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ドラマ『ウイングマン』1話感想。他人のノートに勝手に妄想設定を書き始める主人公・広野健太のぶっ飛びっぷりが凄すぎる。原作のテイストを残しつつ、現代風のアレンジがお見事

文:米澤崇史

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 10月22日よりテレビ東京系にて放送がスタートしたドラマ『ウイングマン』1話の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ウイングマン』1話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

不良もドン引きして立ち去るレベルの健太の特撮オタクっぷり【ウイングマン】


 1983~1985年にかけて週刊少年ジャンプにて連載されていた、『電影少女』や『I"s』で知られる桂正和先生の人気コミックを実写ドラマ化した『ウイングマン』。

 監督を務めるのは『仮面ライダー』、『スーパー戦隊』、『ウルトラマン』といった日本を代表する特撮シリーズで数え切れないほどのヒット作を生み出してきた坂本浩一氏。さらに主人公・広野健太を演じるのは藤岡真威人さんは『仮面ライダー』本郷猛役で知られる藤岡弘、さんの息子でもあるなど、特撮ファンに響く座組みも話題を呼んでいました。

 そんな藤岡真威人さん演じる健太は、授業中もヒーローに変身する妄想に夢中で、自分でヒーロースーツを自作してしまうほどの超のつく特撮オタク。校内では気持ち悪がられてしまっていましたが、自作のウイングマンスーツは結構本格的な作りで(とくに頭部ヘルメットの造形はすごい)、ここまでいくともう尊敬できるレベルだなと。


 途中に健太が話題に出していた『電子戦隊デンジマン』は、『ウイングマン』のモチーフとなっていると原作の桂先生から明言されている『スーパー戦隊』シリーズの第4作。冒頭に動画配信をしている人物が登場したあたり、ドラマ版の時代設定はおそらく2020年代に変更されていると推測できるのですが、『デンジマン』が放送されていたのは1980年~81年頃なんですよね。

 原作では連載が始まったのは1983年ということもあり、主人公の健太が直近に放送された特撮作品に夢中になっている比較的素直なタイプのオタクとして描かれていましたが、ドラマ版では特撮作品のなかでもとくに昭和の特撮ヒーローが好きという、同じ特撮オタクでもまた違ったタイプになっている差がちょっと面白いです。


 また、ここで健太が披露した"電光ライダーキック”は仮面ライダー1号の必殺技なんですが、この技は藤岡弘、さんが怪我で撮影に参加できていなかった期間に使われたもので、実際にご自身が撮影をすることはなかったのだとか。それを50年以上経過して息子の藤岡真威人さんが披露するという、めちゃくちゃエモいシーンにもなっていました。

 あと個人的に、「邪魔すんな」とまで言われながら健太につきあい、聞かされる側としてはたまったものじゃない妄想のヒーロー設定も気味悪がらずに話を合わせてくれる、友人の福本がめっちゃいい奴だなと。

 健太が校内で明らかに笑い者にされていても気にせず話しかけていて、健太自身は気付いてなさそうですが、福本がいなかったら健太の学生生活はかなり悲惨なものになっていたんじゃないかと思います。


 クラスメートの小川が不良に絡まれているのを見つけるなり、即座に止めに入る度胸、殴られても何度でも立ち上がるところまでは、力がなくても心は既にヒーロー……という感じでカッコよかったんですけど、その後の変身シーンでドン引きされて不良たちが帰っていく展開には爆笑しました。

 不良が立ち去る時の申し訳なさそうな「じゃあな」と挨拶するところ、カッコよく立ち去った(つもり)のあとに残された福本が唖然としているところとか、めちゃいい味を出しています。

ますます暴走(?)が止まらなくなっていく健太【ウイングマン】


 そこから健太のぶっ飛びっぷりは、さらに加速していきます。

 ボーイ・ミーツ・ガールの王道展開で、空から降ってきた謎の少女・アオイを助けたまではいいものの、現代の日本として考えると、介抱のためとはいえ気を失った露出度高い格好の女の子をいきなり自分の部屋に連れ込むのは結構危ないですし、何よりいくらカバンを忘れてちょうどいい紙がないからと、赤の他人が持っていたノートらしきもの(しかも明らかに普通の大学ノートとかではない)に、妄想設定を書き始めるのはヤバすぎます。さすがに家の中を探せば、メモができる紙の一枚くらいはありそうな……。

 一応書く前に謝ってはいるので悪いことをしている自覚はあるみたいですが、いろんなオタクの主人公の中でも、ここまでぶっ飛んだキャラクターはなかなかいないのではと思えるレベルです。


 健太がドリムノートに勝手に落書きをしたことでウイングマンへと変身するのは、原作と同じ流れではあるのですが、ドラマ版ではノートの設定に“最初に書いたものにまつわることしか書き込めない”という設定が追加されていて、それ以降の展開が原作とはほぼ別物になっていました。

 健太の機転を効かせたアイディアで、アオイにノートを持つことを認められるまでの原作の流れも好きなんですが、ドラマ版はこの設定追加のおかげでドリムノートを健太が使うことになるまでの流れがより自然になっていると感じられました。

 その後も健太は、現実世界とは異なる“ポドリアルスペース”と呼ばれる特殊な空間に飛ばされても戸惑うことなく、『宇宙刑事ギャバン』の魔空空間や『宇宙刑事シャイダー』の不思議時空を連想して逆にテンションが上がったり、怪人のような存在を前にしても臆さずヒーローになるチャンスだと捉えるあたり、心がどこかぶっ壊れているんじゃないかと心配になるレベルの肝の据わりっぷりです。

 不良に絡まれた時に現実世界でもやたらとキレのいい変身ポーズを決めていたあたり、おそらく普段から何度も変身ポーズの練習を続けていたんだと思いますが、その分1話ラストの本当のウイングマンへの変身シーンでは、もうアドレナリンが出まくっていたことでしょう。


 ドラマ版は原作者の桂先生が総合監修という形で制作に関わられていることもあってか、時代設定が変わっただけではなく、現実世界でのウイングマンの活動時間が5分になっていたり(原作では10分)、結構細かい部分までドラマ用のアレンジがされていて、純粋な原作の実写ドラマ化ではなく、まさに令和の『ウイングマン』として生まれ変わったという印象。

 原作のテイストは残しつつも、しっかりと今の時代にあった作品になっていて、古さみたいなのは一切感じず、最新のヒーロードラマとして違和感なく楽しめました。


 また、今回制作がテレビ東京と東映ビデオのタッグということもあって、実際の東映特撮ヒーローの作品名がガンガン出てくるのも嬉しいところ。それっぽいパロディ作品名よりは、やっぱり実際の作品名が出てきた方が、より健太を身近な存在に感じられます。

 予告を見る限り、2話では宮野真守さんご本人が実写で演じる北倉先生が登場しそうなのもアニメファン的には注目ポイントで、放送が今から待ち遠しいです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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