今回意識してわかるようにした部分です。原作『Ⅷ』では他の武将が何をしているかわかりにくかったと思います。生活感というか、他の登場人物たちがどこで何をしているのか、実感できるような形にしています。
毎プレイ生み出されるプレイヤーだけのドラマ(相克編)
――相生はけっこう狙って繋ぐことができますが、相克は運ですよね。司馬懿あたりの強い武将とうっかり相克になってしまうとかなり大変でした。
世取山:私もモニターしているときに強い武将と相克になると悲鳴を上げていました(笑)。そこはプレイするごとのドラマだと楽しんでいただければと思います。
石川:ちょうど私が今モニターしているプレイだと、夏侯惇と相克になってしまって。毎回毎回、奇才「不撓不屈」で敵の戦意がどんどん上がってすごくやっかいなことになってしまいました(笑)。
――相克の解消はできないですよね?
世取山:基本的には無理ですが、とある旅人と仲良くなると、ご褒美的に相克を1人だけ解除できるイベントが発生します。かなり例外的な抜け道であって、基本的には無理だと思ってください。
――今回はこの武将と相克なんだ、というドラマはリプレイ性になっていますよね。プレイしていると、戦死による仇敵の発生もドラマ感がありました。
世取山:そうですね。普段の部隊壊滅のみでなく、一騎討ちで残り体力がゼロになると、そこそこの確率で戦死が発生します。そのため想定外の場面で起きやすく、印象に残りやすいのかもしれません。
――ああ、なるほど。戦場でけっこう大物も戦死して驚きました。『13』のときは格が高い武将は格下と戦っても一騎討ちで戦死しないなどの要素がありましたが、今回そういった縛りはないんでしょうか?
世取山:武将の格付けによる確率の差は従来作同様つけていますが、「戦死しない」というような大きな補正はありません。そこはあえての部分なので、そのドラマを楽しんでもらえれば 思います。
訂正:前回記事で「曹操や孫権レベルの君主が捕縛斬首される」と記しましたが、曹操に関しては所有する名馬効果で捕縛されるはずがないので、おそらく戦場での戦死との勘違いでした。
――偶発的なドラマの話が出ましたが、歴史イベントに関して今回はゲームがスタートして数年もすれば、勢力の動きに予想外のことが起きて発生条件が潰れる印象があります。『信長の野望・新生』では勢力の拡大に制限がかかっていて、イベント発生条件を制御していましたよね。ここはどちらにせよ賛否両論出る部分だと思いますので、どういった狙いがあるのか教えてください。
石川:そうですね。そこは議論を重ねて選んだ部分です。言ってしまうと、開発側にも賛否両論があります。制限があって歴史通りに進むほうがいいのか、毎回違う展開になるほうがいいのか。『Ⅹ』のときは歴史イベントで強制的に史実に近づくような形にしていましたが、今回は制限をかけていません。
世取山:拡大の制御に関しては、リアルタイムじゃないからという問題もありますね。ターンベースのシステムだと、拡大を制御してるとそれが露骨に出てしまって不自然すぎるんです。私は『信長の野望・新生』にも関わっていましたが、リアルタイム制の『新生』ですら不自然に動かないように見える、いわば案山子になってしまっている瞬間があります。
石川:今回は全年代シナリオが用意されていますので、絶対に特定のイベントを見たいという場合はその年代でスタートしていただければと思います。
悪名は無名に勝る!
――悪名に関する扱いはだいぶ変わりましたね。略奪コマンドのメリットが増えましたし、酒場で悪名の上がる依頼を受けるなど意識しないと逆に上げられないですよね。
石川:そうですね。20年前のあのままの悪名システムで今やってしまうと、だいぶストレスになっちゃいますので……。
――略奪で都市の物資をガッポガッポに稼げるのはすごく楽しかったです!
世取山:そこはせっかく入れるなら意味のあるものでないといけませんので(笑)。
石川:悪名は人に会いにくいというデメリットがありますので、少なくともそれに相応するメリットが必要と考えています。
――確かに悪名が高いと交流してくれない人たちも多いですよね。悪名の高い呂布で始めたとき、配下の張遼や高順が会ってくれなくて。でも忠誠は100で。プライベートのお付き合いはお断りなのかなと……。
石川:極論ですが、誰とも交流しなくてもクリアはできます。悪名は親密度を上げにくいですが、それは忠誠とは別ですし。自分では会ってくれなくて登用できない武将も配下に任せて登用してもらえばいいですし。
世取山:悪名が高くても、武名や文名が高いと会ってくれる人もいますしね。酒場の依頼で悪名を下げることもできます。
うっかり負けて欲しい?一騎討ち&舌戦!
