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『龍が如く8外伝』ネタバレインタビュー:数々の挑戦を終えた堀井プロデューサーが語る制作秘話。話題を呼んだエンドロール後の演出の秘話も明かされる

文:編集O

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 好評発売中のシリーズ最新作『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』。発売から約1カ月半が経過したいま、多くのプレイヤーが真島吾朗の単独主人公作品の終幕を見届けたはずです。

 そこで今回はプロデューサーを務めた堀井亮佑氏へのクリア後ネタバレインタビューをメディア合同で実施。エンドロール後の演出も含めて、ファンが気になるアレコレに斬り込みます。

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堀井亮佑『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』プロデューサー

※対応プラットフォームはPlayStation5、PlayStation4、Xbox Series X|S、Xbox One、Windows/PC(Steam)

『龍が如く』シリーズのお約束な展開をあえて取らないという挑戦【龍が如く8外伝インタビュー】


――まずは発売から1カ月間経過したいまの手応えなどをうかがえますか?

堀井
「おもしろかった」という声がいままでいちばん多かったと感じています。ほかのメディアさんとも話したのですが、「修学旅行に行ったような楽しさがあった」と感想をいただいていました。今回の“海賊で冒険”は今までの『龍が如く』シリーズと少しテイストが異なりますが、非日常的なゴロー海賊団との旅で「なんだかいろいろあったけれども楽しかったな」と感じてもらえるゲームを目指していたんです。だから、その意図がユーザーさんにちゃんと伝わって、「楽しかった」という声を多くいただけたのがいちばんうれしかったです。

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――“外伝”というタイトルながらプレイを終えると、想像以上に『龍が如く8』のその後を補完するエピソードが多く、合わせてプレイした身としてはとても満足感が高い作品でした。こちらは最初からその方向性で脚本がスタートしていたのでしょうか?

堀井
『龍が如く8』を補完するということが大前提としてあったわけではありませんが、『龍が如く8』がハワイという新しい舞台で、まだまだ掘り下げられていないものがけっこうあったんです。そこで、その延長線上の後日談のような形で、使い切れなかった部分を使うとか、もう1本おもしろい表現で作品を作れないかという話が、制作の初手ではありますね。

 そうなると『龍が如く8』のあとならば当然ユーザーさんが感じた「パレカナはどうなったの?」とか、「極道の後始末と言いながらぜんぜん後始末できていないよね」といった部分は避けて通れないなと。そこをどうするんだという話になり、「桐生も入院してしまったし、彼の意志を継ぐならば(堂島)大吾、真島、冴島(大河)のいずれかだし、それならば真島で考えてもいいかもね」となりました。

 そのあと海賊というアイデアが生まれ「それならば真島を海賊にしよう」と、今の発想にたどり着いた感じです。

――そうなると、『龍が如く8外伝』でやりたいと考えた要素、たとえばストーリー的な補足などは本作ですべてやり切った感はありますか?

堀井
まあ、本作が『龍が如く8』のその後を全部補足したタイトルなのかと問われると、そもそも真島が海賊になっている時点であまり関係ないですからね。正直なところ、そこまでストーリーの補足を本作でやりたかったわけではありません。だからそこに対しての後悔などはまったくありません。ただ、『龍が如く8』の発売から約1年で、これだけ毛色の違うタイトルを生み出せたことは、クリエイターとして大満足です。でも、本当にたいへんでしたよ(笑)。

――ファンとしては1年でまた新作が遊べるのはめちゃくちゃうれしいですけどね(笑)。

堀井
『龍が如く8』を作り終えて、本作を作ろうとなったのが2023年の末くらいだったので、1年弱でワーッと一気に作る感じでした。スピード感のあるスケジュールで開発しましたが、逆にそれがよかったのかもしれません。外伝なので本編と比べてストーリーも含めてそこまでボリューミーではありませんし、それゆえに複雑になりすぎず、カラッとうまくまとまっている感じで作品に落とし込めたので、これはこれでよかったなと満足しています。

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――真島という男は極道なので、これまでのシリーズでは子どもと絡むようなシーンはありませんでした。本作は子どもであるノアとの関係性にフィーチャーした脚本ですが、そうした理由を教えてください。

堀井
真島という男は「お宝を探して大金持ちや」という目標だと、モチベーションとしては軽いなと考えたんです。彼はお金がすごく欲しいわけでもないですし、かといって権力者になりたいという人間でもないし、そんな理由で海賊になったらファンのみなさんも気持ち的に乗れないじゃないですか。

 だから、海賊になって仲間を集めたり、宝を探したりする際のモチベーションとして、自分を助けてくれた少年に外の世界を見せてあげるとか、夢をかなえてあげるといった、“誰かのために動く”という理由を持たせました。

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――企画が立ち上がった段階から、少年を助けていくことは決まっていたのですか?

