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“完全新作”にバトンをつなぐ最新作『バーチャファイター5 R.E.V.O.』開発者インタビュー。13年ぶりのバランス調整やグローバル大会、アーケード版や今後のレガシー展開を青木Pに聞く【VF5REVO】

文:栗田親方

公開日時:

 セガより1月28日(火)にリリースされたPC(Steam)用ソフト『バーチャファイター5 R.E.V.O.(バーチャファイター5 レヴォ。以下、VF5REVO)』。その発売を記念して、本作の開発を担当する青木盛治氏のインタビューを掲載します。

 これまでに何度もイベントなどでお会いしていることもあり、ざっくばらんにお話しいただきました。

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▲青木盛治氏:セガ Legacy VIRTUA FIGHTER Project プロデューサー。
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13年ぶりのバランス調整&新タイトル『VF5REVO』のリリースにかけた想い


──長い時を経ての調整および新タイトル発表となりましたが、開発中はどのようなお気持ちでしたか?

 前作……国内でいえば『バーチャファイターeスポーツ(以下、VFes)』、海外でいえば『バーチャファイター5 アルティメットショーダウン(以下、VF5US)』を出したときに、「ロールバックを入れてほしいな」「PCで遊びたいなあ」とか「バランス調整ないのかよ」といった声が多かったんですよ。そのあたりはずっと気にかかっていて、いつかこういった要望をかなえたプロダクトを作りたいな、と思い続けていました。

 ちょっと時間がかかってしまったんですけど、完全新作(NEWバーチャファイター)に向けてVFフランチャイズを再燃していくというロードマップが固まってきたので、そのなかの“VF30周年記念作品”の1つとして『VF5REVO』を作ったらどうか、というところがスタート地点でした。

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▲本作の「30thアニバーサリーエディション」には、30周年にふさわしい圧倒的なボリュームの同梱特典がついてきます(※)。
※Xで告知された特典のサウンドコレクションは、総再生時間17時間という破格のボリュームで話題になりました。

──かなり前から本作のことを考えてらっしゃったんですね。

 ずっと考えていました。PC版に関しては、特に海外の方は間違いなく望んでいましたので、よろこんでもらえるだろうと思っていました。そして、せっかくやるんだったら、常々いわれていた“ロールバック方式(※)”を入れるべきだし、それを入れたPC版の開発がマストと考えていました。

※通信遅延を感じにくくさせるネットコード。昨今の格闘ゲームには必須ともいわれています。

 ただし、バランス調整はちょっと自信がなくて、そもそもやっていいのかどうかで悩みました。すでに完成されたといえる『バーチャファイター5 ファイナルショーダウン(以下、VF5FS)』をベースにしているので、あまり調整を入れない方がいいのかなという思いもありつつ、ブランニュー感を出したいという思いもあったので、悩みましたね。

 結果的には調整を実施したわけですが、『VF5REVO』のオープンベータはかなり好意的に受け入れていただけましたし、すでにリリースされているPS4版の『VFes Ver.2.0』も楽しんでいただけているようですので、ひとまずほっとしています。

──変化があったこと自体がもう大ニュースになりましたからね。良かったと思います!

 大好きな鷹嵐をナーフしてしまったんですが、大丈夫ですか?(笑)(※)

※インタビュアーは『VF3』からの生粋の鷹嵐使い。

──大丈夫です!(笑) 弱くはなりましたが、すごく面白くなっていますので。前のバージョンは超強技のダブルアッパー(正式技名:天破り)一辺倒になりがちで、かなり嫌われていた部分もありましたから……。あらためて、調整ありがとうございます!

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▲『VF5FS』時代から猛威を振るっていた鷹嵐の天破り(4P+KP)。ガードされても確定反撃を受けない1段目を狙いつつ、ヒット確認(状況確認)して2段目をつなげばコンボ始動という凶悪な技。

 ナーフしたのにありがとうと言われるのは珍しいですね(笑)。

──新たな“相撲”を楽しませてもらっていますので! ではあらためて、本作の開発はいつごろから始まったのでしょうか?

