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『野狗子(やくし):Slitterhead』開発者インタビュー。「失われていくものへのノスタルジー」がテーマの本作で猥雑な景観を楽しんで

文:電撃オンライン

公開日時:

 Bokeh Game Studio(ボーカー・ゲーム・スタジオ)から11月8日に発売される新作ホラーアクションゲーム『野狗子:Slitterhead』。先日実施された本作の国内メディア向け試遊イベントにて、開発陣にインタビューを実施しました。

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 『野狗子』は、『SIREN』や『サイレントヒル』を手がけたクリエイター・外山圭一郎氏が開発する最新のホラーゲーム。猥雑さを色濃く残す街“九龍”を舞台に、プレイヤーは記憶と肉体を失った“憑鬼”として、人間に擬態する怪物“野狗子”と死闘をくり広げることになります。

 本作のディレクター・外山圭一郎氏、コンポーザー・山岡晃氏、キャラクターデザイナー・吉川達哉氏にインタビューを敢行。本作の世界観や楽曲、イラストなどについてお話をうかがいました。

 なお、会場に展示されていた貴重なイメージボードや設定画も掲載しますので、ぜひチェックしてください!

『野狗子』開発者インタビュー

外山圭一郎氏Bokeh Game Studio(ボーカゲームスタジオ)代表取締役。『サイレントヒル』のゲームデザイン&シナリオ/ディレクターを務めたのち、『SIREN』、『SIREN2』、『SIREN: New Translation』と立て続けにヒットを飛ばし、その後も『GRAVITY DAZE』などを世に送り出してきた。

山岡 晃氏作曲家。代表作は『サイレントヒル』、『シャドウ・オブ・ザ・ダムド』など。ゲーム音楽のみならず、ドラマ『東京トイボックス』の音楽制作や映画『サカサマのパテマ』の音響監督など、さまざまな分野で活躍を続けている。

吉川達哉氏イラストレーター/キャラクターデザイナー。代表作は『ブレス オブ ファイア』シリーズや『ロックマン』シリーズなど。『GRAVITY DAZE 2』の大型無料DLC「GRAVITY DAZE 2 Alternative Side :時の箱舟 - クロウの帰結」でも外山氏とタッグを組んでいる。本作ではキャラクターデザインを担当。


──『野狗子』は、1990年代の香港・九龍城寨が舞台となっています。九龍城寨は1993~1994年に取り壊され、もはや跡形もありませんが、この巨大なスラム街を舞台に選んだ経緯を教えてください。

外山
自分のなかのひとつ大きなテーマとして“失われていくものへのノスタルジー”というものがありました。歳月の流れとともに東アジアの国々も変化し、猥雑な景観を見る機会も少なくなってきたかと思いますが、ゲームのなかだけでもそういった景観を訪れることができたら楽しいんじゃないかと……少なくとも自分はそういう感覚で、舞台を設定させてもらいました。

 本作では九龍城寨を忠実に再現するというよりは、東アジアの国々の様式も織り交ぜつつ、さらには日本的なものも入れつつ、“ミクスチャーな架空の街”を構築しています。80~90年代の郷愁を感じる街並みといいますか。

──退廃的な裏路地とは対照的に輝く鮮やかなネオンサインもなんだかノスタルジックですよね。

外山
そうなんですよ! ああいった光景は日本でも全然見なくなりましたからね……。本当に寂しいです……。

山岡
今、外山氏がおっしゃったように猥雑な景観っていうのは昔の日本にもありました。そう考えると、そういった要素も和風といってよいのではないかなと。和風な音楽というと、和楽器を使った音楽というイメージを持つ人が多いかと思いますが、僕はそうは考えていません。そのときにある旋律や雰囲気を描くことこそが和風でもあり、ノスタルジーなのかなと。

──なるほど。

山岡
猥雑な景観といっても、その猥雑さがそのまま日本のノスタルジーにつながる部分もあると思うんですよ。たとえば日本に伝わるお祭りの音楽は子どもをたくさん産むためにアゲアゲにするという役割を担っていて、お祭りから十月十日後には子どもが多く生まれたと昔から言われていました。

──日本の原風景であり、ノスタルジーの象徴であるお祭りがエロティシズムと表裏一体というのはおもしろいですよね。近いところかはわかりませんが、個人的に河原に落ちていたエッチな本なんかにノスタルジーを感じたりはしますよね(笑)。

山岡
それもひとつのノスタルジーだと思いますよ!(笑) でも、昨今はそういったノスタルジーと繋がるエロティシズムが表現規制の対象になってしまっていて……よくないみたいな空気になっちゃっている。それならせめて『野狗子: Slitterhead』では、そういったみんなが本来持っていたはずのエネルギーを音楽で表現しようと。具体的な「HOW TO」に関してはここで言ってもひとまず伝わらないと思うので、まずは遊んで確かめてみてください(笑)。

──キャラクターについてもうかがいます。本作には全部で8人の稀少体が登場しますが、吉川さんが彼らをデザインするうえで足がかりにしたキャラクターはいますか?

吉川
ティザー映像でも登場している“アレックス”と“ジュリ”というふたりのキャラクターが根幹ですね。ヒーローとして、そしてヒロインとしてありつつ……この世界観をギュッとまとめる縮図のようなイメージでデザインさせていただきました。アジアの有名映画を意識する部分もありましたね。

──有名映画……香港ならではの武侠映画とか?

吉川
そうですね! もともと僕が映画や小説が大好きなので、自分の引き出しの中から『野狗子: Slitterhead』という作品に合った部分、それこそ小道具だけじゃなくて人相的な部分まで含めてギュギュッとデザインに濃縮させてもらった感じです。外山さんと二人三脚で作り上げていきました。

──敵とのバトルでは、中国武術などをベースにしたようなモーションも爽快です。こちらについてモーションスタッフへのオーダーなどはあったんでしょうか?

外山
モーションに関しては、本作の方向性をモーションのチームにお伝えして、逆にいろいろと提案していただいた感じです。

──本作のやり込み要素や周回要素についても教えてください。

外山
今回は物語の本筋に注力しているため、やり込み要素を潤沢に用意するということは難しかったのですが、そういう要素自体はあります。たとえば、一回クリアーしただけでは行かないような場所にある祠にアクセスすると、とんでもなく強いキャラクターが出てきてバトルになるとか。もちろん、勝利すればご褒美でアイテムがゲットできたりもします。周回……うーん、そうですね……。今の段階では言えないことが多いので、ぜひ実際にプレイして確かめてほしいです(笑)。

──開発期間も数年に及ぶかと思いますが、「これはゲームとして行けるぞ!」と手ごたえを感じたタイミングを教えてください。

外山
開発がめちゃめちゃ終盤になってからですね(笑)。コロナ禍で各スタッフが個別に作業を進めていた部分もあり、最後の半年ぐらいでそれぞれの要素がガッチャンコしたときに想定よりうまくいかなかった部分もありましたが、予想もしていなかった相乗効果もあって「これはおもしろいぞ!」と。

 ちなみに、『野狗子: Slitterhead』ではチームにライターがおらず、新人のサポートの子に手伝ってもらいながら僕自身がナラティブ(物語)を担当しました。「うわ、しんど! つらー!」とは思いましたけど、楽しかったですね(笑)。自分のアイディアひとつでキャラクターの見方が変わったり、展開に意外性を生み出せたりするのは醍醐味だと感じました。

会場内では貴重な資料の展示も!

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