堀井
「真島を海賊にして海賊団を結成しよう」と最初に決まって、その後僕のほうで企画をまとめたのですが、その段階で「ゴロー海賊団を結成して、ゴロー丸で敵を倒す」という部分まで決めていました。最終的には「お宝探しみたいなことをしていい感じで締めよう」みたいな(笑)。

 大枠はそんな感じで、あとはそれらを達成させるストーリーでどうするべきか、今回脚本を担当した古田(剛志氏。『龍が如く0 誓いの場所』や『JUDGE EYES:死神の遺言』などで脚本を担当)と相談して、それならば少年を出そうと決めたしだいです。

――本作のシナリオでこだわった、もしくは結果的にここが印象に残ったというシーンはありますか?

堀井
僕が気に入っている部分は、サイドコンテンツの導入でデビルフラッグスにミサキという女の子が親を殺されて、その敵討ちに真島たちゴロー海賊団が協力するという展開ですね。これはいつものサイドコンテンツの導入とは異なり、だいぶシリアスな展開にしました。

 いつもの『龍が如く』シリーズならば、本編が真面目だからサイドコンテンツは「お宝が見つかったぜ、いえ~い」というコミカル寄りなノリになっていたと思います。ですが今回はあえてシリアスな展開にすることで、単にあっけらかんとした旅感が引き締まったので、こちらに寄せて正解でした。バランスも取れてすごく気に入っています。

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 あとは今回の真島を描くうえでいちばん大事にした軸は、「理屈うんぬんとか損得を考えて動くような格好悪い大人の姿を見せない」ことですね。夢を諦めたらダメだという大人の生き様を、メインストーリーでは伝えたつもりです。そういった意味では象徴的なシーンが多かったと思っています。

――今回サブストーリーにかかわるキャラクターたちが、どんどん仲間に入ることはプレイしていてすごくうれしかったです。個人的には“茂田博信65歳”が印象的だったのですが、彼がほかのサブストーリーと異なり仲間にならなかったのは、なにかこだわりがあったのでしょうか?

堀井
彼も最初は仲間にしようと考えていましたが、脚本を書いていくうちに「どう考えても仲間にならないほうが幸せでよくない?」となりまして(笑)。だからサブストーリーは、なんでもかんでもクリアしたらキャラクターが仲間になるスタイルにはしませんでした。仲間になることを優先しすぎて、“人としての道理”が間違ってしまうのは好きではないんです。

 真島は「誰でも歓迎やで」と言いながらも、こいつはいないほうがいいと思った奴は止める人間であるべきだと思っていますので。だからあえて茂田は仲間にしませんでした。

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――サブストーリーつながりですが、“貴方のナデシコになりたい”に登場するクレアは、琴を振り回して戦うというコミカルな一面が楽しめました。彼女は最終的に自分を偽らない姿を恋人に見せるなど、人として大事なことを伝えるようなメッセージ性を感じました。今回はメインストーリーでコミカルな要素が多いぶん、サブストーリーでシリアス寄りなものを増やしたなどバランスを意識されているのでしょうか?

堀井
いつもメインが明るいときは、シリアスを多く入れるという部分は意識しています。今回でいえば、全体のバランスというよりもサブストーリーも絡めたなかで、ゴロー海賊団の仲間を増やしていく楽しさみたいなのがあるべきだと考えていました。

 サブストーリーをゴロー海賊団の思い出に内包したいという想いがあり、だから仲間になる人物のキャラクターを個性的に仕上げて「こいつが仲間になってくれたら」と思えるように、今までならばエピソードがあって、そこにキャラクターが登場して……という感じですが、今回のサブストーリーはキャラ寄りに描いている部分はあります。

 たとえばサブストーリーの“アイドルなんかじゃなかったら”で仲間になるオタクたちも、「こいつらも仲間になったわ。弱いけどもうれしい(笑)」というような感じが出せればいいなと考え、キャラクターの個性は意識して強くしました。

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「旅立ちの歌」の完成度が高かったからこそいい作品に仕上がった【龍が如く8外伝インタビュー】


――シンプルに「楽しい」という感想が多い中で、オープニングのミュージカルやエンディングのカーテンコールといった演出は、ポジティブな意味で「『龍が如く』らしくない」という感想が多く聞かれています。そこは狙っていた部分でしょうか?