 企画自体は、2021年の『VFes』をリリースした頃からあって、実際に動き出したのは去年の1月ぐらいからです。やるにあたって2つほど障壁があって、1つは13年前のレガシーな開発環境の再構築ですね。

 そしてもう1つが、当時バランス調整を担当していたスタッフを集めることでした。1人~2人ぐらいは社内にいるのですが、社外の方もいますので、そういう人たちにもう一度お声がけして、あらためてチームアップするというのが2つ目の課題でした。

──確かに13年ぶりの再編成はたいへんそうですね……。

 その2つの課題が「なんとかいけそうだな」となって、実際に手を動かして開発を始めたのが6月ぐらいです。なので、1月から5月ぐらいまでが準備期間でしたね。本当にチームアップできるんだろうかっていうのを関係各所と詰めて、企画の提案内容も詰めて承認を得て、6月くらいから作り始めました。

──開発環境の再構築というのは、『VF5FS』を元に『VFes』を開発したときの環境とはまったく別モノということですよね?

 そうです。『VFes』ではグラフィックを一新しましたが、バランス調整にはまた別の環境が必要でした。細かい話をすると、「この技の発生は〇フレームで……」などの入力データが書かれたテキストファイルがあるんですけど、そのデータを食わせてゲームに反映するっていう、開発環境がなかったんですよ。

 ですので、頭にこうしたいという構想があっても、ゲームに反映する手段がないわけです。その環境構築にすごく苦労しましたが、当時を知っている人がいて、優秀なプログラマーもいたので、なんとか実現できました。

■参考:【Legacy VIRTUA FIGHTER】VFシリーズ 13年ぶりのゲームバランス調整に対する開発の想い

──集めた人材が優秀だったということですね。

 ええ、彼らがいなかったらできなかったんじゃないですかね。彼らは「こうしたい、ああしたい、でもやれないー!」っていう気持ちを13年ぶん溜めていたので、要望がめちゃくちゃ出てくるんですよ(笑)。

 そんなこんなで、ちょっとやり過ぎちゃったせいか“田植え(※)”みたいなのも生まれてしまいましたが(苦笑)。

※調整後に強すぎると話題になった、アイリーンの猿猴双摘桃(1P+KP)を示すスラング。相手の足元を手で2連続攻撃する技モーションが、田植えをしているように見える。[IMAGE][IMAGE]
▲こちらが“田植え”の技モーション。よろけ回復が遅い人には連続ヒットして、体力ゲージが真っ赤に染まる凶悪な性能でした。製品版『VF5REVO』ではナーフ済みなのでご安心を。

──せっかくなら思い切ってやった方がよいと思いますので、再調整を考慮するとトピック的にもアリだった思います! ではこの流れで、バランス調整の内容について詳しく聞かせてください。

バランス調整のコンセプトや特に苦労したところ


──全体的にアッパー調整のように見えますが、どのようなコンセプトで調整が行われたのでしょうか? 強かったキャラをやや抑えて、弱かったキャラを底上げしたような印象です。

 はい。まさに底上げしているような感じですね。各キャラクターの特徴が失われないようにしつつ、弱いというか、使いづらい技やキャラクターを見直すというコンセプトでやっていましたので、全体的にアッパーになっていると思います。

──“複雑性の緩和”ということで、前入れPや体重の調整という思い切った変更を行った理由をお聞かせください。

 昨今アーケードコントローラーで遊ばないユーザーさんが多く、主にゲームパッドでプレイする方が増えてきているんですよ。いろいろお話を聞いてみたところ、当時『バーチャファイター』をやっていた方々のなかには、現在はご家庭を持っている方もいまして、自分がゲームをする時間帯にご家族がいると、パチパチパチパチと音のするアケコン(アーケードコントローラー)だと遊びづらいといったご意見が多かったんですよね。

