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『ガンダム ジークアクス』舞台挨拶レポ。鶴巻和哉監督と榎戸洋司さんが“ガンダム好き”だからこそ夜中に1時間も激論したこととは?

文:電撃オンライン

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 観客動員数100万人を突破した劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) -Beginning-』について、大ヒット御礼舞台挨拶が2月2日、TOHOシネマズ新宿にて行われました。その様子をレポートします。

[IMAGE]※この記事には『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』のネタバレが含まれていますのでご注意ください。

劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) -Beginning-』とは?

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 スタジオカラー×サンライズの初タッグで制作されている、ガンダムシリーズ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』。TVシリーズの放送に先駆け、一部話数を劇場上映用に再構築した劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) -Beginning-』が、IMAX52館を含めて、合計426館の劇場にて現在上映中です。

 2月2日の舞台挨拶には、シュウジ・イトウ役の土屋神葉さん、本作の監督を務めた鶴巻和哉さん、シリーズ構成・脚本を担当した榎戸洋司さんが登壇。司会は松澤ネキさんが担当しました。 

土屋さんが劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』のアンバサダーに就任!

 土屋さんは、すでに3回も劇場へ足を運んだと報告。司会の松澤ネキも同じく3回ほど見に行ったらしく、100万人動員のうちの6人分を私たちで稼いでいると、意気投合していました。

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 榎戸さんは、劇中で出てくる“緑のおじさん”こと“シャリア・ブル”が、ネット上で人気になっていることに衝撃を受けたとコメント。さらに、リアルタイムでガンダムを見ていた世代だという榎戸さんは、アムロと同じく15歳の頃からずっとガンダムとは付き合ってきているのだそう。『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の制作に参加する以前から、すでに心の中には“ガンダム”という大事なものが常にあると語りました。

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 鶴巻監督は、先行上映でここまでヒットするとは予測しておらず、本当に嬉しいと喜びの声を会場のファンに届けていました。ファンアートが盛り上がっていることも嬉しく、PixivやXで検索してファンアートをよく見ているそうです。

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 その後、土屋さんが『機動戦士ガンダム ジークアクス』公式アンバサダーに就任されたと発表。アンバサダー就任のタスキの授与を、鶴巻監督が務めました。 意気込みを聞かれた土屋さんは、「頑張るぞっと、ガンダムが言っている」と、自らが演じるシュウジのセリフをもじったコメントで会場を沸かせていました。

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劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuXジークアクス -Beginning-』の制作エピソードを語る

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 トークセッションでは、本作の制作について話していくことに。この記事では、トークセッションで気になったポイントをまとめましたので、紹介します。

劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuXジークアクス -Beginning-』の序盤の制作秘話

 劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuXジークアクス -Beginning-』の序盤部分について、鶴巻監督は、当初アバンタイトル的な感じで短く済ませることを想定していたそうです。 しかし、その序盤部分に関しては庵野秀明さんによって想定外にふくらんできたと話していました。

共同脚本の庵野秀明氏について

 序盤のシーンやセリフなどに鶴巻監督は、自分ならもう少しカッコつけたり、セーブしたりしてしまうとのこと。庵野さんについては、他作品の制作から解放された庵野さんはリミッターが外れた状態だと評し、『トップをねらえ!』や『ふしぎの海のナディア』を制作している頃の、オタク感全開だった時の庵野さんが戻ってきているという印象を受けたそうです。

 「庵野さんでないと書けないというか、怖くてとてもできないようなことをやられちゃったな」「本当にファンの2次創作みたいなことをあそこまで堂々とできないんだよな」と感想を述べていました。

企画段階での題材について

 ガンダムには宇宙世紀を題材にした作品と、いわゆる“オルタナティブ”と呼ばれる、宇宙世紀を題材としていない作品があるのですが、鶴巻監督が企画書を出した段階ではオルタナティブ作品をやることはまったく考えていなかったそうです。

 榎戸さんも鶴巻監督であれば宇宙世紀ものをやるであろうと確信していたそうで、どの時代をやるのかが1番の関心事だったそうです。それゆえに今回の企画に関しては驚愕したとのことです。そして、今“ガンダム作品”をやるのであれば、これが1番の最適解だという感想も述べていました。

