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『ガンダム ジークアクス』4話感想:あまりに属性過多すぎた子持ちの連邦の撃墜王・シイコに脳がバグりそうになる。ラストのマチュの反応が一番の衝撃だった(ネタバレあり)

文:電撃オンライン

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 放送中のTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム ジークアクス)』第4話“魔女の戦争”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ガンダム ジークアクス』4話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。[IMAGE]
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回を増すごとにニャアンが好きになっていく【ガンダム ジークアクス感想】


 いよいよ劇場で先行公開されていた範囲のエピソードが終わり、4話から完全に未知の領域に突入した『ジークアクス』。今回は本当にいろいろな意味で衝撃が強すぎた回でした……!

 前回のクランバトルを終え、いつの間にかジークアクスをすでに乗りこなし始めているマチュ。サラッとやってますが、冒頭の戦闘では並んでいる2機のザクの頭部をヒートホークで同時に切り落とすという、人間離れした技を見せ始めています。

 しかしその様子を見ていたシャリア・ブルの反応は引っかかったところ。

 ジオンの最新鋭機であるジークアクスは早く取り戻さないとまずいはずなんですが、コモリが不審がっていた通り、なぜかマチュがオメガ・サイコミュに適応していくのを待っているかのようだと感じました。


 前回のエグザべもコモリも、オメガ・サイコミュによって“ゼクノヴァ”が引き起こされる可能性を指摘しているにも関わらず、シャリアは答えをはぐらかしています。

 シャリアの目的が、"いなくなったシャアに再び会うこと”だと仮定すると、“ゼクノヴァ”が起きることは都合がいい可能性すらあります。


 一方、マチュたちは赤いガンダムの意思(?)らしきものに従い、地球を目指すことに。

 自分がというよりは、シュウジが行きたいならと地球についていくことを即決したマチュは、やはり今までの『ガンダム』主人公にはいないタイプでおもしろい。 

 シュウジが赤いガンダムを盗んだ可能性を指摘されたら逆にテンションが上がるロックさを見せたかと思えば、ガンダムに意思があるとは一切思っていないドライさも覗かせるなど、いろいろな表情をもったキャラクターだなと改めて思わせます。


 またここでのやりとりで良かったのが「お金なら大丈夫」とクランバトルで稼いでいる自分が払うと遠回しにマチュが言ったにも関わらず、ニャアンは仕事を増やして自分のお金で工面しようとしたこと。

 ニャアン自身は地球に行く理由はほとんどないにも関わらず、マチュに払ってもらうのではなく、あくまでも自分で工面しようとするのが、マチュに対してどういう関係でいたいかというニャアンのスタンスみたいな部分が垣間見えました。

 クールな雰囲気に反して意外と残念なところとかもかわいくて良いんですが、素直に尊敬できる部分もあって、回を増すごとに好きになっていきます。

 あと、なんだかんだお金になりそうな話を教えてくれるおじさん(マーコ)も面倒見がいい人なのかもなと思いましたが、ニャアンは赤いガンダムに関する情報をかなり知っているわけで。、今後ニャアンがその情報を活用するのかも気になるところです。

まさかの登場をしたモスク・ハン博士【ガンダム ジークアクス感想】


 その後は、予告でも語られていた100キル超えの連邦のエース、シイコが登場。一年戦争を経験したパイロットの可能性は高そうでしたが、結構外見が幼く見えていたので、まさか結婚していて子どもまでいるというのはかなりビックリしました。

 かつてのマブをガンダムに殺され、ガンダムに執着するというところは『ガンダム00』のグラハム・エーカーを思い出したりもしました。

 グラハムと違うのは、仇討ちのためにすべてを捧げるのではなく、いわゆる“人並みの幸せ”を得ながらも、同時にマブの仇討ちも果たそうとしていたところ。しかも今の赤いガンダムのパイロットはシャアではないことを承知の上で、赤いガンダムに執着しています。


 アンキーとは旧知の仲のようで、アンキーの謎がさらに深まりました。

 個人的には元ジオンの軍人や工作員説を推していたのですが、元ジオンの人間が連邦のエースと知り合いになる流れはあまり想像できないので、元連邦サイドの人間だった可能性は高まったと言えるでしょうか。

 あと忘れられないのは、ヘルメットを脱いで降りる時にシイコの髪の乱れていた時のカット。

 シイコって『ジークアクス』のキャラクターの中でもデフォルメが効いたデザインをしている分、“ヘルメットを脱いだら髪型が崩れる”というリアリティが加わった時の破壊力が凄まじいなと。

 旦那がいる子持ちの女性で、かわいい系なのに時折ドキッとさせる色っぽさもありつつ、連邦の撃墜王でニュータイプの素養があって……と、あまりにも属性が盛られまくっていて脳が認識しきれなかったほどで、非常に印象的なキャラクターになりました。

 予告でも映っていたシイコの機体と思わしきジムに似た外見の機体が、『ジークアクス』におけるゲルググだったことが判明します。

 一年戦争パートで、ジオニック社の新型の開発を中止して、ガンダムのリバースエンジニアリングしたモビルスーツの開発を進めているという話もありましたが、その時に中止されたのが我々が知るあのゲルググだったんでしょうね……。


 また、個人的に今回一番驚いたシーンのひとつと言ってもいいのが、初代『ガンダム』に登場したモスク・ハン博士が登場していたこと。

 モスク・ハン博士は、アムロの成長速度についていけなくなったガンダムに、マグネットコーティングという新技術を施して機体性能を引き上げてくれた人物で、『ジークアクス』でも言っていた、“ジオンにはない新技術”はマグネットコーティングに相当するものだと思われます。