 ですので、アケコンではなくパッドにチューニングを合わせたのが“前入れPの調整”ですね。モダナイズしたと言いますか。

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▲通常のPと前入れPは見た目がまったく同じですが、既存シリーズでは“レバーを前に入れながら出すと踏み込む(リーチが伸びる)”というマニアックな仕様でした。

──いわゆる“モダン操作”的なことですかね。

 ええ。簡略化しています。そして体重に関しては、キャラクター間の体重の差が、ゲームバランスに強く作用しすぎていたからというのと、こちらも簡略化したほうが新規の方も遊びやすいだろうということで変更しました。

 このあたりも、開発スタッフが13年間ふつふつと考えていたことを一気に吐き出した感じですね(笑)。体重変更はちょっとリスクがあるなと僕は思っていて、一瞬ちゅうちょしたんですけど、開発スタッフの考える調整を伸び伸びやってもらったらいい結果が生まれたという感じですね。

──体重はかなり複雑化していたので、とてもいいと思いました。ただ、同じ体重でも身体のサイズが違うみたいで、特にブレイズやシュンには空中コンボが入りにくいんですよね……。このあたりの調整予定はありませんか?

 絶対ないとは言えないですね。そういったところも加味すべきだと思います。ただ結局は、端的に言ってしまえば面白く楽しく遊べるようにできればいいと考えています。

 だって、そもそも人間はあんなに浮かないじゃないですか?(笑) 「それを言っちゃ」みたいなことになっちゃうので、見た目と体重・質量が必ずしも一致してなきゃいけないというわけでもないと思っています。それよりも面白いほうを優先していこうかなと。

──調整に関してさまざまな苦労があったと思われますが、特に難しかったことを教えてください。

 ほかの格闘ゲームもそうだと思うんですけど、ゲームバランスの調整ってめちゃくちゃ難しいと思うんですね。キャラクター数が多ければ多いほど時間もかかるし、いいところもあれば、不満を持っているところもあると思うし……。やっぱり“バランスをとる”というところが一番難しかったですね。

 あとは、さっきも申しあげたとおり、環境構築ですね。「そんなことあります⁉」みたいな年月が経っているじゃないですか(笑)。話題にもなっていますが、13年ぶりですからね。3年前とかならなんとでもなりますけど、さすがにちょっと……。

──“13年ぶりのバランス調整”は圧ありますね(笑)。

 昔とは全然違う今の環境で、昔の環境が動作するように作らないといけないので、メンテナンスも含めてけっこう大変でした。そこの見通しが立ったからこそ作品が生まれたともいえますね。それがなかったらこの作品は生まれていないです。

──環境が構築できず『VF5REVO』が作れなかった未来もあったわけですね。

 もちろん技術的にやれないとなったらダメでしたね。それはロールバックのほうも同じです。僕も入れたいと思っていたんですが、最初から入れようと思って開発している作品ではないので、後から入れるところが難しかったですね。

 プログラマーの努力でそれもいけるとなって、考えていたことが検証によってすべてクリアできたときに、カチッとピースがはまった感じでプロジェクトが進んでいきました。

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今後のバランス調整の予定や頻度


──『VF5REVO』のVer.2.0(=『VFes』のVer.3.0)などの大型アップデートの予定はありますでしょうか?

 今後は不具合があったら修正しますし、もう一回バランス調整しなきゃいけないほどのことが、ご要望とかご意見にあればせざるを得ないと思うので、必要に応じてバージョンアップをしていく予定です。ただし、今のところ、明確にどこかのタイミングで何かやろうというのは考えていません。

──『VF5REVO』発売後の調整の頻度はどの程度の予定でしょうか?

 先ほどお伝えした通り、今後は必要に応じての調整になるので、頻度が高いかどうかはちょっとわからないですね。大会やイベントが定期的にあると、その直前ではやらない方がいいってなりますので、隙を見つけていくのもなかなか難しくなってくるかもしれませんし。

 ですので、特に致命的なものとか、絶対に必要というものに厳選してアップデートしていくんだろうなと思っています。

──トレーニングモードなど、対戦バランス以外の調整が入る予定はありますでしょうか?