堀井
海賊自体を謳った歌やミュージカルも多いですし、僕自身もミュージカルが好きで、そういうゲームを作りたいと思っていたんです。なにせ『サクラ大戦』の大ファンなので(笑)。そのあたりも踏まえて、『龍が如く8外伝』ではいままでできなかったことをやれるタイトルで、「このチャンスを流したら次はないぞ」という想いでした。『龍が如く8』では楽曲をおしゃれな雰囲気でまとめましたが、ああいった感じに新しいことに挑戦し続けたいですね。

 ただ作業は最初の時点からけっこう苦労しました。なにせミュージカルは作ったことがなかったので。それで時間もないし、まずはミュージカルシーンに使う「旅立ちの歌 -Journey to the world-」を作りまして。そのあとデモテープを会議室の中で僕が歌って収録し、「こんな感じでどうでしょう?」とスタッフにプレゼンしたら「よくわからないけど大丈夫なのかな」と、最初は戸惑われたのを覚えています(笑)。

 ですが、結果的にあの曲ができたからこそ、その後の開発も引っ張られていく感じになったし、超お気に入りのシーンになりました。

――めちゃくちゃいい曲ですね。オープニングだけでなくプレイしていても船上で船員たちが鼻歌で歌ったり、エンドロールでも流れたりして、自分も鼻歌を歌ってしまうぐらいゲーム全体を通して流れて耳にも記憶にも残りました。

堀井
やはり歌って海賊を象徴するというか、みんなで冒険するという雰囲気が出るじゃないですかね。だから「この曲を聞いたらゴロー海賊団を思い出す」というような、何か軸になる曲があればいいなと考え、そこがうまくパッケージングできたのがよかったです。

――これまでのシリーズでは、日本の著名なアーティストの楽曲をテーマ曲に使うなど、タイアップされるケースが多かったと思います。本作はその方向ではなく「旅立ちの歌」を始め、すべてオリジナルの楽曲でまとめた理由を教えてください。

堀井
やはり短期間で制作したというのが大きかったです。もちろん、アーティストの方にお願いするパターンも当然考えましたが、僕らも迷いながら制作を進める中で、本作は海賊団の象徴となるような歌がゲーム中にあり、それが目立つ形にしたほうが“海賊体験”をストレートに伝えることができるだろうと。だから本作はあえてタイアップは行わず、「旅立ちの歌」も含めてすべての楽曲を海賊というテーマでまとめました。

――たしかに統一感があると没入感も増しますよね。なお『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii Original Soundtrack』が発売されていますが、あらためて聴いてほしい楽曲などあれば教えてください。

堀井
「旅立ちの歌」や「ゴロー海賊団のテーマ」など、聴けば「ゲームのあそこだな」と頭に浮かぶ“冒険の思い出に直結する”ような曲ができたと思います。ただ、『龍が如く』らしさと海賊らしさでどうバランスを取るかはけっこう悩みました。最初はもう少し“冒険海賊”色が強くてあまり『龍が如く』らしさがなくて、そこはディレクターなどといろいろ相談しながらバランスを取り、聴いてワクワクする曲をお届けできたので、すごく満足しています。

 好きな曲は全曲と答えたいですが、しいて挙げるならば「旅立ちの歌」ですね。じつは携帯のアラーム曲に設定しているんですよ(笑)。あとは「ゴロー海賊団のテーマ」をリミックスしたバトル曲がありますが、それもお気に入りの1曲ですね。

――今後予定されているライブのイベントなどでは、ステージ映えもしそうな楽曲が多そうです。お客さんも一体になって歌うのも楽しそうです。

堀井
そうなったらうれしいですね。でも、あらためてよくあんなスケジュールで完成したなと思います(笑)。じつは「旅立ちの歌」は初めて歌詞から作った曲なんですよ。これまでは曲を先に完成させて歌詞をあとから当てはめるやり方だったんです。

