ロゴジャック
電撃オンライン

『トライアングルストラテジー』VR版レビュー&感想:現実とゲームが融合する大革命。HD-2DとMRがこんなに相性いいなんて【トラスト/Meta Quest】

文:タダツグ

公開日時:

 スクウェア・エニックスから2022年にリリースされた人気タクティクスRPG『トライアングルストラテジー』が、約2年半の時を経た11月1日にMeta Questで登場します。

 Meta Questのパススルー機能を用いたMR(Mixed Reality)空間で、現実とゲームが融合したかのような新しくも懐かしい体験が味わえる本作。その魅力を、コンシューマ版も遊んでいるわたくし、ゲームライターのタダツグがレポートしていきます。
[IMAGE]

なんでMeta Quest ×『トライアングルストラテジー』なの……? そんな疑問はプレイを開始して即氷解

「あの『トライアングルストラテジー(以下、トラスト)』がMeta Questで遊べるようになるらしいんだけど、興味ある?」

 電撃オンラインの担当編集さんからそんな連絡が来たのは、東京ゲームショウ2024が始まるちょっと前の、まだまだ夏真っ盛りな暑い時期。この情報に触れた僕のファーストインプレッションは、正直なところ「そいつはめでたい!」という祝福の気持ちよりも「えっ、どういうこと???」という疑問のほうが大きかったです。

 いやはや、なんで『トラスト』がMRに? 僕は大好きなゲームだけど、何をしたくてそのチョイス? ぶっちゃけスクウェア・エニックスのコンテンツであれば、ほかにVR化やMR化を優先していいタイトルは色々あるような……。『トラスト』チームには失礼かもしれず、本当に申し訳ない気持ちもあるのですが。とはいえ、そんな疑問がどうしても頭のなかで拭えない自分がおりました。

 そしてそのモヤモヤに対する答えをなんとしても知りたくて、イチもニもなく「興味ありますッ!」と即レス。そうして僕は今、現実世界のコンクリートジャングルと、3大勢力の動乱に揺れる異世界・ノゼリアの大地が融合した、なんとも不可思議な空間に立っているわけですね……。
[IMAGE]
 記事を書き始めてまだ500文字くらいですが、いきなり結論を書いてしまいましょう。このMeta Quest版『トライアングルストラテジー』、プレイ感覚が新しく懐かしくてヤバいです。スゴくて、ヤバい。もはや語彙が死んでしまうほどの衝撃(汗)。

 プレイを開始して1分ほど……たぶん72秒くらいですぐにわかりましたよ。スクウェア・エニックスとMeta Questが挑戦した、まったく新しい映像表現とプレイ体験。HD-2Dで描かれたノゼリアの大地が、そしてセレノアをはじめとするウォルホート家の人々と、彼らと物語を織り成す多くの人物たちの姿が! あたかもミニチュアのごとく目の前に広がり、そしてそれに“触れてしまえる”この感覚……ヤバいよ、間違いなく新時代が来てしまった!
[IMAGE]
 言葉にするとチープかもしれませんが、この感覚はある種の革命。遊んでいただければきっと感動しちゃうと思います。そしてその感動の度合いは、もしかすると幼い頃からドット絵に触れてきた人であるほど大きいかもしれない。イマドキの若者にとっては一周回った新しさだと思うのですが、僕のようなファミコン世代からすれば、幼き日に夢見た“ドットで描かれたゲーム世界への没入”が、ついに実現したと言えますからね。

 リアルと呼ぶには方向性が違いますし、精細さが求められるわけでもないこの“ドット絵”という表現に、パススルー機能を利用したMR世界がこんなにもマッチするとは……。素直に感動してしまいました。