 ゲームバランス調整を行った結果、トレーニングモードのプレイフィールも変わってたりもするんですけど、大きく手を入れるかというと、今のところ予定がないですね。

──新キャラクターや新ステージが追加される可能性はありますでしょうか?

 こちらも同様ですね。今のところ予定はありません。

──新技はいかがですか?

 今のところ予定はありませんが、復刻技を入れたとき、それを新技と捉えてもらえるかどうかはわからないですけど、そういうのはあるかもしれないです。

──一部のキャラ(アオイ、アイリーン、ジャン、鷹嵐)に復刻技がありませんが、追加予定はありますでしょうか?

 全体的なバランスを見て調整して“やるやら”を決めたので、こちらも状況次第ですね。『VF5REVO』は“運営”に近いような形で今後も大会も含めて進めていきますので、常にユーザーさんの声を聞きながら、バランス調整は必要に応じてしていくべきだろうと思っています。

 そういったなかで、技が追加されるかもしれませんし、今ある技でもオミットというか、いったん“封印”する可能性もありますし。

──“封印”という単語はちょっと話題になりました。では復刻技については状況しだいということですね。

 現在は、一部のキャラにはなくても成立するのかな、と考えています。ぜひ遊んでいただいて、「そうじゃないよ!」というご意見があったら、公式Discord(ディスコード)へご要望として送っていただければと思います。

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▲復刻技のなかでも特に注目されたのは、ジェフリーのスプラッシュマウンテン。『VF5FS』や『VFes』ではトーキックからの打撃投げとしてのみ使える技でしたが、純粋な投げ技として帰ってきました。

──かなり個人的な質問で恐縮ですが、レバガチャ回復が完全に削除される可能性はありますでしょうか? 先ほどアケコンがうるさいというお話もありましたし、ミドルキック系の技がバックダッシュにヒットしたときに、以前はよろけていたのがフレーム固定になったので、よろけ系は排除していくのかなと思ったんですけど、いかがでしょうか?

 バーチャに慣れている人なら気にならないかもしれないので、排除とまではいかないんですけど、よろけってけっこうストレスじゃないですか?

──めちゃくちゃストレスあります!(笑)

 ストレスなものはできるだけなくしていきたいですね。新規の人が最初に触ったときに「何これ⁉」ってなるのは避けておきたいですし。

──たいへんいいお話を聞けました! ぜひ進めてもらえると助かります。

新コスチュームや新アイテムの追加は?


──「VF30周年記念水着コスチュームセット(※)」以外に、衣装の追加予定はありますでしょうか? また、衣装以外の新アイテム、もしくは『VF5FS』からの復刻アイテムを追加する予定はありますでしょうか?

※先日の公式Xにて、全キャラの水着ビジュアルが公表されました。



 今のところ予定はありませんが、それこそご要望しだいですね。作ろうと思えば過去にあったアイテムの復刻もできなくはないので、公式Discordにご意見を送っていただければと思います。公式Discordは開発メンバーもチェックしていますので。

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▲『VFes』では、『龍が如く』や『鉄拳』とのコラボ衣装も実装されました。

 この間、キャラクターアンケートをやらせてもらいましたけど、かなり意外な結果もありました。我々が知り得ない情報だったり考え方をキャッチアップできるように場所を作ったというところもあるので、ぜひ公式Discordをフル活用していただきたいですね。

 以前、僕が『ボーダーブレイク』をやっている頃は、当時のTwitterで僕が発信して、それに対してのリプライが返ってきて、それを1つ1つ返していました。

──めちゃくちゃ労力がかかってますね(笑)。

 公式Discordを使えばみんなで意見できて、それが総意になってそれに対してフィードバックしていくといういい環境があるので、ぜひ使ってほしいです。

 特にグローバルで話ができるところが強みだと思います。

──バランス調整についても、いったん〆切みたいなものがありましたが、追加しても大丈夫ですか?