 それでミュージカル曲だし「どうしよう」となって、作曲メンバーの福田(有理氏)と相談しながら1週間くらいで作り、聴いてみたら「意外といいじゃん。海賊のミュージカルっぽいじゃん」と(笑)。この曲がイマイチだったら作品全体の評価が変わってきたかもしれません。

ロバート・秋山氏が演じたマサルはゴロー海賊団の潤滑油的存在に!?【龍が如く8外伝インタビュー】


――俳優陣の演技が光る作品と高評価の本作ですが、堀井さんが印象に残っている方はどなたでしょうか?

堀井
みなさんも同じ意見だと思いますが、やはりノア役のファーストサマーウイカさんですね。感動しましたし、言われないと気づかないくらい少年役がハマっていたなと。オーダーする時点で少年声が出せると聞いていたのですが、まさかあそこまでマッチングするとは思わなかったです。本当に期待以上でした。

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 物語ではノアという少年がキーとなる存在だったので、あの素晴らしい演技で固めてくださって、作品が締まりました。また、ミュージカル調の「旅立ちの歌」はウイカさんのバイタリティがある歌声があったからこそ成功したなと感じていて、やはりそこがいちばん印象深いですね。

――マサル役で出演されたロバート・秋山(竜次)さんも、相当なインパクトを残しましたよね(笑)。

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堀井
ゴロー海賊団が明るい雰囲気になれたのは、秋山さんが演じたマサルというキャラクターの存在が大きかったと思います。真島と行動をともにするジェイソン(演:松田賢二氏)は渋いところが魅力ですが、ノアとの親子関係で重い空気が流れるシーンもあるんですね。

 そんな空気を本人はふざけていないけれど、誰からも愛されて周りを笑顔にしてくれるマサルがうまく払拭し、ユーザーさんのゴロー海賊団に対する親近感をアップさせてくれたと思っています。これは演じられた秋山さんが持つ唯一無二の世界観のおかげなのかなと。実写の「Masaru's LOVE JOURNEY」なんか、「これは何を見せられているんだろう」と思っちゃいましたし(笑)。

――マサルつながりでミナト区系女子についてうかがいますが、これまではキャバ嬢などオーディションで出演された方も多くいましたが、本作では最後までサブストーリーを進めると女性陣が船員として仲間に加わります。「そうきたか!」とサプライズとしてもうれしかったのですが、この形にした理由を教えてください。

堀井
『龍が如く7 光と闇の行方』以降は(向田)紗栄子といった女性も戦闘に参加するようになったので、本作も女性がサポート役に徹して戦わないのは逆に不自然かなと。だから戦闘に参加する形になっています。

――オーディション映像でバトルボイスらしき収録風景もあり期待していたので、戦闘に参加してくれてうれしかったです(笑)。ちなみに、収録したけれどもゲームには盛り込めなかった部分も多くあると思いますが、秋山さんの“Masaru's LOVE JOURNEY”は台本があったのでしょうか?

堀井
最初は何度かご相談させていただきました。秋山さんは“ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル”で、いろいろなキャラクターになりきるといった動画などを出されています。今回はそのおもしろいエッセンスをぜひ取り入れたいと考えていました。

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 そこで「女の子たちとコンパをして、その最中にいろいろなキャラクターを演じる形でどうですか」とご相談したら、「おもしろいですね」とご返事をいただけまして。ただ、動画の収録には時間がかかるため、「これだと1日で撮り切れないからどうします?」など、限られた時間でどうやって撮り切るかなどを含め、直接何回か打ち合わせをしています。

 たとえばコスプレイヤーのえなこさんならば写真を撮られることが好きで、秋山さんが撮影会をして絡んで何かしらオチを付けるなどの流れは台本で決めています。それ以外はアドリブも含めて秋山さんにおまかせしました。飲むヨーグルトのネタなどはあらかじめあって、商品は用意しつつもそれをどう活かすかは完全に秋山さんのアドリブです(笑)。

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――「カメラが喜んでいるでしょう?」などのセリフは、秋山さんの世界観が爆発していましたよね(笑)。

堀井
この台本を作るまでの打ち合わせも、1時間ほどいっしょにアイデア出しに参加してくださり、僕らも出演者と一緒に中身まで考える機会があまりなかったので、とてもいい経験になりました。

――本作では真島の兄弟分である冴島が登場し、一緒に海賊団で戦ってくれます。物語では2人のキズナの深さがグッと来た一方、けっこうコミカルな形で冴島をいじる場面も多く、お堅いイメージが強い冴島の見方が変わった人も多いと思います。そこは狙っていたのでしょうか?