制作現場は常に戦場!? ガンダムが好きだからこそ譲れないものがある

 鶴巻監督と榎戸さんの間では、この作品が“ガンダム”だからこそぶつかり合うこともあるようで、一例として「リックドムとジムどっちが強いか?」で夜中に1時間ぐらい激論を交わしたことがあったのだとか。
 
 榎戸さんが「リックドムがジムに負けるわけないじゃん!」と語れば、「いや、ジムはガンダムだから一応……」と鶴巻監督が返し、「鶴巻監督ってそんな人だったんだ! ジムがドムより強いと思っているんだ!」といった、“ガンダム”に熱中するファンならではの会話が繰り広げられていたそうです。

 制作現場ではその他にも“ガンダムならでは”のエピソードがあるようで、鶴巻監督によると、スタッフと打ち合わせする時にも、自分でもはどうでもいいことでも、スタッフごとにこだわるポイントが違い、発見する日々を送っているとのこと。

 また、スタッフにそれぞれのこだわりがあるということは、当然見る人にもこだわるポイントがあるということで、それが怖くなることもあるそうです。

“緑のおじさん”こと“シャリア・ブル”について

 榎戸さんは知人から、ネットでは“緑のおじさん”がすごく人気だと伝えられたそうです。ですが榎戸さん自身は「緑のおじさんって誰?」状態で、「脚本家でも知らないキャラがいるのか!?」と思うほどの衝撃を受けていたようです。それがネット上でつけられたニックネームだと知ったのは、後になってのことだとか。

 そんな“緑のおじさん”ことシャリア・ブルについては、『FLCL(フリクリ)』を制作していた25年前の時点で、「シャリア・ブルを主人公にしてリメイク作ったら面白そう」という話題が鶴巻監督と榎戸さんの間で出ていたとのことです。

 また、『シン・ゴジラ』で監督を務めた樋口真嗣さんも、シャリア・ブルをフィーチャーした作品があってもいいという話もしていたらしく、鶴巻監督を取り巻く環境の中では、シャリア・ブルというキャラクターは相当前から注目されていたようです。

ガンダムがヒート・ホークを持つ理由

 戦闘シーンの話題となり、最初の時点で鶴巻監督が言っていたのが、「ビーム・ライフルの撃ちあいだけの戦闘シーンはあまり面白味がないからやめてほしい」ということ。これに対して榎戸さんが「武器は何を使えばいいのですか?」とたずねると、監督から「ヒート・ホークだ!」と返答があったそうです。

 榎戸さんは「主役のガンダムがヒート・ホーク!? せめてビーム・サーベルじゃダメなんですか!?」と訴えるほど、制作において一番頭が真っ白になった瞬間だったと振り返っていました。そんな経緯もあって、本作ではガンダムがヒート・ホークを振るう流れになったようです。

MSのデザインはガンプラを意識していた?

 MSのデザインの話になったとき、実は「ガンプラのためにアニメを作ってみたい!」という憧れがあったことを告白した鶴巻監督。おもちゃ(プラモデルなど)を意識してアニメを作る経験をしたことがない鶴巻監督は、最初にデザイナーの山下いくとさんに相談。アニメ映えすることはもちろんのこと、ガンプラ映えするデザインをお願いしたことを明かしました。

“MAV戦術”という言葉に込められた意味

 劇中に出てくる“MAV(マヴ)戦術”という言葉の誕生について榎戸さんは、劇中の2対2で戦う“クランバトル”というアイデアを鶴巻監督から出てきて、2人組というのはガンダムにおいて意味のある組み合わせだと最初に考えたとのこと。
 
 「元々の富野監督のニュータイプの概念の中にも、ニュータイプというのは1人ではなく、アムロとララァみたいに対になる存在がいて、よりニュータイプの能力が発現していく。」「その2人組っていうのはガンダムの中では意味のある言葉だと思い、この作品ならではの意味のあるネーミングをつけたかった」と思考を転がしていったところ、ふと“MAV”という言葉が思いついたそうです。

 MAV戦という作中の軍事用語でもあるし、最近は聞かなくなりましたが“マブダチ(親しい友人や親友を意味する言葉)”の“マブ”と音の響きが同じで、日常でも使える言葉でもあることから、鶴巻監督も気に入って採用したそうです。