 どんどん送っていただければ参考にいたします。開発では日々、公式Discordをチェックしていますので、ぜひよろしくお願いします(※)。

※実際にβテストから製品版への再調整時には、Discordに送られた意見がおおいに参考にされていました。

新規プレイヤー向けの施策も進行中!


──先ほど新規プレイヤーという単語が出ましたけれども、この機会に始めるプレイヤーを増やすような施策は予定されていますでしょうか?

 ゲームのなかでチュートリアルがあるゲームではないんですけど、ゲーム外のところですでにHowTo動画を公開しています(※)。

※公式YouTubeにて、全キャラクターの初心者向けキャラクターガイドが公開されています。

 「このキャラを選んだら、まずはこの3~4つの技を使えば楽しめますよ」という内容なんですが、こういった新規プレイヤー向けの動画を増やしていきたいと考えています。

 また、公式ホームページでもプレイヤーを指南するようなコーナー(※)が充実していますので、最初に触ったときに「もうちょっと遊びたいな」と思えるようにサポートしていきたいですね。

※⇒公式ホームページの「初心者指南! わかるVF」コーナー

──初心者が長く楽しめるように、上達をサポートするなどの施策はありますでしょうか?

 動画配信を積極的にやっていきたいなと思っています。『VF5REVO』は、コンソールは持っていないけどPCは持っている、という方に遊んでもらいたいので、新規向けのサポート動画は増やしたいですね。

 ご存知だと思いますが、以前やっていた組手イベントは新規プレイヤーが入りにくい状況もあったと思いますので、もうちょっと時間が経ってからにしたいと考えています。

──確かに組手イベントは、ある程度強くなってから挑戦するような印象ですね。

 あとは、VFの古参の方というかベテランの方って、みなさん新規の方に丁寧に教えるのが得意じゃないですか。そういう自然発生的な弟子関係を、公式でフォローしていくのもよいと考えています。

──「このキャラのことはこの人に聞け」みたいな案内をする感じですかね?

 ええ。そして子が育つと親にメリットがあるような仕組みにしたいと考えています。昔あった“弟子システム”のアナログ版というかリアル版っていう形があってもいいのかなと。ちょうど公式Discordがあるので、環境的にもいい感じに整っていると思います。

Steam版(PC版)への意気込みやPS4版との違い


──あらためまして、Steam版を出すに至った経緯を教えてください。

 最初にも触れましたが、1つは“VF30周年記念”ですね。今後のVFフランチャイズのロードマップを見ていただきつつ、それに向けて楽しんでいけるプロダクトとして、『VF5REVO』を作ろうということになりました。

──ロールバック方式は3D格闘ゲームに不向きと聞きましたが、やはり苦労は大きかったでしょうか?

 できないかもな、と思っていたんですが、結果的には優秀なプログラマーのおかげでなんとかなりました。とはいえ最初は「できた」というだけで、見た目がずれるなどプレイフィール的に問題も多かったんですが、1つ1つ丁寧に対応していくことでクオリティが上がっていき、「13年前のバーチャでも対応できるんだ!」と驚きましたね。

 苦労しただけあって我々の自信にもなっていますし、当然今後の新しいタイトルにもそういったことが求められてくるので、いい知見を得られたと思っています。

──PS4版(VFes Ver.2)とSteam版の違いについては、ロールバック方式の有無と、4K画像の有無の2点だけと考えてよろしいでしょうか?

 そうですね。ゲームバランス自体は同じものですし、基本的にほかに違いはないですね。

──PCゲームにはつきものといえる“チーター対策”はどのように行われるのでしょうか?