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堀井
真島の周りが明るいメンバーが多い中、冴島は初めて知るユーザーさんからするととっつきにっくい堅物的なキャラクターだと思うんです。そんな彼が突然自分のメンバーに入ってきたら困るじゃないですか(笑)。

 でもじつは冴島にはかわいらしい部分があるし、真島とはいちばん信頼し合う兄弟分という仲でもあります。だからそこをいじることで、ゴロー海賊団に対してうまくアジャストできるんじゃないかと。その方向性で行くことは最初のプロットから決まっていました。

 本作で冴島を出さないという案もありましたが、真島が極道の後始末を手掛けるならば冴島が手伝うのは至極当然だろうと。そして真島吾朗の単独主人公作品なので、僕らもやはりそばに冴島がいないとつまらないと考えていました。それで彼を登場させるならば、真島との仲を深堀りするべきとなったわけです。

 これまでそういった姿は2人でホルモンをつついているシーンくらいしかありませんでしたし(笑)。それで絆ドラマも含めて人間関係をしっかり、深く描くことにしました。いないことが不自然なキャラクターなので、冴島を登場させたことは正解だと思っています。

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数多の挑戦あれど『龍が如く』シリーズのユーザー層を向いたゲーム作りは変わらない【龍が如く8外伝インタビュー】


――海賊団を結成していくという遊びは、たとえば『龍が如く7』の会社経営(一番製菓)や『龍が如く8』のドンドコ島のような、メインストーリーと対を成す規模のサイドコンテンツに相当する内容だと思います。ただ、これまでと違い海賊団を強くしていく動機とメインストーリーがうまくリンクしている印象を受けました。今回はそのあたりは特別意識されたのでしょうか?

堀井
今までの『龍が如く』シリーズに登場したサイドコンテンツは、メインストーリーとバッティングしない、いわゆる設定を食い合わないものを考えるという手法で作ってきました。だから、サイドコンテンツをプレイせずともメインストーリーには影響がないゲームデザインですね。

 ですが、今回は海賊団で船員を集めてゴロー丸を強化し、海賊団で悪い奴を倒すことがテーマなので、最後に戦う相手はやはり海賊であってほしかったんです。あれだけ「海賊」と言っておきながら、最後までプレイして「あれ、海賊出てこないの?」となったら拍子抜けじゃないですか(笑)。

 だからサイドコンテンツでありながら、メインストーリーのコンテンツという立て付けにして、ゴロー海賊団を強化する流れを組み込みました。そうすることで、狙い通りに“エモくなる”んじゃないかなと。

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――海戦をゲームとして落とし込む場合、たとえば風を読んでの帆船操作、距離や方向を考えての砲撃など、こだわるほど難しくなる要素が多いと思います。そこを『龍が如く』のユーザーに向けて調整するには、かなり苦労されたと思いますがいかがでしたか?

堀井
そこはおっしゃる通りで、僕らも海戦というゲーム性のノウハウがまったくない中で、当初は海に船を浮かべるところからスタートしました。そこから波や風などのリアルな環境変化を入れて、砲撃も照準をFPSやTPSのようにプレイヤーが自分で合わせる想定で開発を進めていたのですが、それだと「これは絶対に無理だよ」と僕が白旗を上げるくらい、まったくうまく操作できなかったんです。

 チームの中でもダントツでゲームが下手だと自負しているだけに、僕が無理ならばそれはハードルが高すぎるし、そもそもそういった細かいことを計算しながら遊ぶのではなく、「海賊団、いえ~い!」みたいなノリで遊べるゲームにしたいとスタッフに伝えました。