改札を飛び越えるニャアンとマチュがぶつかるシーン

 マブダチの流れで、マチュとニャアンの2人の出会いについても言及されました。ニャアンが改札を飛び越えてマチュと出会うシーンは、鶴巻監督のアイデアで構成されたもので、『フリクリ』を彷彿とさせるような、鶴巻監督らしい出会わせ方をしていると榎戸さんは語ります。

 鶴巻監督自身は、意識してそのようにしているわではないのですが、結果的にはそうなったことを話していました。

マチュとシュウジが川辺で出会うシーン

 マチュとシュウジの出会いについて鶴巻監督は、『フリクリ』でも“橋の下”という場所に思い入れがあること語り、大事なことは橋の下ではじめようと構想していたため、マチュとシュウジの出会いはあのように描かれたと語りました。

スペースコロニーの描写

 本作を制作するにあたり、今までのガンダム作品で描かれなかったスペースコロニーのリアリティをしっかりと表現したかったと語る鶴巻監督。

 例えば、マチュとシュウジが出会うシーンの川辺は、ロンドンの運河をイメージして作ったそうです。榎戸さんもスペースコロニーの描写については、なるべくスペースコロニーっぽくないもの出すようにしていたとのこと。

 劇中で登場した運河や神社など、スペースコロニーではないようなロケーションを提案すると、鶴巻監督が嬉しそうにしていたとコメントしていました。

スペースコロニー内の地名

 スペースコロニーの話題では、土屋さんがスペースコロニー内の“地名”が特徴的で気になると言及していました。
 
 例えば“イズマ”という地名を決める際に、榎戸さんが「“イズモ”とかどうですか?」と鶴巻監督に提案し、監督の方で1文字変えて“イズマ”になったそうです。地名に関しての話題は『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』や、鶴巻監督と榎戸さんが携わった『トップをねらえ2!』の影響を大きく受けていたことも明らかになりました。

土屋さんが語る『機動戦士ガンダム ジークアクス』の印象と思い出

 トークセッションの最後では、シュウジ役を土屋さんに配役した経緯やアフレコの思い出を語りました。

 アフレコは絵ができていない状態で行ったため、腑に落ちていなかった部分もあったと明かす土屋さん。ですが、試写会で見た時のショックがすさまじく、しばらく立ち上がれないほどだったそうです。

 また、1番好きなシーンを聞かれた時は「まだ決め切れていない」と答えていましたが、衝撃を受けたのは導入のナレーションとタイトルが出た時のBGMだそうです。あそこで一気に心をつかまれたと語っていました。

 オーディションの時には、採用されればガンダムのパイロットになれると知り、「またとないチャンスだ!」だと思ったとのこと。ガンダムに乗れると決まった時は、現実かどうか信じられないほどに興奮して喜んだそうです。最後に、シュウジの今後注目してほしい部分を聞かれた土屋さんは「これはもう非常に悩ましい質問ですね」と、苦笑いしながら答えていたのが印象的でした。

 「とりあえず最後まで見て、 会場にいる皆さんがここのクルーだと思ったら、クルーの人員が欠けることなく、最後までこの作品を見てほしいです。もう僕はそれしか言えません!」とコメントし、トークセッションは締められました。

 そしてイベント終盤では、舞台挨拶が行われた2月2日が鶴巻監督のお誕生日ということで、土屋さんから鶴巻監督に花束が贈呈されるサプライズも。贈呈時に土屋さんが「鶴巻監督、お誕生日おめでとう――と、ガンダムが言っている」と言いながら渡すと、会場から笑いと拍手が溢れていました。

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 松澤さんの「何歳になられたのですか?」との問いに鶴巻監督は、「17歳と言いたいのですが……17歳にしとこうか(笑)」と照れながら答えていました。そして、最後の挨拶で鶴巻監督が「映画はまだまだ上映が続くわけですが、映画でしか見れない繋ぎ方やシーンなど、こういった展開がTV版では放送されません。ぜひ目に焼き付けておいて欲しいなと思いますので、この後も『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) -Beginning-』をよろしくお願いします。」と、ファンへのメッセージを贈り、舞台挨拶は終了しました。

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作品概要

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 カラー×サンライズ。夢が、交わる。

 『エヴァンゲリオン』シリーズを手掛けるスタジオカラーと、サンライズがお届けする、新たなガンダムシリーズ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(読み:きどうせんしガンダム ジークアクス)が始動。日本テレビ系列にて放送を予定しています。