 本当に目の前に、ドット絵とHD-2Dの世界が広がっていて、そこをキャラクターたちが所狭しと動き回るんですよ。基本的にはひとつの方向からしか眺められないその姿を、四方八方から回り込み、拡大・縮小して覗き込んではニヤニヤしてしまうこの感覚。さながら少年の日にブロックで作り上げた箱庭を愛でるような遊び心地です。
[IMAGE]
▲カメラを近づけてキャラ目線にするもよし。遠ざけて箱庭感に浸るもよし。HD-2Dの絶妙なドット絵との融合がじつにいい味を出しています。
 操作方法も、従来のキー+ボタンによるコントローラ操作(あるいはキーボード+マウスによる操作)とは一線を画しています。目の前にいるキャラたちを、Meta Questのコントローラで“つまんで持ち上げ、移動させたいマスに置く”という操作感は、さながらチェスや将棋の感覚にも近い印象。ある種、ボードゲームにも似ているかもしれません。
[IMAGE][IMAGE]
▲アビリティや魔法発動時の立体的な迫力は、MR表現ならでは。ちょっと感動すら覚えましたよ。
 なんにせよ、タクティクスRPGとしてはまったく新しい遊び心地なのに、原点回帰にも思えてしまう、なんとも不思議なフィーリング。僕は一発でこのMeta Quest版『トラスト』のトリコになりましたよ。正直10月はめちゃくちゃ忙しいわけですが、こうして記事執筆を引き受けてしまったほどに(笑)。

そもそも『トライアングルストラテジー』とはどんなゲーム?

 ここまでの記事、ある程度『トライアングルストラテジー』とはどんなゲームなのかをご存知いただけている前提で書いてしまいましたが。本作を知らない方のために、簡単にゲームの概要を説明しておきましょう。
[IMAGE]
 この『トライアングルストラテジー』は、2022年にリリースされたタクティクスRPG。戦乱の大地“ノゼリア”の全土を巻き込む動乱のなか、さまざまな人物が己の信念を振りかざして戦う骨太な世界観が、多くのプレイヤーの心を惹き付けた名作です。HD-2Dで表現された味わいのあるビジュアルと、耳に残るサウンドも大きな魅力!

 主人公セレノア・ウォルホートの進む道……その未来が、プレイヤーが示す“正義”と戦場での戦果によって少しずつ変化していくマルチエンディング展開も、多くの話題を呼んだ本作。下記にてMeta Quest版のトレーラー、およびNintendo Switch版リリース時のトレーラー映像をご紹介しますので、世界観やキャラクター、ゲームシステムの詳細が気になる方は、こちらをご覧いただければ理解が早いと思います。

■MetaQuest版トライアングルストラテジー アナウンストレーラー

■『トライアングルストラテジー』ファイナルトレーラー

 今回、このMeta Quest版ではじめて本作に触れる方もおられると思うのですが。新規プレイヤーがノゼリアの動乱のなかでどんな“正義”を貫き、戦いの後にどんな想いを抱くのか……ちょっと気になるところではありますね。
[IMAGE]
▲プレイヤーの分身ともいえる主人公のセレノア・ウォルホート。過酷な戦場で彼がどのような“正義”を選び、どんな道を歩んで行くのかは、すべてプレイヤーの選択に委ねられています。
 タクティクスRPGとしての造形はかなりの“王道”。キャラをユニットとして戦場に配置し、プレイヤーは彼らに移動や攻撃といった指示を与えつつ、勝利条件を満たしていくことが目的となります。敵・味方の行動順や位置取りを考慮に入れた進撃、さまざまなスキルの使用タイミング、味方の強化(バフ)や敵の弱体化(デバフ)など、正面からのゴリ押しだけでは勝利できない味付けが、僕はお気に入りでして。リリース当時、すべてのルートを踏破するまで夢中でプレイしてしまいました。

 Meta Quest版の特徴については前述のとおりですが、やはり世界への没入感は圧倒的です。フィールドを自由に拡大・回転させることが可能になったので、自分の見たい大きさ、遊びやすい角度に調整してプレイできるのは、何度もゲームをクリアしている自分からしても新鮮といえますね。
[IMAGE]