 事前に対処できるところは対処しますし、問題が出てきたときには対応できるような準備を進めています。PCで出すとなったときにある程度の覚悟はしています。

 大勢のみなさんが快適に遊べるように対策はしていきますが、コンソールに比べると、ある程度は仕方がない面もあると思っています。

グローバル展開を意識した今後の大会シーン


──1月末にシカゴで開催される大規模大会「Frosty Faustings XVII 2025」に参加した経緯を教えてください。

 この記事が掲載される頃には結果が出ているイベントですね(※)。

※本大会はすでに終了し、カナダ在住の元日本勢プレイヤーである暇ジャン(HIMAJEAN)選手が優勝しました。おめでとうございます!

 いろいろ調べているなかで、「Frosty Faustings XVII 2025」は北米で「EVO(Evolution Championship Series)」に次ぐぐらいの有名な格闘ゲームイベントとのことで注目しました。大会日程が『VF5REVO』のリリースタイミングにすごく近いので、リリース記念イベントみたいな形で大会をやろうということで、話を進めた形ですね。

 『VF5REVO』のリリースが1月28日で、その直前に大会をやるんですけど、先行してバランスを再調整した最新バージョンで大会を開催します。先んじて触れる機会をこちらで用意しようと思っています。

──かなり大規模なイベントになったようですね。

 最初は定員が126人だったんですけど、とても応募数が多くてすぐに埋まってしまったため、約2倍の256人に増やして賞金額も倍にしたのですが、それでも速攻で埋まっちゃいました。北米には『バーチャファイター』ファンの方が今でも多くいらっしゃるというのを、あらためて実感しました。

──海外では日本ほど盛り上がっていないというのが『バーチャファイター』の弱点だと思っていましたが、そんなことはないのかもしれませんね。

 公式Discordの盛り上がりを見てもそうですし、『VF5REVO』の予約状況も見てもそうなんですよ。北米の方の割合が多い。「待ってました!」と思ってくれていると思いつつ、北米やヨーロッパにも『VF』をしっかりと届けていくことが重要なんだなとあらためて思いました。

──ゲームの市場としてもそのへんはデカいですよね。

 そうですね。人口も多いですし、人口に対してのゲーム人口も多いし、さらにはVF人口も多いんだろうなと思いますね。このイベントには僕も行くので、実際に現場を見て体感したいと思っています(※)。

※青木Pは無事に現地で“VF is Back!”を体感できたようです。

──「EVO Japan 2025」のメインタイトル決定、かつEVOの歴史上で初となる“5on5”での開催について、意気込みをお聞かせください。

 意気込みというか、バーチャを代表する大会として5on5の「ビートライブカップ(以下、BT杯)」があって、かつては3on3の「闘劇」があってと、団体戦が面白いのが『バーチャファイター』の特徴でもあると常々思っていました。『VFes』のときも3on3をやりましたね。

 そんななか、「EVO Japan」に出そうという話のときに、松田さん(※)から「BT杯の流れを組んだような大会にできないか?」みたいな相談がありました。そして、面白いしバーチャらしいし、5on5でやってみようかということで、コラボカップみたいな形が生まれました。

※さまざまな大会の企画・制作・運営を行う会社「UNIVERSAL GLAVITY」およびゲームセンター「GAME-NEWTON」の代表を務める松田泰明氏。

──“バーチャ勢”にとっては最高の形だと思います。

 本来「EVO」はシングルの勝者を決める大会だと思いますが、バーチャファイターらしい大会も楽しんでいただきたいと思っています。

 新しい人に遊んでもらいたいというのもあるんですけど、今までの歴史というんですかね……そこにちゃんと向き合った上でやっていかなきゃいけないと思っています。公式でも1on1の「格闘新世紀」がありましたけど、こういういいところはちゃんと受け継いでいきたいです。

──昔からのプレイヤーにとってはありがたい限りですね!

 「ビートラ」「闘劇」「格闘新世紀」あたりは、昔から遊ばれている方にはシビれるキーワードだと思いますので。

──グローバル大会「Virtua Fighter Open Championship」の続報はありますでしょうか?

