GSC Game Worldより11月21日発売の『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl(ストーカー2:ハート・オブ・チョルノービリ)』。本作は、原発事故によって立ち入り禁止区域となったウクライナのチョルノービリを舞台としたオープンワールドのFPSです。プレイヤーは、原発事故によって奇怪な現象が発生する立ち入り禁止区域“ゾーン”を探索します。
今回は、発売から先行して本作を15時間ほど体験したインプレッションをお届け。筆者は本作のWindows版をXboxのゲームパッドでプレイしているので、操作説明などはXbox準拠となります。
『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl(ストーカー2:ハート・オブ・チョルノービリ)』レビュー
UE5によって表現されたゾーンの圧倒的な存在感がすごい
まず本作をプレイしていて常に感じるのは、Unreal Engine5によって作られたゾーンの映像美。『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズは過去作が発売されてから10年以上の空白期間があったこともありますが、最新世代のほかのゲームとくらべてもすさまじいものがありますね。
同じゾーンの光景が、天候や昼夜の変化でまったく違う雰囲気になるあたりも見どころ。インフラが完全に止まっているゾーン内は夜はライトを灯さないとまわりがほとんど見えない暗闇となりますし、嵐が吹くと視界全体に枯葉が舞い散りますし、雷雨のときは周りの地形に実際に落雷するなど、自然現象の美しさに目を奪われます。
さらに、『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズには欠かせない現象“光熱放射”ももちろん発生します。発生の際は、無線で警告されるので身を隠せる建物などに入る必要があるのはお約束ですね。発生中は、戸口から外の様子をうかがえるのですが、熱と放射線のはんらんする様子がたまらないです。
また、過去作ではエリアが切り替わるごとにロード画面が挿入されていたのですが、さすがに今作はシームレスなオープンワールドになっています。今作は、ルーキー村など過去作に登場した場所もしっかり再現されているのですが、歩いていて「あれ、過去作だとここでマップが切り替わったよね?」という場所を素通りできるのは奇妙な感覚ですね。
豊富なサイドミッションにお宝さがしまで探索要素はぼう大
『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズは、超常現象の発生する地でのミステリアスなストーリーもさることながら、広大なマップを探索して地域の住人からサイドミッションを受けたり、“スタッシュ”と呼ばれるアイテムの隠し場所を見つけるRPGのような探索要素も魅力でした。もちろん今作もプレイしていてあちこちでサイドミッションが発生するNPCがいましたし、倒した敵などから情報を入手できるスタッシュもあちこちで確認できました。
今回のプレイでは、メインミッションの進行をそこそこにして可能な限りマップを探索していたのですが、15時間程度プレイしても遊び尽くせないボリュームがあるのは間違いないです。筆者の個人的にも、時間が許すならばもう何日か本作のゾーンを探索したいですね。
ボルト投げやサバイバル要素などシリーズならではの要素も健在
本作は現実世界と同じ2024年のゾーンを舞台としていて、主人公たちが利用するPDA(携帯情報端末)がタブレットPCのような形になっていたり、通貨がデジタル化されているなど時間の流れに合わせた変化が感じられます。
ただし、肝心のゲームプレイは『S.T.A.L.K.E.R.』そのもの。過去作同様、本作もマップのあちこちが放射能で汚染されていたり、うっかり足を踏み入れると大ダメージを受ける超常現象“アノマリー”が発生しています。たとえば、多少の放射線障害ならウォッカを飲んで治療する、アノマリーはボルトを投げ込んで誤作動させてから走り抜ける、といった従来シリーズの知恵がそのまま使えます。
ただし、アルコール類を飲むと酔っ払って画面や操作に若干の影響が出るので飲みすぎ注意ではありますね。
さらに、検知器を使ってアノマリーが生成する特殊なアイテム“アーティファクト”を探し出す要素ももちろんあります。ちなみに今作のアーティファクトは装備すると放射線障害を受けるなどのリスクがあるので利用は慎重にしたいところです。
また、時間経過で空腹になって戦闘能力が低下する要素もシリーズおなじみですね。今作は睡眠の概念もあって、定期的にベッドやマットレスで寝ないと能力に影響が出るようにもなっています。
そして、被ダメージ時の出血状態もシリーズを通してある要素ですが、今作は出血ダメージがかなり痛いので治療に必要な包帯を切らさないようにしたいですね。
筆者はPS4で発売されたリマスター版から『S.T.A.L.K.E.R.』をプレイし始めたのですが、それでも今作は、シリーズのツボとなる要素がバッチリ組み込まれていると感じました。
アイテム保管やアタッチメントの付け替えなど便利になったポイントも
今作は、シリーズ独特のプレイ感を失わないように便利になっているポイントをいくつか確認できました。筆者がとくに便利だと感じたのは、エリアをまたいでアイテムを保管できる“プレイヤーの隠し場所”とバックパック画面を開かなくてもアタッチメントを組み替えられる要素ですね。
プレイヤーの隠し場所は、ルーキー村やロストクのようなNPCの集まる野営地にある主人公用の保管箱で、保管したアイテムはどの野営地にある保管箱でも取り出せます。過去作をプレイした時にも、今は使わないけれど売らずにとっておきたいアイテムがあったり、銃弾や回復アイテムなどを持ちすぎているので、所持重量を減らすためにどこかに預けておきたいことがわりとあったので、これはかなり助かる機能ですね。
武器にスコープなどのアタッチメントを着脱できる要素は1作目から存在したのですが、過去作ではいちいちバックパック画面を開く必要がありました。今作では武器を装備した状態で方向キーの上を押し続けると利用可能なアタッチメントが表示されるので右スティックで選んで着脱可能になっています。
バックパックやPDA画面を開いている間もゲームがポーズされない、というのはシリーズ共通のお約束なので、戦闘する間合いや状況に応じて素早く武器をカスタマイズできるのは正直言ってありがたいです。
最新のグラフィックと操作環境で『S.T.A.L.K.E.R.』が遊べるなんて最高じゃね? シリーズのプレイ経験を問わず遊ぶべき1本!
『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズは、原発事故によって荒廃したチョルノービリやプリピャチを探索するポストアポカリプスな世界観に、超常現象というホラー要素を加えた独特なプレイ感のあるFPSとして登場しました。ただし、リマスター版からシリーズをプレイした筆者的には、“おもしろいけれど古いゲームなのは否めない”感じがあったのも事実です。
しかし、今回発売される『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』は、Unreal Engine 5によるグラフィック圧倒的ですばらしいですし、操作感覚も令和最新版のFPSに引けを取らないものになっていて、プレイしていてとにかく快適です。
そして、『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズの根幹である各種要素はしっかりと継承されていて、不便かもしれないけれど不快には感じない、絶妙なバランスになっていると個人的に感じました。PC版をガッツリプレイしてきたユーザーにとってはにわかかも知れない自分ですが、たぶんシリーズファンにバッチリ刺さる内容になったと思います。
さらに今作の主人公は、外の世界からゾーンに潜入した新米というポジションなので、今作からシリーズを触れるプレイヤーにもオススメできるゲームだと感じました。ぜひ、この独特な世界にどっぷりとハマって欲しいですね。