 2021年公開の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』をはじめとする『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズにて監督を務めた鶴巻和哉さんが本作の監督を務め、シリーズ構成を榎戸洋司さん、メカニカルデザインを山下いくとさん、脚本を榎戸洋司さんと庵野秀明さんが担当。その他豪華スタッフ陣でお届けします。

劇場先行版情報

 TVシリーズの放送に先駆け、一部話数を劇場上映用に再構築した『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) -Beginning-』を2025年1月17日より全国373館の劇場にて公開します。

出演声優

アマテ・ユズリハ(マチュ):黒沢ともよ
ニャアン:石川由依
シュウジ・イトウ:土屋神葉

■ジャンク屋「カネバン有限公司」のメンバー
アンキー:伊瀬茉莉也
ジェジー:徳本恭敏
ポメラニアン:越後屋コースケ
ナブ:千葉翔也
ケーン:永野由祐
ハロ:釘宮理恵

■ジオン公国軍のキャラクター
シャリア・ブル:川田紳司
エグザベ・オリベ:山下誠一郎
コモリ・ハーコート:藤田 茜
シャア・アズナブル:新 祐樹
デニム:後藤光祐
ドレン:武田太一

制作・スタッフ

制作:スタジオカラー、サンライズ
原作:矢立 肇、富野由悠季
監督:鶴巻和哉
シリーズ構成:榎戸洋司
脚本:榎戸洋司、庵野秀明
キャラクターデザイン:竹
メカニカルデザイン:山下いくと
アニメーションキャラクターデザイン・キャラクター総作画監督:池田由美、小堀史絵
アニメーションメカニカルデザイン・メカニカル総作画監督:金 世俊
デザインワークス:渭原敏明、前田真宏、阿部慎吾、松原秀典、射尾卓弥、井関修一、高倉武史、絵を描くPETER、網、mebae、稲田 航、ミズノシンヤ、大村祐介、出渕 裕、増田朋子、林 絢雯、庵野秀明、鶴巻和哉
美術設定:加藤 浩(ととにゃん)
コンセプトアート:上田 創
画コンテ:鶴巻和哉、庵野秀明、前田真宏、谷田部透湖
演出:鶴巻和哉、小松田大全、谷田部透湖
キャラクター作画監督:松原秀典、中村真由美、井関修一
メカニカル作画監督:阿部慎吾、浅野 元
ディティールワークス:渭原敏明、田中達也、前田真宏
動画検査:村田康人
デジタル動画検査:彼末真由子(スタジオエイトカラーズ)、三浦綾華、中野江美
色彩設計:井上あきこ(Wish)
色指定・検査:久島早映子(Wish)、岡本ひろみ(Wish)
特殊効果:イノイエシン
美術監督:加藤 浩(ととにゃん)
美術監督補佐:後藤千尋(ととにゃん)
CGI監督:鈴木貴志
CGIアニメーションディレクター:岩里昌則、森本シグマ
CGIモデリングディレクター:若月薪太郎、楠戸亮介
CGIテクニカルディレクター:熊谷春助
CGIアートディレクター:小林浩康
グラフィックデザインディレクター:座間香代子
ビジュアルデベロップメントディレクター:千合洋輔
撮影監督:塩川智幸(T2 studio)
撮影アドバイザー:福士 享(T2 studio)
特技監督:矢辺洋章
ルックデベロップメント:平林奈々恵、三木陽子
編集:辻󠄀田恵美
音楽:照井順政、蓮尾理之
音響監督:山田 陽(サウンドチーム・ドンファン)
音響効果:山谷尚人(サウンドボックス)
主題歌:米津玄師「Plazma」
挿入歌:星街すいせい「もうどうなってもいいや」/ NOMELON NOLEMON「ミッドナイト・リフレクション」
主・プロデューサー:杉谷勇樹
エグゼクティブ・プロデューサー:小形尚弘
プロデューサー:笠井圭介
制作デスク・設定制作:田中隼人
デジタル制作デスク:藤原滉平
配給:東宝、バンダイナムコフィルムワークス
宣伝:バンダイナムコフィルムワークス、松竹、株式会社カラー、日本テレビ放送網、東宝
製作:バンダイナムコフィルムワークス

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