 先月の「VF Direct2024」……もうずいぶん昔のことのような感覚ですけど、12月でしたね(笑)。そこでは「春ぐらいからスタートします」という感じでお話させていただきましたが、今ちょうど詳細を検討していて、おおむね決まりつつあるところです。

 今年1年間ぐらいかけて、各地域……北米をはじめとした各エリアでエリア大会を開催し、各エリアから何名かを選抜という形にして、最後にグランドファイナル大会をやるという計画です。

 今まで『VFes』は日本で大会を開催してきたんですけど、先ほどもお伝えしたとおり、北米やヨーロッパにファンの方がいっぱいいらっしゃるので、そういうところを舞台にしたいという思いがあります。

──おお、グランドファイナルは海外ってことですか⁉

 そうですね。そうしたいなと。グランドファイナルを楽しみにしていただければと思います。

 2月~3月ぐらいには、もうちょっと解像度の高い情報を発表できればと思います。

──上記以外に、何かしらの大会やイベントなどの計画はありますでしょうか?

 大会でいうと、先日発表しましたがラスベガスの「EVO」にも参加します(※)。

※1月15日にXで「EVO2025」への参戦が発表されました。

 また、今年はフランスでも「EVO」がありますし、ほかにも「COMBO BREAKER」や「CEO」など、海外のファンがしっかりついている大会やイベントに、我々も積極的に参加していきたいと考えています。

“旧バージョン”も含めたアーケード版の未来


──アーケード版『VFes』もアップデートされましたが、こちらを使ったイベントや大会の施策はありますでしょうか?

 アーケード版『VFes』は、複数のゲームを切り替えて遊べる「APM3」というサービスで展開しているんですが、こちらでも『VFes』が人気なんですよね。専用台にしてくれているお店もありますし、Ver.2.0以降さらに盛り上がっている感覚はありますね。

 カスタマイズもできますし、オンライン対戦もできますので、アーケード勢の方にはよろこんでもらえていると思っています。

 すでに発表済みですが、ゲームセンター側が独自で大会を開いて特殊称号を付与できるような「店舗イベント支援サービス」を今年の春からやる予定です。2月~3月にはアナウンスがあると思いますので、より盛り上がってもらえるとうれしいですね。

──旧バージョンとなってしまった『VF5FS』については、ついに“お役御免”と考えてよろしいでしょうか?

 ゲームバランスを調整したことで、最新作ではなくなってしまいましたからね。そこは悩んだところですが、メリットのほうをとった形になります。

 ただ“お役御免”という言い方は違うと思っていまして、「前のバージョンが好きだった」という方はいると思いますので、そういった方々のために稼働を続けてほしいと思っています。

──特に影響ありそうなところでは、先ほどお話に出た松田さんの「ゲームニュートン」とか、山岸さん(※)がいる「池袋ミカド」とかがありますよね。

※「BT杯」の創始者・主催者である山岸勇氏。プレイヤーとともに『VF』を支え続けた存在で、古くからのバーチャ勢より熱狂的に愛されています。

 私としては、Steam版をそのままゲームセンターに置いてもいいんじゃないか、と思っています。

 すでにSteam版『鉄拳8』は「ナムコ巣鴨店」に置いてあったりするんですよ、PC版そのまんまで。課題は運用面をどうするかなんですよね。コインオペの代わりに時間貸しにしたり、自分のIDを持ってきてプレイする際の管理上というかセキュリティの難しさを工夫する必要があります。

 そのあたりの課題がクリアできれば実現可能ですので、できれば最新作をゲームセンターで遊べるっていう環境を作れたらいいなとい思っています。

──「BT杯」もSteam版になりますし、時代の分岐点という印象はありますね。

 もう少し時間が経って、ほとんどの方が『VF5REVO』を遊ぶという時代になったときには、やっぱり自然的にこういう形になっていっちゃうと思います。

──確かに、『鉄拳』シリーズや『ストリートファイター』シリーズもそういう流れでしたね。

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“完全新作”の前に新たなLEGACY作品の復刻も⁉


──『VF5REVO』は、完全新作New VIRTUA FIGHTER Projectにバトンをつなぐ役割をもった作品と考えてよろしいでしょうか?