これまでにない操作感! だからこそ慣れるまでは時間を要する部分も……

 Meta Questのコントローラを使って遊ぶのは、ハッキリ言って斬新そのものでした。操作したいユニットにポインターを合わせてそのキャラを“つかみ”、次に移動先へとポインターを合わせて“離す”ことで移動させていく直感的な操作感は、MR空間ならでは。前述のとおり、チェスやボードゲームを思わせるプレイフィールであり、新鮮さのなかに不思議な懐かしさも感じます。
[IMAGE]
 ただ、このポインター操作、人によってはちょっと慣れを要する部分はある気はします。少なくとも僕は、VRやMRのゲームにほとんど触れたことがなかったこともあり、思ったように操作できるようになるまで少し時間を要しました。

 最初は動かしたい場所とは異なるところにポインターを指定してしまい、余計な時間がかかることもしばしば。移動したあと、今度は武器による攻撃や魔法の発動指示を行うわけですが。ここでも同じくポインターで操作することになるため、狙った行動になかなかポインターが合わず、小さなストレスを覚えることもありました。

 ここらへん、慣れればしっくり来るのですが……。なまじ操作が直感的なところも多いぶん、“そうではないところ”にやや落差を感じてしまったんですよね。正直、ちょっと歯がゆいというか、もったいない気がしたのは事実です。
[IMAGE]
 とはいえ、これはひとえに骨格的な問題。当然ながら、最初からポインターを想定して作られたゲームシステムではないので、どうしてもアジャストしづらい部分があるのは仕方ない気がします。まだ試行錯誤の段階というか、ビジュアル表現のみならず、システム的な表現においても、チャレンジの真っ最中なのかもしれませんね。

 今後、このようなゲームがどんどん開発されていくなかで、操作感はさらに洗練されていくのではないか……。そんなポテンシャルと可能性はしっかり感じらましたし、僕はイチ『トラスト』ファンとして、今回のMeta Quest版でのチャレンジはめちゃくちゃポジティブに受け止めています。

総括:アツい意欲を感じるチャレンジ作。少しでも多くの人に遊んでみてほしい

 “なるほど、これがやりたかったのか!”と、コンセプトがすぐに理解できるゲームって、それだけで大きな魅力。何より、自分のなかで確かに存在した“VRゲームやMRゲームは身体を動かして楽しむ”という先入観というか、思い込みをぶっ壊してくれたことに感謝しています。

 具体的に言うとこれまで僕は、VRやMRのゲームに対し、どちらかといえば音楽系やダンス系、スポーツ系のような身体そのものを動かすゲームや、コントローラを武器に見立てて戦う剣戟アクションなどが主体ってイメージを持っていたんですよ。“立って遊ぶのが当たり前な方向性”とでもいうか……。

 それらと比較すると、本作はしっかりと腰を落ち落ち着けて遊べるゲーム。キャラを動かすときなど、つい立ち上がって近づいたりしちゃうのはご愛敬なんですけどね(笑)。とにもかくにも“MRを使った表現でこんな楽しませ方もできたのか!”と、目からウロコが落ちたこの感覚。少しでも多くの方にぜひ体験してみてほしいです。
[IMAGE]
 “現実での動きをどうゲーム性に落とし込むか”という従来の考え方とは異なり、“ゲーム世界を現実に出現させたらどうなるのか”というコンセプト、僕はおおいに気に入りました。新しいこの方向性、イチゲーマーとして大歓迎であり、自分としてはこれを機に『トラスト』をまた全クリしようかなって気持ちになっています。まあ、ポインター操作による疲れもあり、一気に長時間遊ぶのはちょっと難しい気もしますので、のんびりとね……(汗)。
[IMAGE]
 願わくば、少しでも多くの方に生まれ変わったMeta Quest版『トライアングルストラテジー』に触れていただき、世に新しい息吹が根付く瞬間を体験してもらいたいところです。VRゲーム、MRゲームに新風を吹き込むポテンシャルはしっかり秘めていると思いますので、興味がある方はぜひぜひに!

 それでは、今回はこのへんで!

    本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります