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『野狗子:Slitterhead』開発者トークショーレポ。舞台となる九龍は現実の九龍城寨を忠実に再現したわけではなく、また少し違った“ロマンの塊”に

文:原常樹

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※『野狗子:Slitterhead』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。


 Bokeh Game Studio(ボーカー・ゲーム・スタジオ)が11月8日に全世界で発売予定の新作ホラーアクションゲーム『野狗子:Slitterhead』。本作の先行プレミアム体験会(3部構成)が10月12日に開催されました。
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 一般ユーザーにとっての試遊は国内初で、試遊範囲は先日のメディア向けに開催された先行体験会と同じ範囲。いわゆるチュートリアルの部分ではあるものの、“憑鬼の力で雑踏の人を乗り換えながら町を散策する楽しみ”や“憑依した人々を犠牲にしながら人海戦術で野狗子と戦う”といった同作の魅力は存分に体験できる試遊となっていました。目を輝かせながら、物語の舞台となる“九龍迷窟”を散策する来場者の姿もまた印象的でした。

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 会場のBokeh Game Studio内には、『野狗子』の世界から飛び出したような世界観資料を展示。一部の文字が黒塗りで表記されたレポートは実際に手に取って閲覧することも! 死者を納棺する際に副葬品として埋葬する冥銭や新興宗教団体のロゴマークなど、まだまだ謎だらけの世界観に肉薄できるような展示もあり、眺めているだけで発売が待ち遠しくなってしまいますね。

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 この日はクリエイティブディレクター・外山圭一郎氏も常駐し、Bokeh Game Studioのグッズ販売をする姿も……。外山氏の代表作である『SILENT HILL』や『SIREN』の展示ブース前で来場者との撮影に気さくに応じる姿もまた印象的でした。

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▲外山圭一郎氏
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 今回のプレミアム先行体験会では、外山氏によるトークショーも開催されました。この記事では、第2部のトークショーの模様をお届けします。

『野狗子』開発者トークショー(第2部)

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▲左から佐藤一信氏、外山圭一郎氏、大倉純也氏
 まず、同作のモデルとなった香港の“九龍城寨”について。九龍城寨は、香港にかつて存在した都市部の地区で1994年にはすでに取り壊されています。外山氏は実際に足を運んだことはないそうで、「自分の作るゲームの世界でそこに行けたらいいかもなって思う」と郷愁を吐露。

 なお、『野狗子』の九龍は現実の九龍城寨を忠実に再現したわけではなく、また少し違った“ロマンの塊”となっているとのこと。「目線を少し上げたらネオンの看板がバーッと並んでいて。今そこにしかない一期一会の体験にちょっとでも近づけるようになっているはず」、「(九龍は)街中で裸のおじさんが涼んでいたり、あんまり他人のことを気にしないというか。その辺の自由さは感じてもらえると思います」と胸を張っていました。

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 外山氏は、『野狗子』の制作においてタッグを組む作曲家の山岡晃氏についても言及。「ほかとは違うことをやりたいというところでシンパシーを感じる」と既成概念に挑戦する姿勢が共通していると語り、「みなさんが思っているよりも引き出しが広い人だと思う」、「『野狗子』ではまたこれまでとは違った一面が見えるはず」と太鼓判。さらに「オープニングも好きなんですよね……」と外山氏がしみじみつぶやくと、体験会でまさに味わったばかりの来場者たちから同意の拍手が巻き起こりました。

 ここからはプロデューサーの佐藤一信氏と、ゲームディレクターの大倉純也氏がトークショーに参加。3Dビジュアルの変化について質問された3人は、『SIREN』を作っていた頃と比べるとだいぶ変わったと明かしました。

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 「とんちなんですよ。(『SIREN』のころは描画にハードの制約があるため)どう表現すれば、怖くてほかのタイトルで観たことのない表現ができるかなと……。でも、今はもうそのものを作っていけばいい」と佐藤氏が説明し、大倉氏が「今はお金がかければなんでもできるんですけど、うちは弱小スタジオなんで。なんだかかんでアプローチとしては変わっていません(笑)」と笑いを取る場面も。