 初代『ガンダム』におけるモスク・ハン博士、出番は短いのですがなかなか良いキャラクターをしていて、マグネットコーティングのデータを持ち帰ってもらうという建前で、アムロに生きて帰って来いと遠回しに伝えるやりとりが非常に印象的でした。


 『ジークアクス』でも、このシーンを思わせる「データを持ち帰ってくれ」と発言をするくだりがあるんですが、こちらだと本人に直接伝えるのではなく独り言のように呟く形で終わってしまっており、今思うとこれも運命の分かれ道の一つだったのかも……と思えてしまいます。

あまりにも早くて惜しすぎる退場【ガンダム ジークアクス感想】


 そして始まったゲルググ2機とのクランバトル。1話と3話でも、序盤なのに戦う相手が強いということを書いていたんですが、連邦の撃墜王は伊達ではなく、それを大きく上回る相手でした。

 現時点でも、マチュとジークアクスは並のパイロットと機体では相手にならないくらいの強さはもっているにも関わらず、今回の戦闘ではシュウジとシイコの間に割って入ることすらできず、完全に蚊帳の外に置かれてしまっていました。

 シイコはニュータイプを否定したいがためにシュウジを殺そうとするも、そのシイコ自身もかなりレベルの高いニュータイプという構図がなんとも皮肉。お互いの心の中を理解できるはずのニュータイプが殺し合う、宇宙世紀の『ガンダム』シリーズの恒例とも言える悲劇が今回も起きてしまいました。


 アムロの操縦にすら耐えたマグネットコーティングを施した(と思われる)ゲルググが耐えきれなくなるほどの機動で、耐えきれずに腕が自壊するシーンは、ロボットの部位破損大好き人間としてはめちゃくちゃ燃えましたね。

 しかしその直後、シュウジが躊躇なくゲルググのコクピットをビームサーベルで貫いたシーンは、一瞬何が起こったのか脳の処理が追いつかなくなったのが正直なところ。

 クランバトルをする上で、誤ってコクピットに攻撃があたってしまい死者が出る……みたいなことは起こるんだろうと覚悟していましたが、今回のシュウジに関しては明確な殺意をもってゲルググのコクピットを破壊しています。

 本来クランバトルのルール的には、頭部を攻撃するべきで、実際あの状況のシュウジならそれも難しくはなかったはず。

 にも関わらず殺したのは、おそらく頭部を破壊してもシイコは止まらず、ルールを無視して攻撃を続けてくると、ニュータイプ同士の共鳴の中で理解したからなのかなと(実際、あの執着ぷりを見るに、シイコは多分頭部を壊されるだけじゃ止まらなかっただろうなと思います)。


 しかもさらに度肝を抜かれたのが、その光景を目の当たりにしたマチュのリアクションです。

 普通ならシュウジの行動に困惑して「なんで殺したのか」という話になっていきそうなところ、マチュは「そこまで踏み込まないと、シュウジのいる場所には届かないんだ」という大分ぶっ飛んだ発想に辿り着くんですよね。「そこにいく!?」と困惑したのは自分だけではないはず。

 ただ、理解できる部分もあって、今回シュウジとシイコの戦いから蚊帳の外に置かれていたマチュは、近づいてきたと思っていたシュウジと自分の世界が、実はとんでもなく離れていたということに今回改めて気づいたんでしょう。

 とはいえ、シュウジがそういう世界に生きているのは、そうせざるを得なくなった何らかの事情があったと推測はでき、本来戦いとは無縁の世界で生きることもできるマチュが、シュウジのいる場所を目指すのが正しいのかは、大分微妙なところはあると思っています。加えて、ここで4話が終わっているので、その後にマチュが「そこまでは踏み込めない」と思ってしまうセンも、現状だとなくはないですし。

 今回マチュどういう感覚を抱いたのか、そしてそれを成長として肯定的に描くのか、それともさらに変化させていくのかという部分で、今後の『ジークアクス』の向かう方向性がガラッと変わっていきそうです。

 ……と理屈では納得できる部分はありつつも、1話だけで凄まじいキャラの立ち方をしていたので、早くもシイコが退場となったのはあまりにも惜しいのが正直なところ。ゲームとかでの活躍を早く見たいです。

 余談ながら、ワイヤーを打ち込んで動きを制御するシイコの戦い方は、思わず『進撃の巨人』の立体機動装置を思い浮かべたのですが、今回コンテと演出を担当していたのが、その『進撃の巨人』アニメ版の監督を務めていた荒木哲郎さんだったと知った時には笑いました。ある意味本家だったとは……!


 また今回、“ララ音”という気になる言葉も飛び出していました。

 実際、あれは初代『ガンダム』でララァ・スンがエルメスのビットを使う時に発していた音で、戦場の兵士たちにも聞こえていたものですが、『ジークアクス』ではララァ・スンの存在は描かれていません。ならば"ララ音”とは、一体どこから来た言葉なのか……ということになりますよね。

 ラストの衝撃が冷めやらぬ中、5話の予告では黒い三連星のガイアとオルテガの登場に再度度肝を抜かれるという、最初から最後まで驚かされっぱなしだった今回の放送。

 本編部分でも想定していた以上に濃い初代『ガンダム』ネタの数々が仕込まれていることに胸踊りつつ、次回の放送を楽しみに待ちたいと思います。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。
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