 そういった作品の1つと考えてもらえればと思います。まだ具体的に決まっていることはないんですが、いくつかレガシーなものを遊んでもらいながら、しっかりと『バーチャファイター』をグローバルで認知してもらっていった先に“NewVF”があるという形にしたいので、そのための1つのプロダクトが『VF5REVO』ということです。

 振り返ってみると、APM3版の『バーチャファイター3tb Online(以下、VF3tb Online)』も1つのプロダクトだったんですよね。

──なるほど! そういえば『VF』シリーズのなかには家庭用に移植されていないバージョンがいくつかありますよね。

 そうですね。『VF3tb Online』は国内のみのサービスなんですけど、こういうタイトルをもっとグローバルでやっていくのも面白いと考えています。まだまだ頭の中で妄想しているだけですけど、VFフランチャイズを広げていきたいというのは変わらないので、そのための手段や方法はいくつか考えていきたいと思っています。

──ではあらためて質問させてもらいますが、『VF3tb』は家庭用の完全移植版がなくて、『バーチャファイター4 ファイナルチューンド(VF4FT)』と『バーチャファイター5R(VF5R)』は家庭用に移植されていないのですが、これらの作品もレガシータイトルとして世に出る可能性はありますか?

 いつかはチャレンジしたいですね。今回の『VF5REVO』にも『VF5R』のときの技を入れていて、そういう要素も持ったタイトルだということをアピールしたかったんですよね。“R.E.V.O.”ってそれぞれの意味は動画で説明しているんですけど(※)、字面的に“R”とか“EVO”とかを想起させたかったという意図があったんです。

※R=Rollback、E=Evolution、V=Victory、O=ONEWORLD

──これは『VF5REVO』以外の展開も楽しみですね! ちなみに蛇足気味な質問ですいませんが、現タイトルをやり込んでおくと、新作がリリースされたときにアドバンテージはありそうでしょうか?

 どうでしょう(笑)。とはいえ同じ格闘ゲームなので、まったくやらないよりは触れておいたほうが、何かしらプラスはあるとは思います。NewVFではすでにアキラが発表されていますが、「アキラというキャラがいて、昔はこんな技を使っていた」というだけでも、知らないよりは知っておいた方がよいでしょうし。

 とはいえ、必ずしもそうではない、という感じじゃないですかね。どういう作品になるのかは楽しみに待っていただければと思います。

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▲『VF』シリーズを象徴する技といえば、アキラの鉄山靠。“完全新作”のPVでもフィーチャーされていました(※)。

※全世界のバーチャファイターファンを歓喜の渦に巻き込んだPV。「10年はええんだよ」というアキラの決めセリフで”VIRTUA FIGHTER is Back!”を印象づけました。

──最後に、この記事の読者に向けて一言いただければ幸いです。

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 この記事を読んでいる時点で『バーチャファイター』にアンテナが立っている人だと思いますので、あまり細かく言わなくてもいろいろ伝わるかもしれませんが、新規の方がこの記事を読んだときに「難しいゲームだな」という風に思われたくないので、そういう努力は常々していきたいと思っています。

 コミュニティの場としても、最近は公式Discordを通じて伝え合いやすい環境を作っていますし、Steam版という手にとりやすいプラットフォームで最新の『バーチャファイター』を体験できますので、ぜひちょっとでも構いませんので『VF5REVO』を触っていただきたいと思っております。

──“VF勢”がもっと増えるとうれしいですね。本日はありがとうございました!

栗田親方ゲーセン黎明期からゲームにハマり、ハイスコアラー⇒格闘ゲーマーと転身しつつゲーム人生を楽しんでいます。生涯現役。

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