 そもそも海賊団のサイドコンテンツを進めないとメインストーリーをクリアできないので、「海戦を難しくしている要素はなんだろう」と突き詰めて、該当するものをそぎ落として調整しました。さらに、ゴロー丸に強化要素を入れたり、船の操作が苦手なら人のために真島でロケットランチャーを撃てるようにしたりと、エスケープ先をなるべく多く増やして今の形に最終着地した感じです。

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――海戦の難易度調整にもつながるかもしれませんが、バトルではセミオートが用意されて、すごく遊びやすい印象でした。

堀井
じつは『龍が如く7外伝 名を消した男』でも導入されていたんですが、そこではあまり前面に推していなかったので、あまり使われていなかったんです。それで「本作はセミオートも選べますよ」と、チュートリアルで目立つ形にしました。

 『龍が如く』シリーズのユーザーさんは、アクションが得意でない方も多いんですよ。とくにコマンドRPGだった『龍が如く7』から『龍が如く7外伝』に入られた方からは「難しい」という声もいただいていまして。だからそういった点を含めて、いろいろフォローする要素が必要だと僕は考えています。ちなみに、セミオート機能も『龍が如く7外伝』から改良が加えられていますし、海戦もセミオートに対応させました。

――本作は『龍が如く8』から約1年後が舞台ということで、ホノルルの街並みで時間の経過を感じられる要素はありますか?

堀井
街の住人はアロハリンクスの対象者を始め、『龍が如く8』から引き続き登場している人と、新しく登場させた人がいますね。1年前に登場した人がそのまま全員登場してもいいと思いますが、変わらないままだとやはりつまらないですし。中には1年で環境が変わっている住人もいますので、そのあたりの違いも探して楽しんでみてください。

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「完」という終わり方だと納得がいかなかったから「続」を選択【龍が如く8外伝インタビュー】


――エンディングロール後に桐生を見舞うシーンから「続」と表示されたことは、これからも桐生の物語が続くことを示唆しているのか、それともシリーズ全体が続くという意味を持つのか、いろいろと想像が膨らむラストでした。こちらはどういった意図で入れたのでしょうか?

堀井
あそこまでユーザーさんが喜んだり、反響があったりするとは予想していませんでした。最初は「完」「終」といった言葉を入れていたのですが、『龍が如く8外伝』としての話はここで終わりですが、クリア時に得られるトロフィー(PS4、PS5)の名称が「まだまだ人生は、続くでぇ」なんですよ。

 そして桐生ならば病気になったけど健康になる夢があるし、真島や冴島もきっと新しい夢に向かって進むだろうし、「未来を見据えた、未来に続く終わりかた」になっているので、そのとき「完」と表示されたのを見たら、まったく納得がいかなかったんです。

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 「シリーズ物として続編にご期待ください」というよりは、桐生や真島たちの人生がまだまだ続くよというメッセージを含めたうえでの「続」になります。ただ、これをSNSなどで語ると野暮なんですよね(苦笑)。『龍が如く』シリーズがこのあと続くのかはこの場ではまだ言えませんが、とにかく「完」が合わないという感覚でした。

――たしかに「続」の文字を見たとき、「まだまだ『龍が如く』シリーズを遊べるんだ」といううれしさで、テンションが上がりました。

堀井
ありがとうございます。やっぱり明るいゲームですからね。そういう意味でも「続」を選択してよかったです。

――ちなみに、「続」の解釈を含めて、ユーザーさんの間では「桐生はどうだ」とかさまざまな考察が行われていますが、このあたりはご覧になっていますか?

堀井
僕はそういった考察系は見ていませんが、エンタメとしてユーザーさんが考察するのは自由だと思っています。僕らもそれに対して「間違っている」というような指摘をするつもりはありません。

――最後にプレイしたユーザーに向けてメッセージをお願いします。

堀井
世界中のたくさんの方々に遊んでいただいて、「スッキリしたし、おもしろかったよ」「ゴロー海賊団、楽しかった」といった声が多く届いて、すごくうれしく思っています。今回は突飛なタイトルで僕としては実験作に近い部分がありましたが、『龍が如く』シリーズらしくはない部分も多いですが、それでも「らしさ」を感じていただけたのかなと思います。

 制作で学んだことやよかったところなどを糧にして、今後もおもしろい作品を作ってきたいと思いますので、『龍が如く』シリーズの続報を楽しみにお待ちください。

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