 外山氏も「ホラーは難しいと思っていて……。昔はもっとゲームごとにレギュレーションがバラバラで自由だったんですよ。PS3、PS4あたりが3Dアクションゲームはこうだというフォーマットがどんどん強くなっていって。『SILENT HILL2』あたりではもうそうでしたけど、4K、60fpsの映像とホラーって僕のなかだと“うわ、相性悪ッ!”って(笑)」と胸中を語ると、佐藤氏も「でも、製品としては(鮮明な映像でホラーを描くという路線を)外しにくい」と同意。ホラーはインディーズタイトルとしてやるべきという意見があることにも触れた3人だったが、どうやったらそれを覆せるかと日々試行錯誤しているとのこと。

 トークショーでは『SIREN』シリーズの制作を懐かしむひと幕も。「今でいうフォトグラメトリ(※あらゆる角度から写真を撮影してそれを解析・合成することで3DCGモデルを作る技術)を200万画素のデジタルカメラで作っていて(笑)。表情の作り方もすごくて、顔を真っ正面から捉えた映像を貼りつけるので、頭を後ろからガシッと押さえつけて“こういうお芝居をしている感じで”と役者にお願いしていました。斎藤工さんの頭を押さえていました」と佐藤氏が明かすと会場からはどよめきが。若い役者の人はそれでもおもしろがっていたそうですが、やはりベテランの役者さんの撮影には苦心もあったようです。

 気になる最新作『野狗子』の開発については、まず佐藤氏が「どんなゲームなのかがなかなか伝わらない。海外のどこのゲームショーに持っていっても“お前らの作るゲームはこのイベントで一番ヘンだ”と言われました」と苦労を明かしました。ユーザーのみならず開発段階でのスタッフ間での説明も難しかったようで、「“俺たちは何を作らされているんですか”、“本当におもしろいんですか!?”とかメチャクチャ言われて」と大倉氏が明かすと、佐藤氏からは「毎回だけどね(笑)」と切れ味鋭いツッコミが。その後、3人の「『GRAVITY DAZE』のときも……」という言葉がハモるなど、チーム内で作品のおもしろさを共有するのに毎回苦労していることがうかがえました。

 吉川達哉氏による『野狗子』のキャラクターデザインについては、“街中を歩いている感じで存在感がない”ということと“キャラクターの存在感”との両立が肝になったと外山氏。「『SILENT HILL』や『SIREN』のころは、(警官や医者など各職業ならではの特徴的な衣装を着せる)職業コスプレをさせることで対応していましたけど、今回は顔が大事なんだなと思いました。“たとえばこんな俳優さんみたいな感じで~”ってみんなイメージを言うんですけど、それをまとめた“これだよね!”というのを吉川さんが描いてくれた」と外山氏も感じたそう。「吉川さんのキャラクターの強さに負けないシナリオにしなきゃいけない」と今回のコラボレーションにも気合いが入ったのだと語りました。

 そして、野狗子のクリーチャーデザインについても話題に。会場では米山啓介氏によるフィギュアも展示されていましたが、こちらはメディア向けの先行試遊会のときからさらに進化しているとのことで、「1年ぐらいかけて徐々にアップグレードしているんですけど、今回はヤバい! さすがに完成間近というだけあります。(取り扱いが)怖くて米山さんしか持ち運びができません(笑)」(佐藤氏)と3人ともそのクオリティをべた褒め!

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 「人間の体内に潜り込んで擬態している野狗子が、危機を感じると人体の体液を全部吸い上げて登場するというのは難しくて」と外山氏が語るように、人体に潜めるような細い身体と圧倒的な力の描写との両立はコンセプトからして難しかったそうですが、それをうまく形にできたのだとか。実際にプレイするとさらなるギミックが搭載されているということなので、こちらに注目して遊んでみるのもおもしろそうですね。

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 今回の先行体験会、そしてトークショーで『野狗子』に対する興味が倍増したという来場者も多かったことでしょう。3人から言及があったように『野狗子』は“なかなか魅力が伝わりづらい作品”なのかもしれませんが、試遊を終えた多くの来場者が満足そうな表情を浮かべていたことからも実際に触ってみたときのおもしろさは折り紙つきと言えます。少しでも興味があるという方は、先んじて公式サイトや公開中の特別映像で『野狗子』の世界観に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。


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