――今回は一騎討ちが手動となり、舌戦も追加されました。ルールはシンプルなんですが、けっこう負けてしまいますよね。
世取山:それはアルゴリズムが上手く機能しているようでよかったです(笑)。
――相手の手札が見えるのが逆に曲者で、最善手をあえて打ってこないことがあるんですよね? そこは絶対それ出すだろう! と思ったらスカされてカードを無駄にすることがよくあります。
石川:そうです、わざとフェイントを入れています。この組み合わせのときは必ずこれを出す……とルーチンを決めてしまうと、まあプレイヤーに対して勝ち目はありませんから。
世取山:とはいえダメージ量は武力の高い方が有利ですから、実力差があればそうそう負けることはないと思います。ただ、武力の近い戦いでは、うっかり負けてほしいと思って作っています(笑)。そこもドラマの一つですから。
――これ、じつはプレイヤーの選択見てから出すカード決めていません!?
世取山:いや絶対そんなことはしていません! ここは文字太くしておいてください(笑)。
――ちなみに一騎討ちや舌戦の固有モデルは幾つあるんでしょうか?
石川:15くらいです。『14』のときと基本同じなんですが、じつは諸葛亮がなかったので追加しました。今回は舌戦での出番がありますので……。
――ピンポイントで聞くんですが、魏延は固有グラじゃないんですよね。絵とモデルが似ていて、でも固有にしてはモブっぽいなあと。
世取山:それは今回似せられる武将は似せるようになるべく調整した部分です。兜の有無や色など、元の絵に似せられる部分がある武将はそれに寄せています。
石川:担当者がかなりがんばってくれた部分です(笑)。汎用モデルは何種類かあり、色も幾つかバリエーションがありますので、似せられた武将は似せられたのではないかと思います。
シリーズ永遠の課題、中弛み対策は連合と幅広いエンディング方法
――『14』との違いとして、クリア条件が大きく緩和されましたね。地方の統一だけでエンディング条件を満たしてクリア済みマークがつくようになったので、気楽に次のプレイ、次のプレイと移れるようになりました。
石川:このシリーズ、中弛み対策をどうするかは毎回議題になります。本作でも敵が連合を組んでくるなどの対策はしてるんですが、それでも大陸を統一するまでの中弛みを完璧に防げるかというとハードルが高いです。それに、多くのユーザーがそれを求めてるのだろうかという疑問もあります。今回はシナリオもたくさんありますし、ここまで遊んだらもう次を遊んでもいいんですよ、という形で中間エンディングやその他のエンディング条件をたくさん用意しました。
――なるほど。中弛み対策として挙げられた連合ですが、確かに外交をちゃんとしてないとCPUに連合を組まれる印象があります。これ、CPUは連合を組むと積極性上がりますよね?
世取山:上がりますね。正確に言うと、積極性が上がるというよりも今回の連合は遠くの都市からも援軍をもらえる昔ながらのシステムなので、計算のできる戦力が増えて攻める可能性が高まるという形です。
――遠くから援軍が来るのは、やっぱり反董卓連合のイメージですよね。
石川:そうですね。反董卓連合だと孫堅に華雄と戦って欲しい。長沙にいる孫堅が洛陽の董卓軍と戦うには、このシステムが必要となります。
――では最後にメッセージをお願いします。
石川:もともと本作は今年の早い時期に出す予定だったものを、ここまで延期してしまったことは改めてお詫び申し上げます。そのぶんしっかりと作り込んで、シリーズのなかでは最も完成度の高い状態でお出しできると思っています。延期の中で力を入れたことが、チュートリアル部分などのプレイの始めやすさで、『Ⅷ』を遊んだ人たちだけではなく、初めてシリーズをさわる方にも遊びやすい作りにしています。いろんな人たちに遊んでいただきたいので、是非さわってみてください。
世取山:武将プレイ作品では評判の高い『13PK』がすでに世に出ていて、そのなかで『8 REMAKE』はどういうタイトルであるべきなのか、というところからこの作品の設計は始まりました。ボタンを押せばポチっと結果が出る、そういうテンポの良さ、遊びやすさを追求して、気軽に遊べる作品になったと思います。この武将かっこいいよね、というくらいの気持ちでスタートして、三国志の世界を楽しんでください。
■Nintendo Switch(通常版)
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